ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

中国

日本外交官は中国大使に見習え!

 駐オーストリアの中国の李晓驷(Li Xiaosi)大使は模範的な外交官だ。自国の政情や国体がメディアで間違って報道されていたら、黙っておれない外交官のようだ。同大使の強みは流ちょうなドイツ語だ。20日の昼のラジオのニュース番組で同大使の声が聞こえてきた。同大使は数日前、オーストリア代表紙プレッセに寄稿し、香港のデモ集会について、「欧州メディアは正しく報道していない」と厳しく批判し、20日のラジオインタビューでは、「中国の北京政府も香港がカオスに陥るような状況になれば、関与せざるを得なくなる」と発言し、「欧州駐在の中国大使が北京政府の香港介入の可能性を示唆し、香港のデモに対し警告を発した」というニュースを発信させているほどだ。

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▲海外駐在外交官の模範、駐オーストリアの李晓驷中国大使(左)、李勇UNIDO事務局長(国連工業開発機関=UNIDO公式サイトから)

 当方は中国共産党政権の政策には同意できないが、李晓驷大使には感動すら覚える。国と国体は異なるが、「外交官の鏡」ではないか、と口には出せないが高く評価している。なぜならば、外交官は海外では出身国の代表であり、その国の国益を擁護し、問題があればそれに反論する立場だが、李大使はまさにその使命を忠実に実行しているのだ。李大使を評価する理由は、日本外交官が海外の派遣先で国の利益、立場を積極的に支援するという外交官の務めを怠っているのではないかという思いがあるからだ。

 日本の外交官はお茶の会や華道の実演紹介、文化イベントには積極的だが、政治問題や懸案に対しては沈黙するケースが多い。日本海の呼称問題を話し合う韓国主催のシンポジウムがウィーン大学法学部内で開催された時も、日本大使館からは誰も参加しなかった。日韓問題で駐在国の代表紙が偏った主張を社説に掲載しているのに、反論しない。何のために海外に駐在しているのか分からなくなる。その点、国は異なるが、李大使は模範的だ。プレッセ紙が“間違った”中国批判の記事を掲載すると直ぐに反論掲載を要求する。北京外務省は素晴らしい外交官をウィーンに派遣したものだ。

 ただし、ここで同大使の反論内容に言及しても意味がないかもしれない。李大使の反論は中国共産党政権の主張の繰り返しであり、政府のプロパガンダの域を超えていないからだ。

 香港の大デモ集会について、李大使は、「香港がカオスに陥るような状況になれば、国家の主権と領土統合を防衛するために北京は黙っていることができなくなる」と述べ、中国本土からの武力介入の可能性を示唆し、注目された。

 参考までに、台湾問題でも同じだ。中国の習近平国家主席は今年1月2日、「台湾同胞に告げる書」の40周年記念式典で台湾問題に関する中国政府の立場を述べ、その中で「武器の使用は放棄せず、あらゆる必要な措置をとる選択肢を残す」と発言している。李大使は当時もオーストリア代表紙プレッセに反論を寄稿し、「中国警戒論」の鎮静に腐心している。忠実で勤勉な外交官だ。

 李大使は当時、「台湾は1840年のアヘン戦争後、国内外の混乱に陥り、半世紀に渡り外国勢力の支配下にあったが、1945年に中国本土に戻ってきた。その直後、中国は再び内戦を経験したが、1949年に現在の中華人民共和国が建国された。その時、中国国民党政府が台湾に逃げた。その結果、現在の台湾問題が生じたのだ」と中国共産党の視点に基づいて台湾問題の歴史を簡単に説明している(「中国大使の空しい『反論』」2019年1月11日参考)。

 一方、日本の外交官はなぜ沈黙しているのだろうか。日本の外交官世界に通じている知人は、「能力や言語問題では中国大使とひけをとらないが、テーマが日中韓関係や歴史問題となると大使や公使が勝手に駐在国のメディアに寄稿したり、インタビューに応じることは難しい。東京の外務省から承認がなければ自由勝手に寄稿はできないからだ」という。すなわち、外務省の官僚機構が海外駐在大使の自由な言動を束縛し、迅速に対応できなくさせているという。もしそうならば、改善すべきだろう。

 蛇足だが、「嘘も100回言えば本当になる」といわれるが、外交の世界も次第にそのような様相を深めてきた。沈黙は外交の世界ではもはや金ではない。海外駐在の中国外交官や韓国外交官の積極的な自国アピール外交を見るにつけ、日本の外交官の“ひきこもり症候群”が気になる。

中国共産党「DNA情報を集めろ」

 仏教開祖の釈尊が「天上天下唯我独尊」と、一人一人が世界で唯一の価値を有した存在だと諭した。無神論で唯物思想を国是とする中国共産党政権はここにきて海外でDNA(デオキシリボ核酸)を集めているという。もちろん、釈尊の教えに倣って、人間の一人一人の価値を認めたうえでの政策ではない。簡単に言えば、世界の70億人の人間をDNAを通じて管理するという野望が隠されているのだ。

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▲「逃亡犯条例改正案」の廃案を要求する香港国民(2019年7月5日、UPI通信)

 人間は生まれたときからそれぞれが独自の高分子生体物質DNAを有している。細胞のブルー・プリントだ。事件が発生した場合、犯人を割り出す際に大きな武器となる。これまで迷宮入りしていた殺人事件が最新のDNA鑑定を駆使することで、犯人を探し出すことができたということをよく聞く。

 最近ではバチカンの36年前の少女行方不明事件(エマヌエラ・オルランディ事件)で墓を掘り起こしたが空だった。傍にある納骨堂で見つかった多くの遺骨のDNA鑑定が進められている。このコラム欄でもインスブルック大学の法医学分子生物学者、ヴァルター・パーソン教授を紹介したばかりだ。独自のDNA鑑定を開発し、数千前のアイスマンの子孫さえも見つけ出すことができるわけだ(「少女行方不明事件:『墓は空だった』)2019年7月15日参考)。

