日本に比べ人口が非常に少ないエストニアなどでは、政府の決定も行動も敏速でしょうし、革新的なことがしやすくIT先進国になりやすいと思います。そんなエストニアに視察に行って日本人の多くが民間企業からと言うよりも、役人、団体職員、議員が多いのではないでしょうか?
彼等は視察という名の外国旅行に行くのが好きでたまりません。前もって何も勉強せずに案内人について行くだけ。ITで遅れている日本からエストニアに視察に行ってもよくわからない人が多いのではないでしょうか。
昔の農協団体よりはずっとマシでしょうけど、今でも税金の無駄遣いに終わっている視察が多くあるはずです。何しろ視察団の多くが何も考えずにぼーっとして外国を訪問しているだけなのでしょうから。
日本のように人口が多い国ではエストニアのように敏速に動くことは難しいでしょうね。人口が少ない国のようが色々な面でやりやすいのかもしれませんね。アイスランドも同様です。

※スタートアップ・・・短期間で、イノベーションや新たなビジネスモデルの構築、新たな市場の開拓を目指す動き、または概念

https://diamond.jp/articles/-/202063

「今度エストニアに行くんですけど、訪問できるスタートアップってありますか?」
『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』にも登場し、現在はエストニアのスタートアップ・SetGoで勤務する齋藤 アレックス 剛太氏は、職業柄このような質問を受けることが多いという。ところが、そんな日本人の行動が、エストニアでひんしゅくを買っていることをご存じだろうか。
エストニアで開催されるスタートアップの祭典・Latitude59を5月中旬に控え、訪問する日本企業が激増するであろうこのタイミングで、気をつけておくべきポイントを解説していただいた(文:齋藤 アレックス 剛太)。

2018年のLatitude59の入り口にて(撮影:小島健志)

その「視察」、ただの観光で終わっていませんか?

近年、エストニアを訪れる日本人の数は激増している。同国への視察を一手に引き受けているe-Estonia Briefing Centerには、146団体・1135人の日本人が2018年に訪れた。これは1位のドイツに次ぐ数となっており、尋常ではない数の日本人が、はるか8000km離れたこの小国に押し寄せていると言える。

その背景には、エストニアが先進的・挑戦的な取り組みを次々と展開していることがある。世界初の電子投票や電子国民制度(e-Residency)を導入し、すでに世界トップレベルの電子政府システムを運用している同国は、デジタルファースト法案を推し進める日本にとってのロールモデルの1つとなるだろう。また、Skype(スカイプ)をはじめとするユニコーンを4社輩出しているスタートアップエコシステムにも学べることは多い

実際に、エストニア企業との協業を始める日本企業も増えてきた。グローバル求人プラットフォームJobbatical(ジョバティカル)や、起業家同士のコミュニティを形成するLift99(リフト・ナインティナイン)らに投資をしている孫泰蔵氏率いるMistletoe(ミスルトウ)はその代表格であるし、現地スタートアップFits.Me(フィッツミー)を買収し、言語学習アプリLingvist(リングビスト)と提携をしている楽天も現地では有名だ。さらには先日、丸紅がエストニアに進出することを発表した。ユニコーン企業TransferWise(トランスファーワイズ)を始めとする現地のスタートアップでも、日本人の社員が徐々にではあるが増えてきている。

しかし、実際に事業を展開している日本企業はごくわずかで、日本企業の大半は「表敬訪問」を目的にエストニアに訪れる。そんな日本企業の振る舞いが、現地でひんしゅくを買っているのだ。

日本人の「表敬訪問」が敬遠される理由

想像してみてほしい。皆さんの職場に観光気分の外国人が訪れて、プレゼンテーションを寝ぼけまなこで聞き、最後の質疑応答では沈黙。会社のロゴの前で写真を撮り、満足して帰っていく姿を。加えて、通訳を介するコミュニケーションが必要で、会話の速度は通常の二分の一。今後に向けたアクションステップを問われるとダンマリになり、「Keep in touch(連絡を取り合いましょう)」で終わってしまう。そして実際に連絡が取られることは2度とない――。

こんなことが、エストニアのスタートアップに降り掛かっているのだ。それも、毎日のように。

エストニアのスタートアップで働く人々は、きわめてオープンマインドだ。事実、1年前は日本人に無条件で会ってくれる人も多かった。その背景として挙げられるのは、彼らが人口約130万人のエストニアの市場をあくまでもテストマーケットとしか捉えておらず、グローバル展開に貪欲である点だろう。それゆえ、海外からの訪問客には手厚く対応するし、日本人であってもなくても、会おうと言うとすぐに会ってくれたのだ。

つまり、彼らが訪問客と会う理由は、その先にビジネスの機会を見出しているからに過ぎない。ただでさえ労働力が不足している国である。観光ガイドをしているほど、彼らに時間の余裕などない。家族を大切にする分、残業は滅多にしないエストニア人にとっては尚更だ。

「視察」という形だけの訪問が繰り返され、何もビジネスが生み出されなかった結果、日本企業に対する不信感が高まっていくのは自明の理だろう。

海外からの視察を受け入れる政府機関・e-Estonia Briefing Centerも、観光客気分の日本人を相手にしている時間は本来はない。日本企業にありがちな「とりあえず会いましょう」的な表敬訪問ほど、迷惑なものはないのだ

