March 2010
March 28, 2010
イタリア その5
「水の都」ヴェニス(ヴェネツィア)。
私にとっては、
たった2日間の滞在でしたが、
それは、それは、
本当に素敵なところでしたデヤーノ。
美しい街でしたデヤーノ。
(まだやるか)
そう、こうして書いていると、
次から次へと、
いろんなことが思い出されますね。
私たちはまず、
ホテルのオープン・カフェで、
優雅な朝食。
そんな私たちの目の前を、
石畳の大きな広場を、
大勢の観光客や、
陽気なイタリア人たちが、
楽しそうに通りすぎて行く。
そして、船着き場からは、
観光客や地元の人を乗せた、
「ゴンドラ」や「バス」や「タクシー」が、
海上を賑(にぎ)やかに航行していく。
さらに、対岸の島には、
これも写真で見たことのある、
有名な教会が、
凛々(りり)しき姿でそびえ立つ。
おお!
それは、まるで、
映画の一シーンのような、
美しい光景でしたデヤーノよ。
♡♡♡
で、最初にも申し上げましたが、
これは、
私とY浅ショーちゃんとの、
初仕事でもありました。
以来、私と彼は、
20年もの長きに渡って、
お互いを、ののしり合い、
さげすみ合い、
ここぞとばかりに“あげ足”を取り、
お互いの不幸を声高らかに笑う、
そんな、
美しい友情のもと、
今日まで一緒に仕事をしてきた仲なのですが、
思えば…、
そうした兆候は、
このヴェニスにして、
早くもあったようですね。
私は、
こんな美しいヴェニスの風景には、
まったくそぐわないと思われる、
彼にたいして、
こう言ってあげました。
み「ねえ、なんで君は、
ここにいるの?
こんなロマンティックなところにいるの?
ここは、男同士で来るところじゃないでしょ。
君が座ってるその席は、
美しい女性じゃないとオカシイデニャーノ?」
すると、Y浅ショージは、
平然と、こう言ってのけたのです。
Y「フン、それは、こっちのセリフデヤーノ。」
(………。)
さて、
午前中、ちょこっと仕事をしたあと、
(なんの仕事だったかは、
よく覚えていません。)
私たちは、
ヴェニスの街を探索。
まずは、
有名な「サン・マルコ広場」。
そして、
中世の名残りをとどめる、
美しい寺院や建造物のあれこれを見物。
(おお、思い出すなあ、
映画「ヴェニスに死す」。)
さらに進んで行くと、
街と街をつなぐ橋の下を、
若い、熱々のカップルを乗せたゴンドラが、
「カタリ〜、カタリ〜♪」
と、船頭さんの鼻歌とともに、
優雅に通りすぎて行く。
(おお、これは、
「007 ロシアより愛をこめて」だ。
くそ、ショーン・コネリーのやつ、
うまいことやりやがって…。)
それにしても美しい、
グリム童話に出てくるような、
石畳の街並み。
古き良き時代をしのばせる、
工芸品のお店や、
ケーキ屋さんや、花屋さん。
そして、
きょうも元気に働く、
陽気なイタリア人たち。
「チャオ!」
「ハーイ、チャオ!」
もう、散歩しているだけで、
心ウキウキでした、
デヤーノ。
☀☀☀
と、そうこうするうちに、
あっという間にお昼デヤーノ。。
というわけで、私たちは、
またしても、
手頃なレストランを選んで、
「ボンジョルノー。」
恰幅のいいマスターが、
ニコニコしながら、
メニューとお水を運んで来た。
M「はい、いらっしゃい。
まずは、ワインだね。
うちの特製の赤ワインは絶品だよ。」
(ワ、ワイン…? 昼間っから…?)
ところが…、
周りを見渡すと…、
観光客はともかくとして、
いかにも地元の、
ビジネス・マンらしきスーツを着た男性や、
OLらしき女性も、
みなワインを飲み、
ペチャクチャ楽しそうに、
優雅に食事をしているではありませんか。
(こら、イタリア人!
昼間っからワインとはなにごとだ。
何を優雅に、メシなど食っているのだ。
このあと、仕事はどうするんだ、ええっ!)
