May 2008

May 25, 2008

将棋と私 その6(最終回)


またまた一週間のごぶさたです。

毎回同じセリフで恐縮なのですが、

毎日が、
本当にあわただしく、

なかなか更新もできず、
あいすみません。


しかし、
多くのジャミン・ファンのみなさまから、

「次のアルバム、楽しみですー。」

という、
ありがたいコメントを、
頂戴しておりますからね。

励みになります。

がんばりますぞー。


そんな私の唯一の息抜きは、


これを書いてるとき…。



「将棋と私 その6(最終回)」


時の名人、
中原誠さんの著書、
『中原誠の三間飛車退治』
を丸暗記した私は、

‘23連敗阻止’
という大目標に向かって、

「今日こそは…。」


宿敵、川口真さんのオフィスへ、

決意も新たに、
出かけて行ったのでした。


さあ、
弱い私が、
先手をもらって、

いよいよ対局の開始です。

(頼むぞ。覚えててくれよ…。)


まず私が、
「7六歩」と角道を空ける。

すかさず川口さん、
「3二飛」と飛車を振ってくる。

(やはり今日も‘三間飛車’で来たか。
 しめしめ…。)

ホッとする私。

他の手を指されちゃ、
苦労が水の泡ですからね。


そして30手までは、
本に書いてあった通り、

全く同じ手で、
進んで行きました。


正直これには驚きましたね。

中原名人の本には、
相手にとっても、
常にその場その場で、
最善手が書かれてあるのですが、

さすがです、

川口さん。


相手が‘ヘボ’だと、
本とは違う手を指してくるので、
その時点で、
私の丸暗記は、

無効になります。

その手は、
本来、相手にとっては‘悪手’なのですが、
その時点から私は、
自力で戦わねばなりません。

それは困る。

私が恐れていたのは、
そこなのですが、

さすがに上級者の川口さんです。

見事に、
中原さんの手と、
全く同じ手の連続で来ました。

私の期待どおりです。


そして、
最初の分岐点。

中原さんの教え通り、

私は「3七桂」と跳ねる。

最初の勝負手です。

(「将棋と私 その5」参照)


すると、川口さん、

「ん…?」
 
と、言って、

しばらく考え込んだ。


やはりこの手は、

‘意表をつく’好手、
だったようです。

私には、
サッパリわかりませんが…。


悩んだあげくに、
川口さんは、
やはり本に書いてある、

1)の「5五歩」で応戦してきました。

「こうかなあ…?」

そう、これが、
彼にとっては最善手なのです。

(さすがだ。
 やっぱり川口さんは強い…。)


しかし、
これこそ私の思うつぼ。

その後の展開は、
完全に丸暗記しているので、

‘待ってました’とばかり、

私は中原さんの教えどおり、
悠然と手を進めて行く。

川口さんも、
相変わらず、
本と全く同じ手で応戦。

しかし、
その表情は、

次第に、
こわばっていく。

「何かが違う…。」

と、感じ始めてるようです。


そうこうするうちに50手目。

第2の分岐点がやってきました。


私が指した手を見て、
川口さん、

「ええっ…!?」

再び、考え込んだ。


「いやあ、こりゃ、いい手だねえ。
 ううむ…。
 ……。
 しかし宮住君、
 腕上げたねえ。
 いや、まいったな、こりゃ…。」


狼狽、驚愕。

顔面は硬直。

普段は簡単に打ち負かしている相手の、
思いもよらぬ善戦に、
興奮も手伝ってか、

川口さんのお顔は、

真っ赤っか。


その時私は、

思わず、

吹き出しそうになりましたね。


なぜなら、

今、川口さんが、
顔を真っ赤にして、
対決している相手は、

私ではなく、

まさに、

‘中原名人そのもの’
なんですから。


そして、
考えに考えたあげく、
やはり川口さんは、
本にあるとおりの手を指して来ました。

(やっぱりそう来たか。
 するとこっちは、こうだ。)

とばかりに、

私は、

バシッ!

