February 2010
February 28, 2010
イタリア
昨年の秋以降、
すっかりオペラの魅力に取り憑かれた私ですが、
オペラといえば、
なんといってもイタリアですよね。
オペラの発生地。
イタリア・オペラ。
ミラノ・スカラ座。
ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニ。
etc.etc.
オーストリア生まれのモーツァルトも、
「魔笛」以外はイタリア語で書いているし、
オペラを人気ジャンルに押し上げた功労者で、
生涯に膨大な数のオペラ作品を残した、
ドイツ人のヘンデルも、
新作の公演にあたっては、
わざわざイタリアまで足を運び、
歌手のオーディションをしたといいます。
そんな、
イタリア、イタリア、イタリア。
……。
で、思い出しました!
そういえば私、
イタリアに行ったことがあったんだ!
もう、かれこれ、
20年以上も前のことですがね。
もちろん仕事で。
たった3日間ではありましたが…。
そして、
思えば、これが、
今やジャミン・ゼブにはなくてはならない、
マネージャーのY浅ショーちゃんとの、
初仕事でもありましたね。
同行したのは他に、
ミュージシャンのT.S.君と、
通訳をお願いした、私の後輩のS.I.君。
(そういえば、S.I.君はその後、
亡くなった父親の地盤を継いで、
総選挙に出馬、見事当選。
衆議院議員を3期務めましたが、
前回は、落選してしまいました。
今、どうしてるんだろう?)
……。
で、私は、
その仕事の最初の部分だけおつきあい。
水の都ヴェニス(ヴェネツィア)と、
ミラノがちょこっと。
でも、彼らはその後、
約1ヶ月にもわたって、
イタリア半島を一周。
ローマもナポリも、
みんな行ってきたらしい。
うらやましいなあ…。
というわけで、今日は、
思い出しついでに、
オペラついでに、
そんなイタリア珍道中を、
回想してみようと思います。
記憶をふりしぼってね…。
♪♪♪
あれは、
暑い、暑い、夏の日でした。
私たち4人は、
成田を飛び立ち、
まずは、モスクワでトランジット。
ここで、1時間だけ、
希望者は、空港内に限って、
機外へ出ることを許されました。
ただし、写真撮影はご法度です。
(なんで?)
見つかれば、
カメラ没収どころか、
場合によっては連行されるかもしれない、
と、機長に脅かされました。
なぜならば、
当時のモスクワは、
まだ「ソ連」という共産主義国家時代。
(おお恐わ…)
でも、
好奇心旺盛の私は、
そんなことで怯(ひる)みはしない。
Y浅しょーじも、
怯(ひる)みはしない。
しかも、
共産圏なんて、
そう簡単に行ける時代ではありませんからね。
というわけで、
私たちは、
興味津々で機外へ出ました。
と、そこに…、
ライフル銃を持った兵隊が数人、
こわ〜い顔をして待ち構えていた。
「おまえ、スパイじゃないだろうな。
だったら、この場で射殺するぞー。」
とでも言わんばかりの、
こわ〜い顔で、
私たちをジローっと睨(にら)みつける。
(やっぱり、恐わ…)
でも、まあ、
なんとか無事に通過。
(ホッ)
で、モスクワ空港の第一印象。
暗い。
なんだこの暗さは…?
……?
最初は、
なぜだか分らなかったのですが、
やがて気がつきました。
空港内の明かりという明かりが、
まったく点(つ)いていないのです。
なんでも、
経済が極端に落ち込んでいて、
節約のため、
日中は明かりをつけてはいけないんだそう。
そのため、
土産(みやげ)物屋も、
免税店も、
レストランも、
コーヒー・ショップも、
とにかく暗い。
昼間なのに、
ほんとに暗い。
(これでも、国際空港か…)
それから、
空港内で働いている人もみな、
暗い。
どの顔にも笑顔がない。
会話がない。
精気がない。
私たちは、
とあるコーヒー・ショップで、
時間をつぶすことにしたのですが、
注文を取りに来た女の子がまた、
暗い。
こっちが、
「ハ〜イ」
と、笑顔で話しかけても、
ニコリともしない。
返事もしない。
まあ、どのロシア人も、
みんなこんな感じです。
無愛想なんて通り越して、
とにかく暗いのです。
彼らのなかでの会話も、
まったく無いのです。
私はこのとき、
「この国は、もう終わりだな…。」
と思いましたね。
案の定、
それからまもなくして、
あの「ペレストロイカ」が起きたのでした。
さて、そんな中、
中二階の、
ガラス張りのコーヒー・ショップから、
ふと下を見ると、
一人の、
変な格好をした日本人のオバサンが、
10人くらいのスーツ姿の男たちを引き連れて、
颯爽(さっそう)と、
買い物行脚をしているのを発見。
大きなソンブレロをかぶり、
派手な衣装で、
声高らかに、
暗〜いモスクワ空港を闊歩(かっぽ)している。
男たちは、
ただ黙々とオバサンの後を付いて行くだけ。
なんとも不思議な光景でした。
暗い暗いモスクワ空港だけに、
それは、とっても滑稽な光景。
……。
はい、
大屋政子さんでした。
この人、
一回だけお会いしたことがありますが、
なんとも、ケッサクなお方でしたよ。
だから、このときも私は、
「さすが、政子ちゃん。
どこへ行っても、マイ・ペースだなあ。」
と、変なところで感心したのでした。
ま、なにはともあれ、
こんな所はさっさと、
お暇(いとま)するにかぎる。
連行される前に。
そして、飛行機は、
数時間後に、
ミラノ国際空港に到着。
「は〜るばる来たぜ、イタリア〜♪」
で、そのミラノ空港の第一印象。
明るい。
なんだ、この明るさは…?
