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ネイティブ120HzリフレッシュレートでOCによって144Hz動作も可能、「NVIDIA G-Sync HDR」に対応して可変リフレッシュレート型同期機能を使用しながらDisplayHDR 1000認証を取得した384ゾーン直下型バックライトLEDによるハイダイナミックレンジ表示が可能な、27インチ4K解像度液晶モニタという化け物スペックな最強ゲーミングモニタ「Acer Predator X27(型番:bmiphzx 27)」を国内発売に先駆けて海外から輸入したのでレビューしていきます。
製品公式ページ:https://www.acer.com/ac/ja/JP/content/predator-series/predatorx27
紹介ページ:https://www.acerdisplay.com/monitor/x27.html
マニュアル:https://global-download.acer.com/GDFiles/Document/User%20Manual/User%20Manual_Acer_1.0_A_A.pdf
Acer Predator X27 bmiphzx 27 4K/IPS/G-Sync/HDR/144Hz
Acer
「Acer Predator X27」とほぼ同スペックで、国内で発売済みの「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」についても詳細なレビュー記事を公開中です。
・G-Sync HDR対応4K/120Hzゲーミング液晶モニタ「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」をレビュー
【注意】
「Acer Predator X27」や「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」など4K/120Hz/HDR G-Syncに対応した液晶モニタを使用する場合、GPU側のDisplayPortのファームウェアが古いと、POSTやUEFI設定などOS起動前の画面が暗転したままになり、場合によってはOSもブラックアウトしたまま起動できない不具合が発生します。GTX 10XXシリーズなどNVIDIA製GPU搭載グラフィックボードについてはDP1.4ファームウェアアップデートツールが公式に配布されているので、「Acer Predator X27」や「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」を使用する場合は事前にファームウェアアップデートを行って下さい。
公式DLページ:http://www.nvidia.com/object/nv-uefi-update-x64.html
同ツールはDPファームウェアのチェッカーとしても使用できます。管理人が試したところ、昨年購入したASUSとEVGAのオリファンGTX 1080 Tiは2つともファームウェアアップデートが必要でした。TITAN Xpについては発売後すぐに購入したものですがDP1.4対応済みでした。
Acer Predator X27 レビュー目次
1.Acer Predator X27の概要
2.Acer Predator X27の開封・付属品
3.Acer Predator X27の液晶モニタ本体
4.Acer Predator X27のOSD操作・設定
5.Acer Predator X27のリフレッシュレートOCについて
6.Acer Predator X27の画質・応答速度・遅延について
7.Acer Predator X27で120Hz&G-Syncを試す
8.Acer Predator X27で4K&HDRを試す
9.Acer Predator X27のレビューまとめ
Acer Predator X27の概要
「Acer Predator X27」は解像度が3840x2160の4K解像度、画面サイズが27インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネル、加えて2018年以降の液晶TV&モニタで流行の兆しのある「量子ドット(Quantum dot)技術」が採用され、色域については100% Adobe RGB、96% DCI-P3の非常に高い色域を実現しています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は4ms(GTG)です。HDR表示についてはPS4 ProやXbox One XやPCでも採用されるHDR10に対応しています。HDR表示で重要になる輝度は標準600nits、最大1000nits(cd/m^2)で、384ゾーンのローカルディミング(部分駆動)に対応した直下型バックライトLEDが採用されています。VESAがPCモニター向けに展開しているHDR輝度認証では18年6月現在最高水準となるDisplayHDR 1000を取得しています。
「Acer Predator X27」のリフレッシュレートはネイティブ120Hzとなっており、さらにモニタのOSDメニューからオーバークロックを行うことによって最大144Hzのリフレッシュレートに対応します。120Hzオーバーのリフレッシュレートによって応答速度も高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
加えてティアリング(フレーム更新タイミング差による画面のズレ)やスタッタリング(カクツキ)を抑制できる可変リフレッシュレート型同期機能として、NVIDIA製GPU搭載PCで使用可能な「NVIDIA G-Sync」に対応しています。
「Acer Predator X27」に搭載されたビデオ入力はHDMI2.0*1、DisplayPort1.4*1の2系統です。HDMI接続時は4K解像度60Hz、DisplayPort接続時は4K解像度144Hzに対応します。「Acer Predator X27」の最大の魅力である4K解像度144Hzリフレッシュレート&G-SyncについてはDisplayPortのみが対応しています。HDMIについてはG-Syncには非対応です。USB3.0端子が4基実装されておりアップストリーム端子をPCと接続することで4基のUSBハブポートとして使用できます。
「Acer Predator X27」の寸法はモニタスタンド込みで幅629mm x 高さ465〜595mm x 奥行375mm(モニタ本体の奥行は86mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整に対応しています。チルト角は上25度から下5度、スイーベル角は左右20度、高さ調整は最大130mmの範囲で調節可能です。モニタスタンドを含めた本体重量は12.3kg、モニタ本体重量は4.7kgです。100mm x 100mmのVESAマウントにも対応しており重量的にもモニタアームが使用可能です。
Acer Predator X27の開封・付属品
なにはともあれまずは「Acer Predator X27」を開封していきます。「Acer Predator X27」のパッケージサイズは27インチモニタが入っている箱としては若干大きめで、重量は13kg程度です。側面には持ち手が付いていますが、横幅も大きいので成人男性でも持ち運びはそこそこ苦労すると思います。