 そんな可能性を含んだDNA情報に目をつけて必死に集めている国が中国共産党政権だ。海外中国メディア「大紀元」(7月22日)によると、「米捜査局(FBI)や情報戦略家は、中国共産党政権が、世界から収集した遺伝子情報を生物兵器の製造に悪用しかねないとして、危機感を強めている」という。

 以下、大紀元の記事の概要を簡単に紹介する。

 米上院チャーリーズ・グラスレイ議員とマルコ・ルビオ議員は6月、米国保健省への公開書簡の中で、DNAなどの遺伝子データが、米拠点の遺伝子検査企業などを通じて、中国に渡る可能性に懸念を表明している。

 例えば、アイルランドの企業、ゲノム製薬(Genomics Medicine Ireland,GMI)は米国にあるWuXi NextCODE(中国名:明碼生物科技)の子会社で、親会社は上海の「薬明康新藥開發有限公司」(薬明康)だ。GMIは40万人のアイルランド市民を対象とするデータベース構築のプロジェクトを実施している一方、WuXi NextCODEと深圳華大基因科技有限公司(BGI)は米国市民のDNAデータを収集している。BGIは2012年9月、米大手コンプリート・ゲノミクス(Complete Genomics)を買収し、数千万人の米国人DNAを管理する同社データベースにアクセスできるようになったという。

 米中経済安全保障審査委員会(USCC)は今年2月14日、中国バイオテクノロジーに関する報告の中で、中国側が特定の遺伝子に効果を持つ生物兵器の開発の可能性について警告を発している。USCCの報告によると、「中国との繋がりを持つ遺伝子データ関連米企業はすでに23社に及び、米国において全ゲノム解析など遺伝子診断の業務が認めらている。これらの企業は、米国の病院、クリニック、商用DNA検査企業から入手した患者らのDNAサンプルのデータを、中国本土に解析のために送っている」という。

 注目すべき点は、BGIと薬明康は中国通信大手のファーウェイと遺伝子解析の分野でパートナーシップ関係を結んでいることだ。世界のDNA情報がファーウェイを通じて中国共産党政権の手に渡っている構図が浮かび上がる。

 北朝鮮の独裁者、金正恩朝鮮労働党委員長の生体情報について、このコラム欄でも紹介した。金正恩氏の外遊の場合、金正恩氏は通常のトイレでは用を済まさないから、彼専用トイレが必要となる。金正恩氏が普通のホテルのトイレで用を済ましたら、その用を足したものの中に金正恩氏の生体情報が溢れているから、第3者、第3国の情報機関関係者の手に渡ればまずい。尿や便はその人の生体内を通過しているので その人の全ての生体情報が含まれている。金正恩氏に持病があれば、直ぐにばれてしまう(「金正恩氏の『生体情報』は高額」2019年3月16日参考)。

 生体情報は本来、コンフィデンシャルで第3者が介入できないはずだが、世界の制覇を目指す中国共産党政権はDNA情報ら生体情報をスーパーコンピューターで管理し、体制に反対する国民を見つけ出し、遺伝子操作でその反体制派を根絶していくわけだ。

 中国共産党政権は2014年、「社会信用システム構築の計画概要(2014〜2020年)」を発表した。それによれば、国民の個人情報をデータベース化し、国民の信用ランクを作成、中国共産党政権を批判した言動の有無、反体制デモの参加有無、違法行為の有無などをスコア化し、一定のスコアが溜まると「危険分子」「反体制分子」としてブラックリストに計上し、リストに掲載された国民は「社会信用スコア」の低い二等国民とみなされ、社会的優遇や保護を失うことになる、という(「中国の監視社会と『社会信用スコア』」2019年3月10日参考)。

 サイエンス・フィクションならば興味深いが、中国共産党政権は真顔で生体情報の管理を目指しているから、恐ろしい。サイエンス・フィクションの世界では、DNAや指紋が残らないアンチDNA指紋の手袋が作られているだけではなく、恣意的に他者のDNAを残す手袋が既にあるという。偽のアイデンティティ作戦だ。いずれにしても、この分野では中国共産党政権は世界の最先端を走っているわけだ。

ファーウェイの容疑はやはり「黒」だ

 トランプ米政府は中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が中国のスパイ活動を支援しているとして米国市場から追放する一方、カナダや欧州諸国にも同様の処置をとるように働きかけてきた。米国政府は今年に入り、カナダ政府が昨年12月、米政府の要請で逮捕したファーウェイ社の創設者任正非氏の娘、孟晩舟・財務責任者の引き渡しを要求したばかりだ。

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▲中国軍の高級教育機関で博士号習得した宋柳平ファーウェイ上級副社長兼最高法務責任者(ファーウェイ公式サイトから)

 ちなみに、トランプ大統領は先月29日、ファーウェイへの制裁で「米国の安全保障に影響のない製品に限定して、その輸出を認める」と表明し、ファーウェイへの一部制裁緩和と報じられたが、「制裁は変わらない、最新技術が絡んだ製品やソフトウェアに対しては引き続き禁輸だ」(米政権)という。

 ところで、ファーウェイは米国のスパイ活動関与疑惑に対しては常に否定してきた。その根拠として、.侫 璽ΕДい話羚颪旅餘調覿箸任呂覆民間企業、▲侫 璽ΕДい離好僖ね撞燭鮗他擇垢覽蚕囘証拠が見つかっていない、という2点が挙げられてきた。

 当コラムでは、,紡个靴討魯侫 璽ΕДい登記上、民間企業であったとしても、ファーウェイを管理している最終的権限は中国共産党政権下にあることを説明してきた(「ファーウェイは実質的には国有企業」(2019年4月26日参考)。そして、△紡个靴討魯侫 璽ΕДい製造したノートパソコンに、不正アクセスのための侵入口であるバックドアが設置されていたという海外反体制派メディア「大紀元」の記事を通じて報告済みだ。なお、米紙ワシントンタイムズも今月に入り、「ファーウェイ製品の55%に侵入裏が見つかった」という情報を報じている

