2005年04月14日

「謝罪」について

近頃、日本に対して、「謝罪」がまだまだたりないという罵倒があまりに多いので、少々考えました、「謝罪」とは本来どんな行為であるのかと。ある加害者Xが被害者Yに対して何らかの暴力(又はそれに代わる何らかの悪行)を加えたとします。被害者Yは加害者Xに対して、当然謝罪を求めるでしょう。この時、加害者であるXに人並みの理性があれば、当然謝ります。私の場合で言えば、マンションの駐車場で隣に止まっている車のフロントバンパーをこすってしまった場合、かすり傷だったのですが、被害にあった車のオーナーの所へ行き、頭を下げた後で、保険金支払いの手続きを粛々と進めてもらいました。これは国際関係でも同じことです。日本の軍隊が中国に入ったこと、これは誰も否定しない事実です。それから、日本の軍隊が、英蘭が植民地統治していた東南アジアとは異なり、必ずしも歓迎はされなかったこと(満州国の場合は、当時割拠していた軍閥の支配地域よりも治安が良かったので、周りの住民がどっと入ってきたのですが)も事実です。このことを認めて頭を下げることを日本政府はずっとやってきました。1972年の日中平和友好条約でも、その謝罪と反省の旨は明記されているはずですし、被害に対してお金で償えるものならばということで、賠償金という名目ではないにしても、合計金額何兆円という日本国民の血税である巨額のODAを中国に投じてきました。 
 私が与えた車のバンパーのこすり傷と日本軍が中国で行った悪行を同列に扱うなという声もあるかもしれません。ただ、XがYに何らかの傷を負わせ、そのことについてYに謝罪をするという点では構造的に同一です。さて、ここからが本題なのですが、私が傷つけた車のオーナーが、その後半年或いは1年経ってから、突然、お前には反省の気持ちが足りないようだと詰め寄られたら、どうするかです。普通の日本人、いや中国人(アメリカ人は言うに及ばず)であっても、その時のことは既に終わっていることだと答えるでしょう。その時に改めて「本当に申し訳ありませんでした。二度といたしません」と深々と頭を下げるでしょうか。そこで何と頭を下げてしまったのが、かつてのエコノミックアニマル、日本の歴代の首相です。竹下、海部、細川、そして村山程度ではどうにもならなかったのです。今の日本政府及び日本人の多数が感じているのは、まさにその繰り返された謝罪行為に対する後悔の気持です。 
 謝罪という行為は、被害者の側の主体性を重んじたものでなくては、実は意味がないのです。謝罪を受けている被害者は、加害者の気持ちを確かめるすべもない上、何度も謝らされていい加減嫌気がさしている加害者の気持ちを必要以上に事細かに咎めるようになります。お分かりのように、このような「高圧的な謝罪要求ー嫌々ながらの仕方無しの謝罪」の悪循環はとことん行くとろくなことになりません。ヘーゲルの「主人と奴隷の弁証法」を思い出す方もいるかもしれませんが、戦後の今までの日中関係及び日韓関係では、はっきり言ってしまえば、中韓が「主人」役、日本が「奴隷」役でしたが、「小日本」と罵っても、結局の所、中国人の自尊心は一向に満たされない運命にあります。その「小日本」や世界の他の国から一向に承認・尊敬されない自分達の姿が(中国政府の対応に批判的な海外メディアの報道を通じて)最後に残像として残るだけだからです。悪循環を止めるのには、まずは、中国を中心とする冊封体制を前提に外交関係を考える中華思想を中国/韓国が捨てること、同じことですが、「アジア」は中国・韓国・日本だけではないことを認識すること、「歴史問題」(「従軍慰安婦問題」を含む)を捏造・利用して日本から譲歩(金銭、資源、経済的権益〜上海新幹線など〜や領土)を引き出そうとすること(これは単なるたかり行為ですので非常に不愉快です)をやめること、これしかないです。要は、心の問題を外交問題に転化・利用しないことですが、これが分からないのでしょう。
 今本当に問題になっているのは、日中関係だけでなく、勝てば官軍の戦勝国連合によって作られてきた戦後の国際社会の秩序自体だと思います。先日来日したシラク大統領が日本の安保理入りを無条件に支持する旨を表明したのは、日本の加入がアメリカに対する牽制になると信じているからです。こうした国際秩序が揺れ始めている状況だからこそ、国力に不釣り合いな既得権益を、安保理常任理事国という形で得ている中国は日本の国連安保理入りに強硬に反対するのです。ただ、一党独裁の共産党政府が言うよりは民衆がそう言っているからと主張する方が国際的に説得力があるので、あのようなピクニック気分の人が混じっている官製デモをでっちあげたのですが、英米新聞を初めとする海外メディアの批判的な論調を見ると、寧ろ逆効果だったようです。 
 町村外相が今日午前中の参議院外交防衛委員会で、在外公館を守るために自衛隊を派遣することを検討すると発言しました。これは致し方ない論理的な選択です。通常守らなくてはならないはずの在外公館を守る義務を中国政府が放棄したのですから、誰が守りますか。日本人は日本の軍隊が守る以外にないではないですか。あまり良い考えとは正直思えないのですが、最悪の場合は、ここまで行くと言う国家意志を知らしめておかないと、交渉というものは進みません。逆に言うと、中国政府は自衛隊(という名の、中国人民解放軍よりはるかに装備の良い軍隊)を中国に派遣する議論を始める口実を日本政府に与えてしまったことになりますから、先日の反日暴動は中国にとって有害無益だったのです。普通なら、日本の自衛隊などおよそ中国ではお呼びではないのですが、中国の警察はデモの参加者と一緒になってはしゃいでいるのですから、あの映像を見ながら、これでは日本人の安全が保証されない(実際に意識不明になるまで殴られた日本人が居ます)ので自衛隊を派遣したいと言われて、中国政府は断れますか。常識的に考えたら、断れないでしょう。自分の国の警察が真剣に職務を遂行しないのですから。 
 つくづく思うのですが、中国は、ウィーン条約に批准した以上、状況がどう変わっても、条約は遵守しなくてはいけません。警官が個人的理由で日本人が嫌いだったとしても、日本人及び法的には日本の領土である日本大使館を保護する義務があります(日本大使館への投石行為は国境侵犯と同じことです)。こうした事件及び当局の対応を見るにつけて、中国は法治国家ではなく、未だに前近代そのものの人治国家だと痛感します(だから汚職文化が一向に衰えない)。最前線にいる日本人ビジネスマンがこの問題を一番痛切に感じているでしょう。

