August 2008

August 31, 2008

jammin'Zeb『裏・ドリーム』その2


毎日、鬱陶しいですねえ。

スカッと晴れる日がない。
そして、突然の豪雨や雷。

これも、地球温暖化による、
異常気象のひとつでしょうか…。


そんな中、

昨日のジャミン・ゼブは、
爽やかな秋晴れのような、
素敵なステージを見せてくれました。

『TOKYO JAZZ FESTIVAL 2008』
(@東京国際フォーラムA)


わずか3曲のア・カペラ、
10分足らずのステージではありましたが、

ハンク・ジョーンズ、ロン・カーター、
デヴィッド・サンボーン、上原ひろみ、

といった、
世界的なミュージシャンたちの演奏の前の
オープニング・アクトとして、
5,000人の聴衆の前で、
堂々たるパフォーマンスをしてくれました。


左右のスクリーンに映し出される、
彼らの表情も、
実に初々しかったです。

ま、無事に終ってホッとした、
というのが本音ですが。


この模様は、いずれ、
NHK総合、BS-2、BSハイ・ビジョン、
などで、随時放送されますので、

ぜひご覧になってください。



では今日も、

そんなジャミンの、

『Dream』裏話、

とまいりますか。



『jammin'Zeb 裏・ドリーム その2』


--------------------------------------------------------------
♪CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE♪
    (愛という名の欲望)
--------------------------------------------------------------

すごい邦題だ。(笑)

これって、
かつて日本で『クイーン』を発売していた、
ワーナー洋楽部の宣伝の人たちが、
付けたんだそうです。

フレディ・マーキュリーには、
ピッタリだけど…。


ま、そんなことはさておき、

このア・カペラ・ナンバー。

なんとも楽しいアレンジですね。


この譜面を持って来たスティーブは、
開口一番、
「俺、ベースやる!」
と宣言。

そして、
「リードはコージロー、レンセイはトップ、
 シモンがセカンド。」

といった具合に、
さっさとパートを決めてしまった。


何度も言うようですが、

「コーラスの申し子」
スティーブの音域は、

それはそれは大したもの。


通常は、音のラインが複雑で、
一番難しいと思われる3番(バリトン)を、
楽々とこなす一方で、

『聖者の行進』や『Bye Bye Blues』では、
強烈なハイ・ノートのファルセットで、
トップ・テナーも唄う。

かと思うと、この曲のように、
低音のベースも、
簡単にやってのけるのです。


でも、この曲の場合、
確かにベースのパートは楽しそうですね。

というか、目立つ。


今、こうして出来上がったCDを聴いても、

「♪トゥントゥントゥン 
  パトゥパ トゥントゥントゥン♪」

実に楽しそうに、
スティーブが低音で、
ベースのラインを唄っているのが、
おわかりいただけると思います。


ところが、これによって、
犠牲になったのが、
割を食ったのが、

シモンです。


いつもは重低音で、
どっしりとサウンドを支えるシモンが、

普段唄ったことのない、
ときには、彼の音域の限界を超える、
高いパートを唄うハメになったからです。


「♪パーパラー パーパラー♪」

いきなり、
高音のレンセイの、
たった3度下のバック・コーラスが、
延々と続きますね。

音域の低いシモンにとっては、
これだけでも大変です。


しかし、
温厚なシモンは、
文句ひとつ言わず、
懸命に、黙々と、
そのパートをこなします。

その表情は、まるで、
「先輩のスティーブさんが楽しそうだから、
 いいじゃないか。
 僕はスティーブさんのために、
 頑張ってあげるんだ。」
と、言ってるかのよう。


そんなシモンの努力も、
どこ吹く風で、
楽しそうにスティーブは、

「♪トゥントゥントゥン 
  パトゥパ トゥントゥントゥン♪」


後半になると、
さらに大変なパートが続きます。

息つぎの場所もないくらい、
音が高くて、難しいパッセージが、
これでもか、これでもか、
といった感じで、
シモンを襲う。


しかし、シモンは頑張る。

悪戦苦闘しながら、
真っ赤な顔をして、

ときには、
あまりの高さに、
声がひっくり返って、
断末魔の象の悲鳴のようになりながらも、

シモンは頑張る。


それでもスティーブは、
相変わらず、
なにごともなかったかのように、
涼しい顔で、

「♪トゥントゥントゥン 
  パトゥパ トゥントゥントゥン♪」


なんという、美しい友情でしょうか。

なんという、先輩思いの後輩でしょうか。


この曲は、

そんなシモンの、
涙ぐましい努力に支えられて、
出来上がったのです。


いいぞ、シモン。

えらいぞ、シモン。


---------------------------------------------------------------------
♪FUN FUN FUN(ファン・ファン・ファン)♪
---------------------------------------------------------------------

このアレンジは、
ジャミン・ゼブが4人揃う前に、
出来上がっていました。


今でこそ、ジャミン用の五線紙には、
上から、
「Lensei,Kojiro,Steve,Simon」
と、名前が記入されていますが、

この曲のスコアには、
単に、
1、2、3、4
と、数字が並んでるだけ。

コージローとスティーブの、
二人しかいない時点で、
「絶対このグループは完成してやるんだ。」
の、強い決意のもとに書き上げた、
作品なのです。


その時点では、
コージローが2番、
スティーブが3番、
と、決めていました。

ベース・パートと、
トップのパートは、
あくまで想像で書いたのです。

「ベースには、こんな感じの奴が来るといいなあ。
 こんなトップを唄える奴、いないかなあ…。」


そこに、シモンがやって来た。

そして最後に、レンセイを見つけた。

そして唄わせてみたところ、
これがバッチリ。

探していたパズルのピースのように、
ピターっとハマってしまいました。

最初に4人で合わせたときの感動は、
今も忘れることができません。


「これだ! ついに出来たぞ!」

ジャミン・ゼブ誕生の瞬間です。


無神論者の私ですが、
この時ばかりは、
神に感謝したい気持ちで、
いっぱいでしたね。

忘れもしない、
2年前(2006年)の、
8月25日のことでした。



もうひとつ逸話。


この曲の最後、

クライマックスの部分では、

4人が、
まったく違うメロディを、
勝手気ままに唄う、
極めて、アバンギャルドなセクションがありますね。

あれ、
みんなが適当に唄ってるようですが、

違うのです。


やや専門的になりますので、
ここで詳しく説明することは避けますが、

あれは、
「Combination of Dminish」
 (コンビネーション・オブ・ディミニッシュ)
という、

ジャズ理論のなかでも、
最も難解で、高度な理論と言われている手法で、
綿密に書かれてあるのです。

このパートを書くだけで、
かなりの時間を費やしました。

まさに、
「狂乱の舞踏会」
の世界。


この、

「Combination of Dminish」
 (コンビネーション・オブ・ディミニッシュ)


