岩崎雄大の低温日記 

  アラフォー弁護士の五行歌・短歌日記です。    

吾がこころ寂しきときにみちのくの涯まで行かむ旅をしぞ思ふ (金田千鶴)  

天に繋がる
萃点として

一本の
杭とならん (一歳) 

散水の
しぶきの向こうに
小さな虹
夏の子どもが
虹に乗る
(五行歌2021年9月号 酒井映子氏)

子どものはしゃぐ姿が弾かれるように広がっていく。

それまで縛っておく言葉として「夏の子ども」これ以上の言葉はない。

得たいのは共感でなく、広がりだ。







 

ぺんで舎の「大活字本」で「走れメロス」(太宰治)を読んだ。
(大活字本についてはシルバー文庫 : 岩崎雄大の低温日記 (livedoor.jp)

小学生の頃に国語か道徳の教科書で読んでから、約30年ぶりである。
結論から言って、この話の印象は、当時から180度変わってしまった。

その理由は、自分にではなく、専らメロスにあると思いたい。

まず、メロスは、王の理不尽な言いがかり等によって生命の危機を迎えたのではない。出先で悪い王の話を聞いて単純に許せないと思い、その足で自ら城に向かったのである(短剣所持)。

そして案の定すぐに捕まった。無計画にもほどがあると言うべきである。

そして、王との丁々発止のやりとりのなかで、命乞いはしないと言いつつ、三日だけ待ってくれといった話をし始め、「私に情けをかけたいつもりなら」と、処刑までに三日間の猶予を求めた。
しかし、王は、お前に情けをかけようなどとは一言も言っておらず、メロスの方から突然言い出したのであって、その都合のよさには呆れるしかない。

あげく、妹の結婚式を見たいからという極めて自己都合的な理由で、承諾なくセリヌンティウスの命を自分の命乞いの条件に利用した。

にもかかわらず、村から戻る途中では、体力の消耗による精神的な負荷自体は理解できなくはないが、義務を負うものとしての自分に、その原因を忘れて陶酔してしまう。

「正直な男のままで死なせてください」
どの口が言えるのか。

「走れメロス」は、人はどうしようもなく利己的であり、純粋な友情さえも都合よく利用してしまうことを伝える話。これが今の感想である。

メロスがこの話を自らの誇りとして誰彼構わず人に語ったであろうと思うと、ワクチン摂取後の腕の痛みが強まってきた。






誰にもゆずれぬ
私の居場所
陽も昇るし
月も顔出す
東の山を望む窓
(五行歌2021年8月号より 瀬戸五行歌会 森実きん氏)

ゆずれない場所は、人との関係のなかに求めるものではない。
わが国の首相も、そうであってほしい。



給食中
おかわりするか
するまいか
結局いつも
せず終わる
(2021年8月号「五行歌」早川弘康氏) 

オチを客観的な描写に留めている。

五行しかないなかで、その核を読み手に委ねることができる作者は、慎重さと、ここぞという時の大胆さを併せ持つ人なのだろうと思う。

ほどよい乾きと領域論の双方を充たす、お気に入りの歌だ。





忙しさとは快楽の一つ。熱帯夜

先日、江田五月氏が亡くなった。

参議院議長をなされていた時に、一度お会いしたことがある。

司法修習を受ける前に、ふと思い立って岡山の法律事務所の方に手紙を書いたところ、議長公邸にお越しくださいとの返事をいただいた。

緊張してほとんど話すことはできなかったが、想像していたより声が太く、政治のただ中にいる人の迫力のようなものを感じて帰った。

まだ社会に出ておらず、世の中を知らなかった頃の大切な思い出である。

拙ブログの「ランダムノート」は、「出発のためのメモランダム」(毎日新聞社)から取らせていただいた。

ご冥福をお祈りいたします。






ある市長がメダリストの訪問を受けた際に承諾なくメダルを噛んだ行為について、波紋が広がっている。

以下、当該行為が器物損壊罪(刑法261条)にあたるか否か考えてみた。

器物損壊罪における「損壊」とは、物の効用を害する行為と解されている。

本件については、一度噛まれただけであり、メダルとしての効用は失われていないとの見方もあるだろう。

しかし、メダル、とりわけ五輪のメダルは、鑑賞の一つの態様として、メダリスト自身あるいは許可された者が触れることによってその意義を感じさせる、ということも本来の効用に含まれるのではないかと思う。

市長が首にかけてほしいと要望し、選手の方が応じた(応じざるを得なかった)のは、メダルに、一定の体への接触を前提とした効用が予定されているからだ。

そうすると、歯形の付着の有無に関係なく、唾液で新型コロナウィルスに感染し得るなかで、メダルに唾液を付着させる行為は、消毒等の必要な処置なく触れることができなくなる点で、メダル本来の効用を害するもの、と言えそうである。

また、本件は公の場であったことから、消毒等の処置をしたとしても、長期にわたり、メダルに触れることに心理的な抵抗が生じるかもしれない。

こうしたことを踏まえると、器物損壊にあたると考えることも可能ではないかと思う。

腹立たしく、選手の方が気の毒でならない。

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