2005年09月30日

日本人は本当に「衆愚」的国民か

最近、先の選挙で、日本人の投票行動が「衆愚的」であるとか「ファシズムの再来」であるとか、自分に都合の悪い結果が出た民主党系の人達が、負け犬の遠吠えのように、あちこちのブログで空しく吠えまくっていますが、本当にマスコミは政府寄りの見解ばかり流していたのでしょうか。小泉劇場の実況生中継に徹していたでしょうか。私はむしろ逆ではないかとの印象を持っています。小泉翼賛選挙どころか、サラリーマン向けの週刊誌、週刊現代や週刊ポストは、自民党勝利後の大増税でこんなに大変になるという特集、郵政民営化はやっても大した意味がないことを強調する特集を組んだり、「落下傘候補」のスキャンダル探しに余念がなかったのではないでしょうか。はっきりと政府見解と反対の論陣を張る新聞(今さら言わなくても分かるでしょう)もありました。確かに、国民の側に判断する時間が少なかったことは否めませんが、これだけ多くの政治的/財政的な問題(例:年金、医療福祉、郵政民営化、特殊法人改革、人権擁護法案/外国人地方参政権付与、靖国神社参拝、東シナ海海底盗掘問題、等々)を同時に考慮に入れたとしても、投票の際の選択肢はたった二つしかなかったのです。
 そもそも人は意思決定を行う際に、時間的な余裕がなく、切羽詰まった状況では、一番大事な政策(これは人によって分かれると思いますが)への賛否によって決定を下すことが知られています。優先順位が下位におかれたものは遺憾ながら切り捨てざるを得ないということです(言語理論でも似たような考え方をするメタ理論があります)。これを指して「衆愚政治」と言うなら、それも構わないでしょう。ただ、そのような「日本人=暗愚で大衆煽動に乗りやすい馬鹿な国民」観を持っていると思しき人たちは、もし民主党が圧勝したら、同様に「ファシズムの再来」を叫ぶでしょうか。ジャスコ岡田をヒトラーに例えていたでしょうか。「市民の勝利」だの「憲法第9条の勝利」など、デタラメな大義名分をくっつけて、絶対にそのようなことは言わなかったでしょう。自民党が圧勝するか、民主党が圧勝するか、両者が相拮抗して実質的な政策を実行することが不可能になるか、三つの予想された結果の中では、今回の選挙は一番まともな選択だった気がします。与党幹事長が、特別国会の代表質問で首相から「特別会計」のゼロベースの見直し(!)という回答を引き出しているのですから。
 私は、選挙期間中のマスコミの反自民/反小泉報道の量の圧倒的多さからすると、もし勝利を収めるとしても、自民党/公明党の辛勝ではないかと予測していました。議席数から見た自民党の圧倒的な勝利と比例代表での民主党と自民党の投票数の拮抗ぶりという結果は、バランスのとれた良識ある結果だったのではないかとつくづく思います。反民主党的なインターネット上の潮流とは(どちらかと言えば)逆向きであった扇情的報道を、多くの国民が真に受けなかったと言うことを示している点で画期的ではなかったのではないかと。自民党はたとえ勝ったとはいえ、次回の選挙で今回の民主党に起きたことが、そのまま自分達に降り掛かってくる可能性を考えると、安心できないはずです。選挙後に、想定の範囲外の当選を果たした杉村太蔵議員を執行部が呼びつけて、べそをかくまで説教したことなど、その危機感の現れです。「小泉=ファシスト」TBを飛ばしている人たちは、自分たちは非常に視野が広くて賢い人たちで、数多くの問題点について真摯に考え抜いて、民主党に投票したのだと言いたいのでしょうが、自民党に投票した人たちも同様です。今回、たまたま勝ち組に入れなかったからという理由で、海外の「高級」新聞の自分たちに都合のいい記事を恣意的に引用しながら、日本人がいかに愚かであるかについて懇切丁寧に力説している方々、「衆愚政治」批判はもう空しいのでやめませんか。選挙結果は4年間は変わりません。あなた方は日本のエリートを気取っているのでしょうが、あなた方以外の誰もそんな風には思っていないのです。

最後に、以下のエントリー、実に秀逸な心理分析です。偶然見つけたのですが、私が上でごちゃごちゃ書いたことは、この分析に比べれば、何と言うこともありません。その下のエントリーは週刊朝日に連載の「船橋洋一の世界ブリーフィング」ですが、こちらも基本的には同じ趣旨の洞察をしています。

外から日本を考えた2(選挙結果をうけて)
小泉自民党圧勝は、小泉「毅然」スタイルの勝利。背景に中国の挑戦

マスメディアが執拗に小泉「独裁」批判を続けているのは、自分たちの新聞やTVを介した宣伝が、従来とは異なり、国民に思うように届かなくなっているからだと思われます。メディアのパロッティングは確かに恐ろしいものですが、そのパロティングに踊らされないで済むだけの内容のあるブログをウェブ上で読んでいた人も多いと思うのです。ただ、圧倒的勝利を収めた自民党も、特殊法人を削減し、特定財源を可能な限り一般財源に切り替えて無駄な支出を削るのも良いのですが、やはり増税をやるのであれば、何らかの景気浮揚策(住宅減税に限らず、利権の絡まない、より公共性・集約性の高いインフラ整備事業)も同時に実行しないと、国民の財布のひもが締まる一方で、本来増えるはずの税収が差し引きプラスマイナス0(又はマイナス)になってしまうのではないかと少し心配ではあります。