カシオペアなど、
最先端を行くフュージョン・バンドの間では、
「コンディミ、コンディミ」
と言って愛され、
多用されていた、
極めて新しい、複雑な理論です。


ところが、実はこれ、

1930年代の『デューク・エリントン楽団』
の、古〜いサウンドのなかに、

早くも聴くことが出来るのです。


なんともエキゾティックで、
官能的なエリントン・サウンド。

有名な、
『Caravan(キャラバン)』
という曲などは、
まさに、そのいい例ですね。


理論というのは、
後付けです。

1930年代に、
ジャズ理論の本など、
あるわけがありません。


感性のすぐれたミュージシャンが、

「このフレーズ、カッコいいぞ。
 このサウンド、イカしてるぞ。」

そんなフレーズやコードを発見して、
好んで演奏するうちに、
理論にたけた音楽家や評論家が、
体系的に理論としてまとめる。


現在のジャズ理論で、
最も高度な理論とされている、
この「コンディミ」。

最初に考えたのは、
最初に演奏したのは、
あの偉大な、

デューク・エリントンだったわけです。

やっぱり、
「ジャズの神様」
ですね。


この譜面を最初に見たレンセイは、

目を丸くして、
こう言いました。

「ミヤズミサン、
 クレイジーデスネー。」


「クレイジー(Crazy:狂ってる)」
というのは、
音楽家にとっては「褒め言葉」
と、常々考えてる私ですから、

素直に、
お礼を言っておきました。


レンセイ、

ありがとう!


-------------------------------------------------------------------------
♪BECAUSE OF YOU(ビコーズ・オブ・ユー)♪
-------------------------------------------------------------------------

表の解説でも述べましたが、

この曲は、
古い、白人ダンス・バンドのイメージで、
アレンジされています。

グレン・ミラー楽団、レス・ブラウン楽団、
トミー・ドーシー楽団、ハリー・ジェームス楽団etc.


デユーク・エリントン楽団、
カウント・ベイシー楽団、
といった、
芸術的なビッグ・バンドと違って、

今では、
歴史の彼方に消えてしまいましたが、


1940年代、50年代には、
こうした、当たり障りのない、
優雅な、甘いダンス・バンドのサウンドが、
一世を風靡していたようです。

昔のハリウッド映画には、
こうしたバンドをバックに、
大勢の着飾った紳士、淑女が、
楽しそうにダンスをするシーンが、
数多く見られますね。


そして、そうしたバンドでは、
ハンサムな、
あるいは美人シンガーたちが、
さらなる彩(いろど)りを添えていました。

女性では、
ドリス・デイ、ジューン・クリスティ、
ケイ・スター、アラン・フォレストetc.

男性では、
ディーン・マーティン、ボビー・ダーリン、
パット・ブーン、ペリー・コモetc.


この曲のコーラス部分は、
そんなダンス・バンドのイメージ。

そして、レンセイのソロは、
そんなソロ・シンガーのイメージ。

うまくいってますでしょうか。


そういえば、

5月6日のエッセイに、
こんな記述がありますね。

覚えてますか?


「私は、
 休みを返上して、
 ジャミン・ゼブのために2曲、
 アレンジを書きました。

 決して、
 メインになる大作ではありませんが、

 アルバムの構成上、
 こうしたレパートリーも必要かな、
 と、思ったものですから…。


 ‘いいアルバム’というのは、
 一流レストランの、
 ディナー・コースのようなものですかね。
 (と、思うのですが…。)

 主食のお肉や魚料理だけでは、
 胸焼けしちゃいますから、

 数々の洒落たサイド・メニュー、
 サラダ、前菜、スープetc.

 いろんな物が必要になります。


 そう考えると、

 きのう書いた一曲は、
 メインの肉料理の前に運ばれて来た、
 お店ご自慢の赤ワイン。

 もう一曲は、
 極上のデザート。

 かな…。」



種明かしをしますと、

この「お店ご自慢の赤ワイン」
というのが、
実はこの曲だったのです。

言い得て妙でしょ。


では、

「極上のデザート」とは、
いったいどの曲でしょう。

考えてみて下さい。

曲順とは、関係ありません。



ああ、疲れた。


きょうは、このくらいで…。



(つづく)



なんか、

表より裏のほうが、

楽しいぞ。


いいのかな…?



SHUN MIYAZUMI



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2008 エッセイ | jammin' Zeb インフォメーション

August 25, 2008

jammin' Zeb『裏・ドリーム』


ジャミン・ゼブ劇場『第二章』が、
幕開けしました。


おかげさまで、
8/20の、セカンド・アルバム『Dream』
発売以降、

みなさんから、
お誉めのコメントやら激励の言葉を、
たくさん頂戴しました。

ありがたいことです。

ますます、がんばらなくては…。


というわけで今日は、
ジャミン・ファンのみなさんへ、
感謝の気持ちをこめまして、

『Dream』制作秘話なるものを、
お届けしようと思います。


前回は、
このアルバム『Dream』を、
真正面から見た楽曲解説でしたが、

きょうは、それを、
裏側から、楽屋から、覗いてやろう、

という企画です。


楽曲の知られざる逸話、
アレンジ上の種明かし、
制作過程におけるエピソード、

などなど、

私がアレンジしたものを中心に、
徒然(つれづれ)なるままに、
面白(おもしろ)可笑(おか)しく、

解説してみようと思います。


題して、

『jammin' Zeb 裏・ドリーム』


では、いきましょう。

まずは、
アルバム・タイトル曲から。


----------------------------------
♪Dream(ドリーム)♪
----------------------------------

この演奏。

最初はシンプルなのに、
気がついたら最後は、
すごーく、ゴージャスな感じになってますね。

でも、最後まで同じ小規模の楽器編成だし、
大げさなストリングスが加わるわけでもない。

しかし、そんな感じがするはずです。

なぜでしょう…?


はい、答え。

それは、

いろんなパーカッションが、
順繰りに加わって行く、
というアレンジだからなのです。

題して、
「トリプル増毛法アレンジ」


この曲は、
サックスのソロも含めると、
全部で5コーラスあります。

それを、
ワン・コーラスにひとつずつ、
5種類のパーカッションが、
順繰りに色どりを添えていく、
という構成です。

だから、知らず知らずのうちに、
気持ちがどんどん高揚して行く。

ラヴェルの『ボレロ』方式ですね。


最初は、
「サクサク」という、
シェイカーひとつだったのが、

最後は5種類のパーカッションが、
同時に鳴り響いて、
ゴージャスなクライマックスを迎える、
という構成の、
なせる技(わざ)でした。


ではいったい、

どんな楽器が入っているのでしょう。

興味のある方は、
当ててみてください。

そんな聴き方も、
一興かもしれませんよ。


そして、それを、
全部ひとりで演奏している、
はたけやま裕(ゆう)ちゃん。

小柄な美人ですが、
パーカッショッンを演奏し始めると、
途端に、男まさりの切れ味と迫力。

ねえさん、

あんたは、エライ!


