October 2009

October 26, 2009

無責任教育講座


エヘン。

きょうは、ちょっと真面目な(?)お話です。


題して、


『無責任教育講座』


(パチパチパチ)




え〜、みなさん。


約3ヶ月にもおよぶ、

『夏の6週間』というシリーズを、
ご愛読いただきまして、

まことに、
ありがとうございます。



え〜、私が、

この『夏の6週間』という、
長い長いシリーズを通して、

みなさんにお伝えしたかったことは、


“無責任”とは、
なんと楽しいものであるか。

“無責任”とは、
いかに人生に、
潤(うるおい)いをもたらせてくれるか。

ということでした。


(え〜っ、そうなの…?)



そのために、

O音楽事務所の、
O社長を主役に担(かつ)ぎだして、

長々と、あんな話を、
書いたのですが、

(ん? どこかで、
 くしゃみが聞こえるぞ…?)


きょうは、

さらにそれを掘り下げて、


「“無責任”を上手に使うことによって、
 苦境や困難から脱することができる。

 あるいは、
 思わぬ発想が生まれることがある。」


そんなことをテーマに、

お話してみたいと思います。



ただし、誤解しないで下さい。


ここで言う“無責任”とは、

 「責任をとらない」

 「責任を人に押しつける」

ということではありませんから。


ひと言でいえば、

「無責任の心」

ですね。


「無責任な行動」

をするのではなく、


「無責任の心」

を、どう持つか、

どう上手に使うか、

ということです。


したがって、

私の言う“無責任”には、

以下のような鉄則があるのです。


(1)人を傷つけない
(2)人に迷惑を与えない
(3)人に損害を与えない



これさえ守れれば、

“無責任”は、

大いに、みなさんの、

武器となり得るということです。


エヘン。

(と、ここで水を飲む)



え〜と、

一例をあげましょう。


何度もお話しているように、

私は植木等さんを、

心の師と仰いでおります。



私が少年だった1960年代に、

日本中に大旋風を巻き起こした、

『ハナ肇とクレージー・キャッツ』


そのリード・ヴォーカルであるところの、
植木等さんが、
声高らかに唄った、
数々のヒット曲は、

今もなお私の、
“バイブル”といっても、

過言ではありません。



過去ログにもありますが、

ここでもう一度、
おさらいをしてみましょう。


代表曲は、
こんな唄でしたね。


 ♪スーダラ節♪

  ちょいと一杯のつもりで飲んで
  いつの間にやらハシゴ酒
  気がつきゃホームのベンチでゴロ寝
  これじゃ体にいいわきゃないよ
  わかっちゃいるけど やめられない

♪♪♪


  
この、

「わかっちゃいるけど やめられない」

というフレーズ。


すごいですねえ!


そのときにも書きましたが、

これぞまさに、
人間の「煩悩」を見事に言い表している、
不滅の人生訓であって、

言い換えれば、


これが、

「人間」なんですね。



そして、

いい方に解釈すれば、


この、“開き直り”ともとれる、
フレーズこそが、

いい意味での、
“無責任”を、
ズバリ言い表わしていると、

私は思うのです。


いい意味でね。



つまり、

「人間とは、
 本来“無責任“な生き物なのだ。

 こう悟りきってしまえ。

 すると、
 苦境から脱することが、
 できるかもしれないぞ。

 あるいは、
 思わぬ成功が、
 待っているかもしれないぞ。」


私には、そう聞こえるのです。


ちょっと飛躍し過ぎですか…?