 「大紀元」によると、米IT大手のマイクロソフトは今年1月、ファーウェイが製造するノートパソコンに、不正アクセスのための侵入口であるバックドアが設置されているのを見つけた。マイクロソフトは3月25日に公開したセキュリティ情報で、ファーウェイ製ノートパソコン、MateBookに搭載されているPCManagerソフトウェアを使うと、権限のないユーザーでも、スーパーユーザー権限でプロセスを作成できると警告している。ファーウェイが開発したデバイス管理ドライバーが原因だ。マクロソフトの報告を受け、ファーウェイ社は1月19日、ソフトウェアの修正プログラムを発表している。

 残る問題点は、ファーウェイと人民解放軍、情報機関との関係だ。英紙デイリー・テレグラフ5日付によると、英外交政策シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティ(HJS)がファーウェイ社員の履歴書を分析したところ、ファーウェイが中国当局と強い繋がりがあったと報じている。

 HJSが入手したファーウェイ社員の履歴書は2万5000人に及ぶ。大紀元によると、同履歴書はフルブライト大学ベトナム校のクリストファー・バルディング准教授が見つけたもので、中国就職情報サイトに掲載されていたという。それらを調査した結果、「ファーウェイ社員と人民解放軍、情報機関との間にはシステム化かつ構造化した関係が浮かび上がってきた」(大紀元)というのだ。

 以上、技術的実証、ファーウェイ社員の履歴書の調査結果などから、「ファーウェイは中国共産党の人民解放軍、情報機関と密接な関係がある」とほぼ結論を下すことができる。特に、今回、ファーウェイ社員の履歴書の内容が報じられるに及んで、チェスでいえば、チェックメイト(ゲームオーバー)だ。実際、ファーウェイの創設者、仁正非氏は中国人民解放軍出身であり、上級副社長兼最高法務責任者の宋柳平氏は中国軍の高級教育機関、国防科技大学で博士号を取得している。

 なお、宋柳平氏は先月27日、「知的財産権は私的所有権であり、法により保護されている。知的財産権に係る紛争は司法プロセスを通じて解決されるべきだ。ファーウェイは過去30年間において、悪意ある知的財産権の盗用・剽窃に関与したとの裁決を受けたことはなく、そのためこうした行為に対する損害賠償を求められたことはない」(ファーウェイ公式サイト)と強調している。 ファクトチェックが必要な発言だ。

中国共産党政権が宗教弾圧する理由

 中国共産党の宗教弾圧が激化してきた。キリスト教会の建物をブルドーザーで崩壊させる一方、新疆ウイグル自治区ではイスラム教徒に中国共産党の教え、文化の同化を強要し、それに従わないキリスト信者やイスラム教徒を拘束する一方、「神」とか「イエス」といった宗教用語を学校教科書から追放するなど、弾圧は徹底している(「中国の監視社会と『社会信用スコア」2019年3月10日参考)。

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▲「逃亡犯条例改正案」の廃案を要求する香港国民(2019年7月5日、UPI通信)

 習近平国家主席がなぜこの時に入って宗教弾圧を強化してきたかについて、2点考えられる。|羚饒甘擇嚢駝韻隆屬暴ゞ気覚醒してきたこと、▲僖鵑鰺燭┐觜駝鰻从兩策が世界第2の経済大国まで発展し、一応成果を上げたことだ。そこで中国共産党政権は本来の「パンのみの世界」の徹底化に乗り出したきたといえるわけだ。

 宗教の台頭についてはこのコラム欄で何度か報じたから、今回は中国共産党政権の目標である「パンのみの世界」について少し考えてみる。ここで「パン」とは、人間の基本的生存に必要なものの総称を意味する。いかなる哲学者、宗教者も自身の生命を維持するためには「パン」が必要となる。断食や禁欲生活をしながら高尚な天上の世界を地上で説いたとしても、地上で飢餓に苦しめられたならば、幸福とは程遠い。

 イエスは2000年前、このテーゼを第1の試練として対峙している。そしてその結論は「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである」(「マタイによる福音書4章)というのだ。

 中国共産党は無神論世界を標榜し、唯物思想を土台とした共産主義思想を政治信条としている。その共産党政府が最初に語ることは全ての人民にパンを与えるということだ。その一方、そのパンをこれまで独占し、人民を苦しめた資本家、支配者、その手先となって国民に宗教というアヘンを与えて、その苦境を忘れさせてきた宗教全般に対し、完全な抹殺を目指す。習近平中国共産党が共産主義思想の最終目標、宗教の抹殺に乗り出してきたのも決して偶然ではない。表面的には、中国共産党政権はトランプ米政権との貿易戦争を展開させているが、実際は「パンのみに生きる」世界の覇権獲得を目指しているのだ。

 中国共産党は旧ソ連型「計画経済」から「国家管理資本主義経済システム」を導入することで短期間で世界的経済大国となってきた。人民にパンを与える一方、共産党一党独裁政治を受け入れよ、と強制する。ここまでは成果があった。しかし、「人はパンのみに生きる」存在ではない。もう少し厳密にいえば、パンが保証された後には、パン以外の何かを求め出す。欧米社会のデカダンな享楽生活に走るか、宗教を含む精神的な人生の糧を求めるか等、様々な人民を生み出す。それに対し、中国共産党政権は愛国主義を鼓舞しながら、愛国心に宗教の役割を与えてきたのだ(「『宗教の中国化推進5カ年計画』とは」2019年3月22日参考)。 

 習近平共産党政権は欧米社会の享楽文化を堕落社会と糾弾し、腐敗、汚職に陥った党指導者を粛正する一方、宗教の世界に走る人民を弾圧してきたわけだ。香港では何十万人の若者、国民が中国共産党政権のマリオネット政権、香港特別行政区政府が考え出した「逃亡犯条例」改正案の廃案を叫んでデモ集会をしている。彼らはもはや「我々にパンを」と叫ばない、彼らが求めるのは中国共産党政権の支配から解放された、自由な世界だ。