では、日本企業がエストニアを訪れる際、どのような点に留意すればよいのか。

「エストニア行き」を目的にしない

エストニアに行く前にまずすべきこと。それは目的意識を明確にすることだ。現地生活を約1年続けた筆者の目には、視察に来た日本人の95%は、「来ること」そのものが目的化しており、その先のビジョンをまったく描けていないように映る。いや、そもそも「描くつもり」がないとさえ思えるほどだ。

「何ができるか確かめるためにエストニアに行くんじゃないか」という声もあるだろう。それでも、自社のどんな課題にアプローチしたいのか、現地企業にどのようなことを期待しているのか、は最低限事前に明確にするべきだ。これらをクリアにして、現地企業に伝えることが第一歩目となる。

同時に、現地企業に提供できる価値を明確にすることも重要である。自分たちと会うことによって、彼らにどんなメリットがあるのか。その点を明確にしなければ、現地企業は会ってくれない。たとえば、エストニア企業とのパートナーシップの提案や、実際に彼らのプロダクトを日本で展開する際の支援案、ライトなところであれば、日本の同業種の概況をリサーチしたうえでのディスカッションも、彼らにとっては価値になることもある。

事前のリサーチも必須だ。エストニアの電子政府の取り組みや、スタートアップシーンの概況はすでに日本語で書籍や記事の形でまとまっている。訪問企業の情報もウェブで公開されているし、透明性が高いエストニアではすべての企業の財務情報さえも公開されているのだ。お互いに自社の自己紹介は事前に済ませ、対面での商談では本質的な議論に集中すべきだろう。

また、現地企業から「日本人は時間を守ると思っていた……」といった声を聞くことも多い。確かに日本人は会議の開始時間は守る。ところが終了時間となると、平気で30分、1時間と時間オーバーするケースが少なくないのだ。エストニア人は時間に厳密だ。当然のことだが、始まりの時間のみならず、終わりの時間も守ることもマナーである

そしてミーティングの最後には、アクションアイテムを決定したい。上述したように、「Keep in Touch」で終わるミーティングは価値がないと言ってもいい。議論した中から前に進める材料を見つられたのであれば、次につながるアクションをコミットするべきだ

視察ありきから事業ありきへ――「視察」の価値を最大化するために

日本企業の多くにとっては、エストニアから帰国した後が本番だろう。エストニアでインプットしたすべてを自社に報告する必要があるためだ。ここで気をつけなければならないのが、エストニアの方法論をただ単純にアウトプットしたところで、まったく意味がないという点だ。日本とエストニアの環境を比べてみると、人口規模ではエストニアの100倍であるし、国としての歴史の長さも、文化的な背景も大きく異なる。つまりエストニアの方法論をそのまま適用したところで失敗することは目に見えているのだ。エストニアのe-ID制度を参考にしたものの、普及率12.8%に留まっているマイナンバー制度がその代表例と言えるだろう。

参考にすべきは同国の電子政府やスタートアップを育んだ設計思想・マインドセットだ。なぜ世界トップレベルの電子政府を構築できたのか。なぜスカイプが生まれたのか。なぜユニコーンを次々と輩出できるのか。その答えは彼らのマインドセットにある。

たとえば、エストニアでは人々がよく「Transparency(透明性)」という言葉を口にする。約30年前、旧ソ連から念願の独立を果たした彼らは、そもそも不正ができないような仕組み、つまり情報の透明性を高めることに挑んだ。その結果、今日のエストニアでは個人にデータの主権が移り、自分の個人情報にいつ誰がアクセスしたのかを、チェックすることが可能となった。自分で情報の公開範囲も管理できるため、「誰に自分のデータを見られているかわからなくて不安」という電子政府化に際する懸念が拭い去られた形だ。

翻って日本はどうだろう。デジタルファースト法案のニュース1つをとっても、「電子化への不安」という抽象的な理由をもとに反対の声が上がっている。人間が「よくわからないもの」に不安を覚えるのは当然のことだが、不安要素をすべて具体化したうえで、透明性を持った施策を官民で打ち出すことができたのなら、状況は変わるのではないだろうか。

このように、現地でインプットした情報やマインドセットを土台に、自社の事業にどう適用できるのかを思考することは重要だ。その過程を経て抽出されたアウトプットこそ、価値がある情報と言えるだろう。逆に、数十万円の旅費をかけて持って帰るのが書籍の受け売りなのであれば、全社員に書籍を配ったほうがよっぽど効率的だ。

5月中旬には、エストニアでスタートアップの祭典・Latitude59が開催される。筆者のもとにもアレンジの依頼が数多く届いているし、エストニアを来訪する日本企業はますます増えるだろう。エストニア企業は、その先にビジネスチャンスを見いだすことができれば、きちんと向き合って話をしてくれる。だからこそ、冒頭で紹介した日本企業のように、「視察ありき」ではなく「事業ありき」でエストニアと向き合う企業が増えること、そして本質的な議論の場が増え、ますます日本とエストニアの経済交流が活発になることを願っている。

2018年のLatitude59のトークセッションの様子(写真提供:Toolbox Estonia)