と、呆(あき)れそうになった私でしたが、
そのとき、
通訳を頼んであった、
イタリア通のS.I.くんが、
こんな説明をしてくれました。
「いやあ、イタリアの夏は暑いでしょ。
だから、このあとみんな家に帰って、
昼寝をするんですよ。
そして、涼しくなった夕方の5時くらいから、
夜の9時、10時まで、また働くんですよ。
これを“シェスタ”って言うんですね。
だから、あれは、
“寝酒のワイン”ってわけなんです。
許してあげましょうよ。」
な〜るほどデヤーノ。
そういえば、
私たちが行ったのは真夏でしたが、
日本とは、
暑さの“質”が違いましたね。
湿気の多い日本の夏もイヤですが、
イタリアのそれは、
ううむ…、
なんて言ったらいいんだろう…?
「太陽が、真上にある。」
って感じですかね。
体を直撃してくるような、
そんな強烈な太陽です。
太陽との距離が、
日本より、
ずっと近くに感じられる、
ま、そんなイメージですか。
だから、
イタリア人が、
「昼寝(シェスタ)をしないと保(も)たない。」
というのも、
わかる気がしましたね。
カミュだか誰だかの、
「太陽が眩しすぎて、人を殺してしまった。」
という小説も思い出しましたが、
わかる気がしましたね。
(それは、わかってどうする。)
さて、お待ちかねのイタリア料理。
まずは前菜。
そして、パスタ。
そう、本格的なイタリア料理では、
パスタは真ん中に来ます。
ま、今さら私が述べるまでもないでしょうが…。
そして、最後に、
肉料理か魚料理。
アンド、デザートの、
ティラミス。
(このときは、ティラミスが大流行でしたね。)
で、ここでも、
イタリア料理やヴェニスに精通している、
通訳のS.I.くんが、
こんなアドバイスをしてくれました。
「ヴェニスのレストランは、
みな、手作りのパスタなんですね。
だから、お店によって、
ぜんぜん形も味も違うんだけど、
それはそれは、どこでも美味しいので、
自分で選ばないで、
お店にまかせた方が得策ですよ。」
な〜るほどデヤーノ。
そういえば、
昨晩のレストランのお薦めは、
オリーブ油の効いた、
伝統的な細麺のパスタだったなあ。
で、ここのは、
やや太麺の、
名古屋のきしめんのような、
カルボナーラがお薦めという。
だから、
彼の助言どおり、
迷わずそれを注文する私たち。
……。
う、うまーい!
こ、これも、
うまいデヤーノ。
こんなもん、
毎日食べてるイタリア人。
うらやましすぎデヤーノよ。
でね、
結局このヴェニスでは、
昼夜合わせて、
4、5回レストランに行って、
そのつど、
そのお店自慢の、
さまざまなパスタをいただきましたが、
どれも、
絶品でした!!
………。
さて、パスタといえば、
Y浅ショージの大好物です。
というか、この男、
大の「麺好き」。
ウドンでもソバでもラーメンでも、
一日一回は麺を食わないと気がすまない、
というくらいの、
熱狂的な「麺好き」。
このときも、
満面の笑みでワインを飲み、
それはそれは美味そうに、
パスタをツルツルと食しておりました。
だから、ここでも、
ちらりと皮肉のひとつも言いたくなった私は、
こう言ってやりましたよ。
み「ショーちゃん、
やっぱり、ここは君には不釣り合いデヤーノ。
君のその席には、
美しい女性こそふさわしいと、
僕は思うんデヤーノよ。
アハハハ。」
すると、この男、
「フン、それがどうした」とばかり、
黙々とパスタを食いながら、
またしても、平然と、
こう嘯(うそぶ)いたのです。
Y「だからぁ、それもー、
こっちが言いたいセリフデヤーノ。。」
……。
(つづく)
サーテ、
もう一昨日になりますね。
月末金曜日恒例、
学芸大「A'TRAIN」ライブ。
長く、密閉された、
スタジオ・ワークから解放されたせいか、
いつになく、なめらかに指が動いて、
とても気持ちよく、
スイングすることが出来ました。
お越し下さったみなさん、
ありがとうございました。
また来月も、
お待ちしてますよー。
そして、
お待ちかねといえば…、
3/29(月)からの、
「STB139」3days。
ジャミン・ゼブ『春の祭典』。
いよいよですね。
ワクワクします。
チケットもほぼ完売だそうで、
こりゃ盛り上がるデヤーノ。
一気に桜満開デヤーノ。
♡♡♡
あ、そうだ。
オープニングに、
ちょっとした演出がありますので、
みなさん、
どうぞ開演時間までには、
頑張って、いらしてくださいね。
マッテルデヤーノ。
(ん? もういい?)