パッケージを開くとまず最初にモニターフードが収められた個別の箱が現れます。
サンプルイメージではモニターフード装着済みですが、実際の製品では組み立て式でモニターフードは着脱が可能になっています。左右のフードはネジ止めなので組み立てにはドライバーが必要です。
モニターフードの箱の下には、液晶モニタ本体や付属品が収められた発泡スチロール製スペーサーがあります。スペーサーの上側は付属品の収納を兼ねていました。
各種付属品が収められた側の発泡スチロール製スペーサーを取り出すと液晶モニタ本体が現れます。「Acer Predator X27」はモニタ本体にモニタスタンドが予め装着された状態でパッケージ内に収められていました。モニタスタンドにハンドルが付いているので簡単に持ち上げて取り出せます。
「Acer Predator X27」の付属品を簡単にチェックしておくと、ACアダプタ&ACケーブル、HDMIケーブル、DisplayPortケーブル、USBアップストリームケーブル、クィックスタートガイド等が付属します。中央下のプラスチック製パーツはマニュアルにも記載がないのでよくわからないのですが、おそらくヘッドホンハンガーではないかと思います。
「Acer Predator X27」ののビデオ入力はHDMIとDisplayPortの2つがありますが、それに接続するためのHDMIケーブルとDisplayPortケーブルは両方とも標準で付属します。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば「エレコム CAC-DP14BK DisplayPort1.4ケーブル」や「エレコム Premium HDMI2.0ケーブル スリムタイプ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりも細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム DisplayPort1.4ケーブル CAC-DP14BKシリーズは18年9月現在において長さ1.0mが5800円、長さ2.0mが7800円となっており、DisplayPort1.4認証取得ケーブルとして見てもかなり高価なケーブルになっています。ケーブル径4.5mmに魅力を感じない、もしくは3.0~4.0mの長いケーブルが欲しい場合はClub3DのDisplayPort1.4認証取得ケーブルが半額くらいで購入できるのでこちらがおすすめです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「Acer Predator X27」は100% Adobe RGB、96% DCI-P3の非常に高い色域がアピールポイントの1つということもあり、メーカーによるカラーキャリブレーションレポートが同封されていました。
今回管理人は「Acer Predator X27」を北米Amazonから輸入したので、ACアダプタをコンセントに接続するACケーブルはアース付き3PINでした。ACアダプタ側の端子は、俗にいうミッキー型の3PIN端子なので汎用品のケーブルを購入すれば国内でも問題なく使用できます。
BUFFALO 3ピンACケーブル 2m BSACC0820BKA
BUFFALO
Acer Predator X27の液晶モニタ本体
続いて「Acer Predator X27」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「Acer Predator X27」はフレームレス構造ではなく、一般的なモニタ同様、液晶パネルの周囲にフレームが存在します。フレーム内パネル上には非表示領域が1mmほどあってフレームを含めると、上左右の非表示領域の幅は17mm程度、下は22mm程度です。下フレームの中央には赤い縁の銀色文字でPredatorテキストロゴが刻印されています。
「Acer Predator X27」のモニタ本体の厚さは最薄部で24mm、最厚部で86mmほどでした。最大輝度1000nitsで、384ゾーンのローカルディミング(部分駆動)に対応した直下型バックライトLEDが搭載されており、近年の液晶モニタとしては厚みが大きくなっています。
背面はAcer Predatorシリーズらしい流線形のスタイリッシュなデザインです。外装はプラスチックですがヘアラインアルミ風の表面加工がされているので見た目に高級感を感じます。モニタスタンドのフレームはAcer PredatorゲーミングデスクトップPCと同じく鱗のような形状になっており、上部にはAcer Predatorのアイコンロゴがあります。「Acer Predator X27」のモニタスタンドの足は一見してかなり細いですが、金属製のフレームは非常に頑丈なのでしっかりと安定します。
モニタ背面上部のエアスリットと下枠にはLEDイルミネーションが搭載されています。
発光カラーや発光パターンはOSDメニューから設定が可能です。アドレッサブルな発光パターンも用意されていました。OSDメニューから消灯設定もできるので必要なければ切ればOKな機能です。
モニタ本体背面の左下(正面から見て右下の裏面)には、液晶モニタの電源をON/OFFするパワースイッチやモニタOSDを操作するための操作スティックおよび4つのスイッチが配置されています。
モニタスタンドを取り外すと、その下には80mm径の冷却ファンが搭載されていました。G-Syncモジュールや最大輝度1000nits(cd/m^2)の直下型バックライトLEDによって発熱が大きいことは、ニュースサイトのイベント取材記事等で報じられていましたが、やはり冷却ファンによるアクティブ冷却を採用していました。
「Acer Predator X27」は冷却ファンを搭載していますが、背面に回って耳を近づけでもしなければ、付属モニタスタンドおよびスペーサーによるモニターアームのどちらの環境でも、ファンノイズはほぼ聞こえないので騒音については心配ありません。
ちなみに「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」も冷却ファンを搭載しているようです。(ソース) レビューによるとASUSのほうがファンのサイズが小さく、回転数が高いので高周波のファンノイズが聞こえやすいそうな。
背面下部と上部には放熱のための排気エアスリットが大きく設けられています。
「Acer Predator X27」の背面下部にはビデオ入力等のI/Oポートがあるのですが、カバーが装着されてI/Oポートは隠されています。
I/Oポートカバーを取り外すと、「Acer Predator X27」にはI/Oポートとして左から順に、HDMI2.0、DisplayPort1.4、ACアダプタ接続用DC端子、3.5mmヘッドホンジャックが設置されていました。
サブ入力のHDMI端子についてですが、おそらくPS4やXbox One XなどPC以外の機器を接続するユーザーが多いので問題ないと思いますが、PCを接続した場合、UEFI(BIOS)メニューが暗転したまま表示できない可能性が高いです。DisplayPortで稀にあった現象ですが、「Acer Predator X27」ではHDMIで発生しました。【7月17日追記】DeskMini GTX 1080ではHDMIでBIOSが表示できました。
