このコラム欄で「人は『運命』に操られているのか」というタイトルの記事を書いた。年をとったせいか、人間の力ではどうしょうもない運命に強い関心がある。その時、オーストリアの最大手日刊紙「クローネ」日曜版(10月20日)に医者で神学者のベストセラー作家、ヨハネス・フーバー氏(73)が「運命の解剖学」(Die Anatomie des Schicksals)という新書を出したという記事を読んだ。著者は「人に影響を与える運命がどのようにして生まれてくるか」を説明している。

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▲「人間は考える葦」と述べたフランスの哲学者ブレーズ・パスカルの肖像(ウィキぺディアから)

 著者は婦人科医で40年あまり出産に立ち会ったが、「出産時、赤ちゃんは既に一定の運命を持っている。スマイルで生まれる赤子、怒ったような泣き声で生まれてくる赤子、静かに生まれてくる赤子などさまざまだ。両親、祖父母などからその気質を既に継承してきているのが分かる。人はそれを運命と呼ぶかもしれない。親が考えてきた『思考』の世界は子に継承される。『思考』にはエネルギーが必要だ。そしてエネルギーを通じて物質化された『思考』はその人が死んだ後、様々な形態で宇宙に生き続ける」と説明している。

 先代、先々代の「思考」の世界が埋め込まれたDNAが代々、継承されていくという。当方に興味深い点は「思考」、「考え」が物質化して継承されるということだ。

 著者が指摘するように「思考」はエネルギーを通じて物質化され、その「思考」は人間が死んだ後も生き続けるという。それを読んで理解できたことがある。ユダヤ人が身近に住んでいないのにポーランドではなぜ反ユダヤ主義が席巻するのか、旧ソ連・東欧諸国の共産政権が崩壊した後も共産主義が生き続け、最近では復活すら見えだした現象、西欧諸国で見られる反イスラム傾向などの背景について、生きてきた人間の「思考」が物質化してエネルギーとして宇宙に散らばり、その思考がその後、地上の人間にいろいろな影響を与えているという考えだ。

 反ユダヤ主義を例に挙げれば、ポーランドでは戦後、ユダヤ人の数は少ないが、反ユダヤ主義は依然、広がっている。その謎を解くのは、反ユダヤ主義の「思考」で生きた多くのポーランド人が亡くなった後も、その反ユダヤ主義という思考が物質化して生き延び、その後の世代に影響を与えていると理解できるわけだ。

 著者は「現代は進化発展生物学(Evodevo)の時代だ。進化は神の業だ」という。科学者が答えることが出来ない2つの問いがあるという。1点は「宇宙にある自然法はどこからくるのか」、2点は「宇宙形成の最初の条件はどこからくるのか」だという。

 著者によれば、運命は一見、偶然の業といった響きがあるが、そうではなく、先祖代々が蓄積してきた「思考」、「気質」などが後世代に影響を与える現象ということになる。それだけではない。人間は過去の運命を背負って生まれるが、生きている時にその運命を変えることができるばかりか、良き運命を生み出し、後孫に残すことが出来るという。

 蛇足になるが、韓国では反日が強く、国を挙げて反日活動を奨励してきた。その思考、思想は現政権が崩壊し、新政権が生まれてきたとしても消滅することはなく、物質化した「反日」思考は影響を与える。極端な場合、韓国に反日感情が無くなってきたとしても、、半島には「反日」が消えない、といった現象すら予想できるわけだ。

 反日だけではない。人間の思考がどれほど大きな影響を世代を超えて与えるかを考える場合、何を話し、何を考え、何を信じるかが如何に重要なテーマかが分かる。人を罵倒し、人の心を傷つけること、憎み恨むことなどが何世代にも渡って悪影響を与える状況を考えなければならない。フランスの哲学者パスカルは「人間は、自然の中で最も弱い葦の一本に過ぎないが、それは考える葦である」と述べた。その「考える葦」の語る内容が今、問われているわけだ。