イランは7日、中部フォルドウの地下ウラン濃縮施設で濃縮活動を開始した。テヘラン側の説明では核合意に対する「第4段階」の対応という。イランは2015年7月、欧米中露6カ国との間で締結した核合意では、フォルドウのウラン濃縮は禁止されているから、イラン側の今回の対応は明らかに核合意を違反している。

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▲イラン核合意離脱を表明したトランプ米大統領(2018年5月8日、ホワイトハウスの公式サイトから)

 トランプ米大統領が昨年、核合意を一方的に破棄し、対イラン経済制裁を再開、昨年11月にイラン産原油の禁輸を実施したことを受け、イラン側はウラン濃縮活動の濃縮度を3・67%から4・5%に引き上げる一方、最新の遠心分離機を投入し、本格的なウラン濃縮を開始した。濃縮度20%を超えれば、核兵器用濃縮ウラン90%までは技術的に短期間でクリアできるだけに、イランの核合意違反に対し、テヘランをこれまで擁護してきた欧州3国(英独仏)でも批判の声が高まっている。

 一方、北朝鮮は今年に入り12回の弾道ミサイルを発射している。先月2日には、東部の元山の海上から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3型」を発射し、同月31日には「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」を2発発射した。食糧不足などで苦労する国民を尻目に、金正恩氏は何かに取り憑かれたようにミサイル発射を繰返している。

 2017年9月の核実験後、北は米朝首脳会談推進中は一種のモラトリアムとして、核実験を控えてきたが、非核化を実行する兆候はみられない。

 ちなみに、米国の衛星写真などによると、寧辺周辺核関連施設で活動がみられるが、古い原子炉から核燃棒を回収し、それを再処理してプルトニウムを入手するこれまでのやり方を放棄し、北はイランと同様、ウラン濃縮活動に専念しだしている。後者は大きな施設は要らず、隠ぺいも容易という利点がある。

 「北の非核化」はもはや遅すぎる。6回の核実験を実行し、20基以上の核兵器を保有している北が非核化に応じるはずがないからだ。その点、イランの核問題とは次元が違う。

 ところで、イランと北朝鮮は地理的にかけ離れているが、対米戦略で一致してきた。トランプ大統領を挑発し、経済制裁の解除を勝ち取ることが出来るのは次期大統領選までの期間だけだ、という判断だ。トランプ大統領はウクライナ疑惑などに直面、国内では守勢を余儀なくされている。そのうえ、次期大統領選を控えたトランプ氏は大規模な軍事行動に乗り出すことはできないだろう。米軍側に大量の犠牲が出れば、再選の芽は吹っ飛んでしまう。だからこの期間、トランプ氏を少々挑発しても軍事攻撃を受ける懸念は少ない、という読みで両国は一致しているわけだ。

 イランは欧州の反発を考えて核合意の違反テンポをスローダウンしてきたが、欧州がイランを支援できる範囲は限定されていることが明らかになった以上、欧州の反応を見ながらウラン濃縮活動の濃縮度を上げていく、といったやり方を放棄し、トランプ氏の選挙期間中に、本格的なウラン濃縮活動を始める方が賢明という判断が働いているはずだ。

 一方、ベトナムで開催された第2回米朝首脳会談(2019年2月)でも明らかなように、米朝間の非核化への捉え方はコンセンサスを得ることは元々難しい。とすれば、同じように、トランプ氏の選挙期間中に弾道ミサイル開発で残された技術的な課題をクリアするためミサイルン発射を繰返す絶好のチャンスと受け取っているわけだ。

 トランプ氏が再選を果たせば、軍事行動に躊躇する理由はなくなるから、厳しい対応に乗り出すことが予想される。トランプ氏が落選したとしても、軽率な軍事衝突は考えられないが、制裁の解除は期待できない点では変わらない。イランと北の両国にとって、トランプ氏の次期大統領選期間が唯一、米国を挑発できる期間だ、ということで両国は対米政策で連携プレーを見せてきているわけだ。

 テヘランは早急にウラン濃縮度20%を超えること、北は核搭載長距離弾道ミサイルの完成を目指して、これまで以上にトランプ氏を挑発してくるだろう。ただし、経済制裁下のイランも北朝鮮も国内の経済状況は厳しく、国民は困窮下にあるから、決して余裕があるわけではない。その点、再選に腐心して他の選択肢がないトランプ氏と状況は余り変わらない。いずれにしても、イランと北朝鮮は瀬戸際に立っているだけに、偶発的な軍事衝突や事故が取り返しのつかない結果をもたらす危険性はこれまで以上に高いわけだ。