もう一曲、いきましょう。


 ♪無責任一代男♪

  人生で大事なことは
  タイミングに C調に 無責任
  とかくこの世は無責任
  コツコツやる奴ぁ ごくろうさん

♪♪♪

  

「こらっ、
 真面目に働いてる人にむかって、
 コツコツやるやつぁ ごくろうさん
 とは、何事だ!」

と、お叱りを受けそうですが、

ちょっと待って下さい。


私には、こう聞こえるのです。


「真面目にコツコツ働いたって、
 どうせそれは会社や組織のため。

 いらなくなったら、
 ポイっと捨てられちゃうのよ。

 とかくこの世は無責任なのよ。

 だから、そうならないために、
 こっちも“無責任の心”を身につけて、
 うまく立ち回るのよー。

 しっかり自分を育てるのよー。」


とね。



はい、もう一曲。


 ♪だまって俺について来い♪

  ぜにのない奴ぁ 俺んとこへ来い!
  俺もないけど 心配するな
  見ろよ青い空 白い雲
  そのうちなんとかなるだろう 

♪♪♪



まさか、

こんなノー天気な、
無責任な奴についていく人が、
そういるとは思えませんが、

でも、
どうしようもないほどの困難な状況に、
陥(おちい)ったとき、

周りにこんな男がいたら、
救われますよねえ。


そうなんです!


“無責任”は、

ときに人を、

ときに自分を、

救うことがあるんです。


♡♡♡



何度挑戦しても、失敗ばかり。

自分ではいいと思っていても、
なかなかうまくいかない。

夢をあきらめようかな、
と絶望に近い気持ちが生まれる…。


そんな人には、

♪わかっちゃいるけど やめられない♪

をおすすめします。


カント(だったかな?)も言ってますね。

「愚行を固執すれば、
 賢者となるを得ん」


……。



真面目に会社務めをしてきたのに、
突然リストラされてしまう。
真っ暗になってしまう…。


そんな人には、

 ♪とかくこの世は無責任
  コツコツやる奴ぁ ごくろうさん♪

あるいは、

 ♪そのうちなんとかなるだろう♪


と、明るく、
歌いとばしていただきたいもんです。


とかくこの世は、

無責任なんですから。


肩の力がスーっと抜けますよ。


楽天の野村監督も言ってますね。

「世に絶望という言葉はない」


……。



とは言うものの、

私なんか、

まだまだ、道の途中。


O社長に比べれば、

まだまだヒヨコの未熟者です。


しかし…、

この「無責任道」をひた走ろう
という精神だけは、

今だに衰えていません。

ええ、いませんとも。



ところで…、


この“無責任”の、

もうひとつの利点はというと…、

……、



おっと、もう時間だ。


このつづきは、

また次回に。


(おい、いいところでやめんなよー。

 無責任だなあ…。)



(つづく)




さて、

ジャミン・ゼブ。


怒濤の5連発ライブも、

おかげさまで、

なんとか乗り切ることができました。


あらためまして、

暖かい声援や激励をいただいた、
ファンのみなさんや、
スタッフの方々に、

この場をお借りして、

厚く御礼申し上げます。


本当に「色々」ありましたが、

この「色々」は、
必ずや彼らの、
貴重な財産になることでしょう。



さあ、

これから年末にかけては、
さらに怒濤のスケジュールが、
待ち構えています。


でも、きっと、どれも、

楽しいものになるはず。


またご一緒に、

盛り上がりましょう♪



ということで、

本日の最後は、

私の高校の先輩、
今は亡き、
「小森のおばちゃま」の名(?)セリフで、

締めくくりたいと思います。


「このつぎは、

 モア・ベターよ。」


……。



SHUN MIYAZUMI

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2009 エッセイ 

October 18, 2009

夏の6週間 フィナーレ


1991年8月10日

レコーディング最終日。


この日も、

カリフォルニアの太陽が燦々と降り注ぐ、
リッツ・カールトン・ホテルの、
豪華なダイニング・ルームで、
優雅な朝食をいただいた私たちは、

そのままスタジオに移動して、

最後の3曲の唄入れを完了。


♪♪♪



こうして、

この伊東ゆかりさんの、
ロス・レコーディングは、

予定していたタイム・スケジュールを、
見事なまでにクリア。

なんのトラブルもなく、
無事に終えることができました。


しかもそれは、

私の予想をはるかに超える、
美しい仕上がり。


(完璧だ…。)



そのアルバムは、

『LOVE AFFAIR』

というタイトルのもと、

この年の冬に発売になりました。


Love Affair



さて…、


最後の唄入れを終えた私は、

「やれやれ」
といった安堵の気分で、
スタジオの裏の倉庫に行き、

待望のタバコを一服。


プカ〜〜〜〜ッ。

(うま〜〜〜〜〜い!!)



