2006年03月23日

北陵クリニック事件、仙台高裁判決

仙台市泉区にあった北陵クリニックで筋弛緩剤を混入して患者数人を殺害したとして准看護士、守大助被告が拘置されてから、もう5年が経ちました。彼が逮捕される前後、私はまだ仙台には来ていませんでしたが、この事件はどういうわけか、よく覚えています。記者会見をした半田郁子副院長の胡散臭さが非常に印象深かったせいかもしれません。彼女の夫、半田康延が東北大学医学部教授で、県の財界・政界が共に北陵クリニックを強力にバックアップしてきたというニュースの報道を聞いていて、ああ、これは冤罪だなという予感はありました。半田康延・半田郁子並びに病院の管理体制の不備等の責任を生け贄の山羊である一看護士に全て押し付けるんだろうなと。もちろん、私の直感など全く当てにはならないのですが、事件の直後から言われていた「急変の守」という病院関係者Sが言いふらした噂(守被告が担当の時に限って患者の容態が急変/悪化する〜そもそもこれは必ずしも事実ではない)については、言いたいことがあります。

北陵クリニック










 医療機関に勤務したことがある人ならわかることだそうですが、特定の担当者が宿直になったり、あるいは特定の担当者同士(看護士、介護士、等々)が組み合わさると、患者の容態がなぜか急変/悪化するという事態はわりと普通に観察されていることのようです。これはもちろん裁判所で主張できることではないでしょうが、「容体の急変」は、守被告に限ったことではないのです(そもそも、彼が当直ではない日にも患者の急変は起きていることから考えると、「急変の守」という言明の信憑性は疑わしい)。ある特定の業者が来る日に限って、患者の容態が悪化することが繰り返し起きたので、出入り禁止になった業者までいるそうです。このいずれの場合でも、担当者又は出入り業者が患者の容態を変化させるようなことを何かしたということはありえないので、半ば冗談交じりで、担当者をさりげなく変えるのだそうです(真面目にやると、人間関係がこじれて面倒なことになります)。なぜこうした特定の担当者(の組み合わせ)が患者の容態に影響を与えるかは謎のままです。因果関係がまず考えられないにも関わらず、ある事象が一緒にセットで生起することを「共時性(シンクロニシティ)」と呼ぶことがありますが、共起関係を因果関係と取り違えることはあってはならないでしょう。まして、被告がたまたま夜勤が多かったのだとしたら、夜に患者の容体が悪化する確率が高いのは当たり前ではないでしょうか。

 裁判自体については今はうろ覚え状態なのですが、そもそも筋弛緩剤を混入したという被害者の肉親の証言にしても、医療関係者でない素人が筋弛緩剤を入れていることを本当に目視で確認できるのでしょうか。私は疑わしいと思います。また、筋弛緩剤を入れても「急変」は起きないという医者からの証言もあるそうです。更に、本来保存しておくべき被害者の血液/尿サンプルを紛失するという致命的なミスを宮城県警は犯しています。おまけに、尿中から検出された筋弛緩剤の濃度は、実際に投与したとされる量を大幅に超える量を投与したのでなければありえないほど異常に高かったとか。まさかとは思いますが、警察の方で後から筋弛緩剤をサンプルに混ぜたという証拠の捏造はなかったのでしょうか(アメリカでは、黒人が犯人の場合には証拠のでっち上げはよくあることです)。県の政財界がバックアップしている「最先端病院」を潰してはいけないという圧力が働いた可能性は無いのでしょうか。また、守大助被告の所謂「自白」についても、宮城県警の取り調べは凄惨なものだったことが彼の自著にも書かれています。自白の信頼性は限りなく低いのです(守被告の父親は現役の警察官だったはずですが、今でも勤務しているのでしょうか)。

 それから、そもそも彼の「動機」は何でしょう。上司の手際が悪いと悪口を言ったことが動機とされているようですが、無能な上司について「あのバカ、死ねよ」くらい酒の席等で言ったことのない人はいないのではないでしょうか。動機の解明は極めて不充分です。今回の仙台高裁判決の一番恐ろしいところは、同じ犯行現場で同じような「手口」で同じ「犯行」が繰り返された時に、客観的な物的証拠が無くても、同一犯の犯行と推論して差し支えないという論法が採用されたという点です。これはTVニュースで、土本元検事が「画期的な判断」と述べていましたが、一体どこが「画期的」なのでしょう。模倣犯が出たときには、どうなるのでしょうか。表面的な検挙率だけは上がるでしょうが、これでは冤罪の温床になりかねません。