と、次の手を打つ。


またしても、
こわばる川口さん。


「いやあ、どうすりゃいいんだろう?
 こうかなあ…。」

と、恐る恐る次の手を指す、
川口さん。

(そうそう。
 それでいいんです。
 中原さんもそう書いてます。
 しかし、それなら、
 こっちは、これでいくのだ。)


ビシッ!

「なぬっ…?」


その後も私が、

バシッ!

「えっ…?」

と、川口さん。

(あはは。)


ビシッ!

「な、なんだと…?」

(ウシシ。)


バシッ!

「うわあ、まいったなあ、その手は。」

(ガハハ。)


いやあ快感、快感。

愉快、愉快。


ビシッ!

「ギャーッ。」


バシッ!

「ひえ〜っ。」


こうして、

次第に優位に立って行く私。

追い詰められて行く川口さん。


そして70手目。

本局は、

見事に、

本に書いてあるとおりの
展開になりました。


これは、
本当に驚くべきことです。

川口さんは、
中原名人が想定したとおりの手を、
完璧に指したことになります。

これだけでも、
彼が相当の実力者であることが、
わかりますね。


さて、
ここから先は自力です。

オリジナルによる戦いです。

さすがに終盤は、
ヒヤっとする場面もありましたし、
じりじりと追い上げを食らいましたが、

序盤の貯金がものをいい、

ついに念願の初勝利!


私は、

23連敗を免れたのでした。

(ふ〜。勝った…。)


局後、

負けてはいけない相手に負けたショックで、
しばし呆然と盤面を眺めている、
川口さんの姿は、

かつて学生時代に、
私に負けた時のF井君のそれと、

まったく同じでしたね。


私は、
事の真相を話そうかとも思いましたが、
やめました。

だって、
22連敗もしていたんですからね。

ま、しばらくは、

悔しがっていただきましょう。


そして私は、

この日を境に、

これ以上将棋が強くなることを、
断念しました。

20代半ばにして、
私の将棋歴は、
終わりです。


なぜなら、
本屋に行くと、

その中原名人の著書は他にも、

『中原誠の中飛車退治』
『…穴熊退治』『…棒銀退治』
『…矢倉退治』『…四間飛車退治』

などなど、
おびただしい数があるのです。


川口さんが、
次に、
‘三間飛車’ではなく、
別の戦法で来たら、

あるいは別の強豪が、
『四間飛車(しけんびしゃ)』で来たら、

私はまた、
その研究で、

仕事もメシも放り出し、
睡眠時間まで、
おびやかされることになる。


あっというまに、
私の記憶力は限界に達し、
私の小さな灰色の脳細胞は、
(ん?どこかで聞いたフレーズ…。)

オーバー・ヒートして、

燃え尽きてしまうことでしょう。


なによりも、

1970年代、

あれほど隆盛を極めた、
当の中原誠名人ですら、
その後の若手の台頭で、

あっさりその座を、
奪われてしまったのですから。


これは、

谷川浩司さんが、
「『中原誠の三間飛車退治』を退治」
という戦法を編み出した、
からなのでしょうか。

その谷川さんを打ち負かした羽生さんは、
「『中原誠の三間飛車退治を退治』を退治」
を考案したものの、

森内現名人による、
「『退治を退治を退治』を退治」
に、苦戦を強いられている。

……。


すごい世界ですねえ。

プロというのは。


というわけで、

これ以降私は、

いかなる将棋の本も、
研究しておりません。


もとのヘボ将棋に戻って、

TVの将棋対局をボンヤリ眺めたり、

暇つぶしに、
コンピューター・ゲームを相手に、
対局したり、

その程度の将棋ファンを、

それなりに楽しんでおります。


そして、

それは又それで、

この上もなく幸せで、
穏やかな時間であることも、

事実なのです。


少なくとも、


私にとってはね…。



(おわり)



好奇心旺盛な私は、

将棋以外でも、
ありとあらゆる物に興味を持ち、
そのつど夢中になりましたが、

どれも長続きはせず、
どれも大成しておりません。

麻雀、パチンコ、ポーカー、ブリッジ、
ビリヤード、競馬、ゴルフetc.