やはりスモーカーで、

日頃、タバコ嫌いのゆかりさんのために、
不自由な思いをしている、
マネージャーのY田くんも一緒に、

プホ〜〜〜〜ッ。

………。



と、そこへ…、


なんと、

ゆかりさんが入って来た。


(???)



煙がもうもうと立ちこめる、
雑然とした、うす汚い倉庫、
というか物置に、

あの、


ゆかりさんが…。

……。



私たちは、

慌ててタバコの火を消そうとする。


すると、ゆかりさん、

悠然と左手を振って、

「いいのよ、そのまま吸ってて。」

ときた。


(ん? なんだか今日は変だぞ…?)



そして…、

私のナナメ右の席に座ると、

ニコッと私に微笑みかけ、
静かな口調で、

「終わったわね…。」
と、ポツリ。


その穏(おだ)やかな表情には、

やはり同じように、

ひと仕事終えた満足感が、
漂っていました。


(よかった、よかった。)


♡♡♡



ところがです。


そのあと…、

彼女が発したひと言に、

私は仰天しました!!


いやあ、

私の人生のなかでも、

これほどビックリしたことは、

そんなには、ありませんね。


彼女は、こう言ったのです。


ゆ「宮住さん。  
  タバコ1本ちょうだい?」


 (え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!)



マネージャーのY田くんも、
あまりの驚きに、
椅子から飛び上がる。


ところが、ゆかりさん、平然と、


ゆ「あら、どうしたの?
  そんなに驚いて。

  こう見えてもあたし、
  昔は、一日一箱くらい吸ってたのよ。
  自分で買ってね。

  さ、早く、モタモタしてないで、
  1本ちょうだい!」


  「……。」



私は、

驚きを隠せぬまま、
言われたとおりにタバコを1本差し出し、
ライターで火をつけてあげました。


すると、ゆかりさん…、

熟練のスモーカーよろしく、
人差し指と中指で器用にタバコを挟むと、

深々と吸い込んで、

「ふ〜〜っ」
と、白い煙を吐き出した。


そしてひと言、

「美味(おい)しい…。」


……。



その姿が、

実にサマになっているんですね。


(カッコいいなあ…。)



さあ、狂喜したのは、
Y田くんです。

大急ぎでスタジオから、
ビデオ・カメラを取って来ると、
その、ゆかりさんがタバコを吸う姿を、
必死に撮(と)りまくる。

「日本に帰って、
 事務所のみんなを驚かせるんだー。」



しかし、当のゆかりさんは、

そんなことおかまいなしに、

悠然と吸い続けている。



そんなゆかりさんに、

私はこう聞きました。


み「でも、ゆかりさん。
  タバコの煙や臭い、
  大嫌いなんでしょ?」



すると、ゆかりさん、


ゆ「そうねえ、
  人の吸う煙や臭いは、
  イヤね。

  でも、たまに、
  人からもらって吸うタバコって、
  美味しいのよねえ。
  ウフフ。」

ときた。



(おや? あなたも、
 「無責任党」の仲間入りですか?)


と、言いたい気分の私でしたが、

よくよく考えてみると、

これは納得ですね。



なぜならば…、

その昔、

私が小学生の時、
夢中になって観ていた、
超人気バラエティーTV番組、

『シャボン玉ホリデイ』

のなかで、


私が心の師と仰ぐ植木等さんや、
クレージー・キャッツの面々と、

毎週のように、
“無責任な”コントを演じていたのは、

他ならぬ、この、

「伊東ゆかり」さん、

だったからです。



そして…、

彼女は…、

さらに驚くべきことを、

さらりと言ってのけた。


ああ、忘れもしません、

あのひと言…。


これぞ、

まさに、


“笑撃の(?)クライマックス”