-------------------------------------------------------------------
♪NIGHT AND DAY(ナイト・アンド・デイ)♪
-------------------------------------------------------------------

私の敬愛する作曲家、
コール・ポーターさん。

かつて、
彼のことを書いたことがありますが、
(「ジョージ・ガーシュインとコール・ポーター」
  〜2005エッセイ その1)

彼のメロディは、
本当に素晴らしい。

そして、
彼の曲をアレンジするのは、
本当に難しい。


なぜかというと、

コード(ハーモニ−)進行が完璧なのです。

いじると、いじるだけ、
悪くなってしまう。

世の中がいくら進化しても、
いつの時代にも、
彼の付けたコードが、
ベストなんですね。

おっかない人です。


しかし、

おれっくらいなると、
それではつまらない。

なんか新しい試みがしたい…。


そこで、目をつけたのが、
イントロの部分です。

我々の専門用語では、
「Verse(ヴァース)」と言うのですが、

ピアノとスティーブだけで演奏する、
あの冒頭の部分です。

「Like the beat,beat,beat,of the tom-tom」
で始まる、
あの最初の8小節は、
C(ド)の音しかない。

極めてシンプル。


ようし、
この部分に、
新しい、モダンなハーモニーを付けてやろう。

と、張り切って取り組んだのですが、
結局、この曲のアレンジで、
一番時間がかかったのは、

あそこでした。(笑)


この譜面を、
ベースの岸徹至(きしてつゆき)に見せたら、
「すごいコード進行ですね。」
と、驚いていましたが、

感心していたのか、
呆(あき)れていたのかは、

今もって謎です。


そうそう、もうひとつ逸話。

その昔、私の少年時代、
大好きだった、
NHK『ひょっこりひょうたん島』
という人形劇がありました。

あのテーマ・ソングを覚えてる方も、
多いと思いますが、

あの、
「だけど僕らは、くじけない〜♪
 泣くのはいやだ、笑っちゃおう〜♪」
の部分は、

この『NIGHT AND DAY』の、
「Verse」のある部分を、
参考にしたそうですよ。

さて、どこでしょう…?


---------------------------------------------------
♪THE WAY WE WERE(追憶)♪
---------------------------------------------------

この『追憶』という曲は、
同名映画のサウンド・トラックで、
バーバラ・ストレイザンドが大ヒットさせた名曲。

いろんなカヴァーがありますが、
バーバラのを含め、
シンフォニー・オーケストラをバックに、
朗々と唄い上げるものが多い。

あるいは、
渋〜いピアノ・トリオで唄う、
大人の雰囲気。


でも、ジャミンは若者ですからね。

過ぎし日の愛の思い出を、
朗々と唄い上げるには、
まだ早い。

もっと自然で、
若者らしく、
爽やか、かつ敬虔なイメージでやってみたい。


そんなとき思い出したのが、

『RENT』という映画。

AIDS(エイズ)が、
ものすごい脅威になってきた80年代の若者たちの、
ニューヨークは、SOHO(ソーホー)を舞台にした、
ロック・ミュージカル。

ニューヨークの、ソーホーの、
倉庫を改造した自由な雰囲気の住まい。
そこに集まる、
若い芸術家やアーティストたち。

そして街の教会では、
静かなゴスペル・ソングが流れている。

そんなイメージのもとに、
出来上がったのが、
やや変則的とも言える、
この『追憶』、ジャミン・ヴァージョンでした。


冒頭から、
印象的なリフが、
これでもか、これでもかと、
全体のサウンドを支配しています。

いったい何回出てくるんでしょうね。


そして、前回も触れましたが、
間奏部分で、
素晴らしいハーモニカ・ソロを吹いているのが、
西脇辰弥。

実は彼、
本職はピアニスト、キーボード奏者です。

ポップスのアレンジも素晴らしく、
TOKIOの『LOVE YOU ONLY』をはじめ、
私のプロデュース作品には欠かせない、
ミュージシャン。

数年前に、遊びで始めたハーモニカですが、
たった2年くらいでソロ・アルバムを出し、
世界一のジャズ・ハーモニカ奏者、
トゥーツ・シールマンにも絶賛されてしまう。

すごい才能です。

そのうち、
ジャミンのライブにも、
来てもらいましょう。


ええと、お次は…、


あれ、

なんだか長くなっちゃいそうですね。

当初はこれ、
一回で終らせる予定だったのですが、
どうやら無理っぽいです。


ということで、これも連載か…。


続きは次回に。


とはいえ、

まだ寝るには早いので、

もう一曲行っちゃいましょう。


------------------------------------------------------
♪SO IN LOVE(ソー・イン・ラヴ)♪
------------------------------------------------------

うわ、またしても、コール・ポーターだ。

その昔、
『日曜映画劇場』で、
司会の淀川長治さんが、
「ハイ、もう時間来ました。
 サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。」
とやると、

この曲が華麗に流れ始め、
美しいタイトル・バックが現れる。

すると、
「あ〜あ、休み終わっちゃった。
 明日から、また学校だ…。」
と、せつない気分にさせられてしまう。

そんな経験をお持ちの方も、
多いのではないでしょうか。


さて、

『NIGHT AND DAY』の時にも言いましたが、
彼の曲をアレンジするのは、
本当に難しい。

この曲も、
コード進行は完璧です。

あまり、いじると、
雰囲気が無くなってしまう。


すると、リズムですね。

リズムを変えることで、
何か新しいことが、
できるかもしれない。

通常は、スロー・ビギンかバラードで、
切々と唄われる大人のバラードですが、

「ええい、サンバ、ラテン・ビートで、
 情熱的にやってしまえ。」

と、ひらめいた。

あとは、スイスイでした。


このピアノ演奏は大変です。

この曲のレコーディングのとき、
私は、高血圧に悩まされておりました。

生命の危機を感じた私は、
この曲に関してのみ、
ラテン・ピアノの上手な、
朱恵仁(しゅけいじん)君に、
弾いてもらいました。

いや、正解、正解。

おかげで、こうして、
生き長らえております。


そして、何度も言うようですが、

山木秀夫のドラム。

素晴らしいですねえ。


切れ味が鋭くて、
ドラマティックで、
スリリングで、

そして何よりも、

サウンドが美しい。


私の好きなミュージシャンに共通しているのは、

音色がきれいだということです。


かわ島のサックスも、
音がきれいですよね。

岸君のベースも、有介(佐藤)のベースも、
サウンドが美しい。


自分の楽器を美しく響かせる。

これ、すなわち、
ミュージシャンの感性ですからね。

音楽をやる上で、
最も大切なことではないでしょうか。


私は、そう思います。


……。



ハい、もう時間来ました。


サヨナラ、


サヨナラ、


サヨナラ。



(つづく)



めっきり涼しくなってきました。

みなさん、

お風邪など、ひかれませぬように。


(閉会式は、
 アテネの方が感動したな…。)



SHUN MIYAZUMI



woodymiyazumi at 00:26コメント(19)トラックバック(1) 
2008 エッセイ | jammin' Zeb インフォメーション

August 17, 2008

jammin' Zeb 『Dream』


お待たせしました!!