この点、

どれも一流の域にある、
大橋巨泉さんとは、
大違いですね。


唯一、

長続きしているのは、

音楽だけですかね。


あ、これは仕事か…。



SHUN MIYAZUMI



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2008 エッセイ 

May 18, 2008

将棋と私 その5


一週間のご無沙汰です。

あわただしい一週間でしたが、

おかげさまで、
「赤坂BLITZ」も大盛況。

みなさん、
ありがとうございました。


さらには、
ファン・クラブも立ち上がったし、

レコーディングも順調です。


今週も、

この勢いで、

がんばりますよー。


そんな中、今日は、

待ちに待った、

久しぶりのお休みでした。


こんな、
のんびりモードにぴったりの、

将棋の話にでも、
華を咲かせることにしましょうか。


私が敬愛する名アレンジャー、

川口真さんに登場してもらいます。



「将棋と私 その5」


私が、川口真さんと、
初めてご一緒させていただいた仕事は、

例のディスコ演歌、
『涙の海峡』
ではなかったか、
と記憶していますから、

もう30年以上も前のことになりますね。

(過去ログ「演歌と私」)


この川口真さん。

この方も、
東京芸大作曲科などという、
立派なところを卒業しながら、

なぜか歌謡曲の世界に身を投じる。

でも、そのアレンジは素晴らしく、
1970年〜80年代には、
それこそ、
‘引っ張りだこ’の存在でした。


作曲家としても、

弘田三枝子『人形の家』
金井克子『他人の関係』
由紀さおり『手紙』

などのヒット曲があります。

(すでにコメント欄では、
 いち早く盛り上がってるようですがね…。)


ちなみに、
テレサ・テンさんの、
一連のヒット曲のアレンジも、
彼の手によるものです。


そんなお忙しい川口先生ですが、

なぜか私とは、
一発で意気投合してしまいました。

その最大の理由は…、


ごひいきのプロ野球チームが、
同じだったからです。


二人とも、
当時としては稀少とも言える、
およそ人気のない球団を、
熱烈に応援していました。


そのチームとは…、

『阪急ブレーブス』

(現在の『オリックス』)


ですから、

仕事を離れても、
一緒に、
「後楽園球場」や「東京ドーム」に足を運び、

ガラガラのスタンドから、
「福本、走れ〜!」だの、
「高志(山口)、頼むぞ〜!」

などと、
声援を送っていたわけですね。

懐かしいです…。


ま、この野球話も、
いずれ書くとして、

そんなこともあって、
歌謡ポップス系の仕事があるときは、
真っ先に川口さんに、
アレンジをお願いする。

いつしか、
それが定番になってしまっている、

そんな私でした。


さて、

この川口さんには、
3つの趣味があって、

1つは阪急の応援。

2つめがゴルフ。

そして、もうひとつが、

将棋です。


打ち合わせで、
彼のオフィスに行くと、

必ずと言っていいほど、
将棋盤を出してくる。

「宮住君、一局やろう。」


そして、

この先生が、

また、

強いのなんの。


初段あるいは二段クラスの実力、
だそうですから、
私が到底かなう相手ではありません。

学生時代、
あのF井君に、
少しは鍛えられましたので、

(過去ログ「将棋と私 その2」「その3」)

途中までは、
善戦することがあるものの、

最後は、
絶対だめです。

絶対勝てません。

ここまで、
なんと私の、

0勝22敗。

22連敗…。

……。


ここまで負け続けると、
さすがの私も、

次第に腹が立ってきました。

私にだって、
意地というものがありますから。

(くそ。なんとか勝つ方法はないものか…。)


