2009年05月02日

『安らぎはいずこに』

『安らぎはいずこに』はカシミール問題を扱った、貴重な作品ですが、ドキュメンタリー映画のつくりとしても、今回の30本ではきわめて異質です。

この映画には特定の主人公やトピックスはなく、さまざまな人物やエピソードが現れては消えていきます。

途中には、無人の廃墟が延々と映し出されたり、凶暴なまでの沈黙が映画を支配します。

そういった「間」にカシミールの長い長い悲しみが表現されています。

140分近い上映時間は、その重圧と苦渋を観客と共有するために絶対に必要な時間なのです。

饒舌なドキュメンタリーがある一方、 『安らぎはいずこに』は寡黙であることで、深く重いメッセージを称えます。

私には、かなりの映画通とでもいうべき友人も多く、ドキュメンタリー映画にも精通する者もいます。そういった映画の友人たちから、今回何がお薦めかを聞かれると、かならず本作品を一番に掲げています。

この重く寡黙な作風と、140分という時間だからこそ得ることができる、身体に刻まれるような感動があります。

不自由な歴史を生きてきた人々を映画の自由に解放すること・・・映画の側から見ればそのような出来事になるのでしょう。

誰にでも勧めることはできないほどに重いのですが、圧倒的です。


 

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