……。
SHUN MIYAZUMI
March 22, 2010
イタリア その4
コリャ、オドロイターノ。
コレガ、ヴェニスナノーネ。
それは、
中世がそのまま残っているかのような、
“幻想的”とも言っていい光景でした。
まるで「カリブの海賊」を思わせる、
お伽話のような空間でした。
……。
サーテ、コーシーテ、
水の上に立ち並ぶ、
古い建物と建物の間の、
狭い水路をくねくねと、
あちこちの建物の窓からこぼれてくる、
ほのかな明かりと、月明かりだけを頼りに、
ゆっくりと進んで行った、
私たちを乗せた「タクシー」は、
ヤガーテ、
狭い水路とおさらばして、
大きな湾に出た。
スルート、
おお、そこは!
かつて、映画や写真で何度も見たことのある、
有名な、大きな船着き場。
美しくライト・アップされた、
白い壁の一流ホテルやレストランが立ち並ぶ、
ヴェニスで最も有名な船着き場。
そんな、素敵なところに、
その「タクシー」は止まった。
(あれまあ、こんなところにトマレルーノ?)
周りには、
おびただしい数の、
「ゴンドラ」やら、
「タクシー」やら、
「バス」が、
ずらりと停泊中。
(ムフフ)
で、
「タクシー」(船)を降り、
陸に上がると、
そこは一面の石畳(いしだたみ)の広場。
いやもう、いきなり、
ヨーロッパな感じですねえ。
(ロマンチックやなあ…)
ソシーテ、
現地スタッフの女性が、
そんな、立ち並ぶホテルの中の一つに、
私たちを案内してくれました。
ところが…、
そこは…、
ちょっと期待はずれの、
二〜三ツ星くらいのホテルでしたか。
(……。)
「あのお、私、
隣のホテルの方がいいんですけど…。」
「あ、その隣も良さそうですよ。」
「ねえねえ、あそこ、
ジェームズ・ボンドが泊まったとこですよ。
映画で観たでしょ、素敵なとこでしたよ。
ねえ、あそこにしましょうよ、あそこに…。」
と、私は、心の中で、
何度もおねだりしたのですが、
だめでした。
(シカタネーノ)
♡♡♡
でも、中に入ってみると、これが、
こじんまりとはしているものの、
なかなか、雰囲気のある、
昔のヨーロッパ・スタイルの、
落ち着いた感じのホテルでしたね。
そして、
一人のフロント・マンのおにいちゃんが、
若いポーターかなんかと、
楽しそうに談笑しておりました。
で、私たちは、
そこでチェックインをして、
それぞれの部屋に入って、
荷物を置いて、
ようやく一服。
ふ〜…。
……。
と、そこで、私は、
あることに気がつきました。
この部屋には、
時計がない。
……。
(ナンデネーノ?)