そんなとき、

私はあることに気づきました。

最近の川口さんの戦法が、
十中八九、

「三間飛車(さんげんびしゃ)」
というものであることに…。


将棋には、

「飛車」「角行」
という強力な2枚の大駒があります。

「飛車」は、
縦横まっすぐ何コマでも動かせる。

「角行」は、
斜めなら何コマでも動かせる。

そして、どちらも、
相手陣内に入ると、
裏返って、
縦横斜めにひとコマ、
どこでも自在に動かせる、
さらに強力な駒になります。

この2枚を相手に取られたら、

まず勝ち目はありません。


さて通常、将棋は、

------------------------------
歩歩歩歩歩歩歩歩歩
 角     飛
香桂銀金王金銀桂香
------------------------------

こんな形からスタートします。

飛車が定位置に居たまま進行する場合、
これを、
「居飛車(いびしゃ)」
と言います。


「三間飛車」とは、
飛車を横に一気に動かして、
「角行」のとなりに持ってくる形。

------------------------------
歩歩歩歩歩歩歩歩歩
 角飛
香桂銀金王金銀桂香
------------------------------

展開が早いので、
急戦向きと言われています。

実は、
川口さんの、
ほとんどの作戦が、
これなのです。


「よし。なんとか一矢報いよう。」
と、私は本屋に行き、

『中原誠の三間飛車退治』
という本を購入しました。

当時の将棋界で、
絶対的な強さを誇っていた、
中原名人の、
数ある著書の中のひとつです。


それからの私は、

毎晩家に帰ると、
なにはさておき、

この、
『中原誠の三間飛車退治』
の研究。

本を片手に、
将棋盤とにらめっこしながら、
駒を動かす日々。

そして、ひたすら、
丸暗記の日々。


本には、

「まずは30手くらいまではこのように進む。」
と手順が書かれてあるので、

はい、これを丸暗記。


「さて、ここで先手(私)が3七桂とはねる。
 これがまず、最初の‘好手’。

 ここで後手(川口さん)には、
 3つの受け方がある。
 1)5五歩  2)6四銀  3)8八角成」

とあって、
各々にまた、
20手くらいの攻防が全部書いてある。


うわあ、大変だ…。


実のところ私には、
それが‘好手’かどうかは、
サッパリわかりませんが、

「中原名人が‘好手’と言うのだから、
 きっといい手なんだろう。」

と信じることにして、

これらをまた、
丸暗記。

(注:これらの手はすべて例えであって、
実際どういう手だったかは、
もう忘れました。)


ちなみに相手が上級者であればあるほど、
1)2)3)の順番を選ぶようです。


つまり、
相手の手順もまた、

すべて相手にとっての、
‘最善手’であるわけなのです。

そして中原名人は、
相手のどの手に対しても、
こちらが有利になるような名手を、
そっと教えてくれるのです。


したがって、相手が、
本に無い手を指したとしたら、
その手は、‘悪い手’なのです。

その瞬間から私は、
が然有利になるはずなのですが、

私にとっては、

そっちのほうが困る…。

なぜならば、
その瞬間から、
私は‘自力で’戦うことになってしまうから、

これは困るのです。


でも、

「川口さんクラスの実力者ならば、
 きっと本のように指すだろう。」

という期待をこめて、

来る日も来る日も、

ひたすら丸暗記の日々。

しだいに本は、
赤鉛筆で真っ赤っか…。


さて、本局は、

相手にとっての‘最善手’
1)を想定して進められて行くうちに、
(念のため、2)3)の発展形も暗記済み。)

50手目くらいで、
また<分岐点>がやってくる。

こちらの‘あっと驚く好手’に対して、

相手は再び3種類の受けがある。

(この辺りまで来ると、
 さすがの私にも、
 それが‘いい手’だということくらいは、
 わかります。)