話題の男性ヴォーカル・グループ

jammin' Zeb セカンド・アルバム『Dream』


いよいよ、8/20に、発売になります。

(ビクター・エンタテインメント
  VICJ61568/¥3,150)


 080820 Dream1


おかげさまで、

このジャミン・ゼブ。

昨年(2007年)10/17、
アルバム『Smile』でデビュー以来、

*******************************************

「JVCジャズ・フェスティバル」(2008/03)
「ジャカルタ / JAVA JAZZ FESTIVAL」(同)
「東京ドーム / MLB開幕戦セレモニー」(同)

といった、数々の大舞台。

*******************************************

「NHK / 首都圏ネットワーク」
「フジテレビ / ハピふる!」
「フジテレビ / FNNスピーク」
「テレビ朝日 / 題名のない音楽会21」
「テレビ東京 / ブランニュー」

といった、数々のテレビ番組出演。

*******************************************

そして、
丸の内を中心とした、
数々のフリー・ライブ。

*******************************************

「赤坂BLITZ」「スイート・ベイジル」
「名古屋ブルーノート」

など、
すべてソールド・アウトになる、
数々のワンマン・ライブ。

*******************************************


本当に、夢のような、
素晴らしいデビューを飾ることができました。

素晴らしい経験を、
たくさん積ませていただきました。


そんな彼らが、
感謝の気持ちをこめて、
さらなる飛躍を求めて、
全力で取り組んだ意欲作が、

この『Dream』です。


というわけで、きょうは、
このアルバム『Dream』について、

プロデューサー的見地から、
不肖、この私が、
解説してみようと思います。


収録曲は、全13曲。
うちア・カペラが4曲。

ジャズ・スタンダードを中心に、

ビーチ・ボーイズ、
クイーン、
サイモン&ガーファンクル、
バーバラ・ストレイザンド、
らのポップ・ナンバーや、

クラシック曲(ブラームスの子守唄)、
そして、“オリジナル楽曲”にも挑戦するなど、

前作以上に、
バラエティに富んだ選曲。


そして、それらの楽曲すべてにおいて、

斬新なアレンジと、
彼ら特有の、
若さ溢れる、清々しい歌声を、
存分に、お楽しみいただけるのではないか、

と、思っているのですが…。


さて、そんなアルバム『Dream』

前作『Smile』同様、
今回もサウンドは、
すべてアコースティックです。

そして今回も、
私の大好きなミュージシャンたちが、
ジャミンのために、
素晴らしい演奏をしてくれました。


なかでも特筆すべきは、
私の畏友で、
日本を代表する名ドラマー、

山木秀夫さんの参加でしょう。

彼の、全編にわたっての、
素晴らしいプレイは、
このアルバムを、
一層輝かしいものにしてくれました。


そんな演奏に支えられ、
さまざまな経験を積んだ彼らは、
前作を遥かに上回る、
美しい歌とコーラスを、
たっぷりと聴かせてくれます。

そしてジャケットは、
20頁にもおよぶ、
豪華な写真入りブックレット。
全曲、日本語対訳付きです。

どうぞ、こちらの方も、
お楽しみ下さい。


この美しいアルバムを、
一人でも多くの方に、
聴いていただきたい…。

そんな願いをこめて、
今回も、
一曲ごとの解説を、
私流にやってみたいと思います。


みなさんの鑑賞の手引きになれば、

嬉しいのですが。


-------------------------------------

01. WHEN THE SAINTS GO MARCHING IN
  (聖者の行進)

lyrics & music : Traditional
arrangement : Greg Volk


 いきなり、強烈なア・カペラ・ナンバーで、
 幕開けです。

 ジャズのバイブルとも言うべきこの曲。

 まずは、コージロー、レンセイ、スティーブが、
 有名な、あのメロディーを、ソロ廻し。
 そして、シモンがベース・ランニングをする、
 中盤あたりからは、
 一転してジャズ・テイストに早変わり。

 こうした、スリリングな展開こそ、
 まさに、ジャミンの真骨頂ですね。

 アルバムの冒頭を飾るにふさわしい、
 爽快なジャンプ・ナンバーです。

 
--------------------------------------

02. DREAM(ドリーム)
lyrics & music : Johnny Mercer
arrangement : Shun Miyazumi


 1944年に出版された、
 古いスタンダード・ナンバーです。

 今や、彼らの代表曲になった『Smile』と、
 同じようなアレンジ・コンセプトで、
 もう一曲書いてみようと思い、
 シンプルかつ美しい、
 この曲を選んでみました。

 ボサと16ビートを組み合わせた
 心地よいリズムに乗って、
 ソロに、コーラス・ワークに、
 素晴らしいジャミン・ワールドを聴かせます。

 すべてにおいて、
 『Smile』のヴァージョン・アップ版、
 といったところでしょうか。

 ソロは順に、
 コージロー、スティーブ、シモン、レンセイ。

 そして感動的なクライマックスへ…。


 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Tetsuyuki Kishi
 Drums : Hideo Yamaki
 Percussion : You Hatakeyama
 Alto Sax : Taka Kawashima
 Flute : Misaki Nishinaka


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03. NIGHT AND DAY(ナイト・アンド・デイ)
lyrics & music : Cole Porter
arrangement : Shun Miyazumi


 敬愛する大作曲家、
 コール・ポーターの名曲を、
 ビッグ・バンド・スタイルでお贈りします。

 スティーブが全編にわたって、
 粋なリードを聴かせます。

 そして、
 フォー・フレッシュメンばりの、
 スインギーなコーラスが絡んでいく、
 という構成。

 ご機嫌なジャンプ・ナンバーになりました。


 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Yusuke Sato
 Drums : Hideo Yamaki
 Percussion : You Hatakeyama


--------------------------------------

04. THE WAY WE WERE(追憶)
lyrics & music :
Marvin Hamlisch, Alan Bergman,
Marilyn Bergman
arrangement : Shun Miyazumi

 
 映画『追憶』のテーマ・ソング、
 バーバラ・ストレイザンドの大ヒット曲を、
 ちょっと教会風の、
 軽いゴスペル・タッチで、
 アレンジしてみました。

 冒頭のリフが全編を支配。
 そんなサウンドに乗せて、
 コージローが、
 爽やかで、みずみずしいリードを、
 聴かせてくれます。

 間奏の素晴らしいハーモニカ・ソロは、
 ジャズ・ハーモニカの第一人者、
 トゥーツ・シールマンにも絶賛された名手、
 西脇辰弥君。

 実に感動的な演奏です。

  
 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Yusuke Sato
 Drums : Hideo Yamaki
 Chromatic Harmonica : Tatsuya Nishiwaki


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05. SO IN LOVE(ソー・イン・ラブ)
lyrics & music : Cole Porter
arrangement : Shun Miyazumi


 その昔、淀川長治さんの名司会で人気だった、
 「日曜洋画劇場」。
 そのエンディング・テーマとして、
 華麗に流れていたのが、この曲。

 これまたコール・ポーターの名曲。

 通常は、スロー・ビギンかバラードで
 演奏されるのがほとんどですが、
 ここでは、情熱的なラテン・ビートで、
 アレンジしてみました。

 レンセイの甘いリード。
 美しいコーラス・アンサンブル。

 そして、なんといっても、
 山木秀夫の、
 神がかり的なドラミングが光ります。

 特に、間奏後およびエンディングの、
 ハイ・ハット・プレイは、
 圧倒的です!