アノーネ、
ホテルの部屋に時計がないなんて、
想像もしていなかったので、
私は、目覚まし時計なんて、
持って来てネーデニャーノ。
マシーテ、
当時は携帯電話やアラームなぞ無い時代。
シカーモ、シカーモ、
翌日は、
朝の9時から大事なミーティングが、
アルンデヤーノ。
(これも、イタリアというやつか…)
さっそくフロントに電話すると、
さすがに一流ホテルではないので、
なかなか英語が通じない。
仕方なく私は、
ロビーへ降りて、
さっきのフロントのおにいちゃんに、
「8時にモーニング・コールするよう」
紙に書いたり、
さらには、英語や、身振り手振りで、
頼んでみました。
……。
はい、なんとか通じたようです。
そのおにいちゃん、
笑顔で、
「ハーイ、ワカッターノ、シニョール。
8ジーニ、オコスーノ、
ダイジョーブダモーレ、アモーレ。
マカシテーノ。」
みたいなことを、
イタリア語で言った。
(と思う)
(なんか頼りないけど、
ま、大丈夫だろう。)
ということで、
私たちは散歩がてら、
食事に出かけることにしました。
夜も10時を過ぎておりましたが…。
♡♡♡
さて、
ホテルを出てみると、
改めてその美しい景色に、
うっとりです。
目の前には、
おびただしい数の船やゴンドラが、
静かな波の上でゆらゆら。
そして、対岸の島には、
由緒ある教会らしき建物が、
ぼんやりではありますが、
見ることができます。
そして、私たちは、
広い石畳の道を、
近くにあるという、
有名な「サン・マルコ広場」のほうに、
歩いて行ったわけですが、
そこでも私は、
あることに気がついたのです。
普段、感じることのない、
普段とは違う、何かに…。
……。
それは…、
「ヴェニスの夜は暗い。」
ということでした。
当然のことですが、
ここには、
ビルのネオンも、
広告灯も明るい電灯もありません。
バーもキャバレーも、
終夜営業のコンビニも、自動販売機も、
銀行も、ATMも、公衆トイレもない。
「笑笑」も「つぼ八」も、
「立ち食いソバ」も「屋台のラーメン」も、
「スタバ」も「ドトール」も「A'TRAIN」も、
ない。
……。
つまり、
街全体に、
明かりという明かりが、
いっさい無いのです。
あるのは、石畳の上に、
ポツリポツリと置かれている、
「街灯」の淡い明かりだけ。
そして、これがまた、
古いヨーロッパ映画に出てくるような、
ロマンティックなやつで、
なんとも、いい雰囲気。
で、このとき私は、
気づいたのです。
「日本にしろ、アメリカにしろ、
夜が明るすぎるのだ。
これが、本来の、“夜”なのだ。」
とね。
たとえば、
六本木や学芸大で、
深夜の2時、3時に、
遠くの方を知り合いが歩いていても、
それが誰だか、すぐにわかりますよね。
街全体が明るいから。
ところが、
ヴェニスでは、
10メートルも離れると、
もう、それが誰だかわかりません。
暗いから。
でも、夜というのは、
本来こういうものなんですね。
こういう、
ロマンティックなものなんですね。
ここでも、
歴史が止まったままのヴェニスに、
拍手を贈りたい気分でした。
ビバ、ベネツィーア!!
さて、私たちは、
とあるレストランに飛び込みで入り、
ワインで乾杯。
美味しいイタリア料理を、
存分に楽しんだあと、
明日も早いので、
ホテルへ早々に帰って、
旅の疲れを癒すことにしました。
(ずいぶん長くなったので、
イタリア料理については次回たっぷりと。)
というわけで、みなさん、
「おやすみなさ〜い。」
zzz……。
……………。
さあ、朝がやってきました。
コッケコッコーデヤーノ〜〜〜♪
「ん?」
何気に目が覚めた私。
で、
ふと、腕時計を見ると、
8時半を過ぎてるではありませんか。
(フロントから、電話無かったよなあ…。)
大慌てで支度をして、
ロビーに降りてみると、
フロントには、
昨夜のおにいちゃんがいました。
私は、こわ〜い顔をして、
そのおにいちゃんの所へ行き、
身振り手振りと、英語で、
「ナンデ、8ジニ、オコサネーノ!?」
と、詰め寄りました。
最初は、
何のことやらわからず、
不思議そうに私を見ていた、
その、おにいちゃん、
やがて、
「ハッ」と思い出したようで、
急に明るい顔に戻り、
両手を胸のあたりで揉みながら、
こんなようなことを、
イタリア語で言いました。
(と思う)
「キャーハハハ、
オーソレ、ワスレテターノ、
ゴメンナサイーノ、ユルシテーネノ、
ペペロンチーノ、イタリアーノ。」
(こいつもか…)
(つづく)
おやおや、
ずいぶん長くなっちゃいました。
ま、きょうは、
久しぶりの休息日でしたからね。
明日からは、
またスタジオに戻ります。
でも、もうすぐゴールです。
もう見えました。
あと、もう少しです。
きっと素敵なアルバムになります。
タノシミニ、
マッテテーネ。
……。
SHUN MIYAZUMI
March 15, 2010
イタリア その3
さて、今日も、
イタリア珍道中のつづきです。
これは、今を去ること20年前のお話。
陽気でおバカな、
ミラノの入国審査のおにいちゃんに、
なんとか入国させてもらった私が、
次に乗り込んだのが、
「ヴェニス(ヴェネツィア)」行きの、
アリタリア航空。
でね…、
これが、おそろしく小さな旅客機。
私は、一番前の座席だったのですが、
目の前を仕切ってあるカーテンを、
そっと、めくると、
なんと!