……。
(つづく)
昨日の「A'TRAIN」
恒例の月末ライブにお越しのみなさん、
ありがとうございました。
先月に続いて、
朝早くから忙しく、
なかなかエンジンがかからず、
大変でしたが、
みなさんのおかげで、
なんとか、
楽しく乗り切ることができました。
次回は、3/26(金)の予定です。
それから、
ジャミン・ゼブ、
待望のニュー・アルバムですが、
こちらも、
すべての唄入れを完了しました。
シモンの花粉が本格化する前に、
完了してよかったです。(笑)
さあ、月曜からは、
いよいよ仕上げに入ります。
ミクロのような、
緻密なバランスが要求されますが、
悔いの残らないように、
バッチリ頑張りたいと思っています。
(やるぞ)
詳細の情報解禁は、
もうしばらくお待ち下さいね。
そんなに時間はかからないと思います。
きのうも、
ジャミン・ファンのみなさんから、
たくさんの誘導尋問を受けましたが、
ふんばりました。
アハハハ。
では、よい週末を。
SHUN MIYAZUMI
February 21, 2010
オペラ・コレクション その5
冬季オリンピック。
楽しそうですねえ。
(いいなあ…)
残念ながら私、
スタジオ・ワークやら何やらで忙しく、
今回は、ほとんど観ることは出来ませんが、
でも、ニュースで知った日本人選手の活躍には、
胸が熱くなりますねえ。
ガンバレ、ニッポン!
おじさんも、
レコーディング・スタジオから、
応援してるからね。
♪♪♪
では、今日もオペラ鑑賞記。
今回は、衝撃の2作品のご紹介です。
まずは…、
9.「トゥーランドット」(プッチーニ)
オペラ・ファンに絶大な人気のプッチーニですが、
どうやら私との相性は悪そうだ…。
少なくとも、
「蝶々夫人」と「ラ・ボエーム」の後では、
そんな、あきらめにも近い気持ちでした。
ですから、
学芸大の本屋さんの、
「ご注文の品が届きました。」
の電話にも、
今回は、さほどの期待はしていなかったわけです。
「ふん、どうせ、またプッチーニだもんね。」
てな具合でね。
ところが…、
この…、
「トゥーランドット」
こ、これは、す、すごい!
イエ〜イです。
私の大好きな世界です。
これは狂喜にも似た驚きがありました。
ニューヨークの、
メトロポリタン歌劇場における、
1987年のライブなのですが、
演出が、またしても、
あの、フランコ・ゼッフィレッリさん。
いきなり、
古代中国は北京城外を表現したであろう、
不気味かつ、圧倒的な舞台装置に、
おびただしい数の群衆(合唱団)が現れ、
次から次へと、
劇的なコーラスで、
興奮を高めていく。
その中に、突如現れた一人の男性が、
なんとも魅力的な旋律を、
ドラマチックに歌い上げる。
もう冒頭から、
すごい迫力のシーンの連続です。
この男性が、またしても、
あの3大テノールの、
プラシド・ドミンゴ。
このシリーズでは、
第一号の「カルメン」以来の登場ですが、
これがまたピッタリの役で、
実にカッコいい。
そして、もはや言うまでもなく、
「うまい!」のひと言。
音楽もかっこいいなあ。
その昔大好きだった、
スペクタクル映画音楽、
「ベン・ハー」や「エル・シド」
を思わせるようなサウンドが、
息をする間も与えないほど、
これでもかこれでもかと、
迫ってくるのです。
きっと、作曲家のミクロス・ローザは、
この作品に、
影響を受けたに違いない…。
ま、とにかく、
鳥肌もんの、
圧倒的な第一幕でした。
さて、第二幕では、
もうひとりの主役、
「トゥーランドット姫」が登場します。
この宮殿のセットが、
また凄い。
これまた、
いくらお金がかかってるんだろう?