加えて「Acer Predator X27」にはUSBハブとして使用できる4基のダウンストリームUSB3.0端子とPCに接続するためのアップストリームUSB3.0端子がありますが、これらはI/Oポートカバー内ではなく、背面から見て右下と右枠に設置されていました。ダウンストリームUSB3.0端子はともかく、PCと接続するアップストリームUSB3.0端子はI/Oポートカバー内でよかったと思います。あとUSB端子からの給電にも対応していますが、画面が非表示の状態(スリープ)では給電されません。
「Acer Predator X27」付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に25度となっています。
「Acer Predator X27」付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右20度(40度)に対応しています。首振りの可動域は狭めです。
モニターの高さはモニター本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で465mm〜595mmの範囲内で調整できます。
Acer Predator X27はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。
「Acer Predator X27」はモニタスタンドが標準で装着されていますが、外す手順を説明すると、まずモニタ側の根本にあるカバーを取り外します。このカバーが地味に取り外し辛く、中央の隙間にマイナスドライバーなどを差し込んでテコで外しました。カバーが外れればスタンドを固定する4か所のネジが現れるのでこれを外します。
ネジが外れればあとは手前方向に斜め上へ引き上げればモニタスタンドが取り外せます。
モニターアームについては管理人は「Lumen MA-GS102BK」、もしくは色違いでほぼ同機能な「サンワダイレクト 100-LA018」という製品をおすすめしています。モニターアームというとエルゴトロン製が一番の売れ筋ですが、クランプのネジが下に伸びているタイプのモニターアームは机に干渉して使えないという問題があり、MA-GS102BKはクランプを上側から六角レンチで締めるタイプでテーブル下の隙間が狭いデスクでも使用できるので管理人も使っています。
「Lumen MA-GS102BK」はモニタとアームを接続する部分がクイックリリースのブラケット式になっていてモニタアームからモニタ本体の着脱が非常に簡単です。ピボット機能もあるので設置後にモニタを縦・横で向きを切り替えることもできます。ただ関節の滑りに若干難があるので潤滑剤を塗布するのがおすすめです。
「Acer Predator X27」はVESAマウントのネジ穴部分が外装から窪んだ部分にありますが、外装との干渉を回避するため標準でスペーサープレートが付属します。
このスペーサープレートは右上の写真のようにして使用するのですが、ぶっちゃけ設計不良で使えません。というのも上で紹介したようにVESAネジ穴の中央には冷却ファンが設置されており、そこが吸気面になっているため、付属のスペーサープレートを使用すると吸気面が塞がれて内部が熱々のひどいことに。そして背面にGPUでも積んでるのかってくらいファンノイズがでます。
そのため「Acer Predator X27」のVESAマウントでモニタアームを使用する場合は吸気スペースの確保のため、スペーサー(スタンドオフ)の使用を推奨します。「Acer Predator X27」に採用されるVESA100x100規格ではネジ規格もM4と決まっているのでM4のスペーサーであれば基本的に何でもいいのですが、別件で購入していたNUC用VESAマウント拡張ブラケット「SilverStone SST-MVA01」に付属するスペーサーがちょうど使用できるため、管理人はVESA用スペーサーにはこれを使っています。
M4ネジのスペーサーなら何でも使用できるのですが、Acer Predator X27とLumen MA-GS102BKの組み合わせでスペーサーがよくわからないという人は2000円ほどしますがとりあえず「SilverStone SST-MVA01」を買えばクイックリリースブラケットとの干渉を回避できます。
こんな感じでスペーサーを挟んでクイックリリースプレートを装着します。スペーサーを使って吸気スペースを確保してやれば、「Acer Predator X27」のVESAマウント中央にある冷却ファンはしっかりと内部を冷やしつつ、低回転で静かに動作してくれます。
Acer Predator X27のOSD操作・設定
「Acer Predator X27」のOSD操作はモニタ背面の左下(正面から見て裏側の右下)に設置されている5つのボタンを使用します。5つのボタン(うち1つは操作スティック)の機能は上から順に、パワースイッチ、ショートカットキー1、ショートカットキー2、入力セレクトボタン、操作スティックとなっています。
個体差があるかもしれませんが、操作スティックの押下ボタンの反応が雑?で、反応が悪かったり、連続押下になったりしたのが少し残念でした。ゆっくり操作すれば問題ないので許容範囲内ですが少し残念。
パワースイッチ以外のいずれかのボタンを押下すると、メインページと呼ばれるショートカットキー一覧が表示されます。この画面で操作スティックボタンを押下すると詳細メニューに移動します。ショートカットキー1/2や入力セレクトボタンについては表示されている設定項目に関する設定に移動します。
「Acer Predator X27」では、「アクション」「レース」「スポーツ」「ユーザー設定」「標準」「ECO」「グラフィック」「ムービー」の8つの画質モードが用意されており、初期設定では「ユーザー設定」が選択されています。「ユーザー設定」「アクション」「レース」「スポーツ」は設定内容をユーザーが任意に変更できます。
ショートカットキー一覧表示後にスティックボタンを押下するとモニタ右下にOSDメニューが表示されます。「Acer Predator X27」のOSDメニューは標準で英語UIですが、システム設定から日本語UIに変更可能です。メニューに合わせてボタンを操作すると入力選択や詳細設定メニューからの設定が行えます。OSD表示領域は狭く文字も小さいので少し操作しにくいかもしれません。
「Acer Predator X27」のOSDメニューには大きく分けて、「画質設定」「カラー設定」「音量設定」「ゲーミング機能設定」「OSD設定」「システム設定」の6つの項目が用意されています。
システム設定ページの「ホットキー割り当て」からショートカットキー1/2で開くことのできる設定項目を変更することができます。
ゲーミングの設定ページにある「照準点」を設定すると画面中央に照準アイコンをオーバーレイ表示することできます。照準アイコンは3種類から選択できますが、カラーは白色のみでした。
Acer Predator X27のリフレッシュレートOCについて