 テレビのニュース番組で香港のデモ集会を観ていると、冷戦時代の1989年、チェコのプラハで反政府運動家たちがゼネストを行い、治安部隊と衝突した日を思い出した。当方は取材のためにデモ集会の中にいた。治安部隊は白いヘルメットと盾を持って立ち、今にもデモ隊を強制的に解散させるために待機していた。「解散」と叫んで治安部隊がデモ隊に向かって走り出した。デモ参加者は叫びながら、逃げ回った。プラハ市民の願いは共産党支配の終焉であり、自由な世界を実現することだった。彼らはもはや「パンのため」に戦ってはいなかった。

 中国共産政権が崩壊に追い込まれるためには、パンに代わる何かを、パン以上に重視する人間が生まれてこなければならない。イエスの言葉を借りるならば、「神の口から出る言葉」だ。

 問題はその「神の口から出る言葉」が多くの国民の耳に届かなくなってきたことだ。換言すれば、パンに代わるべき神のみ言葉を掲げる宗教世界の堕落だ。共産主義は宗教の偽善性、堕落をたたき、「神は存在しない」とリベラルなメディアを通じて吹聴する。

 世界最大のキリスト教宗派、ローマ・カトリック教会の聖職者の未成年者への性的虐待はそのことを端的に物語っている。彼らは神が存在しないことを実証する“悪魔の広告塔”に成り下がっているのだ。

 繰返すが、人はパンが必要だが、パンだけでは生きていけない存在だ。共産主義を克服するためには、与えられたパンをどのように公平に分配するかといった経済論争だけではなく、パンよりも何が自分にとって大切かをじっくりと考え、その何かを見出すことではないだろうか。

ファーウェイは実質的には国有企業

 米国政府は中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が中国のスパイ活動を支援しているとして米国市場から追放する一方、カナダや欧州諸国にも同様の処置をとるように働きかけてきた。米国政府は今年に入り、カナダ政府が昨年12月、米政府の要請で逮捕したファーウェイ社の創設者任正非氏の娘、孟晩舟・財務責任者の引き渡しを要求したばかりだ。

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▲ファーウェイのフラグシップショップの予定地(2019年2月9日、ウィ―ンで撮影)

 例えば、東欧のチェコのアンドレイ・バビシュ首相は昨年12月18日、内閣の職員に対して、ファーウェイ製スマートフォンの使用を禁止している。理由は「中国のファーウェイと通信大手の中興通訊(ZTE)のハードウェアやソフトウェアを使用すると、セキュリティ上の問題が出てくる」からだという。ポーランドでは1月8日、ワルシャワのファーウェイ社事務所の中国人職員がスパイ容疑で逮捕されている、といった具合だ。

 その一方、米国と情報提携が強固な英国でメイ政権は24日、ファーウェイによる次世代通信規格(5G)網への参入を認める決定を下している。すなわち、ファーウェイ製の機材がスパイ活動に利用されているという米国側の主張に対して、欧州では依然懐疑的な意見があることを裏付けているわけだ。

 米国の主張に懐疑的な主な理由は、.侫 櫂ΕДい蝋駘企業ではなく、民間企業だ、技術的にファーウェイ社の機材で中国共産党政権のスパイ活動を支援している証拠がない―の2点だ。

 中国問題専門家で筑波大学名誉教授の遠藤薫氏は先日、パトリオットTVとのインタビューの中で、習近平国家主席が推進する「一帯一路」プロジェクトに対して日本が支援することを警告する一方、同国のファーウエイが中国共産党政権のスパイ活動を支援しているという米国の主張に対して「ファーウェイは民間企業だ。ZTEのような国有企業ではない」と説明、ファーウェイの情報工作説を否定している一人だ。

 中国当局が公開する工商登記情報によると、ファーウェイは純粋な民間企業で創設者の任正非氏が株の1%を握り、他の99%はファーウェイ社の社員の労働組合(華為投資控股有限公司工会)が所持している。従業員の持株制度だ。だから、中国共産党政権はファーウェイにスパイ活動を強要する権限も法的権利もないという理由だ。

 それに対し、海外中国メディア「大紀元」は24日、「ファーウェイの所有者は誰?」の記事で、中国の法律に精通した米国専門家、ジョージ・ワシントン大学法学部教授のドナルド・クラーク氏とフルブライト大学ベトナム校のクリストファー・バルディング教授が発表した調査報告書を報道し、「ファーウェイの従業員持株制度は、一般的な従業員持株制度と異なる。中国の労働組合は、当局の支配下にある中華全国総工会が管理しているため、ファーウェイの社員は労働組合の方針、決定などに発言権を持たない。ファーウェイが社員に与える『ファントム・ストック(Phantom Stock、架空の株式)』も実質的には賃金の一部でインセンティブであり、法で定める会社の所有権や経営決定権と無関係だ」という主張を掲載している。すなわち、ファーウェイは登記上、民間企業だが実質的には中国共産党政権の管轄下にあるというわけだ。

 中国では「宗教の自由」は憲法で保障されている。だから中国では「信仰の自由」は認められているとはいえない。キリスト教徒、イスラム教徒、チベット仏教は中国共産党政権から激しい弾圧を受けている。同じように、登記上、ファーウェイが民間企業としても実質的には共産党政権の情報活動を支援している国有企業の疑いがあるわけだ。中国共産政権下では、憲法や法律で何が明記されているかが重要ではなく、実際、何が行われているかが問題となるからだ。

 「大紀元」は一つの実例を紹介している。広東省最高人法院(地裁)は2003年、ファーウェイ社の2人の社員が株式の買い取りを会社に要求したが、拒否された。そこで訴訟を起こしたが、「ファーウェイの発起人だけが工商管理部門で登記しているが、同社の社員は株主として登録していない。ファーウェイの労働組合が保有する株式は『ファーウェイとその社員の契約』であり、ファーウェイ社員は同社の株主ではない」と結論を下している。ファーウェイが国有企業であることを裏付ける判決だ。