ゆ「ところで、
  宮住さんも物好きねえ。
  あんな曲が好きだなんて…。」

み「ん…? なんの話?」



ゆ「『夏の6週間』よ。
  好きなんでしょ?」

み「だからあ、なんの話をしてんのよ…?」



ゆ「あら、O社長、言ってたわよ。

  “宮住くんが、
  「『夏の6週間』を、どうしてもやりたい。
   絶対このアルバムに入れるべきだ。
   社長、なんとかゆかりさんを、
   説得してくれませんかねえ。」
  て、言うんだよ。
  ゆかり、なんとか彼のために、
  あの曲やってあげてくれないかなあ。”

  てね。


  まあ、別に嫌いな曲じゃないから、
  「いいわよ。」
  って、言ったんだけど、

  でも、宮住さんが、
  あんな曲を好きだなんて、
  ちょっと意外だったわ…。」



  (そ、そういうことだったのか…。)



……。


…………。。




いやあ、O社長。

あなたは偉大です。


あなたの無責任に比べたら、

私なんぞ、

まだまだヒヨコの未熟者です。


いい勉強になりました。



あはは…、


アハハハハ…、


あはははははは…、



( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \




(『夏の6週間』 おわり)





いやあ、

本当に長いシリーズでしたね。


でも、

この、最後の、
“強烈なオチ”を、
より、リアルに感じていただくためには、

O社長やゆかりさんの人物像を、
事細かに書いておく必要があったのです。


そのため、
出会いまでさかのぼった。

とまあ、
こういう訳でした。


ちなみに私はこの時、

事の真相を、
ゆかりさんには知らせず、

O社長の仕組んだ可愛い(?)罠を、
黙って享受することにしました。


なぜか?

そのほうが、
お洒落(しゃれ)だからです。



ま、なにはともあれ、

お疲れさまでした。

……。



さ、今週はライブ・ウィーク。

とくに、
10/19ー21『STB139』は、
最高の盛り上がりになるといいなあ…。

なんといっても、
ジャミン・ゼブの、
2才の誕生日記念ですからね。


なんとか初日にこぎつけた、

演出家の心境。



どきどき…。


ドキドキドキ……。


……………。



SHUN MIYAZUMI


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2009 エッセイ | マイ・ディスコグラフィー

October 10, 2009

夏の6週間 その10


いやあ、今週は慌(あわ)ただしかった。

いろんなことがありました。


さらには、

パニック寸前の仕事量…。



「誰だ、俺をこんなに働かせるヤツは!」

と、言いたいところですが、

その仕掛人は、

私自身なのだから、


こればっかりは、仕方ありませんね。


アハハハ。

(自虐的笑い)



でもね、

忙しいということは、
いいこと。

それだけジャミン・ゼブ号のスピードが、
加速してるってことですから。



ああ、それにしても…、

思い出すのは、


あの、


優雅な、


ロス・アンジェルスの日々…。


……。




『夏の6週間 その10』


「じゃあ、みんなで食事に行こうじゃないか。
 ゆかり、何が食べたい?
 何でもいいぞ。
 和食でも何でもいいぞ。

 宮住くんも、
 好きなもの言ってくれよ。
 和食でも何でもいいからな。

 みんなも、遠慮しないで、
 何でも好きなもの言ってくれよ。

 和食でも何でもいいから。

 和食でも、何でも。」


……。



やっぱり来ましたね、

O社長。


私たちの、イヤ〜な予感は、
見事に的中しました。

これじゃあ、

「和食って言え。」
と、誘導してるようなもんです。



で、ここで、ゆかりさんが、

私たちの気持ちを代弁して、

ピシッと釘をさす。


ゆ「ええ〜〜っ? 和食〜〜??
  社長、ここはロスよ。 

  どうせだったら、
  和食じゃないほうがいいなあ、
  あたし。」


(いいぞ、いいぞ。)