 
 Piano : Shu Keijin
 Bass : Tetsuyuki Kishi
 Drums : Hideo Yamaki
 Percussion : You Hatakeyama
 Soprano Sax : Taka Kawashima


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06. CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE
  (愛という名の欲望)

lyrics & music : Frederick Mercury
arrangement : Aaron Dale


 伝説のロック・バンド『クイーン』。
 そのリード・ヴォーカルで、
 世界中に愛された、
 フレディ・マーキュリー作による、
 ブルース・ナンバー。

 ジャミンらしく、軽快なア・カペラで、
 スインギーに展開していきます。

 ソロはコージロー。

 圧巻は、全編を通して聴かれる、
 スティーブのベース・ランニング!

 どんなパートでも楽々と唄ってしまう、
 まさに「コーラスの申し子」スティーブの、
 面目躍如といったところでしょうか。


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07. FUN FUN FUN(ファン・ファン・ファン)
lyrics & music : Brian Wilson, Mike Love
arrangement : Shun Miyazumi


 60'Sを代表するアメリカのロック・バンド、
 『ビーチ・ボーイズ』の大ヒット曲を、
 ラテン・ファンクのリズムで、
 大胆に、ファンキーにアレンジしてみました。

 前半は、
 レンセイとコージローのソロ・バトルに、
 いろんな形のドゥワップ・コーラスが絡み、

 ピアノ・ソロをはさんでの後半は、
 『TAKE6』的アプローチの、
 高度なジャズ・ハーモニーが炸裂します。

 そして、4人4樣の、
 クレイジーなクライマックス…。

 聴き所満載の、楽しいナンバーです。

 
 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Tetsuyuki Kishi
 Drums : Hideo Yamaki
 Percussion : You Hatakeyama


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08. BECAUSE OF YOU(ビコーズ・オブ・ユー)
lyrics & music :
Arthur Hammerstein, Dudley Wilkinson
arrangement : Shun Miyazumi


 これも古い歌ですね。
 トニー・ベネットの熱唱が大好きでした。

 アレンジ的には、
 レス・ブラウン楽団、トミー・ドーシー楽団、
 といった、古き良き時代のアメリカの、
 白人ダンス・バンドの手法ですね。

 甘く切ない、レンセイのリードが絶品です。

 なかなかに洒落(しゃれ)た一品。

 ワインでも召上がりながら、
 いかがでしょう。

 
 Piano & Hammond B-3 Organ : Shun Miyazumi
 Bass : Yusuke Sato
 Drums : Hideo Yamaki


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09. SOMEONE TO WATCH OVER ME
(サムワン・トゥ・ウォッチ・
        オーヴァー・ミー)

lyrics : Ira Gershwin
music : George Gershwin
arrangement : Shun Miyazumi


 コール・ポーターと並んで、
 私が最も尊敬する作曲家、
 ジョージ・ガーシュインの書いた、
 あまりにも有名なバラード。

 コージローが、
 彼の持ち味である、
 伸びのある、美しい高音で、
 見事に唄ってくれました。

 有名な、冒頭のメロディは、
 4回出てくるのですが、
 全部違うコード進行になっています。

 難解なハーモニーも、
 さらりと響かせてしまうジャミンの、
 質の高いコーラス・ワークにも、
 ご注目下さい。

 
 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Yusuke Sato
 Drums : Hideo Yamaki


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10. STRAIGHTEN UP AND FLY RIGHT
(ストレイトゥン・アップ・
        アンド・フライ・ライト)

lyrics & music :
Nat King Cole, Irving Mills
arrangement : Greg Volk


 往年の名歌手、
 ナット・キング・コールの書いた、
 楽しいスイング・ナンバー。

 今や、ステージでは欠かせない、
 ジャミンの代表的なア・カペラ曲です。

 とても、4人だけで唄ってるとは思えない、
 バラエティに富んだアレンジで、
 ぐいぐいと、
 ご機嫌にスイングしていきます。

 ソロはレンセイ。

 
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11. SCARBOROUGH FAIR
  (スカボロー・フェア)

lyrics & music :
Arthur Garfunkel, Paul Simon
arrangement : Shun Miyazumi


 オリジナルは、スコットランドの作曲家。
 サイモン&ガーファンクルが唄って、
 60年代に大ヒットしました。

 映画『卒業』の中で、
 大学のキャンパスをバックに、
 美しく流れていたのが、
 とても印象的でした。

 重厚なベースで、
 ジャミンをしっかりと支えてくれている、
 シモンのリードから始まります。

 そして、一転してジャズ・ワルツのリズム。

 前半は、
 S&Gのイメージを大切にしたコーラスの世界。
 透明感のある、北欧のイメージ。

 美しい、かわ島崇文のサックス・ソロからは、
 一転して、ジャズ・ムード。
 
 フーガの技法を取り混ぜながら、
 息もつかせぬコーラス・ワークが、
 これでもか、これでもか、と続いて行きます。

 そして劇的なクライマックス…。

 ここでも、
 山木秀夫の絶妙のドラム・ワークが、
 作品を、さらにドラマティックなものに、
 してくれました。
 
 
 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Yusuke Sato
 Drums : Hideo Yamaki
 Soprano Sax : Taka Kawashima


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12. NEW YORK LIFE(ニューヨーク・ライフ)
lyrics : Lensei
music : Shun Miyazumi
arrangement : Shun Miyazumi


 私の大好きな街、ニューヨークは、
 大都会の象徴です。

 いろんなところから人が集まる大都会は、
 常に、二つの顔を持っています。

 不安と希望、成功と挫折、秩序と混沌…。

 それがまた、
 大都会の魔力でもあるのですが、

 そんな、相反する二つの要素を、
 ジャミンで表現できたらいいな、
 と思って書いた、
 私のオリジナルです。

 詞はレンセイに頼みました。

 ゴスペルが基調の、
 楽しい、ドラマティックな、
 スイング・ナンバーで、

 ファースト・アルバムの、
 『WHEN I FALL IN LOVE』に続いて、
 ライブでは、
 最後に盛り上がる曲になるのでは、
 ないでしょうか。

 そんな気がします…。

 
 Piano : Shun Miyazumi
 Bass : Tetsuyuki Kishi
 Drums : Hideo Yamaki
 Percussion : You Hatakeyama


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13. BRAHMS' LULLABY(ブラームスの子守唄)
music : Johannes Brahms
arrangement : Gene Puerling


 アルバムの最後は、
 『ブラームスの子守唄』をア・カペラで。

 こじんまりとした一品ですが、
 味わい深い作品に仕上がりました。

 時折、見え隠れする不協和音が、
 逆に心地よく響く、
 なかなか粋なアレンジですね。

 ということで、

 おやすみなさい。

 また明日も、素敵な一日でありますように…。


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最後に、レコーディング・データです。


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jammin' Zeb are :
Kojiro
Steve
Lensei
Simon


