2008年08月09日

『とらドラ8!』の感想文です5

 前説的なアレコレはあっちに代えさせていただきたいんですが、どうか。

 前の7巻がカタルシスに欠けるというか、モヤモヤとした欝憤を溜めに溜める回でして、「作劇上ここで溜めてクライマックスで噴出させるのだろうなー、助走長いなー」なんてことを思った居たのですが、ええと。
 また今回も“溜め”が続くならどうしようとか思っていたんですが、ここで一旦放出してくれました。

 いい意味でも悪い意味でも、脱力感。詳しくは、本編参照です。

 以下ネタバレ感想なので未読の方は読まない方が幸せになれると思います!

とらドラ 8 (8) (電撃文庫 た 20-11)



登場人物

高須竜児
 みのりんとふたりでひとつのバッグを「捕まった宇宙人」さながら運びつつ登校。同じくみのりんに後ろから密着されながら、ひと組のストックを二人で使いつつスキー。

 湯上りで薄着の大河を後ろから抱きすくめ、口を押さえながら「一生のお願いだから一生のお願いだから」とブツブツ呟きながら密室に連れ込む。(大河を抱き抱えることで罪悪感よりも妙な安心感があったり)

 亜美から冗談に被せたガチ告白をされる。(言い逃げされちゃいましたけど)

 あとついでに、ふて寝を決め込んでいるところ、下半身にKITAMURAをぶら下げた北村に跨られて毒ガス攻撃を食らう。

 とまー、今回もまた嬉しはずかし面白要素盛り沢山でありました。

 とは言え本人は終始前回のハートブレイクを引き摺っており、鬱々とした調子を崩しません。いや、こう書くと語弊があるかな。
 竜児が鬱々としているのは、フラれた云々よりも、むしろ……というのが、今回の骨子なんでしょう。誰かさんが傍に来ると分かり易いほどに元気になりますし。

 色んな気持ちに整理をつけ、まず自分の気持ちから見直さなければならない彼ですが、まだ次巻で決着、とはいかないんでしょうね。ただ、改めてみのりんに告白しに行って欲しいところ。僕はそう願いますね。

逢坂大河
 罪悪感に苛まれているのは、一体誰なのかな、とか思うと。“大怪我”は竜児以外の3人ともが同じく、負っていたわけで。

 これは大河がキツかったんでないかな。北村への想いがあって、それが砕かれても尚“自分”が砕かれなかったのは誰のお陰なのかな、とか。そもそも本当に自分は北村が好きだったのかな、とか。色々ゴチャゴチャしていそうで、けれども、それについての答えはもう既に出していた、と。

 大河の場合は、ちと難しい。相手を尊重しているようで、ただ単に逃げているだけのみのりんよりも、辛い。彼女はただ竜児から貰ったモノを返そうとしているだけで、与えられるばかりでは、甘えているばかりでは対等ではないと、考えているんだろうな、と思うんですよ。
 一巻のクライマックスが本作の出発点。あの何でもない約束とか誓いとは言えないような、そんなやり取りが大河にとっての宝物。

 一番の親友にだって出来ないことを、やると言ったのが竜児であるわけで、彼がそう誓って、対等だとするのであれば、自分もその気持ちに応えようとするのであれば、貰ったモノは同じだけ返さなければならない。
 そういうことを考えると、彼女の立ち場は難しい。

 竜児の気持ち次第でどう出るか変わってしまう、なんて言ってしまうと。酷く狡いんですけどね。

 ただ、僕はそれでも自分の気持ちは伝えるべきだと思うんですよね。
 それこそ、対等ではないから。

 隠している気持ち云々、言わないこと云々、そんなのは、どんな関係でだってあるし、必要だけれど、二人の関係が「何でもないクラスメイト」でも「何となく仲の良い友人」でもなくて、出発点のまま“後退”していないのだとしたら、やっぱり……と思いますね。

櫛枝実乃梨
 何だか全方向から責められているような彼女ではありますが、えーと。

 たとえば、大河の気持ちはおろか自分の気持ちも見えない竜児は彼女を責められないし(どちらかが「本当に好き」でどちらかが「本当は好きではない」ではなく、二人とも欲しいんですね、わかります)、亜美なんかそもそも自分だって同じ穴の狢やん、ですし。

