2012年から、この”わんだぁえっぐ”の専属水先案内人を務めてくれたアッキーが、この度、石川県に引っ越すことになった。「これまで御世話になりました。これが終わりじゃないですから、これからもよろしくお願いします」と、メッセージを残して旅立った。
この頑固男とともに熱い夏を五年も過ごし、このささやかな営みを支えてくれた蛍光イエローヘルメットの心やさしく頑強な男である。
いつも必ず川に出るときにはリサーチを忘れず、ボートの準備はもちろん、装備の点検からおやつや飲み物の準備まで、万全を期して参加の方々を迎え、どんなときも笑顔を忘れなかった男。おやつと飲み物を用意しながら、肝心のカップをバックに入れ忘れるおっちょこちょいのボクの行動を先読みしてカップを用意してくれた男。トイレの流し水を必ずバケツに汲んで、みなが困らないようにしてくれていた男。いつだって目立たぬ心遣いを忘れず、謙虚ながらも自分を曲げない九州男である。
本当に感謝である。さびしいけれど、わんだぁえっぐ能登営業所ができると思って、冷たい雨の降りしきる中、ささやかにダッチオーブン料理で「旅ダッチ」と熱いエールを贈って送りだした。
思えば、こうして何人の素晴らしい人材を見送ったことだろう・・・。どれほど多くの見えない力に支えられてきたことだろ。みなのおかげで、ボクの「いま・ここ」がある。それぞれに今さらながら心から感謝である。この場を借りて改めて心から感謝を送りたい。
「ありがとう!」
以前にあるスタッフが去る時に「わんだぁえっぐを卒業します!」と言ってくれたのを思い出した。いつもそこに残るボクには、それは嬉しい贐の言葉であった。アッキーもまた、卒業なのであろうか。それは、何からの卒業なのだろうか?
ここが学び舎だとしたら、お天道様が理事長先生。川が校長先生だろうか。そしてこの安曇野の地水火風空月星虹、山河、魚鳥虫花草木・・・様々なこの地の自然が何よりもの先生であろう。また、ここに来て下さる旅人のみなさま、同じ場で働くスタッフやときどきふらりと訪れてくれる仲間たち、通行人のみなさま、わんこたち・・・。出逢うすべての生きとし生けるものが各各の生きざまを通して生きた教科書となってくれているのではなかろうか。こちらにも重ねがさね感謝しなければならない。
「ありがとうございます」
ところで、この学び舎の「日々の科目や課題」は、なんであろう?
自然・家族・想い出・思いやり・やさしさ・ピンチからの回避(倒木や、ボートの不具合、突然の雨などの予期せぬ出来事に対応する対応力)・生命・愛・信頼・家族・友情・幸せ・健康・旅・ことば・祈り・宗教・商売・プライド・時間・お金・政治・芸術・観光と感光・心・魂・・・・・・。
聴こえない、見えない様々な問いかけに、あるときは無意識に、あるときは意識してボクらは答えをさぐる。自然の中で、人間社会の中で、生かされ生きる術を学ぶ。自然からの目線、こどもの目線、親の目線、おとなの目線、おじいちゃん、おばあちゃんたちの目線、障害者の目線、おびえる人の目線、さびしい人の目線、お金持ちの目線、貧しきときの目線、旅人の目線・・・・、時にはわんこたちの目線や虫の目、魚の目線を借り、この宇宙が、神様、ご先祖様が、天が与えてくれた壮大なな宿題と向き合う。それは地図のない旅をしながら自らの手で、自らの地図描くことに似ている。
ここを卒業していった者たちは、アッキーは、、いったいこの学び舎でどれほどの地図を描くことができたのだろうか?
卒業証書はない。なんの資格も貸与されない。生きる資格以外は・・・。
けれど、代わりに、ここでの経験のすべてが彼に「勇気」と「自信」と「希望」をもたらした!
彼の笑顔なら大丈夫!!だから、めでたく卒業なのだろう。
「すべてはうまくいっている!」のだ。
君に逢えて本当によかった!
あなたも、そう思ってくれたなら幸せ。
そうでなければ、いつかボクも、そういう者になりたいと思う。
ひとまずアッキー、卒業おめでとう!おつかれさま。ありがおとう!!
フレーフレー あおぞら!
フレーフレー アッキー!
フレーフレー あなた!
そして、
フレーフレー じぶん!
追記
この日は、アッキーの誕生日であった。ケーキもないロウソクもなかったので、手持ちのオレンジ色の100円ライターに点火。アッキーに願い事をしてから吹き消してもらった。普段なら「照れくさくて、こんなこと嫌ですよ」と、いうタイプの男だけれ、この時ばかりはしっかり目を閉じて、何かを心に描いたようだ。どんな願い事をしたのでしょう。どうか、その願いがかないますように!!
さびしくなります・・・・。
いつのに日にか、我が卒業の日を夢見て・・・・。
*この素敵なフォトブック作成にあたり、カメラのキタムラ穂高店さんに、
多大なご協力と、ご理解をいただいたことに、心より感謝申し上げます。
*11月、安曇野スタイルまで開店中! お気軽に、お茶でも飲みにお立ち寄りくださいませ。