 なお、数々の問題を引き起こし、医療裁判の被告席にも座った半田郁子、仙南の岩沼市の南東北総合病院で小児科医師として今でも勤務しています。岩沼市内外に住む人は自己責任で診察を受けるべきでしょう(診療科目・医師・診療時間一覧表)。

仙台筋弛緩剤混入事件関連記事のまとめ
救援会岡山県ニュースの記事から
北陵クリニック筋弛緩剤点滴事件について

<関連外部ブログ・エントリー>
疑わしきは罰せよ
筋弛緩剤事件、守被告に2審も無期判決
筋弛緩事件、22日に高裁判決
北陵クリニック事件(仙台筋弛緩剤事件)を巡って行われた「狂気の裁判」


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仙台筋弛緩剤事件は冤罪らしい。冤罪は、もう、お腹一杯。もっと「まともな捜査」と「まともな裁判」を御願いしたい。筋弛緩剤事件、控訴審も被告に無期懲役の判決 仙台の北陵クリダЦ1
仙台筋弛緩剤事件【どん底あるいは青い鳥。】at 2006年03月23日 19:05
 WBC優勝の興奮冷めやらぬ今日、守被告に高裁までもが無期懲役を言い渡したというニュースに接し、衝撃を受けている。 筋弛緩剤事件、守被告に2審も無期判決 (読売新聞)  仙???? ??
疑わしきは罰せよ【雨録 ameroku】at 2006年03月23日 20:04
筋弛緩剤事件、守被告に2審も無期判決 仙台市泉区の北陵クリニック(2002年廃院)で筋弛緩(しかん)剤を患者の点滴などに混入したとして、1件の殺人と4件の殺人未遂の罪に倘??р
筋弛緩剤事件【DANGER】at 2006年03月24日 15:11
とくダネTIMES宮城県仙台市・北陵クリニック・筋弛緩剤投与事件 ??この事件は、
TV「とくダネ!」3/23 北陵クリニック事件・元準看護師・守大介被告・二審でも無期懲役。【木曜の女】at 2006年04月15日 12:54
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
捜査権のない私たちが真相を究明することは出来ませんが、このようないい加減な裁判は、国民として見過ごせませんね。
こちらからもTBさせていただきました。
Posted by yoshi(雨録) at 2006年03月23日 20:12
yoshiさん、こんばんは。気道確保もろくに出来ない半田郁子元副院長は、事件直後仙台市からもっと離れた病院にいた筈ですが、ほとぼりが冷めた頃を見計らって岩沼市内の南東北総合病院に移ったのでしょう。今回の高裁判決ですが、ひょっとしたら、年度末だからということもあって、スピード結審になったのかもしれません(「しょうもない」犯罪であれば、もっと露骨にそうなったはずです)。
Posted by wnm at 2006年03月23日 21:14
今も鮮明に記憶にあるのは、北陵クリニック半田郁子元副院長の医療技術の未熟さに驚いたことだった。
さらに、事件後の胡散臭い行動は、特異な事件だっただけに強く印象に残っている。
それは、誰もが心に持った疑念ではないのか?