 現状維持を望んでいるのは、竜児のことが好きな理由には、3人でいることの心地よさが、何よりもあったから。ふたりでいるドキドキも、もちろんあるけれど、それを生まれさせるのは、3人で、というか。みんなでいる楽しさ、心地よさが下地にあるから、なんですよね。
 大河と違って、最初から何もなしの段階で、裸一貫の状態で一対一の関係が築けたわけではないから。

 だから、これまでの関係性が崩れるのが怖い。「みんなとの関係性」が崩れて、その上で、それを越える一対一の関係性が竜児と築けるか?
 あるいは、もしも築けたとして、それは酷く不健全な関係なんじゃないか。ひとりにだけ依存する、だなんて。そんな不安。

 それを狡いというのであれば、じゃあ、そんな不安を見抜いて、払拭させるような行動を竜児や大河がすべきだ、とも言えるんじゃないかと。恋なんて、信じていないのだから、彼女にはその価値が見えないのだから、教えてあげなければ。

川嶋亜美
 感想の方で詳しく書いちゃったので略。辛いところ。最初に余裕かまさずに好きですよって言っちゃえばよかったのにね。まー、この辺しょうがない。そうできなかった理由も分かるけれど、自業自得でしょう。

北村祐作
 麻耶の気持ちが見えない北村は、大河(あるいは亜美)の気持ちが見えない竜児よりも、酷くはないよね!!あっちのが“暴力”だよね!!!

 ただ、彼もまた、自分の姿勢を明らかにする必要があるんでしょうね。がんばれおとこのこ!

感想
 「わたしたちの田村くん」を視界の端に置きながら感想を書こうとすると、少し穿ったことを書いてしまいそうに。いや、書きませんが!!

 あの作品で描かれたのは、親愛の力。何かの誤魔化しに使われない、大切な人の味方であろうとする、真摯な想い。
 本作もまた、同じモノが描かれるようで、しかしアプローチを変えて来ている。

 登場人物を増やして、「あなたとわたし」の一対一の関係ではなく、もっと大勢の思惑・気持ちが入り混じった上での愛情の示し方。

 どちらかが譲るのは、誤りで。それを示すには、傲慢でも狡猾でもいいはず。その狡さこそが、つまりは、想いの証明となるんですから。そしてそれを受け容れ合うのが、恋愛というか、人と人との付き合いでの、本懐だと思います。
 たとえば、亜美が計った上であのような行動に出ていても、僕は許せるというか。むしろそうするべきだと思う。それを彼女がよしとしなかったのは、竜児だけでなく他の二人も同じくらい好きだからで、正々堂々と宣戦布告してからではなかったから。みのりんと同じく自分も本当の気持ちを明かしてはいなかったから。

 計った上ではなかったからこそ、前に出られなかった。攻めた末に手に入れるのはいいけれど待ちの姿勢(のフリ)で手に入れるのは、まず「想いに誠実ではない」となるから、なんでしょう。

 想いに誠実に。次回、登場人物の全てが、それを迫られる。それが出来なければ、舞台には上がれない。今回はある種の仕切り直しの回だった、と言えるでしょう。
 ……北村が動くのが先かなー、なんて思いますが。や、もちろんMITを目指すんですよ!!

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(なるべくネタバレ無しで書いてるつもりですがとりあえず注意)『とらドラ8!』】()好き好き大好きっ
 いやあ……正直、前巻の最後が最後なだけに、この巻、ちょっと読むのが憂鬱だったんですよ。きっと、どう転ぼうと、終始胸が詰まるような展開になるのではないか……と、そんな予感に怯えておりまして。

 僕も同じ気持ちで読み始めていたんですが、30ページ周辺の竜児と大河のやり取りを見て「あれ大丈夫かも」と思い、その後の登校シーンでほっと息を吐くことには成功していました。
 この緩急が憎い!!