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この記事へのコメント
先日はトラックバック、ありがとうございました。

日中のここ最近の問題に関しては、まったくwnmさんが述べられていることに同感です。どうしてそんなに何度も何度も「謝罪」しなければならないのか。最初は「本当に申し訳ない」と感じても、あまり何度も謝罪「させられる」と、反省の気持ちがなくなるばかりなのに。
でも「もう終わったことじゃないか、未来のことを考えようよ」と言うのは日本であってはならないということなのでしょうね。それを中国側の誰かが言い出すのはいつなんでしょう? ゴールデンウイーク後半に仕事で西安に行くことになったので、少し不安です。
Posted by tamago at 2005年04月14日 21:10
TB有難うございます。おっしゃるように、大きな戦をして国を滅ぼしかけたのですから、本当は100年くらいは「臥薪嘗胆」で、よくよく負け戦の研究と反省を重ねなければならないのではないでしょうか。「一億総懺悔」で、悪い夢を見たとか、軍閥に騙されたとか、「教え子を戦場に送るな」だとか、無数の責任丸投げ呪文では、何も解決しません。こちらは米国に精一杯媚を売って生き残った連中が偉くなり、あちらのチャイナは天下のソ連を相手に新しい国を建ててここまで持って来たのですから、余り日本は居丈高にならないようが良い。
Posted by 旅限無 at 2005年04月14日 21:16
トラックバックありがとうございます。wnmtohokuさんがおっしゃるとおりだと思います。海外メディアもデモ(あれをデモというべきか)を批判的に捉えているのですか。
ただ、国家利益を考えると、中国(韓国)は日本がこのことに対して譲歩してくる余地があると踏んでいる以上、何度でも蒸し返すでしょうね。
それに対して日本側は上手く攻撃の芽を摘むべく防御する必要があるのに、それができていないことは残念です。首相が個人的信条から靖国神社に参拝する前に、それがどれだけ国家にとって損失になるのかを諭す側近はいなかったのでしょうかね。日本外交は将来も不安ですね。
Posted by gardenpath at 2005年04月14日 21:46
TBどうもです。
理路整然として素晴らしい文章ですね。

Posted by king curtis at 2005年04月14日 22:14
 はじめまして。とあるブログのコメント見て辿りつきました。その「とあるブログ」とは、「小泉内閣は今こそ責任を取って総辞職」とかいって、日本だけに非があるような書き方してるところですが・・・

 歴史問題に関しては、日本は過去の「業」について正面から立ち向かわなければいけないのは確かでしょうけど、必要以上の謝罪は、する事も求める事も返って逆効果なものなんですね。むしろ、過去ばかりを追及するより未来を語ろうとする姿勢がないのか、という疑問ばかりが浮かびますね。
 この事を分かりやすく理路整然と書いてくれた管理人さんには感謝です。
Posted by ユウキュウ at 2005年04月14日 23:07
トラックバックありがとうございました。