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この記事へのコメント
つくづく思うのは、日本人は方向が決まるまでは実に遅いが、走り出すとまっしぐらと言うこと。戦後の高度成長もこの「まっしぐら主義」で達成した。小泉さんはリバタリアン。リバタリアンの流れが経済の活性化をもたらすことは、すでに歴史的に証明された間違いのないところ。方向は間違っていない、後は走るだけ。

今回のドイツの総選挙結果を見て、ドイツは遅れているとやはり感じた。ドイツではへんに豊かさが実感できるだけに危機感が少ない。日本では、田中角栄型の地方への利益誘導政治のおかげで日本経済がここまで疲弊してしまったことが、今回の国民的決断につながったとも言える。そう思えば、これは角サンのおかげでもあるな。
Posted by Leilan at 2005年10月01日 06:34
はじめまして。おっしゃっる主旨、分かります。
私も少しだけ、得票数と「民意」について考えてみたことがあります。
http://blog.goo.ne.jp/keel03j/e/d6b5d26c0dca6f679ed517ea9282aa5b

私自身は、「衆愚」という言葉も「ファシスト」という言葉も使わないのですが、それでもテレビというメディアが人々に与える影響の大きさは無視できないと思うのです。
ネット上の情報や言説はもとより、特定の週刊誌でさえも、極論を恐れずに云えば、大新聞でさえも、テレビという媒体が人々に与える影響には及ばないと思うのです。
様々な情報が溢れる社会ですが、情報の「量」と「影響力」の積を考えるとき、そこに本当に偏りがなかったかと問うことも必要かと思うのです。

(文字数制限にかかってしまいましたので、二度に分けてコメントします。)
Posted by キール at 2005年10月01日 11:43
(つづきです)

「衆愚」とか「ファシスト」という言葉を使う人々はただ、パソコンなど日常的には使わず、新聞や週刊誌をゆっくり読む時間もなく日々を過ごすようなごく普通の人々の投票行動が、権力者の情報操作によって容易にコントロールされ、選挙結果に大きく現れるような世の中に警鐘を鳴らしたいのだと思います。
(能動的に情報を取ろうとしないことを「愚か」だとか、そういうこと云うつもりは、私も全くありません。)

(まだ続きます(汗))
Posted by キール at 2005年10月01日 11:44
(つづきです)

それでも最後に言わせて頂くならば、小泉純一郎という政治家は、郵政民営化以外のことには何の情熱も持っていないような気がしてならず、そのような政治家を首相にした政権にこれだけの「数」という力を与えてしまった今、以前の内部バランスを失いつつある「自民党」という政党が、この機に乗じて何をしようとするのかを注意深く見守って、声を上げ続ける必要はあると、そう強く思うのです。

そうした声までもが「負け犬の遠吠え」と括られてはならないと、そう強く思うのです。

(長文失礼致しました。)
Posted by キール at 2005年10月01日 11:45
「衆愚」だって?

飯を喰いに入った食堂でだな、
古くて宇治が浮いてる腐れ共産麺、
枯れた九条葱だけの執行猶予付き社民焼き、
中華産無許可毒性添加物テンコ盛りの民社丼、
利権のワカメの匂いが残った増税自民定食。
それぐらいしかメニューにない。

究極の選択で自民に投票したんだぞ。
考えた上で、他よりマシと思ってな。

Posted by 究極2 at 2005年10月01日 22:32
Leilanさん、いつもコメント有り難うございます。日本は今引き戦の最中なんだなあと思います。かつては地方都市の中心部に集中していた各種の公共施設を郊外にばらまくこと政策がとられていましたが、今や、人口減少に伴ってバラバラに点在する格好になった公共施設を中心部に戻すような政策がとられるようになりました。今から眺めると、壮大な無駄のように思えますが、「田中角栄」的な全国平準化計画は歴史上の一過程として必要だったとさえ言えるのかもしれません。ただ、平均点を上げる政策から、拠点集約政策に反転するのが如何せん遅すぎたかなあ。
Posted by wnm at 2005年10月01日 23:28
はじめまして。TBさせて頂きました。
非常に勉強になる内容ですし、おっしゃることはその通りだと思います。
また勉強しに伺います!
Posted by masa at 2005年10月02日 19:25
そんな事より、一人でも多く子供生めよ。
徴兵制度が導入されるから、一人でも多くの男子を生みなさい。
日本は現在でも中国からミサイルの標的にされてるんですよ。
立派な事いったって、国盗られたら終わり!
これは一般生活でも言えるわな。
「金持ってたって、強盗にあって殺されたら終わり」って事だな。
Posted by ppp at 2005年10月07日 11:07