Produced by Shun Miyazumi

Associate Producer : Shoji Yuasa


Recorded & Mixed by Takashi Sudoh
Recorded at :
ZAK STUDIO, SUNRISE STUDIO, ZERO STUDIO,
STUDIO Dede, KAOS STUDIO
Mixed at ZERO STUDIO
Assistant Engineers :
Rie Mimoto, Yasuhiro Nakashima

Mastered by Hiroshi Kawasaki
Mastered at
FLAIR Mastering works /Victor Studio

A&R Producer : Sumio Jono

Art Direction & Design :Swingarm
Photography :Yuuki Kawamoto
Hair and Makeup : Chika Tamura (tricca)
Costume Support:GENERRA

Sales Promotion:
Minoru Iwabuchi, Takashi Udono,
Hirohisa Goto,Koji Hirashima,
Makoto Morikawa, Atsuhiko Tsujita,
Makoto Nishibe, Ryo Saito, Chika Shiihara,
Kanako Okamura, Takeshi Sasaki,
Kazuhiro Otsuki,Mai Sato,
Yasuo Masubuchi, Yasumichi Shibata

Supervisors : Seiji Fueki, Koji Niwa

Artist Management : SHUN CORPORATION

Special Thanks :
KAOS (Akinori Kumata & Ayumi Ozaki),
Masafumi Nakao, Akihito Yoshikawa,
DISK GARAGE, PROMAX, All Of Me Club,
Shigeo Kurimoto,
Koichi Tsuruyama ("A-TRAIN")


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さ、この夏の終わりからは、

ジャミン・ゼブから、


目が離せませんぞ…。



SHUN MIYAZUMI



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2008 エッセイ | jammin' Zeb インフォメーション

August 12, 2008

蚊帳(かや)その3(最終回)


やりましたねえ、

北島康介、オリンピック2連覇!

すごい重圧の中で、
さらにすごいことを、サラリとやってしまう。

すごい精神力です。

素晴らしい!!

この先も、
まだまだ熱いドラマがありそうですね、
北京オリンピック。

(たまらん…。)


そして、高校野球もいよいよ佳境。

(たまらん…。)


というわけで、

ここで、例年のように、

熱心な野球オタクが送る、

大胆優勝予想をひとつ。

(当たったこと、ないけど。)


ズバリ優勝は、

浦添商(沖縄)です。


伊波(いは)という、
超高校級のエースがいる上に、
バッティングも走塁も素晴らしい。
力感、スピード感とも申し分無し。

真っ向、力勝負だと、
ここに勝てるチームはありませんね。


もし、ここを破るとしたら、

経験豊富な名監督のいるところ。
あるいは‘試合巧者’のチーム。

「智弁和歌山」か「常葉菊川」

あたりでしょうか。


いずれにしても、
今年はレベルが高い。

去年の「佐賀北」のような、
ダーク・ホースが勝てる雰囲気では、
ありませんね。


個人的には、

あそこに勝って欲しいのですが。


北神奈川代表のあそこ…。


けっこう、いいチームなんですよ。


(でも、無理だろうなあ…。)




『蚊帳(かや) その3 (最終回)』


私は、
食堂に戻ると、

大声でみんなに、
無実を訴えました。

「僕は、やってない!
 これは、何かの間違いだー!」


すると誰かが、

「でも、あんた、
 パンツびしょ濡れにして、
 お母さんのところに行ったんやろ?」

「……。」


しかし私は、
必死で弁明をする。

「それはー、
 寝ぼけててー、
 手洗いの洗面器をひっくり返してー、
 だから、パンツが濡れたんだよ。
 あれは、洗面器の水なんだよ。
 絶対に、オシッコじゃないから。」


すると、今度は伯父が、
こわ〜い顔をして、

「シュンよ。
 やったことは仕方ないとして、
 ウソはいかんぞ、ウソは。
 ウソつきは泥棒のはじまりって、
 言うんだぞ。」

「……。」


でも私は、負けません。
負けてたまるか。

「ウソじゃないよ。
 母さん、なんとか言ってよー。
 みんな信じてくれてないよー。」


ところが、この母親。

「でもねー、それだと、
 話がうますぎるよねえ。
 もう、正直に言ったらどうなの?」

(くそー、実の親まで、こうか。
 自分の子が信じられないのか…。)
  

私の大好きな叔母にいたっては、

「シュンちゃん。
 もしかして、きまりが悪いから、
 わざと洗面器ひっくり返したんじゃないの?」

(な、なんということを…。)


さらに、おばあちゃんが、
なんとも変な助け舟…。

「シュンが、やってない言うんやから、
 そういうことに、してあげまーい。」

(そう、四国弁は、こんな感じです。
 「あげまーい」とは、「あげなさい」という意味。
 ううむ、のどかだ…。)


おっと…、

そんな悠長なことを言ってる場合ではない!


なにが、
「そういうことにしてあげまーい。」
だ!!


僕はやってないのだ。

およそ「寝小便」などというものは、
とっくに、
幼稚園の頃に、
卒業しているのだ。

(くそ。なんとか無実を証明しなくては…。)



と、そこへ…、

近所に住んでいる、
もう一軒の親戚の、
従姉妹(いとこ)がふたり、
楽しそうにやって来た。

ふたりとも、
私より年上です。

そして、大きな声で、
こう言っているのが、
聞こえてきました。

「ねえ、ねえ、
 シュンが寝小便したんだって?
 もうすぐ中学生なのに、
 恥ずかしいねえ、あの子。
 アハハハ。」

(ちきしょう、あの女ども。
 いずれ、成敗してやる…。)


田舎というのは、
普段、あんまり刺激がないようで、

こんなくだらない出来事でも、
たちまち大騒ぎになるんですね。

まいりました。



それにしても、

この偶然の重なり具合は、

どうでしょう…?


私は明け方「蚊帳」を出て、
便所に行った。

しかし寝ぼけてて、
洗面器をひっくり返して、
パンツをびしょびしょにしてしまった。

しかたなく、二階に上がり、
母を起こして、
パンツを代えてもらった。

そして、そこで、
そのまま寝た。

ところが、
朝になってみると、
便所に行くまで私が寝ていた、
「蚊帳」の中の布団の、

ちょうど、そのあたりが、

びっしょり濡れていた。

……。



もうだめですね。

状況がそろい過ぎています。

恐ろしすぎます、

この偶然は。


これじゃあ、
誰も私の言うことなど、
信じないのも、
無理はありません。

身の潔白を証明することは、

まず、不可能に近い…。


私は、もはや、
弁解するのをあきらめ、

ただひたすら、
黙々とメシを食うことにしました。

もう、やけくそです。


「おかわり!」

(もういい。勝手にしろ。
 みんな、嫌いだ…。)



でも…、

おれっくらいなると…、

崇高な魂を持った、おれっくらいなると…、


こんなことで、めげたりはしない。


ましてや、

「もう、誰も信じられない。
 こうなりゃ、親に恥をかかせてやろう。
 誰でもいいから殺してやろう。」

などという、バカな発想には、

絶対にならない!