そこは、いきなり、
操縦士がいるコックピット。
……。
「こんな飛行機で、大丈夫かなあ…。」
と、少し不安になりましたね。
(スチュワーデスは美人だったけど)
ま、これは、
1時間くらいの短いフライトだったと、
記憶してますが、
でも、
カナーリ、コワカッターノ。
……。
ソレデーモ、
なんとか無事にヴェニスに到着。
もう、夜の7時か8時頃になっていたでしょうか。
ずいぶんと長旅でしたが、
やっと到着しましたね。
ヤレヤーレ。
♡♡♡
さて、私たちは、
空港のロビーを出ると、
1台の「タクシー」に乗り込む。
で、ヴェニスで、
この「タクシー」というのは、
“船”のことなのです。
それは、
5、6人乗りの、
かなりスピードが出る高速船。
チナミーニ、
ヴェニス市内では、
「船」と「徒歩」しか、
交通手段がないんだそうです。
自動車も、バイクも、ダメ。
(自転車も見なかったなあ…。)
いいですねえ。
排気ガス・ゼロだ。
交通事故もゼロだ。
究極のエコ・シティだ。
ウラヤマシーノ。
……。
というわけで、
私は、いきなり、
ここが「水の都」だということを、
認識させられたわけですが、
この「タクシー」とやら、
お値段は、かなり高いようです。
ちなみに、一番高いのが、
有名な「ゴンドラ」というやつ。
これは、カップル専用。
くれぐれも、
男同士で乗ったりしてはいけません。
間違えられますからね。
あと、乗合船のような、
2階建ての大きな船もあって、
これを「バス」と言うんだそうです。
これは安いので、
ほとんどの旅行者や地元の人は、
この「バス」を利用するんだと聞きました。
サーテ、サーテ、
そんな「タクシー」は、
私たちを乗せて、
真っ暗な海を、
かなりのスピードで進んで行く。
と、しばらくすると、
ようやく遠くの方に、
ボンヤリと明かりが見えてきました。
どうやら、あれが、
「ヴェニス」の市街みたい。
スルート、
「タクシー」はスピードを落とし、
建物と建物の間の、狭い水路に入り、
今度は、
ゆっくり、ゆっくり進み始める。
ト、ソノトーキ、
私の目に映った光景は…?
……。
いやあ、信じられませんでしたね。
地球上にこんなところが、
まだ、あったなんて…。
あたかも、
中世の建造物ではないかと思われるような、
古い、崩れ落ちそうな建物のあちこちの窓から、
こぼれてくる部屋の明かり。
あちこちの壁や、
建物と建物の間に、
無造作に吊り下がっている洗濯物。
2階、3階の窓から、
不思議な生き物を見るかのように、
私たちを眺めている、
イタリア人の太った主婦や、
くりくりお目目の子供たち。
厚化粧の、意地悪そうな顔をした、
ソフィア・ローレンまがいのおねえさんに、
赤ら顔の、酔っぱらいの漁師のような、
マルチェロ・マストロヤンニまがいの、
初老のおっさん。
(う〜ん、なんか映画みたいだな)
でも…、
待てよ…。
これと似たような経験が、
あったような、なかったような…?
……、
………?
そうだ、思い出しました!
この光景は、まさに、
ディズニー・ランドの人気アトラクション、
「カリブの海賊」
(カリビアン・パイレーツ)
ではありませんか!!
さすがに、
酒場で女を追いかける、
野蛮な海賊こそ、いませんでしたが、
でも、その古い建造物といい、
窓からこぼれてくる、
ほの暗〜い明かりといい、
そんな中を、
左右を眺めながら、
ゆっくりと船で進んで行く“私たち”といい、
これはまさに、
あの「ディズニー・ワールド」そのもの!!