「Acer Predator X27」のリフレッシュレートOC機能について簡単に紹介しておきます。まず「Acer Predator X27」は仕様通り4K解像度で120Hzリフレッシュレートに対応しています。NVIDIAコントロールパネルからは60Hz以上のリフレッシュレートとして、82Hz、98Hz、120Hzが選択できました。
Acer Predator X27はネイティブ対応となる4K解像度120Hzリフレッシュレートに加えて、OSDメニューからさらに上のリフレッシュレートへオーバークロックが可能となっており、最高で144Hzリフレッシュレートに対応しています。
リフレッシュレートのOC方法はOSDメニューの詳細設定を開いて、ゲーミング設定のページから「オーバークロック」をオンにして、最大リフレッシュレートを指定し、「適用&再起動」を選択してモニタを再起動します。
上の手順でリフレッシュレートのOCを適用すると、NVIDIAコントロールパネルにおいて「最大リフレッシュレート」で指定した値が新たに表示されます。これで「Acer Predator X27」が対応可能な最大リフレッシュレートの144Hzで動作させることができます。
Predator X34やPG348QなどリフレッシュレートOCが登場した当初の製品ではOC可能な最大値で安定しない個体も散見されましたが、最近は出荷前にしっかりとチェックしているのかそういった話は聞かなくなってきており、「Acer Predator X27」も144Hzで”安定して”動作することは確認できました。
しかしながら「Acer Predator X27」のリフレッシュレートOCには落とし穴があり、カラーフォーマットがRGBで表示可能な最大解像度&リフレッシュレートは4K解像度&120Hzまでとなっており、リフレッシュレートを144HzにOCするとカラーフォーマットはYCbCr422に圧縮されてしまいます。
カラーフォーマットについてはNVIDIAコントロールパネル上からも設定が可能なので、リフレッシュレートを144Hzにした後、カラーフォーマットは自動でYCbCr422になりますが、カラーフォーマットをRGBに変更して設定を適用してもYCbCr422に戻ってしまうため、リフレッシュレートを144HzについてはカラーフォーマットがYCbCr422で固定されてしまいます。
【9月8日追記】---------------
144Hz/YCbCr422で色潰れが発生する現象についてですが、NVIDIAコントロールパネルから手動でカラー設定を行い、明るさを70%前後に設定することで120Hz/RGBとほぼ同じ画面になりました。ASUS ROG SWIFT PG27UQでは発生しない現象だったので、「Acer Predator X27」が144Hz/YCbCr422時にPCへ渡す色設定に何か問題があるようです。
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4K解像度&120HzリフレッシュレートであればカラーフォーマットRGBでHDR表示も問題なく行えるので、「Acer Predator X27」や「ASUS PG27UQ」のリフレッシュレートOC機能についてはおまけ程度に考えて、ネイティブ対応の120Hzリフレッシュレートが常用設定と考えるのがおすすめだと思います。
Acer Predator X27の画質・応答速度・遅延について
Acer Predator X27の画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがAcer Predator X27の液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「Acer Predator X27」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
「Acer Predator X27」(画質設定は標準のまま)で、いくつかのカラーグラデーション画像を表示して確認してみたところ、発色に優れたIPS液晶パネルなので滑らかなグラデーションで綺麗に表示されました。
「Acer Predator X27」はIPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
あと「Acer Predator X27」はバックライトの輝度の均一性(Uniformity)が非常に優秀でした。四隅も暗くならず、全体が均一な明るさになっているのでデスクトップ作業も快適にこなせます。
また「UFO Test: Ghosting」を使用して、応答速度や残像についても簡単にチェックしてみました。
「Acer Predator X27」に採用されているIPS液晶パネルは傾向として応答速度はそこまで優秀ではありませんが、「Acer Predator X27」は高速な120Hzリフレッシュレートにネイティブ対応しているので非常にキレの良い残像感が少ない表示になっています。
続いて「Acer Predator X27」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M4」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
まずは「Acer Predator X27」のリフレッシュレートを60Hz、120Hz、144Hzに変えて「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。リフレッシュレートを上げるとそれに伴って応答速度も上がるので残像感がなくなっているのがわかります。
さらに「Acer Predator X27」に加えて、高価なIPS液晶パネルを採用する32インチ4Kモニタ「LG 32UD99-W(レビュー)」、同じくIPS液晶パネル採用で120Hzの高リフレッシュレート動作となるウルトラワイドQHD解像度ゲーミングモニタ「Dell AW3418DW 120Hz(レビュー)」、VA液晶パネルを採用する31.5インチ4Kモニタ「BenQ EW3270U(レビュー)」を比較対象として「UFO Test: Ghosting」の様子を比較していきます。
リフレッシュレート60Hzに揃えて比較してみると、VA液晶パネルよりも高価なだけあって「Acer Predator X27」をはじめとしてIPS液晶パネルは応答速度も高速で残像感は少なくなっています。
さらに各製品を最大リフレッシュレート動作として「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。
また「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔を応答速度として算出し比較してみました。
「Acer Predator X27」および、比較対象となる「LG 32UD99-W」、「Dell AW3418DW)」、「ASUS ROG SWIFT PG258Q」、「BenQ EW3270U」以上の液晶モニターについて、上の手順で算出した応答速度を比較したところ次のようになりました。
「Acer Predator X27」は同じくIPS液晶パネルを採用している「LG 32UD99-W」や「Dell AW3418DW)」とほぼ同じ結果になりました。120Hzリフレッシュレートはやはり60Hzリフレッシュレートよりも応答速度が高速です。
