本書は日本語からの発想により意味を混同したり勘違いして使用してしまいがちな英単語について、「ロングマン現代英英辞典」の定義をもとに正しい理解と認識へ導く手助けをしてくれる学習書である。

1つ1つの説明がコンパクトでくどさがなくて読みやすく、内容もしっかりしていてとても役に立つ。単に言葉だけの説明に終わらず、例文(誤文含め)もしっかり掲載されており理解の手助けとなる。対象単語の「ロングマン現代英英辞典」原義(英語)からの筆者の解釈(日本語)も参考になる。筆者が実際に見聞きした体験談も随所にあり、飽きずに最後まで読める。

本書の目次を紹介させていただこう。

◆つい混同してしまう単語
1.borrow/rent/lend
2.problem/matter
3.bad/wrong
4.teach/tell
5.heart/mind
6.watch/see/look
7.in/by/until/for
8.regret/repent
9.excited/exciting
10.tasty/tasteful
11.accept/receive
12.find/find out
13.quiet/calm
14.effect/result
15.grow/grow up/raise
16.hope/wish
17.travel/trip
18.stop/give up
19.cloth/clothes/clothing
20.accident/incident
21.run across/run into
22.uninterested/disinterested
23.care/mind
24.wit/humor
25.to/into
26.recent/recently

◆意味が日本語に邪魔される
27.local
28.smart
29.notice
30.had better
31.persuade
32.feel
33.almost

◆「決まりごと」のある単語
35.exchange
36.each
37.discuss
38.this+時間を表す名詞
39.after
40.trouble
41.please
42.the
43.The reason is〜
44.next/the next
45.consider
46.一人称
47.news

◆英語ならではの用法を知る
48.worry
49.experience
50.write
51.run
52.have
53.moment
54.sure
55.do
56.behind
57.pay
58.sleep
59.see
60.easy
61.here
62.in turn

◆微妙なニュアンスを理解する
63.lover
64.challenge/challenging
65.appreciate
66.care
67.out
68.have got (to)
69.make/get

私が読んでいて、へぇ〜なるほどと思ったものを2つ挙げてみたい。1つ目は「突然出会う、遭遇する」という意味のrun intoとrun acrossだが、両者には以下のようなニュアンスの違いがある。

●run into
(良くないものに)突然出会う、遭遇する ⇒マイナスイメージ
The ship ran into a storm.

●run across
(良いものに)突然出会う、遭遇する   ⇒プラスイメージ
I ran across her.

2つ目は「経験」という意味のexperienceだが、状況によって不可算名詞で使用したり可算名詞で使用したりする。その違いは以下の通りだ。

●experience
今までの体験の積み重ねとしての経験 ⇒不可算
I know from experience how frustrating this work can be.

●an experience/experiences
ある具体的な出来事による経験     ⇒可算
Our swim with wild dolphins was quite an experience.

このようにニュアンスを理解した正しい単語の使い方ができない学習者は多いと思う。恥ずかしながら私もそうである。ニュアンスの勘違いが起きる原因は英単語を日本語訳で覚えていることに起因する。我々が日本語の意味は日本語の辞書から理解するように、本来英語の意味は英英辞典から理解するのが正しい。ところが受験対策などの単語集では、英英辞典の原義は省略されており日本語訳が簡潔に記載されていることがほとんどだ。これだとその英単語の持つニュアンスを得ることは難しい。従って、受験英語で育ってきている我々多くの日本人は英単語の持つニュアンスを掴みきれないまま今に至っていることになる。

英語の上級者はニュアンスの理解を大事にする。なぜなら日本語でもそうであるように、コミュニケーションにおいて、発したり書いたりした言葉のニュアンスや言外の意味が重要になるケースがあることを知っているからだ。コミュニケーションにおいて大事なのは細かな文法よりも言葉の持つニュアンスの正しい理解に基づく発信であると言っても過言ではない。

ニュアンスの理解が役立つ場面の1つに英作文がある。入試でよく見られる、与えられた日本語を英語に訳す和文英訳もしかり、与えられたテーマについて自分の意見を書くエッセイのような自由英作文においてもそうである。最近ではエッセイは大学入試でもよく出題されるようだが、英検1級の1次試験、TOEFL、TOEIC SWでも出題される。我々は英作文を書く際、自分がどの単語・表現を使うのがもっともふさわしいのかをその場で瞬時に考えさせられている。文法や語彙の知識、表現の幅広さ、論理展開の構成や巧みさ、常識や社会的知識、自分の考えを瞬時にまとめる能力など、色々なものが試される英作文は実力差が出やすいし、その人の英語力と地頭の良さを測る上で最も有効な手段と言える。ここで語彙の選択に効力を発揮するのがニュアンスの知識だ。

本書からいくつか抜粋するが、例えば同じ「旅行」でもtravelとtripではニュアンスが違う。同じ「成長する」でもgrowとgrow upではニュアンスが違う。同じ「後悔する」でもregretとrepentではニュアンスが違う。同じ「借りる」でもborrowとrentではニュアンスが違う。英作文において該当する単語がたった1つしか出てこないのであればそれは仕方ないが、こうしたニュアンスを理解した上で相応しい方の単語を選択できることが望ましいし、そうして書かれた英作文は英語ネイティブから見ても頷ける内容となるのである。発想がそもそも日本語⇒英語ではあるが、日本語ネイティブの我々日本人が初めから英語で発想して英作文を書くこと自体至難の業だ。

”日本人の致命傷”とは言い過ぎだと思うが、こちらの意図を英語で正しく伝えるためには、英単語の正しいニュアンスを理解しておいた方がよい。

(補足情報)
・新書版サイズ(173×106)
・205ページ
・付属CD/DVDなし
・2001年11月25日初版発行

本書はEnglish Journal(アルク)の連載記事を基に加筆修正してまとめたものとのことである。現在は絶版になってしまっているのか、下記Amazonでも中古品からしか購入できない。しかしこれだけ有益な情報が1円で購入できるのであれば超お得である。あるいは図書館で借りてきて読むことをオススメする。

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