絢爛豪華なセットが、
恐ろしい伝説の権力者のイメージを、
いやがおうにも高めてくれます。
そして、
この「トゥーランドット姫」に扮する、
エヴァ・マルトンというソプラノが、
おっそろしく上手(うま)い。。
というか、
「おい、壁にヒビが入るんじゃないの?」
というくらい強烈な、凄みのある、
圧倒的なソプラノ。
解説書には、
「『トゥーランドット』は、彼女の、
最高の当り役として知られている。」
とありましたが、
納得も納得。
こんな「恐ろしいお姫様」を演じられる歌手は、
そうはいませんよね。
おそらく…。
世紀の大歌手ドミンゴとも、
対等に渡り合い、
一歩もひけをとらない。
いやあ、世界は広いですねえ。
改めて、
オペラ歌手の層の厚さにも、
感動させられたわけです。
そして第三幕では、
荒川静香さんのおかげで一躍有名になったアリア、
「誰も寝てはならぬ」が、
ドミンゴによって朗々と歌われる。
いや、もう、まいりました。
この作品には。
例によって、
いろいろチャチャを入れたり、
面白可笑しく、
突っ込んでやろうかと思ったのですが、
今回は何もさせてくれませんでした。
脱帽です。
才能を見くびってたわけではありませんが、
いろいろ悪く言ってごめんね。
ね、プッチーニちゃん。
ね。
ね。
……。
10.「こうもり」(ヨハン・シュトラウス)
これがまた、
期待を大きく裏切った作品でした。
いい意味でね。
なぜかというと、
私、
ヨハン・シュトラウスという作曲家を、
そんなに高くは評価していなかったからです。
もちろん子供の頃には、
彼のヒット曲の数々は、
大いに楽しませてもらいました。
「美しく青きドナウ」
「ウィーンの森の物語」
「皇帝円舞曲」
などなどね。
チャーミングなメロディ。
優雅なウィンナ・ワルツのサウンド。
大好きでした。
でも、その後、
いろんな偉大な作曲家を知ったり、
ポップスやロックやジャズの洗礼を受けてしまうと、
あまり聴かなくなってしまいました。
なんか、単純すぎてね…。
だから、
このオペラにも、
そんなに期待はしていなかったわけです。
「どうせ、あまり深みのない、
単純なオペレッタ(喜歌劇)だろうな。」
というくらいにね。
ところが、どっこい!
これがまた最高でした。
このDVDは、
バイエルン国立歌劇場における、
1986年のライブ。
そして指揮が、
またまた、あの、
カルロス・クライバー。
「カルメン」でもビックリしたのですが、
この人が演奏を始めるときのスピードは、
ちょっと神ワザですよ。
拍手のなか、オケピットに登場、
コンサート・マスターと握手をして、
それからお客の方を振り向いて、
笑顔で挨拶をする。
ま、ここまでは普通の指揮者と変わらない。
ところが、
オケの方に向き直るやいなや、
パッと指揮棒を振り上げて、
“あっ”という間に演奏が始まる。
その間、1秒もないのではないか…。
そして、一糸乱れず、
オーケストラの合奏による、
序曲が始まる。
ま、これだけでも、
まずは見物(みもの)です。
さて、肝心の内容。
これまた、
キャスティングが最高。
「フィガロの結婚」同様、
みなさん喜劇役者でも、
充分やっていけますよ。
はい、保証します。
第一幕は、
まるで、
「ハナ肇とクレージー・キャッツ」の世界ね。
どの歌も楽しくてチャーミングだけど、
内容がまたバカバカしくて、
どのシーンも、お腹が痛くなるほど、
笑えてしまう。
そんなバカバカしさと、
ヨハンちゃんの優雅なウィンナ・ワルツが、
なぜかピッタリ合っているんですね。
なかでも最高なのは、
「8日間もあなたなしで一人ですごすなんて」
というくだり。
役人を侮辱して、
8日間刑務所に入ることになった金持ちの銀行家。
でも、実はこの男、
その入所前に、
悪い友人にパーティーに誘われていて、
可愛娘ちゃんをナンパしようと、
ワクワク、ソワソワしている、どエッチ男。
メイドのアデーレちゃんも、
そのパーティーに行くことを、
ようやくロザリンデ夫人に許可してもらい、
これまたウキウキ気分。
で、肝心のロザリンデ夫人はというと…、
主人の留守中に、
かつての恋人の、
C調なイタリア人歌手が忍び込んで来ると言う。
口では、
「だめよ、私は人妻よ、
いけませんわ、そんなこと。」
と、言いながら、
実はこのアバンチュールに、
まんざらでもないご様子。
そんなロザリンデが、
切ないメロディで、
「8日間もあなたなしで過ごすなんて、
耐えられませんわ。」
と歌い始めるのですが、
そのうちに、
だんだん気分が乗ってきて、
楽しくなってきて、
歌詞とはうらはらに、
ルンルン歌いながら踊りだす。
主人もメイドのアデーレも、
ルンルン、ルンルン踊りだす。
まるで、
クレージー・キャッツの名曲(?)