 次は、技術的にファーウェイ製機材は中国共産党政権に情報を提供しているかだ。「大紀元」によると、米IT大手のマイクロソフトは今年1月、ファーウェイが製造するノートパソコンに、不正アクセスのための侵入口であるバックドアが設置されているのを見つけた。マイクロソフトは3月25日に公開したセキュリティ情報で、ファーウェイ製ノートパソコン、MateBookに搭載されているPCManagerソフトウェアを使うと、権限のないユーザーでも、スーパーユーザー権限でプロセスを作成できると警告している。ファーウェイが開発したデバイス管理ドライバーが原因だ。マクロソフトの報告を受け、ファーウェイ社は1月19日、ソフトウェアの修正プログラムを発表している。

 以上をまとめる。

 ファーウェイは実質的には国有企業の可能性がある一方、技術的にもファーウェイ社の機材に過去、不法なアクセスが可能なバックドアが設置されていたことが発見されている。ファーウェイ製の機材に慎重にならざるを得ない理由だ。

中国版「猿の惑星」と禁じられた実験

 海外中国メディア「大紀元」日本語版(4月12日)は、「科学分野の中国最高学府である中国科学院昆明動物学研究所は最近、米ノースカロライナ大学など複数の研究チームとともに、ヒトの脳の発達に重要な役割を持つマイクロセファリン(MCPH)遺伝子の複製を導入したアカゲザル11頭を誕生させた」と報じた。

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▲映画「猿の惑星」のポスター

 実験の結果、MCPH1遺伝子の複製を移植された猿は、ヒトの脳と同様に脳の発達速度が緩やかになり、MCPH1遺伝子を組み込まれた猿は野生の猿と比較すると、短期記憶能力が向上したという。中国科学院は、「ヒト起源およびヒト特異的脳疾患(アルツハイマー病など)を研究する上で重要な価値を持っている」と、実験の意義を強調している。

 このニュースを読んで、当方は直ぐに映画「猿の惑星」を思い出した。中国共産党政権は猿に人間のMCPH1を埋めこみ、人間のように進化した大量の猿を生産し、「猿の軍隊」を創設する計画ではないか、と考えた。

 名優チャールトン・ヘストンが主演を演じる映画「猿の惑星」(1968年公開)はオリジナルのピエール・プールのSF小説「猿の惑星」とは少し違う。4人の宇宙飛行士は人間より知性の発達した猿が人間を奴隷としている惑星に不時着する。その「猿の惑星」は実は人間が核戦争を起こし、荒廃した地球だったというストーリーだ。いずれにしても、登場する猿は人間並みか、それ以上の知性を有する存在として描かれている。

 中国科学院の学者は多分、米国映画「猿の惑星」シリーズのファンだろう。中国共産党政権は将来の少子化を見越し、中国人民軍に代わって猿の軍隊を創設し、世界の紛争地に派遣するという野望に燃え、学者たちに人間の遺伝子を猿に移植するように奨励しているのではないか。

 共産主義政権下では科学者はフリーハンドで自身が考えている計画を制限されることなく実験できる。遺伝子操作の赤ちゃんを誕生させるなど、欧米科学者たちにはできない実験を中国の科学者たちは意欲的に実施している。人間遺伝子を猿に組み入れる実験はその代表的な例だろう。それに対し、実験の信頼性ばかりか、倫理道徳の観点から中国科学院の猿の実験に対しては当然、批判の声が出ている。

 中国科学院と連携したノースカロライナ大学のコンピューター科学の専門家マーティン・ステイナー氏は、「この研究は、米国では実施不可能だ。研究そのものの問題と、動物への処遇について疑問がある」と正直に語っている。同氏は、「科学実験をする際、私たちはそこから何を学びたいのか、そしてそれが社会の助けになるよう行動するが、この実験はそうではない」と実験の目的が別のところにあることを示唆している(大紀元)。

 それに対し、中国科学院の今回の実験の発起人・宿兵氏は「遺伝子移植の猿をもっと多く造り出し、別のヒト特有の遺伝子『SRGAP2C』を移植した猿を繁殖させる」と述べ、人間の遺伝子を猿に移植する実験を拡大していく意向を明らかにしている。

 例えば、再生医療分野でも厳しい倫理規定があり、一つ一つの安全性が確認されない限り、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を人体に移植できない。しかし、中国ではそのようなハードルがない、というか、無視されるケースは多い。

 国際社会は中国の科学実験に対して厳しい監視の目を注ぐ必要性がある。共産主義思想の恐ろしさは人間を“単なる物質の塊”に過ぎないと考える点にある。法輪功メンバーから生きたまま臓器を移植するという考えられないことが中国では白昼堂々と実施されているのだ。あれもこれも、共産主義思想の世界観、人間観にある。繰り返すが、中国共産党政権は、科学・医療分野で欧米諸国を乗り越えて世界を支配したいという野心から、科学者が禁じられた実験を繰り返すことを許しているのだ。

 当方はこのコラム欄で「人間の『魂』の重さは2・5グラム」(2019年4月2日参考)という記事を書いたが、その中で「21世紀の最大の科学的課題は魂の所在地を明らかにすることだ」と述べた。中国科学院は欧米科学者と共に、人間をして、人間としている「魂」の所在を発見するために努力すべきだ。「猿の軍隊」を創造する以上に、価値のある試みであることは間違いない。

 ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」の主人公、イワンが、「神がいなければ全てが許される」と呟く個所がある。中国科学院の今回の実験はまさにそのような思いを深める。誰も禁じられて実験を停止すべきだとはいわない。実験でどれだけのメリットが生まれ、役に立つかだけが問われるのだ。ひょっとしたら、中国共産党政権の社会だけではないかもしれない。ワイルドな資本主義社会でも程度の差こそあれそのような無謀な実験や試みが秘かに行われているのではないか。中国版「猿の惑星」を想起させる今回の実験はその意味で人類全てに対する警告と受け取るべきだろう。