ということで、

これらの発展形を、
またまた全部、

丸暗記。


電車の中でも、
「ええと、あそこは銀だったかな…?」
と、わからなくなっては本を開き、

仕事中も、
「あそこは、どうするんだったかな…?」
と、そっと本を盗み見みし、

ベッドの中でも、
「あれ、あの後、相手は、
 どう指すんだっけ…?」
と思い出しては、
ガバっと跳ね起き本を開く。


そんな日々が、

10日も続いたでしょうか。


そしてようやく<70手目>。

「これで先手(私)の圧倒的優位。」

とあって、

本はそこで終了しています。

(なるほど…。
 確かにこりゃ、
 こちらの方が良さそうだな。)


そして、
ここから先は、
自力で戦わなければなりません。

(もう少し先まで、
 書いてくれるといいのに…。)

でも、欲は言いますまい。


(でも、まあこれで何とか、
 がんばってみるか…。)



ということで、

いよいよ勝負です。


すべての手順を丸暗記した私は、

さっそく、
ヤボ用ができたフリをして、
川口さんのオフィスへ、
出かけて行きました。


忘れてしまわないうちに…。


(つづく)



この川口さん。

ゴルフもお上手です。

何度かご一緒しましたが、
プロ並みのスコアで、
回ってきます。


練習場でも、

一球でも変な当たりが出ると、
「チッ。」
と、不機嫌になり、
ひたすら打ち込んで修正する。

真剣そのものです。


私なんぞ、
一球でもいい当たりが出ると、

「よし。完璧だ。
 これで明日はバッチリだ。」

と、さっさとやめてしまいますが…。


すぎやまこういちさんも、
そうですが、

このクラスの方々になると、
仕事も遊びも、
真剣にやりますね。

遊びは遊びで、
真剣に遊ぶ。

いい勉強になりました。


私なんぞ、

まだまだ、その域には、

達しておりません。

……。


ということで、

レコーディングが終ったら、

大いに、真剣に、

遊ぼうと思っております。


ん?

もう充分だろ、って…?


いえいえ。

まだまだ私なんぞ、

その域には、


達しておりませんから…。


はい。


……。



SHUN MIYAZUMI



woodymiyazumi at 19:42コメント(9)トラックバック(0) 
2008 エッセイ 

May 06, 2008

東京ドーム・後編


ゴールデン・ウィーク。

みなさん、
いかがお過ごしでしょうか。


私は、
休みを返上して、
ジャミン・ゼブのために2曲、
アレンジを書きました。

決して、
メインになる大作ではありませんが、

アルバムの構成上、
こうしたレパートリーも必要かな、
と、思ったものですから…。


‘いいアルバム’というのは、
一流レストランの、
ディナー・コースのようなものですかね。
(と、思うのですが…。)

主食のお肉や魚料理だけでは、
胸焼けしちゃいますから、

数々の洒落たサイド・メニュー、
サラダ、前菜、スープetc.

