箱のなかにいる

ウィザードリィオンラインをプレイする全てのプレイヤーの冒険心をくすぐる小話ブログ。 アルバロア鯖で活動するおしりハンター協会首領『いえもん じょるの』の視点を主とし、小話を展開していきます。このゲームの素敵な世界観、当ユニオンを取り巻く日常の賑わいをお伝えできればと思います。ほとんどの記事はゲーム中にあった出来ごとをフューチャーして小話にしています。

そろそろ仕事が回るようになってきたので、週末INくらいはできそうです。
生き残ってる人とまた遊びたいですね。

SSくらいは書けそうなので、ゲーム出来ないもやもやはそこにぶつけたいと思います。




目の前に川が流れ、雪が降る宿。
川辺の窓際に作者はいた。
大きなガラスを挟んで、対岸の景色を眺める。

急傾斜の斜面に、桜やイチョウの樹が並び、冬の星光に照らされてどこか儚げである。

じっと見守る内に雪が降り積もると、
やがて樹氷がつくられ、樹々が凛とした白い表情を見せる。
月の明かりで無いのが残念だと思いながら、作者はぐいと酒を仰いだ。


北の温泉、いいですね!
もう二時間はぼ〜っと樹々を眺めていますがいいものですねぇ。
 
ウィザードリィ オンライン・攻略ブログ

-カオカ・パラージ遺跡-
鬱蒼とする密林ダンジョンの奥地で、じょるのは全裸だった。
辺り一帯は湿気が充満しており、他エリアと比べて温度も高い。
じょるのの目前にはお湯が蓄えられた窪地が広がり、水面から立ち上る湯気はどこか聖なる感覚を覚えさせる。

『まさに穴場!』

一人つぶやいたポークルは、勢い良く温泉へ飛び込んだ。


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<三日前>


事の始まりは酒場で聞きつけたとある噂からであった。

『カオカ遺跡に秘境があるらしい』 

デプスゲートやレベルの高い紫紺の魔物の噂はあれど、これまでにそんな話は聞いたことがなかった。
興味を持ったじょるのは、「暇つぶしになれば」とその冒険者から「秘境」の情報を買ったのである。
買ったとはいっても大した金額でもなく、内容はずさんで信憑性の薄いものだった。
「カオカ・パラージの深部より更に奥地に未踏破領域があるらしい」
「草が巨大化していたり、湿気が強い方角にあるらしい」
「そこは無限にお湯の沸く、たった一人の大浴場という噂だ」
「でもな、ここまで具体的な噂なのに、場所を知っている奴がだれもいないんだ」

一通り話を聴き終えたじょるのは、「大浴場か・・・」とつぶやくと「ゲヘヘ」とだらし無い表情を浮かべた。 
徒労に終わってもロマンがある。
じょるのにとって冒険の動機は十分であった。

ほんのわずかなスープづくりのために大氷山でアイスドラゴンと戦った。
己の好物のために冷たい視線の中でジャイアントトードを狩猟した。
究極のおしりを探求するために、日々死線をくぐっている。

そんな日常からすれば、この旅は気軽なものだった。

カオカ・パラージ遺跡は初心者向けの低難易度ダンジョン、間違っても死ぬことはないと踏み、じょるのの装備はビーチサンダルに愛用の暗器。背中には氷魔石が取り付けられたエールの樽を背負い、腰にはひょうたんのボトルに入れられた極東の美酒「鬼ころし」を結わえ付けてある。

完全に、ダンジョンを舐めているスタイルだった。
しかし・・・
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<現在>
残念ながら、じょるのは無事に目的地に着いてしまった。
ダンジョンの奥地で、冷たいエールをきゅっとやりながら、時には美酒に酔いしれながら、生まれたままの姿でプライベート温泉を満喫している。
いいかげんに酒も尽き、空が夕暮れを告げる中「そろそろ帰るか」と千鳥足で立ち上がると、見覚えのある景色が一つも無いことに気づく。

『あれ、朝はここらへんから入ってきたはずなのに・・・』
不穏に思い探知スキルを発動するが、どうやら初めて来る場所のようだった。
『アハハ、酔っ払っちゃったかな・・・』
そう言いながらふらふらと浴場の外周を巡る。
最初は10歩毎に探知スキルを発動するが1周回っても見覚えのある場所がない。
次は5歩毎、その次は3歩毎、とうとう1歩毎に探知スキルを発動するが、全ての場所が初めて来る場所のようだった。

「ゴクリッ」と生唾を飲み込む。

『そうだ!』
脱衣した場所に戻り、TRで連絡を取ろうとするが、

『あれ・・・服がない』
『あれ・・・エールの樽も、ひょうたんボトルも無い』

あるのは念の為にと肌身離さず持っていた武器とビーチサンダルだけであった。
カッ!と走馬灯のように、ギルドで冒険者登録をした時の、駆け出しの頃に受けた助言を思い出す。