「宗教の中国化推進5カ年計画」とは

 トランプ米大統領は目下、2020年の次期大統領選のために様々な戦略を考え、そのために腐心している。一方、第2次冷戦時代のもう一方の雄、中国共産党の習近平国家主席も同じように様々な戦略を考えている。9000億ドルを投入した新マルコポーロ構想「一帯一路」を旗印に、「中国製品2025」で先端技術ばかりか宇宙開発でも覇権を握り、同国の通信関連大手ファーウェイ(華為技術)で5G(第5世代移動通信システム)の市場を制覇する、といった中長期の計画を考えている。トランプ氏との違いは習近平主席の目が来年ではなく、数十年先まで注がれていることだ。もう少し厳密にいえば、ポスト・トランプ時代も計算に入れていることだ。

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▲中国のキリスト信者たち(バチカン・ニュースのHPから)

 共産主義の計画経済は「5カ年計画」を中心に、予算や投資を国家が事前に計画して進めていく。興味深い点は、中国共産党政権は国民経済だけではなく、宗教分野でも「5カ年計画」を立て、推進させているのだ。正式には「宗教の中国化推進5カ年構想」(2018年から2022年)だ。誤解しないでほしい。「宗教の促進」5カ年計画ではなく、「宗教の中国化」推進5カ年計画だ。

 共産主義イデオロギーでは「宗教はアヘン」であり、無神論主義を国是とする。その「宗教」を中国共産党政権が撲滅するというのならば理解できるが、「宗教」の中国化を推進させるというのだ。「宗教」を完全には否定せず、その中国化を進める、という意味に受け取れるわけだ。

 中国共産党政権は「宗教」を撲滅することはできないことを知っている。共産党員の党員数が急減する一方、なんらかの宗教を有する国民の数はもはや共産党員数の数倍といわれる。すなわち、一党独裁を主張する中国共産党員は中国社会では文字通り少数派グループに過ぎないのだ。中国社会の多数派は宗教人だ。中国共産党は、多数派の宗教人と正面衝突をすれば一時的に勝利したとしても最終的には敗北する危険性があると歴史を通じて学んでいる(「中国共産党員の85%が宗教を信仰」2017年8月6日参考)。

 ソ連・東欧の共産党政権は1980年から90年にかけ、次々と崩壊し、消滅していったが、その改革の原動力の一つは宗教運動だった。ポーランドでもヨハネ・パウロ2世の出現で共産党政権は守勢に追いやれ、スロバキアでは「信教の自由」を求める民主運動が共産党政権を崩壊に導いたことは周知の事実だ(大国・ソ連の復興を夢見るロシアのプーチン大統領はロシア正教と連携して国民の掌握に乗り出している)。

 中国でも気功集団の法輪功運動の拡大に直面した江沢民(当時)国家主席は1999年6月、法輪功メンバーの取り締まりを目的とした通称「610公室」という組織を設立し、弾圧していったが、法輪功は消滅するどころか、さらに拡大している(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

 それでは、「宗教の中国化」とは具体的に何か。中国の憲法では「信教の自由」は明記されているが、キリスト教会は壊され、礼拝参加者は拘束されている。一方、中国共産党の官製聖職者組織「愛国協会」に所属しない聖職者は聖職活動ができないだけではなく、生命の危険すらある。

 海外中国メディア「大紀元」日本語版(3月18日)によると、中国で唯一活動が許されているプロテスタント教会は三自愛国運動だが、その徐暁紅委員長は今月11日、北京で開かれていた中国人民政治協商会議で「教会は西側ではなく中国(共産党)の元で動かなければならない」「社会の安定に影響を及ぼし、政権転覆を企てる反中国勢力の行動は失敗するだろう」と述べている。

 中国共産党政権は昨年、ローマ・カトリック教会総本山バチカンと司教任命権で合意したが、その内容は愛国協会が任命した司教をバチカンが承認するというものだった。だから、香港カトリック教会の最高指導者を2009年に離任した陳日君枢機卿は「バチカンは中国共産党に騙された」と警告を発したわけだ。中国のキリスト信者を保護するという名目でバチカン側が中国共産党政権に大きく譲歩した合意といえる。

 一方、宗教に脅威を感じる中国共産党政権は現在、新疆ウイグル自治区で激しい弾圧と同化政策を行っている。「宗教の中国化推進5カ年計画」は目下、新疆ウイグル自治区で最も具体的に実行されているのだ。中国共産党政権はウイグル自治区の宗教(イスラム教)を壊滅できないとしても、中国化はできると信じているわけだ。

 習近平主席は、「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告を発する一方、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなけれならない。外部からの影響を退けなければならない」と強調したことがある。

 中国は国内の多数派の宗教国民に対し、中国への愛国主義(中国ファースト)を義務付けることで、「宗教の中国化推進5カ年計画」を進める一方、自由主義国や国内の資本家、知識人、宗教指導者を味方の陣営に引き込み、同じ戦線に立たせる「統一戦線工作」を推進させているわけだ(「『中国共産党』と『中国』は全く別だ」2018年9月9日参考)。

 中国共産党が党是としている共産主義思想はどこかキリスト教に似ている。共産主義は共産党を救世主、労働者を選民とみなしているからだ。その観点からいうと「宗教の中国化推進5カ年計画」とは、中国共産党という偽宗教が他の宗派に対して宗教戦争を仕掛けたもの、と受け取れるわけだ。

中国で通信速度「2G」に降下

 通信情報世界は5G(第5世代移動通信システム)時代を迎えている。現在の4Gよりも超高速、超大容量、超大量接続、超低遅延が実現する。本格的なIoT(モノのインターネット)の時代到来で、通信関連企業は目下、その主導権争いを展開している。その中でも中国の通信関連大手ファーウェイ(華為技術)は2020年に実用化を計画し、欧米企業に比べ一歩先行している。

