とある異界の、とある時代。

その異界は星を汚す悪の組織と、星を守る使命を得た少女たちとの戦いが繰り広げられていた。

星の命運を担った少女たちを、人は呼んだ。

「魔法少女エニグマフラワーズ」と!

2-1

[エニグマMG]
くう……手の力が……。

掴んだ岩肌が冷たい風を浴びて、水に湿っていた。

彼女を支えるはずの大地は足元から遠く、この手を離し、そこへ向えば、支えるはずの大地は無慈悲な凶器となるだろう。

手の感覚が無くなっていく。無くなった手の甲を滑る水滴が、やけに時間をかけて落ちていった。

大地へ。

[エニグマMG]
もう……だめだ。

[エニグマSF]
エニグマモーニンググローリー!!

名を呼ばれた少女は顔を上げる。

[エニグマSF]
さあ、あたしの手を握ってエニグマモーニンググローリー!

[エニグマMG]
サ、サンフラワー……。で、でも……。

[エニグマSF]
なに躊躇してるの! あたしたち同じエニグマ戦士じゃない! 信じて……あたしを、信じて!

 + ――゜+ ―― 🌸 🐈 ―― +゜―― +

さかのぼること、1時間前。

2-2

エニグマモーニンググローリーは、駅前で他のエニグマ戦士たちを待っていた。

彼女は先週の戦いに、家の門限のために参加出来なかったせいか。少し後ろめたい気持ちを抱えていた。

しかし……そんなことよりも。

先ほどから隣で携帯端末を操作している少女が、エニグマ戦士のように思えて仕方がなかったのである。

[エニグマMG]
(あれって……絶対エニグマ戦士よね。あの派手な格好で違うってことはないよね。声かけてみようかな?)

[エニグマSF]
ぺっ!

[エニグマMG]
(あ。つば吐いた。違う、絶対違う。こんな人、エニグマ戦士なわけないよ。)

[エニグマMG]
(でも何かの偶然ってこともあるから……)

[エニグマMG]
あの……。

[エニグマSF]
あ?

[エニグマMG]
あ、すいません。

[エニグマMG]
(やっぱり違うわ……あんなガラ悪い人のわけないよー)

[エニグマSF]
ねえ。

[エニグマMG]
(え? わたし? わたしに声かけてきてる?)

[エニグマSF]
ねえ。そこの変な服の人。

[エニグマMG]
(あなたもね)

[エニグマMG]
あ、はい。なんでしょうか?

[エニグマSF]
ジュース買いたいから、お金貸してくれない?

[エニグマMG]
(赤の他人にそんなこという? メンタル鉄で出来てるのかしら?)

[エニグマMG]
あ、ごめんなさい。いまちょっと持ち合わせが……。

[エニグマSF]
ちょっとでいいから。

[エニグマMG]
ははは……。(何この人すごくしつこい)

[エニグマSF]
一万でいいから。

[エニグマMG]
(これカツアゲだ!)

[エニグマSF]
ほら、人来ないうちに。早く。

[エニグマMG]
(これカツアゲだ!)

[エニグマチェリー]
サンフラワー、おつかれー。あれ? モーニンググローリーもいるじゃん。

[エニグマMG]
あ、エニグマチェリー、ちょうど良いところに! ……って、え!?

[エニグマチェリー]
え?

[エニグマSF]
チェリーさん、疲れてないのにお疲れさまっていう文化やめませんか、そろそろ。

モーニンググローリーは隣のむすっとした少女を指差し、チェリーに言った。

[エニグマMG]
このひと、やっぱりエニグマ戦士なんですか?

[エニグマチェリー]
あ、そっか。ふたりとも初対面だったね。そう、彼女もエニグマ戦士だよ。

[エニグマチェリー]
元気と情熱の花戦士。エニグマサンフラワーよ。

[エニグマSF]
よっしゃっしゃーす。

[エニグマMG]
エニグマチェリー……ちょっとお話が。

[エニグマチェリー]
え、なになになに?

[エニグマMG]
わたし、あの人と上手くやっていく自信ないですわ。

[エニグマチェリー]
なんで? 会ったばかりじゃない。まだわかんないよ。

[エニグマMG]
あの人、さっきわたしをカツアゲしようとしたんですわ。

[エニグマチェリー]
うそー? ……ねえ、サンフラワー、あなたモーニンググローリーからカツアゲしようとした?

[エニグマMG]
わー! わー! わー! なんで言うんですか! そういうの一番ダメ! 一番やっちゃダメなことですわ!

[エニグマMG]
被害者の心のケア! 大事ですわ!

[エニグマチェリー]
えー、でも聞かなきゃわかんなくない? で、サンフラワーどうなの? カツアゲした? 言ってみ、チェリー先輩に言ってみ。

[エニグマSF]
オレ、ココロ、キレイ。カツアゲ、ワルイ、シッテル。ハラヘッタ、メシクワセ。

[エニグマチェリー]
だって。

[エニグマMG]
あの人、絶対ふざけて答えてるでしょ! チェリーさんも「だって」じゃないですわ!

[エニグマチェリー]
まあ、まあ、話はわかったけど、後にしない? 悪の怪人待たせてるしさ、悪いでしょ、待たせたら。

[エニグマMG]
悪の怪人を待たせたら悪いっていうのは、理解できませんけど、そう言うなら、わかりました。

[エニグマチェリー]
はいはい。じゃ、行こ行こ。怪人のとこ、行くよ。

[エニグマSF]
……。

[エニグマMG]
なんですの?

[エニグマSF]
殺すぞ。

[エニグマMG]
○△■◎×◇!? ○△■◎×◇!? ……ッ!!

 + ――゜+ ―― 🌸 🐈 ―― +゜―― +

[エニグマSF]
なに躊躇してるの! あたしたち同じエニグマ戦士じゃない! 信じて……あたしを、信じて!

[エニグマMG]
(信用ならね~~~~~~!!)

[エニグマSF]
モーニンググローリー! 手を出して!! あたしを! あたしを! 信じて!

[エニグマMG]
(二重人格なのかしら? でも……背に腹は代えられないですわ!)

渾身の力を振り絞り、モーニンググローリーは宙づりの体を上に持ち上げ、サンフラワーへと手を伸ばした。

その手をサンフラワーはがっしりと掴んだ。その手が伝えるのは、握り返す力だけではなかった。

[エニグマMG]
サンフラワー! やっぱりあなた……!

[エニグマSF]
一万な。

[エニグマMG]
(外道……)

星の命運を担う魔法少女エニグマフラワーズ。

彼女たちのやんちゃとなんとなくの流れで、この世界は守られているのである。