幼いながらも私は、

高い次元に立って、

こう考えていました。


「なるほど…。
 冤罪(えんざい)というのは、
 こうして生まれるのか…。」


頼んでもいないのに、
親が買って来て、
仕方なく読んだ、
『世界少年少女文学全集』

その中にあった、
『巌窟王』や『レ・ミゼラブル』

でも、そんな悲劇の世界は、
あくまで小説の上での出来事だと、
思っていました。


まさか、

自分の身に、

そんな災難がふりかかろうとは…。


「無実の罪」

「冤罪(えんざい)」


恐ろしいことです。

人類の歴史上、
今まで、どれだけの人々が、
この「冤罪」によって、
尊い命を奪われたのでしょうか。


そんな、

世の不条理を呪いながら、

私はひたすらメシを食う。

……。



と、そのとき、

向こうの方から、

伯父さんの、大きな声が聞こえました。

「おーい、みんな。
 ちょっとこっちへ来いよー。」


「なんだろう?」
と思って寝室へ行くと、

伯父は、「蚊帳」を片付けていた。

そして、
「蚊帳」の上の方を指さして、
さらに、天井を見上げる。


どちらも、

うっすらと、

濡れていました。


「こりゃ、シュンの寝小便じゃないぞ。
 こりゃ、雨漏りだよ。」

(ほら、見ろ!)



明け方、
雨が降ったみたいですね。

それにしても、

その雨漏りの場所は、
見事に私の寝ていた、
しかも、あのあたりを、

直撃していたのです。

まさに、ピン・ポイント。

すごい偶然です。


でも、

私の身の潔白は、

ようやく証明されました。

(やれやれ…。)



しかし、
この事件以来、私は、

「冤罪」「無実の罪」
というものには、
人並み以上に敏感になりましたね。

世の中には、
こういうこともあるのだと、
しみじみ思いました。


来年からは、
「陪審員制度」も、
導入されるそうですね。

私は決して、
死刑存続には反対ではありませんが、

司法関係者のみなさん、

マスコミのみなさん、

どうか、万に一つも、
間違いのなきよう、

「冤罪」というものを、
絶対に出さないよう、

お願いしますよ。



え?

たかだか、寝小便騒動くらいで、
大げさなこと言うな。

ですって?



それもそうだ。



(おわり)



冗談はさておき、

そろそろ仕事が山積みです。

今日あたりから始めないと、

まずいですわ。


でも、やっぱり、

テレビ見ちゃうんだろうなあ…。


わかっちゃいるけどやめられねえ。


か…。



SHUN MIYAZUMI



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2008 エッセイ 

August 07, 2008

蚊帳(かや)その2


「暑さと真っ向勝負!」

これが、この夏の、
私のテーマです。


昼は、熱々(あつあつ)の、
「みそ煮込みうどん」や「釜揚げうどん」
を、汗だくになって食う。

「冷やし中華」や「冷やしソーメン」に
逃げない。

夜は、「トンカツ」やら「ステーキ」やら、
とにかく肉をバクバク食う。


部屋のエアコンも、
数えるくらいしか使っていない。
それも26°以下にはしない。

タクシーなんか使わずに、
汗タラタラで歩く。

地球温暖化防止に著しく貢献。

都会に居ながらにしての、
「エコ生活」


いいですよー。

まったく夏バテなんかしてません。


元気モリモリです。

すこぶる元気オヤジです。


すこぶる元気で、

毎日、高校野球ばかり、

見ています。


(ダメじゃん…。)




『蚊帳(かや) その2』


「さ、朝ご飯でも食べよう〜っと。」

すがすがしい気分で、
下におりて行った私でした、

が…、


なにやら、みんなの様子がおかしい。

……?


私が食堂に現れるやいなや、

あわてて会話を中断して、
黙りこくってしまった、
おじいちゃんと伯父さん。

流し目で、私の顔を見ながら、
何やら意味深(いみしん)げに、
いやらしい笑みを浮かべながら、
ヒソヒソ話をする伯母と母。

苦笑しながら、
じーっとこっちを見ている
おばあちゃん。

下を向いて、
顔を真っ赤にして、
クスクス笑ってる叔母。

困ったような、
苦虫をつぶしたような顔の父。

あきれかえったような顔で、
バカにしたような顔で、
私を見つめる、おさむちゃん。

……。


それはもう、

本当に、

いや〜な感じでした。


そして、
私が、話題の中心になってることは、

幼心にも、

よ〜く分かる…。


私は、たまらず聞きました。

「なんだよー、みんな。
 僕の顔に何かついてんの?
 なんか、やな感じだなあ。」


すると父が、
怒ったような口調で、
こう言いました。

「なまいきな口訊いてないで、
 さっさと食べろ。
 もうみんな、とっくに終ってるんだぞ。
 だいたい、普段から、
 だらしない生活をしてるから、
 こんなことになるんだ。」

(ん…? 意味がわからんよ、とうちゃん。)


すると、やさしい伯母が、

「まあ、ええのに、お父さん。
 そんなに怒らんといてあげてーな。
 悪気があったわけやないんやから。
 なあ、シュンちゃん。」

(フォローは嬉しいけど、おばさん。
 あなたも、意味がわかりません。
 まさか、洗面器をひっくり返したことを、
 言ってるんですか〜…?)


と、今度は母が、

「でもね、この子、
 あっちの方は、
 世話のかからん子だったんよ。
 小ちゃいときから。」

(おっと、母上。
 あんたまで訳の分からんことを…。
 みなさん、頭がどうかしたんじゃありませんか…?)
  

さらに、私の大好きな叔母までが、

「まあまあ。
 間違いは誰にでもあるけん、
 許したげてーな、みんな。」

(おばさん、気は確かですか?
 私が何をしたと言うのでしょう…?)


まったく意味のわからない私は、

もう一度、

今度は強い口調で、

聞いてみました。

「あのさー、みんな。
 何を言ってるかわかんないんだけど。
 僕が、いったい、何をしたって言うの…?」


でも、みんなは、
ただ黙って、下を向くだけ。

そして、相変わらず、
クスクス笑ってる人もいる。

……?



私にはもう、
何がなんだかわかりません。

そして、
本当に不愉快きわまりない。

(いったい、なにが起こっているのだ、
 この家では…?)


すると…、

従兄弟(いとこ)の、おさむちゃんが、
仲のいい、おさむちゃんが、
見るに見かねて、

そっと教えてくれました。


それは、

予想だにしなかった、

衝撃の発言…。


「シュン、
 お前、きのう、
 寝小便したやろ。」

(……。)



私は、

すぐさま箸(はし)を置いて、
居間のとなりにある寝室に、
飛んで行きました。

「蚊帳」も寝床も、
まだ片付けられてはおらず、
きのうのままの状態です。

私は、
「蚊帳」を持ち上げて、
まだ敷いたままになっている、
布団(フトン)を見ました。


すると…、

きのう私が寝ていたあたり、

しかもちょうど、
下半身の、

まさに、あのあたりが、


びっしょり濡れていたのです。

……。


 いったい、これはなんだ…?