「ハイ、それまでよ」
と、おんなじアプローチ。
何回観ても、
涙が出るほど笑いこけてしまう。
ヨハン・シュトラウスの、
並々ならぬユーモア・センスに
まずはビックリしたのでした。
第二幕は、
豪華なパーティー。
そして舞踏会。
絢爛豪華な、
でも実はC調な、
ヨーロッパの貴族社会の一幕を、
可笑(おか)しみを持って、
楽しむことができます。
ここでも、
ロザリンデ夫人に扮する、
パメラ・コバーンというソプラノが歌って踊る、
「チャルダーシュ」に、
もう、顔はニヤニヤ、クシャクシャの私。
いやあ、この人、最高にケッサクだなあ。
今度、デイトしませんか。
そして圧巻は、
最後にみんなでポルカを踊るシーン。
曲が終わると、
踊り疲れて、
みんなドバーっと倒れ込んでしまう。
しかし、その瞬間みんな大笑い。
お客さんも大笑い。
テレビの前の私も大笑い。
わははははは。
そのとき私は思いました。
「これはミュージカルだ。
ミュージカルの原点だ。」
とね。
第三幕は刑務所のシーン。
ここに、
酔っぱらいの、
へんてこな看守のオッサンが現れて、
「ひとり寸劇」を始める。
これがまたケッサクで、
まるで、
古きよき時代の、
吉本新喜劇の世界。
エンタツやアチャコや、
花紀京や財津一郎や岡八郎のいた、
あの“吉本”の世界。
くだらないギャグの連発なんだけど、
たまらなくバカバカしくて、可笑しくて、
ゲラゲラ笑ってしまう。
そして最後は大団円。
メデタシ、メデタシ。
いや、楽しい、楽しい。
というわけで私は、
この「こうもり」に、
「クレージー・キャッツ」と、
「アメリカのミュージカル」と、
「吉本新喜劇」の、
原点を見たのでした。
いやあ、ヨハン・シュトラウスが、
こんな偉大な方だとは、
知りませんでした。
いといろ悪く言ってごめんね。
ね、ヨハンちゃん。
ね。
ね。
……。
(「オペラ・コレクション」ひとまず終わり)
あらためまして。
私は、決して、
デアゴスティーニの回し者ではありませんが、
この「オペラ・コレクション」企画には、
心から感謝しております。
パチパチパチ。
おかげで、私の人生に、
またひとつ楽しみが増えました。
「オペラ食わず嫌い」の方も、
絶対楽しめると思います。
ぜひ、ご覧になってください。
ただし、
こんな話ばかりしていると、
1年中やってなくちゃいけなくなりそうなので、
また何か掘り出し物があったら、
随時ご紹介するとして、
今回はひとまず終えることにしましょう。
なにせ、このシリーズは、
65巻まで続くそうなので…。
♪♪♪
さ、明日から、
またジャミンのスタジオだ。
なにしろ、3月いっぱいで、
完成させる予定ですからね。
いいアルバム作らないと…。
だから今回は、
オリンピックは、
がまんです。
(シュン)
あ、そうだ。
哀悼、藤田まことさん。
……。
SHUN MIYAZUMI
February 14, 2010
オペラ・コレクション その4
いやあ、毎日寒いですねえ。
春が待ち遠しい今日この頃ですが、
そんな中、
バンクーバー・オリンピックが、
開幕しましたね。
ということは…、
あの、荒川静香選手の、
感動の金メダルから、
もう4年が経ったということですか。
時の経つのは、早いもの。
ううむ…。
ま、なにはともあれ、
今回も時間の許すかぎり、
楽しみたいと思います。
ガンバレ、ニッポン!
(そんな時間、あんの?)