いろんな物が必要になります。


そう考えると、

きのう書いた一曲は、
メインの肉料理の前に運ばれて来た、
お店ご自慢の赤ワイン。

もう一曲は、
極上のデザート。

かな…。


なーんちゃって。

アハハ。


ま、そうなるように、

頑張ってレコーディングしましょう。


さて、
話はガラリと変わって、


再びあの‘熱狂の大舞台’に、

思いを馳せることにしましょうか。



「東京ドーム・後編」


3月25日(火) 夜6:50

アメリカ・メジャー・リーグ開幕戦

いよいよ、
ジャミンゼブの出番が近づいてきました。


080325 Dome 06


グラウンドでは、
和太鼓、剣舞、阿波踊り、といった、
日本の古典芸能が、
華々しく行なわれております。

そして、それが終ると、

「ボストン・レッドソックス」
「オークランド・アスレチックス」

の、選手、監督、コーチが、
一人ずつアナウンスされ、

大拍手と歓声のなか、
一人、また一人と、
グラウンドに登場。

各々、
一塁、三塁のベース・ライン上に、
整列です。


そして、
場内には一瞬の静寂。

……。


ここで、
英語、日本語の両方で、

「これより、
 アメリカ合衆国国歌を、
 日本のジャズ・コーラス・グループ、
 ジャミン・ゼブが歌います!」

という、アナウンスに導かれて、

ジャミン・ゼブが登場。


そして、
レンセイが静かに歌い出す…。

「Oh,say can you see〜♪」

それに続いて、

ジャミンの、
美しく、力強いハーモニーが、
場内いっぱいに響き渡る。


080325 Dome 07


胸に手を当てて、
厳粛な面持ちで、
聴き入る大リーガーたち。

……。

そしてスクリーンには、

080325 Dome 08


いやあ、感動しましたよ。

あの、ラミレスや、オルティーズや、
バリテックや岡島らが、

ジャミンの唄を、
真剣に聴き入ってるんですからね。

(なんじゃ、そっちかい…?)


いやいや、

本当に素晴らしかったです。

素晴らしく感動的な、
パフォーマンスでした。

みなさんにも、
お見せしたかった…。

歌い終わった瞬間の、
場内の拍手、歓声のすごさが、
それを物語っていましたね。


やれやれ、
これで一段落。

楽屋へ戻ると、

主催の読○新聞の方や、
某広告代理店‘D通’の方やらが、
次々にやって来て、

「いやあ、良かったですよ。
 素晴らしかった。」
と、みな大絶賛。

(よかった、よかった。)


そして、D通の人が、

「みなさん、どうします?
 この後、野球ご覧になりますか?
 チケット、ご用意できますけど。」

(待ってました。)


すると、
普段から、しつけのいいジャミン君は、
「うわ〜い。」
などとは飛びつかず、

ちょっとためらいがちに、
「どうするみんな…?見て行く…?」
と、協議に入る。


私は、内心、
あせりましたね。

(バカ。
 「はい、見ます!」と言え。
 君らが遠慮したら、
 私もショーちゃんも、
 「では、私たちだけでも見て行きますかー。」
 とは、言えなくなるではないか…。)

ちょっとした協議の結果、
リーダーのコージローが、
ニコニコしながら、

「では、お言葉に甘えて、
 見させていただきます。」

と言ったので、
ひと安心。

(よし、いい子だ…。)


みんなで、
チケットとお弁当をもらって、
席に案内されると、

……、


これがまあ、
特等席中の特等席。

ネット裏の真正面、
前から10列目くらい。

チケットには、
「スコアラー席 非売品」
と、書いてある。

普段、各球団の、
先乗りスコアラーたちが陣取る、
‘プロ向けの最上席’
というわけですね。

080325 Dome 09

テレビにも映るような席らしく、
さっそくレンセイの友達から、
「レンセイ、映ってるよー。」
というメールが入って来ました。


周りを見ると、

すぐ後ろには、
代議士の「塩川○十郎先生」

そして、
普段よく見る著名人たちが、
どっちゃり。

(みなさん、ジャミンの唄を、
 どう思ったかなあ…?)


