2009年03月27日

都高情研研究大会参加

今日は東京都高等学校情報教育研究会(都高情研)の研究大会の日である。

基調講演は聖心女子大学教授永野和男先生。
講演タイトルは『情報教育のグランドデザインから見た高等学校「情報科」』。

今の指導要領作成時の話から、今回の新指導要領の解説まで、オフレコの発言も含めていろいろな話を伺った。

情報科教員仲間の発表は5本。
ポスターセッションが3本。

田崎先生の「トリック映像制作を通してのメディアを学習する授業実践報告」が特によかったと思う。
ポスターセッション・神藤先生の『要約図解の取り組み』も参考となった。

#時間も迫ってきたので、取りあえずここで終わりにしておこう。

以下は、2009-03-29に追記したもの。

==永野先生の基調講演==

まずは『情報ネットワーク時代の人間の能力観』として、永野先生の講演の中でよく話される『ギガの話』。

ギガの時代
ひとりが一生に記憶する情報がパソコンに入ってしまう。
全ての情報を持ち歩ける時代が来た。
覚えていることは余り意味がない時代になった。
記憶していることを試しても意味がない。
知っているだけでは、役に立たない。

という趣旨の話題である。

その計算については「知識社会におけるディジタル情報リテラシー」(SSS2003の基調講演)に書かれている。

私が初めてこの話を聴いたのは永野先生が静岡大学の教授だったときのことなので、この講演以前のことだと思う。
記憶は定かではないが、6.4GBのハードディスクが一般的になってきた頃だったと思う。

そして、次に、『身につけるべき五大能力(新しい能力)』の話があった。
社会が求めている人材の能力、『調査能力』、『コミニュケーション能力』、『企画力』、『対応力』、『説明力』の5つの力のことが紹介されていた。

こういう力をつける現行の科目はこれまでなかったが、それを担当する科目を作る必要性が出てきて前回の改訂で「情報科」ができた。

いい方を換えれば、情報科の目指す内容のひとつにもなっている、課題を見つけ、その課題を解決するために情報を収集し、情報を分析加工し、自分の言葉で表現(発信・発表)し、相手に理解させるというということになる。
このことは、実は情報科だけではなく、どの教科に対していえる本質的なことだった。
その意味で私は情報科とは極めて重要な部分をになっている教科だと思ってきた。

今回の改訂では、この『情報活用能力』が各科目の目標として随所に入っている。
国語では約50%が含まれているという。
そして、

要はTHINK!(自分で考えること)が大切

とまとめられていた。

これ(情報科の目標が各科の目標に入ってきたこと)はこれで、考え方が発展してきた感じがしてよいことだと思う。

−−−−

この後、『情報教育のグランドデザイン(2002年頃)』、『情報科目の位置づけ』として、前回の改訂と今回改訂された学習指導要領の話があった。
オフレコ発言などもあったのでここには書かない。

−−−−

以下は今回の学習指導要領改訂にあたって、私の思っていること。
同じ趣旨のことは以下の記事に書いたことがある。

  学習指導要領改訂に関する検討素案(2007-09-18)
  新しい『学習指導要領』の公示(2009-03-10)

今回の改訂で非常に残念だったのは、中学校に『情報科』という科目が出来なかったこと。
『技術・家庭科』は昭和33年告示の中学校学習指導要領で新設され、昭和37年から始まった教科ということで既に50年が経っている。

**参考**
全日本中学校技術・家庭科研究会
  『新設教科の誕生』というページに技術・家庭科発足時の紹介あり

Wikipedia 『技術・家庭』

教科としては単一教科扱いになっているが、免許としては『技術科』と『家庭科』に分かれている変わった状態にある教科だ。
そこに『情報とコンピュータ』として『情報科』関係の内容が含まれている。
従来、『技術科』で取り扱ってきた内容には『栽培』、『金工』、『木工』など、こだわって考えれば別の内容かも知れないが、ここでは『技術科』と一括りにしておくことにする。
しかし、『家庭科』とは別の教科であることは紛れもないことだし、ましてや、『情報科』の内容とも一線を画すだろう。
50年もの歴史のある教科なのに、その問題点を解決するために技術科と家庭科が別教科にならないのは何故なのだろうかと思う。
高等学校(普通科)に『家庭科』はあるが、『技術科』はない。
『技術科』に該当する科目をより深く勉強するためには、『工業科』に進学すればよいということなってしまうからないのだろう。
こだわって考えれば、この状態も不思議な状態だが、ここでは『情報科』関係に話を留めたい。