 個々のキャラを見てみると、今回のMVPは、なんといっても亜美。

 心のうちが主人公である竜児以上に透けて見えるだけに、ある種の格好よさがありましたね!
 彼女を襲う罪悪感もまた、それを彼女が感じているからこそ、痺れるものがありますし。

 大人じゃない、というのは誰もが同じ。殊に恋愛で大人ぶるのは、関係者全員を下に見ているも同然。

 それを、彼女はもう止めてしまったわけです。これを受けてみのりんは……とか思ってしまう僕を誰が責められましょうかっ。

この問題に真っ向から立ち向かっていけば、どういう結果になるにせよ、この恋愛模様に、きっと心から納得できる形で答えが出せるだろう――そんな期待を抱きつつ、次の巻を待ちわびたいと思います。

 全く以て同感ですね。期待したいし信じたい。

 「並び立つふたり」だけでなく「大河のオカン登場」も、不安と期待の入り混じる問題ではありますが、これを避けなかったのは、そしてここに来て持ってきたのは英断でありましょう。

 5巻で片を付けなかった、親子の、“家族”の問題。もしもそれが次の巻で語られるとするのであれば、あるいは竜児の父親だって……みのりんの家のことだって……とも考えられます。

 や、実に楽しみですね!


【とらドラ8!】(いつも感想中)
もうコメディでごまかすことは出来ない!

もう気持ちを隠すことは出来ない!

 うおおお凄いキャッチコピー!

 抑えられない青春の情動。
 確かに、それを「まだまだ子供だね」と笑えない、それでは誤魔化すことが出来ないのが、今回の内容でありました。

特徴的に感じたのが、男子と女子の衝突ですね。

「なんで分からないの!?」という女の子たちと、「分かるかそんなもん!」という男の子たちの衝突です。女の子側では亜美がその象徴的な存在ですし、男の子側では北村がその象徴的な存在でしょうか。

 衝突なくして和合はあり得ないといいますか、「これをきちんとやってくれたか!」という嬉しさもある描写でした。

 どちらも逃げずに、本気でぶつかる。それは誠実さの現われであり、「こいつらを好きでよかった」と思わせてくれるだけの力が確かに感じられたのですよ!!

あの優しい人がもう少しだけ自分の内側に目を向けて、そして自分が全ての台風の目になっていることを自覚したとき、きっと物語は最終局面に入っているはずです。そこからはきっと怒濤の展開が待っているでしょう。

 そう、あの優しい三十路さえ動いてくれれば……ッ!(ぇ

 誰かが傷つくのは仕方ないんですが、正面からガチンコで殴り合った末にそうなれば、痛くとも納得せざるを得ないはず。
 力不足だった、もっと自分を磨こうと思えるだけの素直さを、皆が持っているのだから。

 ……筆を置くのが惜しいくらいに、まだまだ語り足りないのですが、次巻はいつ発売なんでしょうかねっ。

【竹宮ゆゆこ「とらドラ8!」】(隠れ蓑)
 つ、痛烈に来ましたね!

 今回の竜児における、「俺って可哀想」という自己陶酔は、確かに腹立たしい。

 ただ、僕にはなんていうのかな。それが大河への構って光線に見えたんですよね。「自分はこんなに傷ついているんですよ」アピールをして、彼女になぐさめて欲しかった。

 で、ここが重要なのですが、彼が8巻で鬱々悶々しているのは、決してみのりんにフラれたからではなくて、大河が構ってくれなかったから。
 だから、「ん、これでは足りないのか。よしもっと落ち込んでみよう、だって俺は傷ついているんだし、大河は俺にもっと優しくするべきなんだし」となり、自分からどんどん深みにはまろうとしていた。

 僕は、これを許せる。

 どうしようもなく情けないし、この時点ではそもそもみのりんに不義理だし、「一緒に好きな人と結ばれるように助け合おうぜ」としていた大河とのこれまでを半ば蔑ろにすることでもあって、割りと最低なんですが、許せる。(あくまで“僕は”ですが)見限る理由にはならない。

 ただ、それも彼が大河への好意をきちんと自覚した上でなら、という前提があればこそ。(「大河からの」ではないですよ。念のため)