ところが、O社長。

まったく動じる気配もなく、
こう言う。


O「おお、そうか。
  じゃ、和食がダメなら、

  しゃぶしゃぶでも寿司でも、
  何でもいいぞ、俺は。」
 


さあ今度は、私が助け舟。

み「あの〜、社長、
  お言葉ですが…、

  しゃぶしゃぶも寿司も、
  ジャンル的には、
  和食だと思うんですが…。」



しかし、O社長は、
ひるまない。

O「おお、そうか。

  じゃ、しゃぶしゃぶや寿司がダメなら、
  てんぷらはどうだ。
  スキヤキでもいいぞ、俺は。
  鍋でもいいぞ、俺は。

  みんなも、
  何でも好きなもの言ってくれよ。
  ガハハハ。」


……。



もうダメですね。

この人には勝てません。


私たちは、一様に、

あきらめムード。


しかたなく、
ゆかりさんが代表して、


ゆ「もう、何でもよくなっちゃった。

  じゃいい。

  社長におまかせするわ。」



すると、O社長、
ますます上機嫌で、


O「おお、そうか。

  じゃ、みんなが、
  そんなに言うんだったら、

  和食にしよう!」


(言ってないから)




こうして、

私たちが案内されたのは、

「リトル・トーキョー」という地区にある、

とある日本料理屋。



暖簾(のれん)をくぐるやいなや、
O社長。

持ち前の、ドスの効(き)いた大声で、


「女将(おかみ)ーっ。
 約束どおり、
 ゆかりを連れてきたぞー。」

「あら、嬉し〜〜い!」


(なんだ、決めてたんじゃないか…。)



さて、そこは、

わりと大きめなお店で、
あちこちのテーブルにいるのは、

みな、

当たり前だけど、

日本人…。


(あ〜あ、これじゃまるで、
 六本木の居酒屋だ…。)



さっきまでの、
夢のような世界から、

とたんに現実に、
引き戻されたような気分です。


だからイヤだったんです。

和食は。


でも、仕方ありませんね。

この素晴らしい企画の発案者は、
他ならぬ、このO社長ですからね。


ま、一晩くらいは、

おつきあいしましょう。


♡♡♡



さて、ビールがやって来て、

「とりあえず、かんぱ〜い!」


そして、料理が、

次々と運ばれてくる。


もう、この頃になると、
みんなも、
久しぶりの日本の雰囲気を、
満喫しているるようです。


ゆかりさんも、

「あ、これ美味しい。
 すみませ〜ん、
 これ、もうひとつくださ〜い。」


てな具合で、

ニコニコしながら、
いろんな料理に箸をのばしたり、
壁に貼られている“お品書き”を見たり、
会話を楽しんだり。



と、そんなとき、

私の前に座っているO社長が、

そっと私に、耳打ちをした。


「宮住くん、
 『夏の6週間』を、
 聴かせてくれないか。」


そう来るだろうと思い、
私は、用意していたウォークマンを、

社長に渡しました。


社長、
腕を組み、
目を閉じて、

ヘッドフォンから流れて来る、
今日の午後、唄入れを終えたばかりの、

『夏の6週間』に、

じっと耳を傾ける。


♪♪♪



すると…、


社長の目から、


大粒の涙が、


ポロリ、


ポロリ。



そのうち、


鼻まですすりだす…。


…。




いやあ、

本当に、感動してるんですね。


あの豪快な、
とてつもなく大男のO社長が、

人目をはばからず、
感動のあまり、

泣いている…。


それは、ちょっぴり、

異様な光景。



でも…、


「前田憲男さんの素晴らしいアレンジ♪」

「アメリカの一流ミュージシャンの、
 優雅で美しい演奏♪」

「ゆかりさんの、見事な熱唱♪」



そんな、

『夏の6週間』


O社長が、

あれほどまでに、こだわった、

『夏の6週間』



O社長は、

これを、

こんな演奏の『夏の6週間』を、

待っていたんですね。


(よかった、よかった)