つまり、ここは、
まだ中世のまんまなんですね。
歴史が止まったままの都市なんですね。
……。
それは、
今が、20世紀の現代であることを、
思わず忘れてしまいそうな、
なんとも不思議な景色でした。
いやあ、感動しましたね。
鳥肌もんでした。
と、そうこうするうちに、
私たちを乗せた「タクシー」は、
ようやく狭い水路を抜け出し、
大きな船着き場に出た。
すると、そこは…、
おお、
おおおおお、
……。
(つづく)
「なんだ、今日はもう終わり?」
なんて言われそうですね。
オチらしいオチもないし…。
アハハ、
ま、そういう日もあるということで。
でもまあ、
せっかくの貴重な体験の、
あれこれでしたからね。
このお話も、
「ゴンドラ」のように、
ゆっくりいきましょう。
ゆっくりとね。
さて、今週は、
ええと、
「STB139」のリハーサルと、
「レコーディング」が交互にあって、
「ファンミ」の準備と、
「CDジャケット」の進行チェックと、
ええと、アレと、コレと…、
……、
ヒエーッ!
イソガシイデヤーノ。
アソビテーデヤーノ。
ユックリ、ノミテーデヤーノ。
カフン、ヒドイデヤーノ。
モウ、ネムイデヤーノ。
……。
SHUN MIYAZUMI
March 07, 2010
イタリア その2
「は〜るばる来たぜ イタリア〜♪」
すべてが暗〜い、
モスクワ空港を飛び立った数時間後、
私たちを乗せたルフトハンザ機は、
ようやく、
「ミラノ国際空港」に到着。
(そう、思い出しました!
あれはドイツのルフトハンザ航空でしたね。
この機はモスクワの後、フランクフルトにも、
トランジットしたのでした。
ドイツ人は、「暗い」というより、
「厳格」というイメージでしたかね…。)
着陸後。
ゆっくりと空港ロビーに向かう飛行機の窓から、
すっかり暗くなった外を見ると、
向こうの方のビルに、
『MILANO LINATE』
という、
カラフルなネオンが見えました。
(なるほど、この空港はミラノでは、
「Linate(リナーテ)」って言うんだな。
ひとつ勉強。)
ま、その派手なネオン・サインだけでも、
モスクワ空港とはまったく違う、
華やかさが、うかがえますね。
そして、
空港ロビーに入ると、
その華やかさは、
いっそう眩(まぶ)しいものに映りました。
赤や黄色や紫といった明るい色の、
お洒落な服装を着こなした、
陽気なイタリア人たちが、
あっちでも、こっちでも、
楽しそうに談笑している。
「ペチャクチャ、ペチャクチャ、ペチャクチャ」
「アハハハ、オホホホ、ガハハハ」
とまあ、これが、
みんな底抜けに陽気で、
うるさいくらいに早口でおしゃべり。
というか、
ほんと、うるさい。
でも、それは、
暗いモスクワや、
いかにも厳格な感じのドイツや、
お固い役所みたいな、
どこかの空港とはまったく違う、
なんとも開放的な雰囲気でしたよ。
(こりゃ楽しそうだな、この国…)
♡♡♡
さて、
ここミラノで、
私たちは入国審査を受け、
今度はアリタリア航空という、
国内線に乗り換えて、
ヴェニスに向かうことになっていたのですが、
その入国審査場(Immigration)
に行ってみると、
そこは、
すごい数の旅行者たちで、
早くも長蛇の列。
ま、これは、
どこの国際空港でも見られる光景ですがね。
……。
でね、
海外に行ったことのある方なら、
おわかりでしょうが、
普通、この「Immigration」(入国審査)
というところは、
おそろしく時間がかかるのです。
アメリカでも、イギリスでも、
早口の英語で、
情け容赦なく、根掘り葉掘り聞かれて、
なかなか入国させてもらえなかった、
そんな経験をお持ちの方も、
多いのではないでしょうか。
「なんの目的で来たのかね?
ビジネスかね? 観光かね?」
「どのくらい滞在するのかね?」
「滞在先が書いてないよ。
今すぐ書きなさい。」
「おや、そのカバンは何?
ちょっと中身を見せなさい。」
etc.etc.