最後に「Acer Predator X27」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUからのビデオ入力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
モニタの表示遅延測定においてはモニタ以外の要因で遅延に差が出ると問題があるので、検証モニタへビデオ出力を行うPCはCore i7 7700KとGTX 1080 Tiを搭載した次のベンチ機で統一しています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 7700K 殻割り&クマメタル化(レビュー) Core:5.0GHz, Cache:4.8GHz |
CPUクーラー | Intel TS15A |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3200MHz, 14-16-16-36-CR2 |
マザーボード |
ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー) |
ビデオカード | EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX (レビュー) |
システムストレージ |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
キーボード | HyperX Alloy FPS メカニカルゲーミングキーボード (レビュー) |
モニタの表示遅延を測定する具体的な方法としては、キー押下時にそのキーのLEDが点灯するキーボードを使用して、LEDの点灯から画面表示への反映までの間隔を遅延時間として測定します。画面表示の確認については簡単にメモ帳を使用しています。この様子を「SONY DSC-RX100M4」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、遅延フレーム数を数えて遅延時間を算出します。
「Acer Predator X27」や比較モニタの表示遅延の測定結果は次のようになりました。
「Acer Predator X27」については比較に使用している3つの液晶モニタと比べて表示遅延が若干大きく、60FPSベースで見ると1フレーム(約16ms)ほど余分に表示遅延が発生するようです。数字上は遅い結果になっていますが、この程度の内部遅延であれば操作中に違和感を感じることありませんし、「Acer Predator X27」は数フレームを競うような競技用ではなく、高画質を楽しむラグジュアリー的な液晶モニタなので許容範囲内だと思います。
Acer Predator X27で120Hzリフレッシュレート&G-Syncを試す
「Acer Predator X27」の最大の特徴の1つである120Hzリフレッシュレートと可変リフレッシュレート型同期機能「G-Sync」について試していきます。「Acer Predator X27」の特徴の1つである”120Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、120Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2倍となる1秒間に120回の画面更新を行います。最近では競技ゲーマー向けのTN液晶モニタですが240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、さらにスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「Acer Predator X27」ではNVIDIA GeForce GTX 10シリーズなどのDisplayPortビデオ出力に接続することによって、NVIDIAコントロールパネル上からモニタリフレッシュレートを120Hzなどに自由に設定できます。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzリフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、加えてゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、左上以外の3つは左上画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M4」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。解像度&リフレッシュレート別で右上はフルHD/120Hz、左下は4K/60Hz、右下は4K/120Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵について、リフレッシュレートが上がると動作が細かくなり、また解像度が上がることによって遠方でもドットで潰れずにクッキリと表示されるので、遠方の敵の視認性が上がります。
4K解像度の恩恵についてはハイスピード動画は高速な反面、画質が悪くなるのでわかりにくいかもしれませんが、同じ構図で4K解像度(左)とフルHD解像度(右)を比べてみると、遠景に小さく映る敵の鮮明さには大きな差があることがわかります。
なお「Acer Predator X27」で4K解像度・120FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能がかなり要求されます。液晶モニタに「Acer Predator X27」を使用するのであれば18年6月現在、最速のNVIDIA製グラフィックボードであるGTX 1080 Tiがおすすめです。最新高画質PCゲームでグラボ1枚では性能が足りないということであれば、GTX 1080 Tiグラフィックボードを2枚使用するマルチGPU SLIの構築も検討してみてください。
・GeForce GTX 1080 Ti レビュー記事一覧
続いて「Acer Predator X27」の大きな特徴の2つ目となる可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」についてチェックしていきますが、実際のゲーム画面について確認する前に「NVIDIA G-Sync」に関する予備知識を簡単に解説します。
液晶モニタはGPUから連続して送られてくる映像(フレーム)を、リフレッシュレートに応じて一定間隔で更新しながら液晶パネル上に表示していきます。下はその理想的な様子の模式図です。
しかしながらGPUによる映像出力と液晶モニタのリフレッシュレートは、実際には上のような理想的な関係にはなりません。その理由は単純で、PCゲームのようにリアルタイムレンダリングによって描画を行う映像ソースは、その時々の描画負荷によって各フレームの描画(レンダリング)にかかる時間が異なる、可変フレームレートの映像だからです。