 そうでないのなら、これは彼が心の中で責めたみのりん以上に酷い。飼い殺しなんてレベルじゃない。

 修学旅行で、男子と女子が喧嘩した日の夜。夕食後、旅館のロビーで、竜児がみのりんに抱いた想い。

 これが、この独白が、実は彼自身にも跳ね返って来ていることを、きちんと自覚出来して、その上でどのような立ち居振る舞いになるのか。

 これが、次回の鍵であることは間違いなくて、それを見ないことには、僕はまだ彼を見限れないかな、と感じていますね。

 少し付け足すと、大河に対しても、亜美に対しても、そうなんですが。

 彼はまず初めの段階で「俺は君たちを恋愛の対象としては見ませんよ」というポーズを取っていて、それだけならまだしも、「だから君たちも俺を恋愛の対象として見ないでよね」とも暗に主張している。

 これって実は自分が傷つかないための予防線で、非常にずっこい。

#というか、彼の場合は「俺なんか君たちにとっては“男”じゃないものね?だから俺も君たちを“女”としては見ませんよ」という風に、相手の方に責任を被せていて、より狡いんですよね。

 そして、こんな振舞いをされると、じゃあ本当に竜児のことが好きな女の子はどうなるのかというと……。

 亜美からの好意、なんていうのは。よくよく考えれば分かりそうなモノなんですが、「勘違いだったら恥ずかしい」とか、そういうことを思っちゃうのが、竜児であるわけで。
 いやいや亜美の方が恥ずかしいっての。

 でもまー、亜美は亜美で思いっ切り駆け引き全開というか、一歩引いた位置から様子見のジャブを繰り出しているだけとも言えますし(ただ、それは彼女のプライド云々ではなく、それこそ大河への罪悪感やみのりんへの遠慮やら、色々ゴチャゴチャしていて何ともならんのだろうなー、という気がする)、彼女については竜児だけの責任ではないかな、とも思いますね。

 大河については、上のキャラ別感想に書いたことが全てなので、これ以上は言わない方向で。

 こちらの狡さにも、竜児は気づけるのかな。いや、気付けないんだろうなぁ。

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1. 竹宮ゆゆこ「とらドラ8!」  [ 隠れ蓑〜penseur〜 ]   2008年08月11日 23:10
「最低。ばかだばかだとは思ってたけど、ここまで愚図だとは思ってなかったかな。もうだめ。留保なし。さよなら。私は竜児に見切りをつけた??..

この記事へのコメント

1. Posted by まぬけづら   2008年08月09日 18:49
 コメント欄でちょっと追記。

 竜児は、1巻、5巻、そしてこの8巻。ここぞの独白はずっと変わっていないんですよね。

 だから、――僕はみのりん派ですが――彼はむしろ大河の方が大事、なのでしょう。

 その気持ちにどう折り合いを付けるのか。「田村くん」に足りなかった、性愛に転化されない、友愛として決着を持たせようとするのか。

 それは不明ですが、好きとか愛しているとかが、「一番大切な女の子」に向けられる言葉であるのなら、大河を選ぶのが自然なんでしょうね。
2. Posted by 石田麦   2008年08月10日 16:08
どうも。
竜児が大河に構ってほしかったというのはそのとおりでしょうね。
しかし、それも腹立たしい。愛想つきちゃった感じ。
だって今回、竜児が大河の気持に気づいたのも、いえば不可抗力であり、事故がなかったなら何も変わらなかったんですよね。
あーむかつくー。なぜそこまで自分自身にしか構わないのか。苛立つー。

ところで、今週はコミケということで、まぬけづらさんとも出来ればお話がしたいのですが、会えますかね?
メールなりで連絡をもらえたら、スケジュールを調整したいですr。
なんだかいろいろお話する種は多い気がしますし。
3. Posted by まぬけづら   2008年08月11日 06:27
5 >>石田さん
 どもですーっ。

>あーむかつくー。なぜそこまで自分自身にしか構わないのか。苛立つー。
 この辺、そろそろやってくれるような気がしますね。
 父親の次は母親のターン、となるのであれば。

>メールなりで連絡をもらえたら、スケジュールを調整したいです。
 了解です。メール送りますね〜。

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