では、今日もオペラ、オペラ。
6.「フィガロの結婚」(モーツァルト)
オペラ初心者の私ですが、
この「フィガロの結婚」と「魔笛」だけは、
子供の頃から大好きでした。
というか、
モーツァルトという人は、
天性の“歌書き”だと思っていました。
(今も)
正直言って、彼のインスト物。
たとえばシンフォニーやコンチェルトなどは、
近代音楽やジャズに慣れ親しんだ私には、
もはや退屈なところがある…。
ハーモニーもあまりに“ドミソ”だし、
リズムも単調だし…。
ところが、
オペラは違いますね。
「フィガロ」や「魔笛」で歌われる曲はどれも、
メロディアスで、ポップで、チャーミングで、
本当に親しみやすく、
歌の楽しさが満ちあふれています。
彼が、もう少し後に生まれていたら、
きっと、ガーシュインやポーターのような、
大ソング・ライターになっていたのでは、
ないでしょうか。
ん、待てよ…。
ひょっとすると、
ジョージ・ガーシュインは、
モーツァルトの生まれ変わりかもしれませんね。
30代半ばという若さで、
この世を去るあたりも似ているし、
「一体、彼らには、
一日が何時間あったんだろう?」
と思わせるような、
膨大な楽曲を短期間に残したあたりも。
うん、そうかもしれない…。
……。
で、このデアゴスティーニ盤の「フィガロ」。
いやあ、こりゃ傑作です。
アハハハ。
楽しすぎて、あっという間の3時間でした。
まず、キャスティングが抜群。
みんな、
「喜劇役者でも、やっていけんじゃないの」
と思うような芸達者ぶり。
まずは、スザンナ役の、
イレアーナ・コトルバスちゃん。
実は彼女、
「魔笛」でもパミーナ役をやってたのですが、
原作のパミーナは15才くらいの少女なのに、
このライブ(1982年)の彼女は43才。
「もう少し若い歌手はいなかったのかなあ…」
と、いささかガッカリだったのですが…。
(これは、タミーノ役の、
ペーター・シュライヤーという人にも言える。
ずいぶん老けた(47才)王子様でしたから。)
ところが、この「フィガロの結婚」は、
1973年のライブ。
「魔笛」の頃より、
10才若いコトルバスちゃんが、
なんとも初々しくて、可愛らしい。
歌い方や仕草の一つ一つが、
本当にチャーミング。
「キャー、スザンナちゃん、
かわい〜〜〜〜〜〜〜い!」
て感じ。
ケルビーノ役のメゾ・ソプラノが、
またまた可愛い。
というか、なかなかの美人。
この役は普通、
女性シンガーが男の子役になって、
伯爵夫人に恋いこがれるという役なのですが、
「おい、こんな美人を起用したら、
こっちがケルビーノに恋しちゃうじゃないか」
というくらい可愛い。
(フレデリカ・フォン・シュターデという、
アメリカ人。)
有名なアリア、
『恋とはどんなものかしら』なんて、
いい年したオッサン(私)が、
デレデレになってしまいましたわ。
ポッ♡
おい、どうしてくれる、デアゴスティーニ。
お詫びに、今度、
彼女が正真正銘の“女性”を演じるオペラを、
発売してください。
(ドキドキ…。)
それから、
腹黒い医師「バルトロ」に扮する、
バスを歌うオッサンも最高。
あんたは、絶対、喜劇役者でも成功したね。
C調でゴマスリの音楽教師、
「ドン・バジリオ」もケッサク。
女にだらしない、エッチな「伯爵」に扮する、
ベンジャミン・ラクソンというバリトンも、
実にハマッている。
(この人、第11号に登場する、
「ドン・ジョバンニ」でも主役を演じてますが、
本当に、女たらしなのかも…。)
伯爵夫人に扮する、
キリ・テ・カナワ(ソプラノ)だけが、
ちょっとイメージと違いましたが、
まあ、いい。
許します。
1,990円だから。
……。
そしてまあ、本当にいい曲ばっかりだこと。
“歌書き”モーツァルトの真骨頂。
これぞ、1786年版「紅白歌合戦」。
歌といい、お芝居といい、
当時を見事に再現した演出といい、
これは、
最高の「フィガロの結婚」でしたね。
音楽的には、
「魔笛」のほうが好きだけど、
キャスティングを含めた総合力では、
今回のシリーズでは、
私は、こっちに軍配。
♪♪♪
ところでね…、
これを観ているうちに、私は、
昔懐かしい東宝映画の、
「社長シリーズ」を思い出してしましました。
あの、森繁久彌さん演ずる社長さんのキャラは、
まるでフィガロにおける「伯爵」そのもの。
おっちょこちょいで、エッチで、
でも、なんとも憎めないキャラクター。
してみると、「伯爵夫人」は、
久慈あさみさん。
旦那の浮気を見破るあたりもソックリ。
腹黒医師「バルトロ」は、
フランキー堺さんか、
伴淳三郎さん。
C調でゴマスリの音楽教師
「ドン・バジリオ」は、
三木のり平さんで決まり。
「ケルビーノ」は団令子さんね。
活発な感じがバッチリ。
へんてこな庭師のオッサンは、
もちろん由利徹さん。
そして、
「フィガロ」は加山雄三さん。
となると、フィアンセの「スザンナ」は、
星由里子さんということになる。
(おい、それは「若大将シリーズ」
ではないか。)
ま、同じ東宝ですからね。
かたい話は抜きでいきましょう。
かたい話はね。
とまあ、こんなことを考えながら、
ひとりニヤニヤ観ていたのですが、
(暗いぞ)
あながち的外れでもないでしょ?