ところが…、

その隣で、


そんなことになっている
O社長には目もくれず、

まったくの無視で、


ひたすら、
次から次にやってくる料理に、
舌鼓をうち、

楽しそうに、
スタッフと談笑している、
ゆかりさん。


そんな、二人の、

あまりに対照的な姿が、

滑稽(こっけい)でもあり、

微笑ましくもあり…。



でも、なんか、

ほんわかするような、

素敵な光景でした。



そして、

少女のように、

無邪気に、はしゃぎながら、
食事や会話を、
楽しんでいるゆかりさんを見ながら、


私は心の中で、


そっと、


こう、囁(ささやい)たのです。



「ゆかりさん。

 いいこと、

 してあげましたね。」




(つづく)





ちなみに、

私がO社長におつきあいしたのは、

この一晩だけ。



あとの二日間は、

ロスに住んでいる、
ミュージシャンのシム・インガーを呼び出し、

(過去ログ「シム・インガーとロックン・ロール」
 参照。)

今流行りのレストランを案内させたり、
人気のクラブをハシゴしたり。


夜遅くまで、
「ジス・イズ・アメ〜リカ」
を満喫したのでした。

散財はしましたが、
せっかくの機会ですからね。


夢の世界は、

少しでも長く、

楽しまなくちゃ。


アハハハ。


(その後も、O社長におつきあいした、
 ゆかりさんには、
 本当にお気の毒ですが…。)



さて、

そんな、ロス・レコーディングも、

いよいよ最終日を迎えます。


そして、

この長い長いお話も、

いよいよフィナーレ♪♪



というわけで、


次回は、


衝撃の(???)最終回です。



お見逃しなく…。


……。




(さ、仕事に戻ろう)



SHUN MIYAZUMI


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2009 エッセイ | マイ・ディスコグラフィー

October 03, 2009

夏の6週間 その9


10月に入って、

めっきり涼しくなってきましたね。


なんとなく寂寥感ただよう、
この季節は、
本来、あまり好きではないのですが、

今年はちょっと違います。


10/19-21の、「STB139」ライブにむけて、
ジャミン・ゼブ共々、
燃えに燃えております。


聞くところによると、

残されたチケットは、
19、20日合わせて、
あと10数枚とか。

(あ、まだの方、お急ぎください。)


そして、ようやく最終選曲リストも、

決まりました!