ご指摘のとおり、1972年の日中共同声明にて、
日本の中国への謝罪は正式にしてあります。

また、この声明にて、賠償は求めないことも明記されています。
日本は中国に対し、ODAや日系企業による税収などの利益を与えています。

日本政府はこの事実をもっと主張して良いかと思います。

さて、今回の一連の反日運動は、改革開放の路線をとって以降、その存在意義を厳しく問われつづけている中国共産党の延命策だと考えます。

ここで自衛隊を派遣することは、日本側に外交理論上の整合性はあっても、実際は中国政府の挑発に乗る形になるのでアウトだと思います。

ここは、自衛隊の動員費用で中国の警備会社のガードマンを雇うなどの方がベターだと考えますがいかがでしょうか?
Posted by なりまさ at 2005年04月14日 23:52
TB有り難う御座いました。
おそらく中国の人民は、日本が中国にした謝罪や賠償、ODAなどは知らされていないのだと思われます。
仰るとおり今までの卑屈な外交交渉が失敗だったのです。
大東亜戦争については謝罪済み、賠償も決着済みと突っぱね、教科書問題は内政干渉だと、逆に日本敵視教育こそが反日デモの原因だと言ってやれば良いんです。
Posted by 海老名誠 at 2005年04月15日 00:01
はじめまして。
つい先日まで、私も、blog本文と同じ様な事を思っていました。
しかしながら、最近少し考えを変えています。
日本は確かに謝罪しました。日中共同宣言や平和条約。
また細川首相の就任演説や、ネットでは忌み嫌われている村山談話。

これら、既に行った謝罪の文言に対して、現在の日本は誠実であると言えるのか・・・と思うのです。
Posted by 佐藤 at 2005年04月15日 11:31
細川演説では「侵略戦争であった」と明確に言明しています。村山談話などでも、「特に歴史認識では、周辺国に配慮云々・・・」と言っています。
なのに、新しい教科書では「自衛戦争」「南京事件」
周辺国の抗議を無視して教科書の内容を後退させています。
これでは、当事者たる中国韓国は元より、第三者が見ても???と思うのではないかと、そう思うのです。
南京の件を丸ごと否定している学者は居ないと聞いています。
犠牲者数を、20〜25万から、2〜5万程度とする為に、ここまで大きな摩擦を起こす事が、果たして懸命な事なのでしょうか。
Posted by 佐藤 at 2005年04月15日 11:31
これまでの謝罪も小泉首相の靖国4年連続参拝で台無しになっています。

中国政府が火を焚きつけ、日本政府が油を注いでいるのが現状ですね。
Posted by マサガタ at 2005年04月15日 20:21
こんばんわ。確かに、「戦勝国の論理」で作った国際秩序がおかしくなっていますね。で、中国はドイツの常任理事国入りを支持して、「敗戦国も大きな役割を与えたい」みたいな理解があるような事を装っています。インドやブラジルにもすり寄って、「既得権益保護」をカムフラージュしていますね。
我が国の首相も1972年の国交正常化に際して謝罪も補償も済んでいる、から、好きなことやっているようですが、相手はああいう国です。なにも神経逆なでしなくても、と思います。真摯に神社にお参りする、と言うような姿勢が伝わっていないのも事実ですから、もう少し考えた方が良いですね。参拝をやめろと言うことではなくて。
Posted by f16fightingfalcon at 2005年04月16日 00:25
はじめまして。TBさせていただきました。
最初、わたしの記事では軽々しい感じでまずいかなと思ったのですが、私のブログの記事に『中国人さん』からコメントが入りまして、もっと勉強しろということだったのでいろいろな方面のブログを拝見してまわっています。
両国の政府(のやり方)が悪いとしか思えません。国と国をつなぐべきところで歪んでいるように感じます。
Posted by かず☆こ at 2005年04月16日 16:53
コメントを下さった皆様、引っ越しのため、レスが遅れましたが、再びアクセスできるようになりましたので、遅ればせながらお返事します。私は基本的には、謝罪はこれ以上一切必要ないし、断じてするべきではないと思うのですね。靖国神社参拝も絶対にやめるべきではなく、終戦記念日に首相だけではなく、天皇が参拝するべきだと思います。それで、日本人によっての戦後が終わります。中国や韓国など無視すれば良いだけです。この記事を投稿した後も、あちこちに反日暴動が広がっていますが、ものを壊したことや日本人を傷つけるのを容認する警察官の存在など、中国は昔ながらの古くさい人治国家だなあという印象です。
Posted by wnm at 2005年04月17日 13:14
日本で中国人だからという理由で誰かを半殺しにしたら、中国は大騒ぎでしょう。3000年の伝統を誇る汚職(中国の子分、韓国もそれをそのまま引き継いでいます)がはびこるのもそのためです。図体だけはでかいのですが、法治主義に基づく近代国家ではないのです。そもそも何で中国がオリンピックを開催できるのか不思議で仕方ありませんが、決め手は賄賂だったのでしょう。まあ、核武装して、北京・上海などの大都市に核弾頭を向けるしかないでしょう。粗暴な連中は暴力で圧殺するしかありません。
Posted by wnm at 2005年04月17日 13:14
こんにちは。TBさせていただきました。
「人類皆兄弟。話せば分かる。誰とでも仲良くできる」というのを理想にするのは良いのですが、それが通じない相手もいるということを、そろそろ日本人は知るべきです。
あっちが屁理屈をこねるなら、こっちも老獪にかわしつつ、できるだけ損害を被らないように知恵を使うしかないのでしょう。正面きって“正論”ぶつけても、解決しません。なんとか戦争状態にならずに、狭い海をはさんでお互いに牽制し続けるしかありまへんやろ。
Posted by rabbitfoot at 2005年04月17日 16:41
ちょっとwmnさんのコメントに失望です。