えっ?
古すぎて、なんのことだかわからない?
こりゃまた失礼、致しました。
……。
7.「ラ・ボエーム」(プッチーニ)
ああ、やっぱりプッチーニは難しい。
私には、まだまだ無理だ…。
でも、プッチーニが、
オペラ・ファンに大人気なのは、
よーく分かりました。
とくに、女性に人気なんじゃないかな、
て、思いましたね。
とにかく、求愛のメロディーが甘い、甘い。
イケメンのテノールに、
こんな甘い、ドラマティックなバラードを、
次から次へと、
朗々と歌われたら、
きっと、女性はウットリでしょうね。
(おまえら、ずるいぞ)
さらには、
“これでもか”のメロ・ドラマ仕立て。
そして、ヒロインであるミミさんの、
なんとも可哀想な最後が、
女性たちの涙を誘う。
というわけで、
今の「韓流ドラマ」にも通じる、
メロ・ドラマの要素を、
充分に持ってるんでしょうね、
彼のオペラは。
だけど、
無骨者の私のような男には、
やっぱり、これはしんどかった。
だから、プッチーニは、
こてこてのクラシック・ファンと、
イタリア歌曲だ〜いすきな人と、
麗しき女性たちにおまかせします。
私は、もうちょっと楽しいやつを…。
8.「セビリアの理髪師」(ロッシーニ)
と思って、
期待して観たロッシーニですが、
これも…。
楽しいには楽しいのですが…。
あんまり悪く言うと、
あちこちからお叱りを受けそうなので、
やめておきますが、
はっきり言って、
ロッシーニ君は、
モーツァルト君に比べると、
作品のクオリティが、ちょっと低いかも。
というか、まるっきり物真似じゃないか、
これじゃ…。
「フィガロの結婚」より、
30年も後の作品なのにね。
ま、これにより私は、
改めてモーツァルトの偉大さを再認識できた、
とまあ、こういうわけでした。
でも、主役のロジーナ(後の伯爵夫人)に扮する、
チェチェーリア・バルトリという、
メゾ・ソプラノは、
けっこうセクシーでいけてますよ、
男性諸君。
(どこを見てるんだ、おまえは)
ということで、
ここまで快調にきた、
私のオペラ鑑賞も、
そろそろ翳(かげ)りが見えてきたわけで、
これは「定期購読早まったかな…。」
と、一瞬後悔しかけたのですが…、
ところが、どっこい!
次に発売された、
「トゥーランドット」と「こうもり」の、
あまりの素晴らしさと楽しさに、
私は仰天したのでした!!
はい、
というわけで、
あと一回くらい、
このお話させて下さい。
後悔はさせませんので…。
……。
(つづく)
さあ、今週も毎日、
スタジオで、
ジャミン・ゼブ「ニュー・アルバム」の作業です。
でも、次第に完成に近づいていくこのあたりが、
アルバム作りの、
もっとも楽しいところでもあります。
栄養ドリンクと、
崎陽軒の「シュウマイ弁当」で、
がんばりたいと思います。
ちょっと塩分濃いですがね。
「シュウマイ弁当」
だから、これは私も、
コージローに1票。
(なんのことだか、わからない方は、
ゼブログを…。)
SHUN MIYAZUMI
February 06, 2010
オペラ・コレクション その3
今日もオペラのお話です。
興味のない方も、
しばしおつきあい願えると、
嬉しいです。
なにしろ、
この年になって、
こんな新鮮な楽しみを味わえるなんて、
予想だにしていませんでしたから…。
音楽のみならず、
舞台装置、演出、衣装、
世界の有名歌劇場の雰囲気。
そして世界的な歌手たちの、
歌はもちろん、
演技までもが堪能できる。
まさに、総合芸術。
こんなに安く提供していただいた、
デアゴスティーニさん、
ありがとう。
「カルメン」の凄い演出と歌唱に圧倒され、
「椿姫」の美しい楽曲の数々に魅了され、
「魔笛」の楽しさに、時と現実を忘れる。
♪♪♪
さて、そんな私が、
次に期待を込めて観たのが…、
「蝶々夫人」。
きょうは、その感想から。
4.「蝶々夫人 」(プッチーニ)
うわあ、この歌劇場、すごいなあ…。
北イタリアにある、
アレーナ・ディ・ヴェローナ。
ローマ帝国時代に作られた闘技場で、
ローマのコロシアムに次ぐ大規模な建造物。
すごい迫力です。
20,000席がぎっしり埋まり、
(20,000席ですよ、20,000席…。)
