グラン・シャレ夢の刻

 

 

 

節子・クロソフスカ・ド・ローラ 著 

1年前、家庭画報「きものサロン」でこの方を見て、ご自分でデザインしたという着物の斬新さに驚いたものです。海外に在住され、そのほとんど毎日を着物で過ごされている方であり、学生の頃、画家バルテュスに見初められ海外に渡ったという経歴を知り、納得いたしました。

どうもまだ西洋コンプレックス(もうそんな人あまりいないでしょうね)のようなところがある私は、日本人で海外生活と聞いただけでぽーっとなってしまうのです。スイスの豪邸に着物で暮らすなんて、六本木ヒルズのペントハウスに何百平米のマンションを持ってたってかなわない。(元住人で今や鉄格子のワンルームにお住まいの方もあります)

それはともかく、この方が素敵なのは着物だけでなく、その暮らしぶりです。お庭で割烹着姿なんて写真もあります。節子さんは画家もなさっていて、誕生日のバルテュスに贈ったという手描きのストールやクッションにも目を惹かれます。巨匠の奥様だから豪勢な生活かと思いきや、身の回りのものにご自分の手を加えられるなど、豊かさの意味が違うのです。

節子さんが和の心を忘れなかったのは、かえって遠い異国暮らしがそうさせたのかもしれませんが、私も自分が日本人であること、日本の風土・文化の中で生きていることの意味、自分の足元を見つめ直すことをこの本から学びたいと思います。