などと感慨深く考えてる暇は、
まったくありません。

直後に、
アスレチックスのバッターが、
カキーンと、
タイムリー・ヒット。

今日のレッドソックスの、
栄えある先発投手松坂は、
今イチの調子のようです。

「ショーちゃん、松坂どうかねー?」


試合は、
白熱の打撃戦で、
文字通り、
「手に汗握る」大熱戦。

そして、

私は過去にも、
何度もプロ野球を、
‘ナマ’で観ていますが、

こんなに盛り上がってる試合というものを、
知りません。


野茂に始まり、
イチローや松井ら、
日本人選手の活躍で、

大リーグの魅力は、
確実に日本のスポーツ・ファンに、
定着しているようですね。

とにかくみなさん、
本当に、
野球をよく知っています。

一投一打に、

もうもう、

大騒ぎです。


試合は、

中心選手がごっそり抜け、
若手ばかりになって、
「どうなるんだろう?」
と、言われていたアスレチックスが、

前年度ワールド・チャンピオン
「ボストン・レッドソックス」を相手に、
大善戦。

「あわや、勝つかな?」

と思った9回表に、
ボストンに、
貴重な同点ホームランが飛び出す。

「うわ〜〜〜。」

場内大興奮。

私もスタンディング・オベーション。


そして、

出ました、

この人…。


岡島。

080325 Dome 10

4-4、同点の9回裏。

「もう球場が壊れるのではないか」
と思わせるような、
今日一番の大歓声の中、

かつて巨人時代に、
何度も登板した、
この東京ドームのマウンドに、

まさに‘凱旋’登板の、

オ・カ・ジ・マ…。

そして見事に、
9回裏アスレチックスの攻撃を、
ピシャリと押さえ、

試合は延長戦に。


すると、
10回表に、
ラミレスの2点タイムリーが飛び出す。

「やった〜〜〜。」
「いや、さすが4番だね。」


こうなると、
ボストンの押さえ(クローザー)は、
当然、あの人です。

と、ここで、
スティーブが、

「社長、ボストンのクローザーは、
 今誰ですか?」

などという、
間の抜けた質問をするので、

「もちろん、
 パペルボンに決まってるじゃないかー。」

と、私は軽く一蹴。


その通り、

出てきましたよ。

パペルボン。


今や、
大リーグを代表する、
クローザーです。

160キロ近いスピードで、
バッタバッタと相手をねじ伏せる、
闘志あふれる若武者ですね。

私の大好きな選手。


いやー、もう、
最高の試合ですよ、
これは。

松坂に始まり、
岡島も見られ、
主砲ラミレスのタイムリーに、

最後はパペルボン。

そして試合は、
6-5でレッドソックスの勝ち。


いや、もう、たまりません。


帰りの電車でも、

私は、ショーちゃん相手に、

もっぱら野球の話です。


M「メジャーの試合をナマで観るのは、
  初めてだけど、
  やっぱ、迫力あるねえ。」

Y「でも松坂は、どうなんでしょうねー。
  大丈夫かなあ…。」

M「いや、例年スロー・スターターだし、
  今年は期待できるんじゃないかな。」

Y「それにしても、
  アスレチックスは強いですよ。
  若手ばかりになったけど、
  あなどれませんよー。」


そして次第に、

私の興奮は増し、

私は貰ったパンフレットを見ながら、
今年のメジャー・リーグを大分析。

「うん、相変わらずエンジェルスはいいな。
 カブスの福留は、けっこうやると思うよ。
 ドジャースは、カージナルスは…、
 マリナーズのイチローは…、
 松井のヤンキースは……、」

などと、
口角泡を飛ばしながら、
夢中になってしゃべってると…、

ショーちゃんが、

こう言いました。


「今日、何しに行ったんですかー?」


「……。」



(おわり)
    


この翌日(3/26)

第2戦前のセレモニーでも、

ジャミンは、
「君が代」を、
見事に歌いました。

残念ながら、
2戦とも、
全国中継のTVには、
間に合いませんでしたが、

球場に詰めかけた、
延べ10万人のお客さん、

そして、

両軍選手、スタッフ、
野球関係者のみなさんの心に、
彼らの唄は、

しっかりと、
届いたことと思います。


読○新聞、D通はじめ、
関係各位の皆様、

本当にありがとうございました。


この場をお借りしまして、

心よりお礼申し上げます。



で、

試合の方ですが、


え?


もういい…?


……。



SHUN MIYAZUMI



woodymiyazumi at 10:28コメント(10)トラックバック(0) 
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