まだ夏の太陽が沈みきらないうちに、
舞台には一人の巫女(みこ)が現れ、
開始の合図を告げるドラを打ち鳴らす。
そして、
大拍手のなか指揮者が現れ、
いよいよ開幕です。
(ゾクゾク)
そして、小刻みなストリングスの、
フガート(追っかけ)による、
オープニングに合わせて、
明治初期の日本をイメージした舞台には、
一人、また一人と、
登場人物が現れる。
この豪華な舞台もまた、
あの「カルメン」を演出した、
巨匠、ゼッフィレッリ。
(これも期待しちゃおう〜っと)
でもね…、
私には、このオペラは、
ちと重かった。
……。
まず、話が暗い。
可哀想な蝶々さん。
可哀想すぎますよ、あーた。
いやあ、こんな可哀想な物語を、
考えたのは、どこのどいつだ。
これでは、どこにも救いが無いではないか…。
それから、
異人さんが日本人に扮しているのも、
な〜んか変。
衣装はあの、ワダ・エミさんなんだけど、
着こなしがぜ〜んぜん変よ、
君たち。
おまけに、イタリア語だから、
ピンカートンは「ピンケルトン」
蝶々夫人は「チョチョサン」
(おい、これは喜劇か)
「ボンゾ」なんていう、
へんてこな名前の、
でも、いかめしい僧侶や、
「ヤマドリ」なんていう変な名前の、
でも、立派なお大尽も登場。
(それって、日本人の名前ですか?)
で、肝心の音楽はというと、
ううむ…。
私にとっての、
初プッチーニだったのですが、
今イチ、入り込めないもどかしさが、
ありましたね。
コテコテのカンツォーネや、
イタリア歌曲が大好きな人は、
あの張り上げ歌唱法は、たまらないだろうな、
とは思いつつも、
メロディが私には難解。
というか、ひねりすぎの感じがする。
ヴェルディやモーツァルトのように、
すんなり入ってこないんですね。
結局は、
有名な「ある晴れた日に」以外は、
あまり印象に残る曲は、
ありませんでした。
でも、解説書を読むと、
これは、人気オペラの最高峰だという。
「カルメン」「椿姫」と並ぶ、
3大オペラのひとつだという。
(そうかなあ?)
これは、悔(くや)しい。
みんなに楽しめて、
私に楽しめないのはなぜだ…。
……?
さあ、私、こうなると、燃えるのです。
なんとか、その人気の秘密を、
解き明かしたくなる。
その良さを、
理解したくなる。
そんな性格なのです。
たとえば、私、子供の頃から、
「納豆」が大嫌いでした。
あれは食い物ではないと、
ずっと思っていました。
でも、大多数の人たちは、
「美味い、美味い」
と言う。
悔しいでは、ありませんか。
せっかくの一度きりの人生で、
自分だけ、その美味(うま)さが、
理解できないなんて…。
そこで私は、
社会人になってから、
どんな居酒屋に行っても、
必ず「納豆」を注文しました。
そして、頑張って、
「納豆」を、
食って、食って、食いまくってやった。
……。
はい、今では、
ちゃんと普通に食べられますよ。
その「美味さ」も、
理解できたつもりでいます。
わははは。
というわけで、私は、
今度は画面を見ずに、
デスク・ワークかなんかをしながら、
もう一度、音だけで、
この「蝶々さん」を、
聴いてみることにしました。
♪♪♪
うん、今度はいけます。
蝶々さんの歌う、
可哀想な歌詞を見ないですむから、
憎たらしいピンカートンの、
くそゼリフを見なくてすむから、
すんなり音楽だけに集中できる。
さらに、プッチーニという人は、
ドビュッシーやラヴェルといった、
フランス印象派の作曲家と、
ほぼ同時代の作家ですから、
サウンドには、
なるほど美しい魔術が、
ほどこされている。
「越後獅子」「さくらさくら」
「お江戸日本橋」「宮さん宮さん」
なんていう、日本のメロディーも、
随所に出て来るのですが、
さすがに、こうした曲のサウンド処理は、
素晴らしいものがありました。
というか、
印象派音楽のハーモニーやスケールは、
モード・ジャズにも通じており、
日本古来の陽旋法とは、
馴染みやすいのです。
専門的には、
「ペンタトニック」というモード・スケールを、
日本メロが持ってるからなのですが、
この話を始めると、
長くなってしまうので、
きょうはやめておきます。