これでもか、これでもかといった、
盛りだくさんの内容です。

期待していて下さい。


♪♪♪



では、きょうも、

しばし現実を離れて、


あの、

眩(まぶ)しい、

カリフォルニアの青空のもとへ、


想いを馳(は)せることにしましょう。




『夏の6週間 その9』


1991年8月8日。

ロス・アンジェルス。


いよいよ、今日から、
ゆかりさんの唄入れです。

私たちは、
ホテル1Fにある、
大きなダイニング・ルームで朝食。


ガラス張りの、
この、ゴージャスなダイニング・ルームからは、
美しいヨット・ハーバーと太平洋が一望でき、

小さな階段を降りると、
プールやジャグージーにも、
行けるようになっている。


行ったことはありませんが、

ニースやリヴィエラの高級リゾート・ホテルも、

こんな感じなんでしょうかねえ。

……。



そんな、

カリフォルニアの太陽が、
燦々(さんさん)と降り注ぐ、
ゴージャスなレストランで、

“華麗な”朝食をいただいた私たちは、

「いざ、出陣。」
とばかり、
スタジオに向かいます。


余談ですが、

スタジオの関係者には、
ゆかりさんの“タバコ嫌い”は、
すでに伝えてありましたので、

ここでも、
スタジオの灰皿はすべて撤去してありました。


そして、喫煙者のためには、
スタジオの奥にある、
倉庫(物置)の中に、

小さなテーブルと椅子を二つ、
用意してくれました。


やはり喫煙者である、
エンジニア氏も、アシスタント君も、
快(こころよ)く協力。

みんな大人ですねえ。



まあ、今や、

どこへ行ってもタバコなど吸うことのできない、
この“禁煙ブーム”の火付け役とも言うべき、

「ロス・アンジェルス」ですが、

この当時は、日本とおなじように、
パカパカ、モクモク、プホ〜、
だったんですね。


昔日の感があります…。


さあ、そんな中、

バッキング・トラックが流れ始める。

いよいよ、唄入れが始まる。


♪♪♪



といってもね、

あっという間に終わっちゃうんです。

ゆかりさんの場合。

抜群の歌唱力ですからね。


一曲につき、3回も唄えば、

もうおしまい。

もう、完璧。


(ちなみに、今回、
 彼女が一番乗り気ではなかった、
 最後の最後にすべりこんだ、
 『夏の6週間』は、
 この初日に、
 さっさと、やってしまいました。)



というわけで、

この日も、

3、4曲を唄い終えて時計を見たら、
まだ、午後の3時。


これじゃあ、夕食までは、
時間がありすぎますわねえ〜、

ということで、
私たちはホテルに戻って、

今度はテニス。


私、テニスの経験は、
そんなにはありませんが、
ま、簡単なラリーくらいは出来るので、

その程度で勘弁してもらって、
ゆかりさまのお相手。

パコーン、パコーん、パコーン、パコーん。

(この、平仮名の“ん”のほうが、私…。)



一時間ばかり、
テニスに興じたあとは、
今度は、大きなスイミング・プールに、
ドボ〜ン。

そして、日光浴。


気をきかせたホテル・マンが、
「ジン・トニック」かなんかを、
運んでくれる。


「Thank You!」

「You're Welcome, Sir!」


(Sirですってよ、Sir…。)


時計を見ると、

まだ夕方の4時半。


この時期の、
カリフォルニアの日没は、
夜の9時くらいですからね。

日本でいえば、
まだ、真昼です。

(くう〜、こりゃ天国だぜ…。)


☀☀☀



「こらっ!
 
 これじゃあ、
 仕事に来てるんだか、
 遊びに来てるんだか、
 
 わからないじゃないかー!!」


と、お叱りを受けそうですが、

ま、こんなことは、

そうそう、あるもんじゃありませんからね。


かたい話は、抜きでいきましょう。

かたい話はね。

アハハ。

(植木等さん流に…。)




さて、そうこうするうちに、

いいぐあいに、
お腹も減ってきたので、

部屋へ戻ってシャワーをし、
支度をして、

ロビーに集合。



と、そこに、

いた…。


到着していた…。

あの男が…。


じゃなかった、あのお方が。



いつものように、

満面の笑みで、
私たちのところに近寄って来た、
O社長。

開口一番、


「やあ、みんな元気そうだなあ。
 どう、ゆかり、調子は?
 どう、宮住くん、順調にいってる?
 そうか、そりゃ良かった。
 ガハハハ。」


そして、意気揚々と、


「じゃあ、みんなで食事に行こうじゃないか。
 ゆかり、何が食べたい?
 何でもいいぞ。
 和食でも何でもいいぞ。

 宮住くんも、
 好きなもの言ってくれよ。
 和食でも何でもいいからな。

 みんなも、遠慮しないで、
 何でも好きなもの言ってくれよ。

 和食でも何でもいいから。
 
 和食でも、何でも。」


 (やっぱり来たな…。)




(つづく)




ところで、

ベーシスト岸くんのブログが、
にぎわってますねえ。

http://yaplog.jp/bass-hitori/archive/427#ct



「彼、エライなあ」
と、感心してしまいました。

みなさんのコメントに、
丁寧にお返事をかくマメさもさることながら、

その内容がしっかりしてるんですよね。


若いのに大したもんだ…。



それに比べると、私なんて…、

行き当たりばったりの、

出たとこ勝負ですからね。


「人生これ、インプロヴィゼーション(即興)」

な〜んて、うそぶきながらね。

アハハハ。



でも、まあ、


それはそれで、いいか。


……。



SHUN MIYAZUMI


woodymiyazumi at 18:00コメント(19)トラックバック(0) 
2009 エッセイ | マイ・ディスコグラフィー