その前に、まずは守被告の裁判が“法のもとに公平”に行われることを望みたい。
Posted by shadow9 at 2006年03月24日 15:24
shadow9さん、こんにちは。あれだけ医療技術が未熟な半田郁子というヤブ医者がいまでも平然と外来患者を診ているというのは一体どういうことなのでしょうか。第2、第3の犠牲者が出るまで行政は何もしないのでしょうか。被害者面をして傍聴していますが、夫の半田康延も共犯でしょう。
Posted by wnm at 2006年03月25日 11:06
こんにちは。
この「北陵クリニック事件」裁判については、必ず最高裁が「自判無罪」を言い渡すと思います。
何故かというと、裁判において被告側の弁論の機会を与えなかった裁判例を作らせてはならないという良識を、少なくとも最高裁判所の判事達は持っているからです。
それにしても、ひどい裁判でした。
「狂気」としか言いようがありません。
Posted by スパイラルドラゴン at 2006年03月25日 23:26
TBありがとうございます。
とても興味深く拝見しました。
wnmさんの書かれているような事件は、表に出るか出ないかで、恐らく星の数ほど起こっているのでしょうね。一種の切なさを感じてしまいます。
Posted by smiley at 2006年03月28日 20:20
スパイラルドラゴンさん、smileyさん、こんにちは。この事件のように問題を起こした医者はある程度の期間、ほとぼりが冷めるまで他県の病院に勤務し、その後徐々に以前の勤務先に戻っていくことが多いのですが、こうした問題医の一覧表などウェブ上で作成することは出来ないのかと考えてしまいます。
Posted by wnm at 2006年03月29日 00:58
はじめまして。「今回の仙台高裁判決の一番恐ろしいところは、…客観的な物的証拠が無くても、同一犯の犯行と推論して差し支えないという論法が採用されたという点です。」について、全くその通りだと感じました。もし裁判の迅速化ばかりに目を取られて、肝心の審理が疎かになってしまったとしら、本当に本末転倒も甚だしところですね。
Posted by 木曜の女 at 2006年04月14日 15:06
木曜の女さん、はじめまして。もしこのまま最高裁で棄却されてしまうと、有罪が確定してしまいます。再審請求も基本的には新しい証拠が提出されたときだけだったはずと思うので、再審請求の道も閉ざされたまま、これで有罪判決確定です。蛇足を書くなとの著書を出した裁判官が先日罷免されましたが、裁判の速度と誤審のリスクのバランスを考えてほしいものです。
Posted by wnm at 2006年04月15日 08:53
お礼が遅くなりましたが、TB頂きましてありがとうございました。
また新しい記事に、wnmさまのコメントを拝借致しました。こちらもお知らせが遅れて済みませんでした。
以下の記事です。
http://mokuyounoonna.mo-blog.jp/sasapanda/2006/04/post_e043_1.html
今後とも宜しくお願い致します!
Posted by 梅吉(木曜の女) at 2006年05月01日 19:09
守大助さんを支援する活動を行っている藤沢と申します。
ぜひ以下のサイトをご覧下さい。
○日本国民救援会宮城県本部 守大助さんを支援する会
http://www17.ocn.ne.jp/~kyuuenka/sub001.html
○テレビ朝日「ザ・スクープ」 冤罪疑惑を徹底検証!取材VTRを3本見ることができる。
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/special_back/20020216_010.html
○独立系メディア「今日のコラム」 守大助さんの投稿記事、守大助さんとの面会記、他
http://eritokyo.jp/independent/today-column-legal.htm

※現在、「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」の結成準備中です。
ご参加いただける方はぜひご連絡ください。
※3/19(月)夕方から、守大助さんのご両親をお招きして、
東京で支援集会を開く予定です。詳細は後日お知らせ致します。
ぜひご参加ください。
Posted by shige at 2007年02月23日 06:48
「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」のHPが出来ましたのでご案内致します。

http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/

大助さんの連続メッセージも掲載してあります。
一番読んでいただきたい事件詳細部分が、調整中のため未公開になっていますが、3/19前後に公開予定です。
その頃にもまたぜひのぞいて見てください。

本事件(事件ではない!)は120%間違いなく冤罪です。
警察の思い込みとずさんな捜査によって作り上げられたでっち上げ事件です。

高裁の控訴棄却から1年が経ち、いつ判決が出てもおかしくない状況で
Posted by shige(藤沢) at 2007年03月14日 02:40
「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」HPに、
・4・28阿部弁護士を招き質疑応答勉強会のお知らせ
・事件詳細解説ページ(「ここがおかしい!北陵クリニック事件」)
・3・19に行われた支援集会の様子
・大助さんからのメッセージ4〜6通目
等を追加しましたので、ぜひご覧下さい。
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/event2.htm
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/unfair.htm
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/record.htm
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/message.htm
Posted by shige(藤沢) at 2007年04月08日 11:48
半田医師? 茅ヶ崎の病院勤務の?
Posted by ねっと at 2007年07月25日 10:05
胡散臭い!社会悪の全てが凝縮された総合的冤罪だなぁ!大日本帝国の非国民のような扱いに怒りを覚える!これが現代社会の真実か…
Posted by 非国民! at 2013年10月26日 20:10
岩沼の子どもたちが大変心配だなぁ!
Posted by ブラックチャック at 2013年10月26日 22:02