>中国や韓国など無視すれば良いだけです。
無視した結果が、今回の騒動だと思ってます。靖国参拝をするなら、それで結構。ただ相手を説得できるなら、の話です。今の小泉政権はそれを怠ったから、大きな軋轢を生む結果となっています。「無視すればいい」と一言で括るのは簡単ですが、そんなものは政府の怠慢だと思ってます。

>核武装して、北京・上海などの大都市に核弾頭を向けるしかないでしょう。
何も「相手に合わせる」こともないでしょう。言い過ぎかと存じます。

日本の外交戦術はとにかく稚拙なので、それこそ多くの方がコメントで残しているように「老かいさ」あるいはサッカー用語で「マリーシア」を身につけてもらいたいもの。今夜の外相会談も長引きそうで結論がなかなか見出せそうにないですが、事態解決に向けて何とか頑張ってもらいたいものです。
Posted by ユウキュウ at 2005年04月17日 19:30
「無視する」と書いたのは、何もしないということではありません。スーパーで幼児が買ってほしいお菓子をねだって、母親に向かって大声で泣き叫んでいるときに買い与える親は
(最近はそういう親が多いのかもしれませんが)アホでしょう。賢明な母親なら、無視するでしょう。根比べになっても仕方ないのです。気の短い母親なら、体罰もあるかもしれません。要は、わがまま放題に育った子供(=中共)を日本が躾けなくてはならないのです(笑)。その躾の一環として無視するということです。また、核武装についても、インドが核武装をしたときに日本で散々非難する声がありましたが、インド人の話では実際にパキスタン側の態度が目に見えて変わったそうです。軍事力の増強というと、直ぐにレベルが低いというご立派な方がいますが、最低限の武力による威嚇を背景にしない国家は相手にされません。
Posted by wnm at 2005年04月17日 23:59
日本が今現在の発言力があるのも、経済力に加えて、安保条約によってアメリカの核の傘に入っているからです。その事実から目を背けて、綺麗事(マリーシアと呼ぼうが何と呼ぼうが良いですが)だけ並べても駄目なのです。とりあえず長期戦を覚悟して、今回の反日暴動・反日テロに対して、謝罪を何回でも執拗に要求し続け、中共政府に圧力をかけていく他ないでしょう。今回の一件でしばらくはいろいろ言えるでしょう。ただ、こういう事態に対して「だから、シナ人は.....」と真っ先に発言しそうな石原都知事が沈黙しているのは何か理由があるのでしょうか。別に何か言ってほしいというわけではありませんが、ちょっと不可解ではあります。でも、中国人は日本人に何も悪いことをしていないとは随分寝ぼけた発言で、笑ってしまいました。ここまで独善的な国(政府だけではなく、国民の多くもそうでしょうね)も珍しい。
Posted by wnm at 2005年04月18日 00:11
TBありがとぉ (^_^) 物凄い洞察力、感服致しました。性質の悪いヤクザに一生因縁を付けられたのと同じですね。骨の髄まで吸われても、しつこく付き纏う蛆虫ですね。償う分だけ、馬鹿を見るということですね。
Posted by みん at 2005年04月21日 18:25
TBありがとうございます。

なんというんでしょうかねぇ、殺人犯が
「俺が殺人をしてしまったのは親の教育、
ひいては俺の親を貧乏にしてしまった日本
政府の責任だ。まず日本政府が俺に謝罪
しろ」と言ってるようなもんです。
普通なら精神鑑定されてもおかしくない
発言ですよね。
色々な意味で突っ張らざるを得ない国内
事情を抱えているにしても、まず謝罪する
という姿勢を明確にしていれば、ここまで
こじれることはなかったと思います。
謝らなかったことで今回中国が失ったものは
予想以上に大きいものなのかもしれませんね。
Posted by yasukichi at 2005年04月22日 00:00