朝の通勤ラッシュ。長峰由香もその人混みの中、毎朝電車で通勤していた。社会人三年目。仕事にも、この朝の混雑にも慣れてきた。いつも通り、前から三輌目に乗り込む。乗客の波に流され、いつも通り扉から一番離れた位置、向かい合うベンチシートの丁度真ん中のスペースまで来てしまう。
 紺のスーツにタイトスカート。仕事に行く時はその格好だ。髪は少し茶色が入っているが、それほど華美ではない。
 由香は自然と周りの人間を観察する。制服姿の高校生。スーツ姿の若者。少し禿げたオジサン。毎日同じ時間の同じ車両に乗っていると同じような人たちを見ることになる。だから特に目新しいことはない。
 しかしながら、その日は違った。
 電車が動き出すと、由香の体に後ろの男性の体が密着してきた。混雑している車内なので多少は不可抗力であるが、明らかに故意な接触の仕方だった。
 由香は体を動かしたが、上手く身動きは取れない。
 痴漢。
 その言葉が由香の頭に過る。
 由香のお尻にその男性の股間が接触する。やはり偶然ではない。こんな短時間に何度も同じように当たることなんてまずない。
 由香は少しだけ首を動かし、その男性の下半身を見る。スーツ姿の彼の股間は明らかに膨らんでいた。新聞のせいで顔は確認できない。
 この程度なら我慢しよう。もしかしたら、ほんの一瞬の出来心で、痴漢の意思もなかったのかもしれないから、とお人好しな考えをした。
 電車が駅に止まる。人が乗り降りすると、由香の立ち位置が少しずれ、人と人との丁度合間に収まり、身動きが取れない。
 吊革を持っていない左手に何かが当たる。否、故意に左手に接触している。すると突然、その手を掴まれ、何かを握らせる。
 何、この感触。
 由香は戸惑う。
 硬い。
 もう十分に大人な由香は男性経験も当然ある。
 男性器。
 ペニス。
 状況が今一つ理解できていない。
 由香は自分が電車の中にいることを再認識する。
 痴漢男に手を掴まれて。
 そして、ペニスを握らされている。
 大きい。
 余計な感想を抱く。
 掴まれた手は離れたけれど、由香はペニスを何となく握ってしまっている。
 指を少し動かしてみた。
 後ろの男の吐息が漏れる。
 感じてるんだろう。
 指をもう少し動かしてみる。

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