そして、やっぱり、
「ある晴れた日」が流れると、
ついつい、テレビの画面に、
見入ってしまいますね。
悲しくも、美しい、
ドラマチックな名曲だと思います。
(でも、やっぱり、
冬季オリンピックの開会式には、
不向きだと思うけど…。)
そんなわけで、
音だけで聴くと、
その良さが、より理解できたのですが、
せっかくのオペラですからね。
やっぱり、映像で観てみたい。
そこで、ひとつ提案があります。
まず、蝶々さんを筆頭に、
日本人の役は、
全部日本の歌手が演じ、
言葉も日本語にする。
ピンカートンをはじめ、
アメリカ人の役は、
全部アメリカ人が演じ、
言葉は英語で歌う。
プッチーニはイタリア人ですから、
指揮者とオケはイタリア人でOK。
衣装は、ワダ・エミさんでバッチリ。
そして、演出は、
山田洋次さんにお願いしたら、
どうでしょうね。
あるいは、
藤沢周平さん物の映画かなんかに、
携わっている映画監督。
そんな「蝶々夫人」だったら、
もう一度観てみたいな、
と、思ったのでした。
5.「アイーダ」(ヴェルディ)
「蝶々夫人」で、
いささか消化不良気味だった私でしたが、
次の「アイーダ」を観て、
思わず喝采。
イエ〜〜〜〜〜〜イ!
さすが、ヴェルディ!
どの曲も、本当にメロディアス。
3回聞いたら、口ずさめる。
サウンドも最高。
カッコイイ〜〜〜〜〜!!
そして、このデアゴスティーニ盤では、
エジプト将軍ラダメスを、
あの、3大テノールの一人、
パヴァロッティが演じております。
予想どおり、圧倒的でした。
パチパチパチパチ。
他の歌手も、みな上手い、上手い。
とくに、エジプト王女、
「アムネリス」を演じるメゾ・ソプラノが、
なんとも魅力的。
(「ステファニア・トツィスカ」という、
ポーランド人)
ちょっと意地悪そうなルックスもいいなあ。
ちょっぴりエッチな感じで、
アイーダとラメダスの仲を裂きにくる仕草も、
いい、いい。
ちりめんヴィブラートも、
なんとも官能的。
(こりゃ、たまらん)
ま、そんなことはさておき、
有名な「凱旋の場」をはじめ、
演出も素晴らしく、
これは、本当に素晴らしい一作でした。
大推薦です!
ああ、これこそ、
ヴェローナの古代闘技場で、
やって欲しかったなあ。
……。
(これは、サンフランシスコの、
「ウォー・メモリアル・オペラ・ハウス」
における、1981年のライブ)
そんな完璧な「アイーダ」ですが、
強(し)いて言うと、
アイーダ役の、
マーガレット・プライスという歌手が、
ちょっと…。
アイーダというのは、
エチオペアの王女なんだけど、
エジプトに敗れ、
今は奴隷の身。
きっと、ロクなもん、
食べさせてもらってないハズなのに、
これが、すご〜い迫力で、
まるで京塚晶子さんの、
「肝っ玉かあさん」
みたいな感じ。
世界的にも有名な偉大な歌手らしく、
もちろん、その歌唱力には、
なんら文句のつけようもありませんが、
でも、オペラというのは、
お芝居でもありますからね。
もっと弱々しい、
悲壮感漂う、
美麗のシンガーにやって欲しかったなあ。
ちょっと欲張りすぎですかね。
(プライスさんのファンの方がいたら、
ごめんなさい。)
でも、このアイーダだったら、
私がラダメスなら、
絶対、アムネリスを取ります。
その上、
エジプト王の権力も富も手に出来るのに、
なぜ、このアイーダと死を選ぶのだ、
ラダメスよ。
お前は、バカだ。
バカ、バカ、バカ、バカ。
このアムネリスは、
最高にいい女じゃないか。
(それは、お前の好みだろ)
(つづく)
昨日、
年に一度の、
健康診断の結果が出ました。
大腸がん:異常なし
心電図:問題見当たらず
採血:まったく問題なし。
血糖値、肝機能、コレステロール、
極めて正常値。
検尿:オール・マイナス
胸部レントゲン:たばこ吸うわりには、
クリーンな肺。
というわけで、
11月の胃カメラと合わせて、
まずは、健康そのものでした。
ホッ…。
今年も一年「命をもらった」
という感じですかね。
というわけで、
明日からまた、
ガンガン行きましょう。
(でも、これ、本当に、
自分のカルテなんだろうか…?)
……。
SHUN MIYAZUMI