レンダリングにかかる時間が一定ではないPCゲームにおいては、60Hzという更新周期に合わせてGPU内のフレームバッファを取り出して表示を更新する「垂直同期(V-Sync)」が一般的です。しかしながら垂直同期においては60Hzリフレッシュレートのモニタの場合、画面更新間隔の約16msを超えてしまうフレームが発生するとその更新タイミングでは1つ前と同じフレームを表示することになるので、この時に「Stutter(スタッター、日本語では”カクつき”など)」が発生して(を感じて)しまいます。
一方で垂直同期を使用しない「同期なし」ではどうかというと、画面の更新とGPU側フレームバッファの更新が重なることによって、1つの画面内の上下で前後するフレームが表示される「Tearing(テアリング、誤読ですがティアリングでも日本なら通じる)」が発生します。
液晶モニタにはピクセルが格子状に並んでいますが、画面更新ではパネル上のピクセルが同時一斉に更新されるのではなく、上の列から下の列へ順番に更新されていきます。そのため同期なしにおいては、画面更新の途中でGPU側フレームバッファが更新されると上半分はn番目のフレーム、下半分はn+1番目のフレームが表示され、画面の中央に切れ目が表示されて見えたり、上下で全く違う絵が表示されるといった現象が発生し、これがテアリングと呼ばれています。
以上PCゲーマーを悩ませるスタッターとテアリングの諸事情を踏まえて、可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」はどういったものかというと『GPUフレームバッファの更新に合わせて画面を更新する』ので、PCゲームのようにGPUフレームバッファの更新が一定しない可変フレームレートの映像であっても、モニタ表示において原理的にスタッターもテアリングも発生しない同期技術となっています。
可変リフレッシュレート型同期機能には「NVIDIA G-Sync」以外にも、AMD製GPUやコンソールゲーム機で使用可能な「AMD FreeSync(Adaptive Sync)」も存在します。「NVIDIA G-Sync」はモニタ側に専用モジュールを搭載しており、その分高価ですが、「AMD FreeSync」とは違ってモニタに依存した可変リフレッシュレート型同期機能を使用可能な映像ソースのフレームレート制限が基本的に存在しないというメリットがあります。
一方で「AMD FreeSync」はVESAが策定したAdaptive Sync(アダプティブシンク/適応同期)機能に準拠した仕様に、AMDが動作確認を行って公式ロゴを付与したものなので専用モジュールが必要なく、安価で採用製品が多いというメリットがあります。
「NVIDIA G-Sync」と「AMD FreeSync」はいずれも可変リフレッシュレート型同期機能というくくりで扱われますが、下にまとめた比較表を見てわかるように両者の仕様にはけっこう違いがあります。垂直同期の扱いからの推測ですが、「NVIDIA G-Sync」が『専用モジュールによって、GPUレンダリング完了タイミングと画面更新タイミングを同期させるワンパッケージな機能』であるのに対して、「AMD FreeSync」は『一定期間のリフレッシュレートをレンダリング速度の傾向に合わせて逐次変化させる機能』となっているようです。
可変フレームレート機能の簡易比較表 | ||
NVIDIA G-Sync(公式) | AMD FreeSync(公式) Adaptive Sync |
|
対応出力機器 | NVIDIA製GPU搭載PCのみ | AMD製GPU搭載PC Xbox One X (PS4 ProやIntel iGPUも今後対応するかも?) |
ビデオ入力 |
DisplayPortのみ | 製品によるが、規格としてはDisplayPortとHDMIの両方に対応 |
垂直同期 |
NVコンパネのG-Sync設定を有効にすると、ゲーム内の垂直同期設定は、通常、ドライバによって自動で上書きされる | Radeon設定のFreeSyncとは別にゲーム内で設定が必要 垂直同期有効ではテアリングが発生しなくなる 垂直同期無効ではテアリングが発生する可能性あり |
対応FPS/Hz | 最大リフレッシュレート以下 | モニタ製品によって範囲は異なり、リフレッシュレートを最大値として、下限値がある (FreeSync対応モニタリスト) 下限をフレームレートが下回るとスタッターやテアリングが発生 |
HDR対応 | 「G-Sync HDR」認証の製品はHDR表示にも対応 |
FreeSyncとHDRに対応したモニタなら併用可能 別途、HDR表示時に表示遅延や発色を最適化する「FreeSync 2 HDR」認証もある |
対応モニタ |
採用製品は比較的少ない | 採用製品は比較的多い |
製品価格 | 専用モジュール搭載なので高価 FreeSync対応の同スペック製品と比較して+1~2万円ほど |
VESA規格準拠なので安価 |
前置きが長くなりましたが、「G-Sync」に関連した予備知識の解説も済んだので、実際のゲーム画面で可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」の効果をチェックしていきます。
可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」の使い方は非常に簡単で、「Acer Predator X27」をNVIDIA GeForce GTX 10シリーズなどのDisplayPortビデオ出力に接続し、NVIDIAコントロールパネル上からG-Syncを有効にすると、以降はゲーム内の垂直同期制御はドライバが上書きする形で、G-Syncによってモニタ側の更新タイミングが制御されるようになります。
検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいのでProject Cars 2を使用しています。また画面リフレッシュレートやGPUフレームバッファの様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面右上にはモニタリフレッシュレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。
画面右上のモニタリフレッシュレートOSDは、G-Sync無効では一定値で固定されて変動しません(製品によっては非G-Syncでは数字が非表示になる)が、G-Syncを有効にすると変動します。豆知識としてリフレッシュレート表示はG-Syncモジュールでは標準で採用される機能なのでG-Syncが正常に動作しているかどうかの指標にできます。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、G-Syncの違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレートを60HzにGPU側出力を50FPSに固定して、「SONY DSC-RX100M4」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。(なお上では可変フレームレートで論じていたので、50FPS固定での検証に疑問を覚えるかもしれませんが、リフレッシュレートと映像フレームレートにズレがあればスタッターやテアリングの検証としては問題ありません。)