 どういうことなんだ…?
  


(つづく)



「蚊帳(かや」は、
今や、東南アジア諸国に、
大受けなんだそうです。


貧しい国では、
エアコンなどありません。

寝苦しい夜には、
自然の風を入れながら寝たい。

しかし、
マラリアの感染源である蚊(か)は、
なによりも恐ろしい。


そこで大活躍なのが、

この「蚊帳」

というわけです。


いやあ、江戸時代の日本人。


いい仕事してますねえ。



SHUN MIYAZUMI



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2008 エッセイ 

August 04, 2008

蚊帳(かや)


高校野球が始まりましたねえ。

いよいよ夏本番。

今年も面白そう〜。

私にとっては、
たまらない季節です。


というわけで、

今日も夏のお話をひとつ。

古〜い日本の夏のお話です。



えっ?

もうすぐオリンピックも始まる?


そりゃ、困りましたねえ…。


仕事、出来るのかしらん…、


この夏の私ったら…?



『蚊帳(かや)』


夏休み。

少年時代の私にとって、
夏休みの思い出といえば、
真っ先に浮かぶのが、

四国のおばあちゃん家。


もう何度も書きましたが、
私の母の実家は、
四国は香川県の、
庵治(あじ)というところです。

(『松山商業』『四国』
 『千葉の海とビーチ・ボーイズ』etc.)


平家の落人村として有名な、
瀬戸内海に面した、
海の幸、山の幸に恵まれた、
それはそれは美しい漁村。


中学生くらいまでは、

毎年、夏休みになると、

両親は私を連れて、
一週間くらい、
この庵治という田舎に行くのですが、

これが、
本当に楽しみでした。


古〜い、
江戸時代からあるんじゃないかと思うような、
木造の大きな家。

家の横の路地を、
サンダルをひっかけて、
ちょこっと歩くと、
もう、そこは海。

毎朝、
漁に出かける「ポンポン船」の音と、
窓から飛び込んで来る、
なんとも心地よい潮風で目が覚める。

魚やうどんは美味しいし、
釣りや海水浴にも最適だし、

幼い私にとっては、
まさに、
最高の楽園でした。


で、

あれは、私が、

小学校6年生の時だったでしょうか…。


この年の夏も、
私は、両親とともに、
夏休みの一週間を、
この、母の実家で過ごしました。


さらに、この家には、

「おさむ」という、
私の一つ下の従兄弟(いとこ)がいて、
遊び相手には事欠きません。

これもまた、
楽しみのひとつでしたね。

(エッセイ『四国』)



その日も、

私とおさむちゃんは、

夜遅くまで遊んでいました。


そのうち両親は、
「いつまでも遊んでないで、早く寝なさいよ。」
と、捨てゼリフを残して、
私たちが、寝室にあてがわれている、
二階の、叔母(母の妹)の部屋に上がって行った。

おじいちゃんとおばあちゃんは、
とっくに、
離れにある、彼らの寝室に。


そうこうするうちに、今度は、
伯父夫婦(おさむちゃんの両親)が、
寝床を作り始め、

大きな「蚊帳(かや)」を、
天井から、ぶら下げた。


そう、

「蚊帳(かや)」


これ、ご存知ですか…?

若い人は、
まず知らないでしょうね。


大きな網で出来た、
半円球のようなもので、
寝床をスッポリ包むことができる。

網の目が小さいので、
蚊(か)が入って来ない。

しかし風は入ってくるので、
とても寝やすい。

江戸時代からある、
日本の夏の風物詩です。

昔の人の、
生活の知恵ですね。


四国の田舎へ行かないと、
この「蚊帳」にはお目にかかれないし、
「蚊帳」の中で寝るチャンスはないし、
もう二階へ行くのも面倒だし、

私は伯父に、
「今日はここで、
 おさむと一緒に寝たい。」
と、頼んでみました。

伯父は、ニコニコ笑いながら、
「ああ、いいよ。」
と快諾。


「蚊帳」を持ち上げて、
フトンにすべりこんで、
またまた、おさむちゃんとペチャクチャ。

「蚊帳」の外からは、
蚊取り線香のニオイ。

縁側の風鈴が、
チンチロリン。


いいですねえ。

この、なんとも、のどかな、風流な、

四国の海辺の片田舎の夏の夜は、

こうして、

更けていきました。


私もいつしか、

グ〜、ス〜、zzz…。

……。



と、そんな深夜。

私は、
猛烈な尿意で、目がさめました。

(すみません。またそんな話です。アハハ。)


仕方なく、

「蚊帳」を持ち上げ、
寝ぼけ眼(まなこ)で外に出て、

さっきまで遊んでいた、
だだっ広い居間を、
ふらふら状態で通り抜け、
縁側の廊下右手にある便所に行って、
用を足す。


いや、この場合は、
「厠(かわや)」
と言った方がいいかもしれませんな。

もちろん「水洗便所」などではなく、
古〜い汲取式の便所で、
手を洗うのも、
洗面器に溜めてある水を利用する。

ほんとに、
何から何まで、
江戸時代のような生活なんですね、

ここは。

(もちろん、今は違いますよ。)



さて、

寝ぼけ眼(まなこ)の、
ほとんど夢遊病者のような私は、

用を足したあと、
この洗面器の水で、
手を洗おうとした。


と、その瞬間、

フラっとよろめいた瞬間、

私は、

洗面器をひっくり返してしまった…。


そして、

私のパンツは、

ビショ濡れ。

……。


(あ〜あ。)



しかたなく私は、

もう、「蚊帳」の寝床に戻るのをあきらめ、

この縁側の廊下の端にある、
階段を上って、
二階の叔母の部屋に行きました。

そして、
母親をたたき起こして事情を話し、

新しいパンツを出してもらいました。


そして、

そのまま、

そこで、

グ〜、ス〜、zzz…….

……。



コッケコッコ〜。

朝が来ました。


目を覚ますと、
周りには誰もいません。

窓から外を眺めると、
目の下には、
古い田舎の民家がズラリ。

狭い路地を、
ニワトリが、
忙しそうに走り回っている。

コケ、コケッ、コッコ〜〜。


遠くには、
瀬戸内海の美しい島々。

ポンポン船の音。

心地よい潮風。

(きょうもいい天気だなあ。)


すがすがしい気分で、

朝飯を食いに、

下におりて行った私ですが…、


そこには、

なにか、いつもと違う、

変な雰囲気が、


イヤ〜な雰囲気が、


漂っていたのでした。



(つづく)



一気に、
最後まで書こうかと思ったのですが、
目がしょぼしょぼしてきたので、

つづきはまた次回に…。


それにしても、

風景を、文章で表現するのは、
本当に難しいですね。


雰囲気、

伝わってますか…?



SHUN MIYAZUMI



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2008 エッセイ