ところが…、
ここミラノでは、
ここイタリアでは、
実にスムーズに列が進んで行くのです。
(なんで…?)
私は、
いかにも不思議な感じを受けたのですが、
あっという間に、
あと10人くらいで「自分の番」
というところまで来て、
その謎が解けました。
二つのガラスのボックスに並んで入っている、
二人の役人のおにいちゃんが、
お互い顔を向き合って、
いかにもノー天気に、
楽しそうに会話をしながら、
ろくに旅行者や、
そのパスポートも見ないで、
なんら質問をすることもなく、
バンバン、スタンプを押して、
かたっぱしから入国させているのです。
こんな感じです。
「オイ、オミャー、○○デャーノ、アハハハ」
(と、私の列の男が、ポンとスタンプを押す)
「ガハハハハ、オーホホホホ、
オミャーモ、オーソレミオーノ、
△△デヤーノ、△△デヤーモ」
(と、向こうの列のやつも、スタンプをポン)
「ワ〜ハハッハッハ、
ナンデャーノ、コリャミーロ、
△△ヴォーレ、○○デヤーノ、△△アモーレ」
(と、またこいつがポン、ポン)
「キャーハハハハ、
ソリャー、オミャー、ナンデャーノ、
バカデニャーノ、ヤッテラレニャーモ、
ガーハハハハハ」
(と、あっちの男も、ポン、ポン、ポン)
と、それは、
ひとことで言ってしまえば、
「メクラ判(ばん)」。。
(いいかげんだなあ…)
というわけで、
当然のことながら、
あっという間に、
私の番がやって来たのですが、
相変わらずそのおにいちゃんは、
横を向いて、
あっち側のおにいちゃんと、
談笑しながら、
私には見向きもせずに、
ポンとスタンプを押した。
ところが…、
そのスタンプは…、
私のパスポートのページではなく、
ちょっとズレて、
机の上に直接、
ポンと押されたのです。
(これ、本当の話)
さて、
呆気(あっけ)にとられた私が、
しばし呆然としていると、
やがて、そのおにいちゃんは、
私の存在に気づき、
「ン? アンタッテ、オワッタノーニ、
ナンデーノ、イカネーノ?」
みたいなことを、
イタリア語で言った。
(と思う)
私は、
開かれたままの私のパスポートの、
真っ白いページと、
その隣の、机の上に押されてある、
スタンプを、
黙って交互に、指差した。
すると、このおにいちゃん、
「ガーハハハハハ、
オーソレ、ミナカッターノ、
マチガッターノ、イタリアーノ」
みたいなことを言って、
(と思う)
今度はちゃんと、
“パスポートに”スタンプを押して、
ようやく私を入国させてくれました。
まあ、
イタリア人が陽気だという話は、
昔から聞いてはいましたが、
ここまでくると、
「陽気」というよりは、
もはや、
「バカ」と言ったほうが、
いいかもしれません。
アハハハ…。
でも、
いいですねえ、
この軽さ。
このC調で、無責任な感じ。
これぞ、まさに、
私が望むところの、
理想としていた、
憧れの、
植木等さん的、
「クレージー・キャッツ世界」
ではありませんか。
この瞬間から、
私は、このイタリアという国が、
大好きになりました。
というか、こりゃ、
私にピッタリだわ…。
そして、さらに、
飛行機を乗り継いで、
水の都ヴェニス(ヴェネツィア)に、
到着した私を待っていたものは、
おお、
おおおおおお、
……。
(つづく)
春が近づくと、
「三寒四温」
という言葉をよく耳にしますが、
最近の天気は、
まるで、
「一寒一温」ですね。
きのう20°を超えたかと思うと、
きょうはまた冬に逆戻り。
急激な温度の変化に、
体調を崩さないよう、
心がけたいものです。
なにせ、
一日でも倒れたら終わり、
という、
ギリギリのスケジュールでやってるもんで…。
でも、
日に日に完成していく音を聴くのは、
楽しいもんです。
プロデューサー冥利につきる、
ってやつでしょうかね。
さ、明日もがんばろうっと。
来週はフォト・セッションもあるし。
(お天気悪そうだけど、大丈夫かな…)
またしても…。
むむむ……。
SHUN MIYAZUMI