「いいか、ダンジョンは生きている」
「モンスターを生み、迷宮を生み、育っている」
「無尽蔵な成長を止めるためにも、定期的にゲートに封印したモンスターを討伐する必要があるんだ」
「ということで、お前ら駆け出し冒険者に依頼を出すぜ・・・」

カッ!
走馬灯から目覚めると、悪夢にうなされるようにぼそりとつぶやく。

『生きてる・・・』
『この未踏破領域は、いきて・・・る』

落ち着け。
冷静になれ。買った情報を思い出してみよう。

「カオカ・パラージの深部より更に奥地に未踏破領域があるらしい」
うん、あったな。

「草が巨大化していたり、湿気が強い方角にあるらしい」
うん、着いたな。

「そこは無限にお湯の沸く、たった一人の大浴場という噂だ」
うん、気持よかったな。

「でもな、ここまで具体的な噂なのに、場所を知っている奴がだれもいないんだ」
うん、死んでるな。


『あれれ~帰りの情報がないよ~。帰りの目印がないよ~www』

酒の影響とパニックのテンションが交じり合い、いまだかつて無いキャラクターを生み出す。
全裸のままでは冷えきってしまうため、今一度温泉に戻って考える。

(おかしい)
(ここに来た冒険者が全員死んでいるのであれば、噂は絶対に流れない)
(噂を流している奴か、生還者が絶対にいるんだ)

冷静になってきた頭をフル回転させて打開策を考えていると、ヌルっと足元が滑った。
不思議に思って足を上げてみると、ビーチサンダルが溶け始めている。
あまりの出来ごとに「えっ」と声を漏らすのも束の間、太陽が沈みきろうとしている密林の一帯に下卑た笑い声が響き渡る。


『アーハッハハハ!ヒャーーッハッハハハハ!』


声の主を瞬時に捉えると、見覚えのある、いやこの冒険のきっかけをつくった「情報提供者」が悪魔的様相で温泉の水面に立っている。


『まさかこんな高レベルの冒険者がカモになってくれるとはな!』
『わたしのカワイイくぁわわいい雑食植物グレータープラントちゃんの消化液は気持ちよかっただろう?』
『そろそろ神経毒も回り始めたようだな、麻痺状態の中でゆっくりと溶かされるが良い』

たしかに足先がぴりぴりする。温泉の効能だと思っていた自分が恥ずかしい。
座って足を上げていたおかげか、立ち上がれないと勘違いした敵が余計な情報を与えてくれた。
おそらくヤツはバカだ。
そして、麻痺は自分には効いていないということが確信できた。
ステータスリストでは、たしか麻痺耐性が41あった気がする。つまり、敵の麻痺能力は大したことが無い。

(ならば・・・一か八か!)

『ぐわああああ!』わざとらしくじょるのが叫ぶ。
『ハメられたのかああああこの、俺様があああ!』少し楽しそうですらある。
『動けない、うごけないよおおおお!いやだよおおおお!』
動けないなら口も動かないはずであるのだが、ひとまずじょるのは温泉、もとい消化液の中にぶくぶくと沈んでいった。


じょるのの惨状を見て歓喜に打ち震える情報提供者は、「キエハハッハハハ!」と不愉快な雄叫びを上げると「次の獲物を探しに行くか」とわざわざ言葉にして温泉を後にした。

(・・・ステルス。)
消化液の中で、短く詠唱が行われた。


-カオカ・パラージ遺跡入口-
先程まで深部で馬鹿騒ぎしていた情報提供者は、悪魔的様相からまた冒険者らしい格好を整えると今日もギルガメッシュの酒場へと向かう。

(もう少しだ・・・)
(もう少しでグレータープラントが完熟する)
(そうすれば、アレが手ニ・・・)

大事な自分語りが途中であるにも関わらず、何者かの手によって中断される。

『ナンデ・・・?』
『ナンデ・・・イキテルの?』

薄れゆく意識の中で後ろを振り返ると、全裸に両手暗器を装備したポークルが立っていた。

『オレの動機、シリタクナイノ・・・?ナンデ、グレータプラント育てテタか知りタクないノ』

死の淵で悪魔が囁く。

『動機なんざなんでもいい。やりたくてやってたんだろう?』
『王国も魔法局もギルドも感知してない案件なんて金にならん、まっぴらごめんだね』

飄々と返答を返すと、聞いてか聞かずか息絶えた悪魔が漆黒の灰となって掻き消えた。


じょるのは全裸で少し格好をつけると、手近な葉っぱで腰巻きを作りイルファーロへの帰路についた。


今日明日と温泉でまったりしてきます。 
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