私は情報科教員として、『情報科』の内容が、『技術・家庭科(技術分野)』の中に入っていることが大きな問題だと思っている。
今回の中学校の指導要領改訂で、中学校での新しい教科『情報科』を望んでいた。
一個人の情報科教員の望みではあるが、別に私が考えるまでのこともなく極めて自然な流れであると思う。
中高大(中学校・高等学校・大学(専門学校・短大含む))という流れの中、中学校から始まる5教科9科目のことを考えると、ほぼ全ての科目が中高大の流れにスマートに収まり、中高で興味を持った教科・科目について自分の将来を託す科目として大学等で学ぶようになるのだろう。
しかし、中学校の『技術・家庭科』(『情報科』部分の『情報とコンピュータ』含む)と高校の『家庭科』、『情報科』、工業高校の専門科目としての『工業科』という関係、その後の大学等との関係がスムーズではない。
中学校に『技術・家庭科』があり、高等学校には『家庭科』はあるが、『技術科』はないこと、現行の指導要領で高等学校には『情報科』ができたものの中学校には『情報科』がないこと、『技術・家庭科』の『技術』分野が『情報とコンピュータ』という名目でそれを担っていることなど混沌としている感じがする。
『技術・家庭科』の『技術科』と『家庭科』の問題は、昭和37年に実施されてから5年(から10年)くらいやってみれば恐らく問題点は浮き彫りになったはすで、『情報科』ができた平成15年(2003年)から6年経った平成21年(2009年)現在、いや、もっと前からこの状態はよい状態ではないということを思っていてた情報科教員は多いはずだ。

中学校で『情報科』新設ということは、今回の改訂で変わらなかったので、「あぁ、10年先になってしまったな」と悲観した人間である。

高等学校に関しては、「情報科の科目を必修科目と選択科目に分けないのだろうか」ということである。
既に科目名も決まったことなので、新学習指導要領の科目名でいえば、『社会と情報』にあたるような科目を必修科目として、『情報の科学』のように科目を選択科目にしなかったのかという問題である。
全国の同一学年の高校生が同じ必修科目である『情報の科目』を履修することは制度的には必要なことだと私は思う。

後半は今回の中・高の指導要領改訂に関して私が思っていることを書いたもので、研究大会の報告としてはまとまりはないが、今回の研究大会に参加して思ったことなどを書いてみた。


will_pwr at 23:49│Comments(6)TrackBack(4)情報教育 

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この記事へのコメント

1. Posted by 情報数学教師K   2009年03月28日 22:33
田崎先生の発表、かなりツボに入りました。あの手の発表って、好きだし、参考になりました。
2. Posted by 津久井 大   2009年03月29日 10:44
情報数学教師Kさん(K先生)、こんにちは。

高価でたくさんは揃えられない『デジタルビデオカメラ』ではなく、ケイタイの動画撮影機能だけで『トリック映像』をつくり、その後で「映像に映し出されたこと、見えたことだけが、真実ではない」というところが素晴らしいと、私も思いました。
3. Posted by 映像制作マニア   2009年04月02日 19:16
映像に興味があるので、そういった機会を持つことができる生徒さんが羨ましいです!
4. Posted by 津久井 大   2009年04月03日 00:07
映像制作マニアさん、こんばんは。

私のところでもいろいろなことを授業で行っていますが、映像制作に関しては残念ながら、まだ取り扱っていません。

ハードディスクの容量の問題もあり、マシンスペックのこともあり、なかなか難しいです。

今回の田崎先生の「トリック映像制作を通してのメディアを学習する授業実践報告」は、その意味でも特によかったと思います。
5. Posted by 田崎丈晴   2009年04月05日 08:06
こんにちは。4月から千代田区立九段中等教育学校へ移りました。

TBをお返ししようとアクセスさせていただきましたが、お褒めのコメントをたくさん頂いて、びっくりです。これからも勉強がんばります。

必履修の授業ではちょっとしたものを用意するだけでも結構コストがかかりますので、安価に実践できる実習素材はとても貴重です。マルコ・テンペスト氏には感謝です。
6. Posted by 津久井 大   2009年04月05日 23:38
発表の時には、先生から当てられそうだということで、講演を聞いていた我々はちょっと引き気味で、「当てられないように」と願う生徒の気持ちを味わいました。

しかし、田崎先生のこの試みは素敵だと思いました。

それでは今年も宜しくお願いします。

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杉並区にある文化女子大学附属杉並中学校・高等学校で情報科教員をしている津久井 大(まさる)と申します。
元々は理科教員で、暫く理科と情報科の兼任をしていましたが、教育制度に則った情報科ができた2003年に情報科のみを教えることになりました。
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