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私事で恐縮だが、大学時代は母校の部活動を取材し、それを新聞として発行するという活動をしていた。(俗に言う「新聞部」である)
そこでラグビー等の様々なスポーツに出会い、次第にスポーツ中毒を発症して現在に至っている。

大学スポーツと言うのはピンキリであり、国立競技場等の1流スポーツ施設に「取材」というお題目をぶら下げてずけずけと乗りこむ事ができる一方、マイナーだったり弱小の部活動を受け持つと、この世の果てとも思えるスタジアムやグラウンドに足を運ぶ羽目になる。
今回の取材で伺った三鷹大沢グラウンドは、多分後者に属するスタジアムだろう。
最寄りのバス停を降りた時に感じた「スポーツの匂いがしない…」という途方もない孤独感は、大学時代に味わった事もあるような気がして懐かしかった。
(大沢グラウンド自体は非常に整理されており、質の高いところだった事は付け加えておく。あと、トイレが凄く綺麗!)

話を戻す。
今日ここに記そうと思うのが、関東社会人ラグビー1部リーグのライオン対警視庁の試合レポートである。
関東社会人1部リーグはTLから数えると「4部」に相当するリーグであり、8チームが所属。
上位2チームがトップイースト2部(いわゆる3部)との入替戦を戦い、トップリーグを目指している…というカテゴリーだ。

何で4部?と疑問に思う方も多いだろう。
少なくとも何らかの結びつきを感じなければ、わざわざ足を運ぶ必要性がない試合である。
結びつきの部分…それは「ライオンの背番号10の現状が気になる」という一点に集約されていく。
本稿は彼の様子をこっそりレポートしつつ、初めて見た4部リーグの感想も記していこうと思う。


松下隆三の衝撃

彼の名前を見た事のあるラグビーファンはどれだけいるだろうか?
「筑波大の松下真七郎の兄です」と紹介すれば、もう少し解りやすいかもしれない。

松下選手は中央大学ラグビー部に07年から10年まで所属し、SOとして4年間チームの主力として君臨し続けた。
私は松下の1つ年上なので、氏が出場したゲームは(取材という名目中心に)殆ど見ている。
それだけに、思い入れは強いのだ。

プレースタイルを一言で表すならば「ロングキック中心のゲームメイク」。
とにかく長く飛ぶ。そして、ピンポイントでワンタッチして外に出る。
ラグビーを見始めた頃、SOの印象は薄かった。
走って大きくゲインが獲れるエイトやウイングの方が見ていて楽しかったし、印象的だったからだ。

だからこそ、立体的に空間を把握し、誰もいないスペースにキックを飛ばして陣地を稼ぐ松下のプレースタイルは「見た事がない」ものであり、衝撃的だった。
未だに彼のプレースタイルが僕にとっての「理想のSO像」であり、一つの基準として君臨し続けている。

私は松下選手がトップリーグのチームから誘われていた…と人づてで聞いている。
しかし、本人の希望で、先輩のいるライオンに進路を決めたとニュース記事には書いてあった。
実に勿体ない、と当時は思った。

果たして、私が憧れ続けた司令塔の今はどうなっているのか?
期待と不安が交錯しつつ、雨が降る小さなグラウンドでキックオフの笛は鳴った。


頭一つ抜けている

序盤に2トライを上げライオンがペースを掴むも、雨が強くなり始めると「これが4部か…」と思わせるようなハンドリングエラーとノータッチ(両チームトータルで10回はあった?)で、こう着状態が続く。
松下もなかなか輝きを見せる事ができなかった。

しかし、雨が止み、太陽の日差しが入り始めるとライオンのペース。
松下とFBの藤巻が好キックを連発し、警視庁の圧力を回避しつつゲームを有利に運ぶ。

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圧巻は前半30分過ぎの、ライオン3本目のトライシーンである。
モールで前進し、5mライン左隅付近からBKに展開。
松下にボールが渡ると、チョイスはグラバーキックによるパスだった。
これをウイングの藤田がしっかりキャッチし、ダメ押しのトライ。
センスの良さ、判断力の高さは大学時代から変わらない…いや、進歩している。
このプレーを見て、少々安心した。
そして、今日ピッチにいる選手、もしかしたら4部リーグというカテゴリーを通しても、彼の実力は頭一つ抜けている。
若干の身びいきはあると思うが、ここは強調しておこうと思う。

試合は33-12で難なく警視庁を下し、幸先の良いスタートを切った。
練習環境もあるので、試合終了間際は大分疲れている様に見えたが、松下選手のパフォーマンスは満足出来るものだった。
1972年創部と、今年で40年目のチームだそうだが、松下と共に新しい歴史を築いて欲しい…と願いつつグラウンドを後にした。


小さな結びつきが紡ぐ空間

最後にグラウンドの様子をメモして本稿を締めようと思う。

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試合後は綺麗な青空!

警視庁側は把握していないのだが、ライオン側の観客数は20名ほどだった。
4部と言われると、修行僧みたいな人が集い、1人静かに見ている…のかと思いきや、選手の友人(20代〜30代前半)らしきグループを中心に、比較的若い方が多かった。
もはや私が一番修行僧に近いではないか…

何名かは晴れた時間を見計らって前半の途中から観戦していたが、大半の観客は雨の中も傘をさして(傘を指すな!という苦言は、ここではご了承願いたい…)、帰らずに穏やかな表情で応援していた。
気持ちが一番切れそうだったのは、もしかしたら私かもしれない…

普段のラグビー観戦だと「年寄りが多い!」「汚いヤジが…」等々の嘆きを良く見かける。
代表戦やトップリーグなど、1流の試合においても、この様な声が聞こえる。

ところが、4部リーグの方が「身近にいる選手の友達」という接点で見に来た若い同僚が中心であり、応援も穏やかで思い思いの歓声が飛ぶ。
これが4部だ!と決めつけることは出来ないが、色々と余計なモノが排除されている分、純粋な空間が広がっているので、何だか新鮮かつ不思議だった。

松下隆三という「小さな接点」を通して出会った、小さなラグビーの試合。
周りの人もそれぞれの接点を通して、このグラウンドにやって来たのだろう。
そんな接点をより繋げていければ、大きなうねりも出来上がるのではないか?

…密かな期待を夢想しつつ、このブログを通して新たな接点を紡げることができるように、楽しいラグビーの発掘に努めていきたいと思う。



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