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▲ファーウェイのフラグシップショップの予定地(2019年2月9日、ウィ―ンで撮影)

 米国政府はファーウェイが中国のスパイ活動を支援しているとして、米国市場から実質的に追放してきた。それを受け、カナダ、オーストラリア、英国など欧米諸国でもファーウェイを政府調達のリストから排除する動きが急速に拡大してきている。米国はファーウェイの政府入札排除に消極的なドイツに対して、「わが国はドイツとの情報共有を制限するかもしれない」と警告を発したばかりだ。日本は基本的には米国の決定に従う方針だ。

 ところで、中国の北京で第13期全国人民代表大会(国会に相当)が5日、開幕したが、携帯電話の通信速度が4G(第4世代)から2G(第2世代)に落ちたという苦情が携帯電話使用者から苦情が出ているというのだ。海外中国メディア「大紀元」日本語版(3月7日)によると、携帯電話のユーザーから「4Gの通信速度の使用料を払っているが、2Gの速度に落ちている」とか「スマホの画面の4Gマークがなぜ2Gに変わったのか」といった苦情や不満が出ているという。

 このニュースを読んで笑ってしまった。5Gを目指して急上昇しているロケットが地上管制塔から指令を受けて急にスピードを落としている状況が目に浮かんできたからだ。普段は5G主導権争いで欧米通信大手と激しい競争を展開している中国企業だが、共産党政権の命令で通信速度を2Gに落とす処置をしたか、中国当局が独自の妨害対策を取ったのだろう。いずれにしても、ファーウェイなど大手通信企業が中国のスパイ活動を支援しているという米国側の主張を裏付けることにもなっている。中国共産党政権が好ましくないと判断した情報を検閲する一方、ファーウェイなど通信大手企業がプロパガンダの工作ツールとなっている疑いが一層現実味を帯びてきた。

 今回の対応は、中国共産党政権が全人大の状況が外部に流れたり、フェイク・ニュースがソーシャルネットワークで流れることを防止するという狙いがあったのだろう。中国ウォッチャーによると、全人代に参加する関係者は入場前にスマホ、タブレット、パソコンなど全ての通信端末を没収されたという。

 中国共産党政権は「中国製品2025」戦略(Made in China 2025)を公表し、習近平国家主席の野望に基づき、ITやロボット、宇宙開発などの先端技術で世界を制覇する目標を掲げている。例えば、次世代通信規格「5G」は25年には中国市場で80%、世界市場で40%の市場占有率を実現するといった目標だ。

 その一方、北京で開催中の全人大の警備強化のためにスマホの通信速度を4Gから2Gに落とすといった欧米では考えられない通信統制を実施しているわけだ。中国では共産党政権によって通信活動が恣意的に統制されていることを改めて物語っている。

 大紀元日本語版3月9日によると、中国データベースから個人情報3億件以上が漏えいされているという。その情報は管理会社を通じて警察当局に流れている可能性があるというのだ。すなわち、ネット・ユーザーの個人情報はすべて警察当局に流れている可能性が高いわけだ。

 欧州連合(EU)加盟国では、ファーウェイへの対応で分かれている。ハンガリーなど東欧諸国では中国企業との連携を積極的に進める加盟国が多い一方、米国の反ファーウェイ路線を支持する国とに分かれている。

 今月22日に習近平主席がローマを訪問する。その前日にはブリュッセルでEU首脳会談が開催され、中国のプロジェクトについて話し合われる予定だ。そしてEU・中国サミット会談は4月9日に開催される。それまでにEUは中国のプロジェクト、新しいシルクロード「一帯一路」やファーウェイに対するEU内のコンセンサスを構築しなければならないわけだ。

中国に急傾斜するイタリアの冒険

 イタリアの国民経済はリセッション(景気後退)に陥ってきた。同国統計局(ISTAT)が1月31日公表した昨年第4四半期の国内総生産(GDP)は前期比で0・2%減とマイナス成長を記録した。予算をめぐる欧州連合(EU)との対立の影響もあってイタリア国債の利回りは上昇し、財政懸念が国民経済の発展のブレーキとなっていると受け取られている。イタリア国民経済は経済統計を見る限りリセッションだ。先月9日、ローマで約20万人の反政府デモが行われたばかりだ。

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▲昨年6月1日からイタリアのかじ取りをする法学者のジュゼッペ・コンテ首相(イタリア首相府公式サイトから)

 中道右派「同盟」とポピュリズムで反EU路線の政党「5つ星運動」から成るコンテ連立政権はここにきて中国に接近してきた。具体的には、習近平国家主席が提唱した新しいシルクロード構想「一帯一路」への参加だ。東南アジア、西アジア、中東、欧州、アフリカを鉄道、道路、湾岸を建設し、陸路と海路で繋ぐ巨大なプロジェクトで9000億ドルの資金が投入されるという。欧州では、ハンガリーやギリシャは既に同プロジェクトに参加しているが、イタリアでもトリエステ市(同国北東部の湾岸都市)は中国企業の欧州供給拠点となることを期待している。例えば、ギリシャ政府は2016年4月、同国最大の湾岸都市ピレウスのコンテナ権益を中国の国営海運会社コスコ(中国遠洋運輸公司)に売却するなど、中国との経済関係を深めている。

 「5つ星運動」の党首、ディマイオ副首相兼経済発展・労働相はここ数カ月の間で2回、北京を訪問し、「一帯一路」への参加に積極的な姿勢を表明し、「イタリアは欧州では最初の中国プロジェクトのパートナーとなる」と主張するなど、雇用拡大、投資、安価なクレジットを中国から獲得して、イタリア経済を回復させたい意向を表明している(独週刊誌シュピーゲル電子版3月9日)。

 イタリア現政権の中国傾斜に対して米国やEUのブリュッセルから警告の声が出ている。駐ローマのルイス・アイゼンベルク(Lewis Eisenberg)米大使はジュゼッペ・コンテ首相と会合し、「イタリアは中国と一帯一路プロジェクトで署名すべきではない。イタリアは国際社会で名声を失う危険性がある」と警告を発している。コンテ政権内でも中国傾斜には賛否両論があることは事実だ。