同期なし、垂直同期、G-Syncの3つの画面表示はいずれも50FPSの映像ソースが表示されていますが、同期なしではテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でG-Sync有効ではテアリングもスタッターも一切発生していません。
なお上動画の右下にはG-Sync有効下でリフレッシュレートの60Hzを超える70FPSの映像ソースが表示された場合の画面を表示しています。G-Sync有効下において映像フレームレートがリフレッシュレートを上回ると、上の動画のようにテアリングが発生します。ゲームによって対応が異なるのですが、G-Sync有効時にゲーム内設定の垂直同期を有効にするとモニタリフレッシュレートを上回らないようにするものもありますし、そうでなければRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定してください。
また同期なしでリフレッシュレート別に並べた動画を使用してテアリングの様子を確認してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート型同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート型同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
「Acer Predator X27」の4K解像度120Hリフレッシュレートにおいて、ゲーム内フレームレートが50FPS程度になる映像を使用して、同期なし、垂直同期、G-Syncを比較してみました。右下の分割画面には比較対象として同じ映像で60Hzリフレッシュレートの垂直同期を載せています。
左上の同期なしは盛大にテアリングが発生しています。4K解像度についてはGPU負荷的に40~60FPSを狙う高画質ゲームが多いので画質を重視するなら同期機能は必須だと思います。右側の垂直同期の60Hzと120Hzを比較すると同じ映像であっても画面更新間隔は小さくなるので、120Hzのほうがスタッターによるカクつきの違和感は減っています。それでも垂直同期120Hzでは細かいスタッターがありますが、左下のG-Sync有効ではスタッターもテアリングもなく綺麗で滑らかな表示が実現できています。
さらに「Acer Predator X27」の4K解像度120Hリフレッシュレートにおいて、ゲーム内フレームレートが100FPS程度になる映像を使用して、同期なし、垂直同期、G-Syncを比較してみました。右下の分割画面には比較対象として50FPS程度のG-Syncを載せています。
G-Sync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。G-Syncの50FPSと100FPSを比較すると当然ですが100FPSの方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
ちなみにProject Cars 2の4K解像度で100FPS前後のフレームレートを出すためにはGTX 1080 Ti SLIが必要でした。「Acer Predator X27」は4K解像度でG-Sync HDRに対応した60FPS用モニタとしても使えますが、120Hzの高速リフレッシュレートも生かすのであれば、やはりGTX 1080 Ti SLI環境を揃えたいところです。
GTX 1080 Ti SLI環境は興味があるけど、自作PCやグラボの増設はよくわからなくて不安という人には、ダブル水冷GTX 1080 Ti SLI搭載のBTO PC「G-Tune MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」がおすすめです。詳細なレビュー記事も公開しているので参考にしてください。
・ダブル水冷GTX 1080 Ti SLI搭載「G-Tune MASTERPIECE i1720PA1-SP-DL」をレビュー
Acer Predator X27で4K・HDRを試す
最後に「Acer Predator X27」の4K・HDR表示についてチェックします。PCではGTX 1080 TiのマルチGPUI SLI環境において「Acer Predator X27」で4K解像度、120Hzリフレッシュレート、G-Sync有効、HDR10の超豪華な表示が確認できました。SLI有効でG-Sync HDRが使えるかどうかは若干不安だったのですが問題なく動作しました。SLIとHDRに対応しているゲームなら「Acer Predator X27」のフルスペックが存分に発揮できそうです。
また「Acer Predator X27」のサブ入力として設置されているHDMI端子については、PS4 ProやXbox One Xに付属するHDMIケーブルを使用することで特に問題なく4K・HDR・60FPS表示が可能でした。後ほど紹介するバックライトエリア駆動もHDMI入力のHDR表示において正常に動作します。HDCP2.2にも対応しているのでブレーレイなど著作権保護のあるコンテンツも再生できます。
なおPS4 Pro同様にHDMI2.0の仕様ですが、Xbox One Xで4K/60FPSのHDR表示を行う場合はカラーフォーマットをYUV422/YCbCr422にする必要があるので、詳細設定から「YCC4:2:2を許可」の項目を有効にするのをお忘れなく。
HDRについて簡単に説明しておくと、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」と大雑把に理解しています。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくいですし、明るい場所が明るくなったら太陽を覗き込んだ時のようにその周辺は光で潰れて見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースで、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
またHDRでは映像ソースのダイナミックレンジが拡張された分、ハード側(液晶モニタ自体)の表示性能も重要になります。1枚絵の中で幅広いダイナミックレンジを表現するためには、部分部分の明るさ(輝度)の表現が重要になるので、HDRに関連するハード的な予備知識として、液晶モニタのLEDバックライトの「エリア駆動(部分駆動やローカルディミングとも呼ばれる)」や画素自体が自発光する「有機ELモニタ」があります。
既存の液晶モニタではLEDバックライトの方式がエッジライト型の製品が主流ですが、「Acer Predator X27」も対応しているパネル直下型の製品は、表示位置の輝度情報に応じてLEDバックライトの輝度を制御するエリア駆動(部分駆動やローカルディミングとも呼ばれる)によって、暗い場所のバックライトを消灯し、逆に明るい場所だけを点灯させることができます。
「Acer Predator X27」ではこのエリア駆動に関連したOSD設定として、SDR映像ソースにおいてHDRのバックライト制御をエミュレートする「SDR Variable Backlight」と、HDR映像ソースにおいてバックライトの動作を設定する「バックライトの反応」という2つの設定項目があります。各設定項目はSDR表示中とHDR表示中のみそれぞれ設定でき、HDR表示中に変更できる「バックライトの反応」は標準の「ゲーミング」モードに加え、「デスクトップ」モードと「ハイブリッド」モードが用意されています。
左写真はエリア駆動対応、右写真はエリア駆動非対応(LEDバックライト全体が同一輝度で発光)で撮影した様子ですが、左写真は地球周辺の黒い(暗い)部分のバックライトが切れて中央の地球の立体感が増しているのに対し、右写真では黒い部分のバックライトも点灯しており、白みがかって平坦に見えます。
明暗のメリハリがついて立体感が増すというメリットのある直下型LEDバックライトのエリア駆動ですが、「後光(Halo)」と呼ばれるデメリットも存在します。例えば『384分割の輝度解像度よりも小さい輝点では、輝点の周辺が白くぼやける』、『暗いシーンでUIメニュー周辺が白くぼやける』、『暗い背景の中で街頭などの輝点が動くときに、映像の中での輝点の移動にバックライトの移動が追いつかない残像が見える』などの不自然なバックライト点灯が「後光(Halo)」と呼ばれます。
街灯が画面上で左右に動いた時にバックライトが残像のように尾を引いて追従するのが見えると思います。あと画面上の位置が固定されているので尾を引く感じではありませんが、画面右側のUIが輝点と認識されるため、境界を越えて左側の夜空にバックライトの白いもやがかかっています。
『HDRは”百聞は一見に如かず”な機能で、SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全て』と上で言いましたが、レビュー記事の都合上、比較写真でも撮らないと形にならないので写真を撮ってみました。
いくつかPS4 Pro/Xbox One X/Windows PCでHDR表示に対応したゲームから、通常ダイナミックレンジのSDRとハイダイナミックレンジのHDRについて比較写真を撮影してみました。ISOや絞りなどの写り具合に影響しそうなカメラ設定は比較シーン間では統一しています。また「Acer Predator X27」の画質モードでも表示が変わってくるので、SDRではデフォルト設定の標準モード、HDRではHDRモードで統一しています。
以上のように「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」、最初2つの例では、全体的に明るい昼間のシーンなのでHDR表示によって陰影がはっきりして鮮やかになり、立体感が増していると思います。3つ目の例、FF15で太陽を向いている比較写真ではSDRは太陽周辺が白く潰れていますが、HDRでは太陽の輪郭が確認でき、太陽周辺の色調が残っています。一方で最後2つの例、夜の暗いシーンについては写真で表現するのが難しくなっており、HDRだと暗所が完全に黒く潰れています。実際は暗所も細部の色調は残っていて、街灯や松明との明暗が分かれて現実の夜の光景に近い表現になるのですが。現実に夜景を撮った写真は、HDR表示の画面を撮った写真に近いというと、再現性の高さが伝わるでしょうか。暗いシーンのリアリティについては特に実機で確認してもらいたいところです。
Acer Predator X27のレビューまとめ
最後に「Acer Predator X27」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでPC用高解像度モニタとしては使いやすいサイズ
- 発色や視野角など画質に優れたIPS液晶パネル、量子ドット技術採用
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0の計2系統
- 4K解像度でネイティブ120Hzリフレッシュレートの高速動作(DisplayPort接続のみ)
OSDメニューからのオーバークロックで最大144Hzに対応可能 - 可変リフレッシュレート型同期機能NVIDIA G-Syncに対応(DisplayPort接続のみ)
- HDMI入力はPS4 ProやXbox One Xで4K/HDR/60FPS表示可能かつHDCP2.2対応
- モニタ本体重量4.7kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 4基のUSB3.0ハブポートを搭載
- 付属のVESAスペーサープレートを使用すると吸気口が塞がってファンが唸る
- リフレッシュレート144HzはカラーフォーマットがYCbCr422になる
- 表示遅延が1フレーム(16ms)ほど大きい
- HDR表示のエリア駆動バックライトは後光(Halo)現象が発生
- 北米販売価格2000ドルと非常に高価
- 国内発売については未定(予定はあるらしい。ほぼ同スペックのPG27UQは発売予定あり)
「Acer Predator X27」は3840*2160の4K解像度ながらネイティブ120Hzの高速リフレッシュレートで動作し、可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」に加えて、384エリアの部分駆動直下型LEDバックライトによるHDR表示にも対応と18年現在文句なしに最強スペックなゲーミング液晶モニタです。
可変リフレッシュレート型同期機能を4K高解像度において50~60FPSの標準的なフレームレートや100FPSオーバーのハイフレームレートに組み合わせた場合のメリットについては解説した通りですが、「NVIDIA G-Sync」はテアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
HDRでは標準で有効になるバックライトのエリア駆動については384分割の輝度解像度(エリア数)で対応できる明暗分布で黒が引き締まって立体感が出たり、太陽やフラッシュの眩しさがリアルに感じられたりと、ゲーム体験のリアリティを向上させる上でかなり有効な機能だと思います。ただし384エリアでも輝度解像度はまだ不足しており暗い背景で小さい輝点やUIメニューの周辺に白い靄がかかる、バックライトの応答遅延がそれなりにあって輝点の移動でバックライトが尾を引く残像が出るなど、「後光(Halo)」と呼ばれる現象が発生するデメリットもあります。
製品本体価格が2000ドルと非常に高価なことは純粋に同製品のネックですが、高解像度と高リフレッシュレートを両立させ、可変リフレッシュレート型同期機能「NVIDIA G-Sync」を使いながら384エリアの部分駆動直下型LEDバックライトによるHDR表示が可能と、全部入りな「Acer Predator X27」は、今現在得られる最高のゲーム体験を追求するのであれば買いなゲーミング液晶モニタだと思います。
以上、「Acer Predator X27」のレビューでした。
Acer Predator X27 bmiphzx 27 4K/IPS/G-Sync/HDR/144Hz
Acer
「Acer Predator X27」とほぼ同じスペックの「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」についても詳細なレビュー記事を公開中です。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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