 駐中国の欧州諸国の大使たちは昨年、中国のプロジェクト参加には警戒するようにという趣旨の共同声明を出した。その一方、ブルガリア、クロアチア、チェコ、スロバキア、ギリシャ、マルタ、ポルトガル、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、そしてバルト3国の計13カ国は中国との協定に署名済み、ないしは参加意思を表明済みだ。


 しかし、そこにイタリアが入った場合、インパクトは上記の13カ国より数段大きい。経済危機に陥っているとはいえ、イタリアはEU内で4番目の経済国であり、世界で8番目の経済国だ。そのイタリアが中国のプロジェクトに参加したならば、経済的ばかりか、政治的衝撃は無視できない。中国としても、EUの主要国イタリアを陥落させたいという思いが強いだろう。

 ところで、中国のプロジェクトに参加し、北京から投資を受けてきた国の中には、債務返済不能に陥っている国が多い。スリランカ、モンゴル、パキスタンで既にみられる。債務返済不能となった場合、中国側の言いなりになってしまう危険性が出てくる。イタリアでも米中貿易戦争が終了し、世界経済が改善される時まで中国との間でいかなる経済文書にも署名しない方がいいといった声が出ている。

 今月22日に習近平国家主席がローマを訪問する。その前日にはブリュッセルでEU首脳会談が開催され、中国のプロジェクトについて話し合われる予定だ。そしてEU・中国サミット会談は4月9日に開催される。それまでにEUは中国のプロジェクトに対するEU加盟国でのコンセンサスを構築しなければならないわけだ。

 イタリアは2000年1月、当時の先進主要国7カ国(G7)の中で北朝鮮と最初に外交関係を樹立した国だった。そのイタリアは19年後の今日、中国の「一帯一路」プロジェクトに加わるG7の最初の国となろうとしている。

中国の監視社会と「社会信用スコア」

 海外中国メディア「大紀元」日本語版(3月6日)に非常に興味深い記事が掲載されていた。「中国昨年2000万人超、飛行機など利用禁止、社会信用スコアで」という見出しの記事だ。記事は、ペンス米副大統領が昨年10月、中国の「社会信用スコア」システムについて、「ジョージ・オーウェルの描いた超監視社会のようで、人々の生活を含むあらゆる面をコントロールしようとしている」と非難した内容だ。同記事は独メディア・ドイチェベレ中国語電子版今月4日で、「中国社会信用情報センターの記録では、中国当局は2018年、違法案件の当事者1750万人に対して国内外への旅行を制限し、航空券の購入を禁止した。また、他の550万人に対して高速鉄道や列車の利用を禁じた」というものだ。

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▲ジョージ・オーウェルの小説「1984年」(ウィキぺディアから)

 大紀元によれば、中国共産党政権は2014年、「社会信用システム構築の計画概要(2014〜2020年)」を発表した。それによれば、国民の個人情報をデータベース化し、国民の信用ランクを作成、中国共産党政権を批判した言動の有無、反体制デモの参加有無、違法行為の有無などをスコア化し、一定のスコアが溜まると「危険分子」「反体制分子」としてブラックリストに計上し、リストに掲載された国民は「社会信用スコア」の低い二等国民とみなされ、社会的優遇や保護を失うことになる、というわけだ。

 この記事を読んで、ペンス副大統領ではないが、共産党政権下で監視社会の出現を予言した英国の作家オーウェルの小説「1984年」を思い出した。中国では顔認証システムが搭載された監視カメラが既に機能しているから、「社会信用スコア」の低い危険人物がどこにいてもその所在は直ぐに判明する。

 ところで、中国共産党政権を擁護する考えはさらさらないが、ペンス副大統領は中国共産党政権下の中国社会を超監視社会と「超」という言葉を付けているように、欧米社会も程度の差こそあれ、監視社会があることを間接的に認めているともいえる。換言すれば、欧米型「社会信用スコア」システムだ。

 欧米社会では個人情報の保護が叫ばれ、個人情報の悪用は罰せられるが、その一方、情報が他の情報とリンクされ、欧米型「社会信用スコア」システムが機能している。例えば、国連記者の中には開発途上国出身のジャーナリストが結構多い。彼らはマスターカードやVISAカードといったクレジットカードを作れないと聞いたことがある。旅行する場合、通常、支払いはクレジットカード払いが多いが、彼らはクレジットカードがないから現金払いとなる。そうなれば、中国の「社会信用スコア」ではないが、信用度が低い顧客としてクレジット所有者が享受する特権は期待できず、航空チケットは高くなる。

 銀行側の説明では、「定期的に月1500ユーロ以上の所得がない場合、クレジットカードを申請できない」というのだ。銀行側は顧客の所得水準を知っているから、判断に揺れがない。「残念ですが、あなたにはクレジットカードを提供できません」とやんわりと断る。一方、「アメリカン・エクスプレス」のゴールド・カードを所有している顧客はホテルの予約や航空チケット購入まで最大限のサービスを受けることができる。欧米社会の「社会信用スコア」は豊かな者がさらに豊かになり、貧しい者が一層貧しくなる「経済信用スコア」システムとして機能しているわけだ。

 もちろん、中国の「社会信用スコア」と欧米の「経済信用スコア」は異なる。後者は社会的ステイタスの役割も果たす一方、前者は中国共産党政権に対する政治的指向や言動がスコアとなるから、監視体制の手段となるわけだ。

 現代はビックデータの時代だ。個人情報から国家情報まで膨大な情報が行き来する時代だ。そのビックデータを迅速に解析することで、新しい巨視的な観点が生まれてくる。同時に、中国の「社会信用スコア」システムといった国民監視体制が生まれてくる一方、欧米社会では「ワイルド資本主義体制」を支える「経済信用スコア」が出現する、といった具合だ。
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