April 2010
April 26, 2010
イタリア フィナーレ
なあんだ。
「階段を上るから手を貸せ。
て、言ってたのか…。」
そんなこととは、つゆ知らず、
何度も断って、
ゴメンネ、
ね、
イタリアのおばあちゃん。
そんな、
可愛いおばあちゃんと別れて、
次に私が向かったのは、
大聖堂に向かって右側にある、
これまた歴史のありそうな、
隣接する二つの建物。
で、行ってみると、
これが、どちらも、
美術館でした。
うちひとつは、
「ダ・ヴィンチ美術館」
と書いてありましたか。
さっそく中に入ってみると、
そこは、
静かなたたずまいの、
小さな美術館。
比較的初期のダ・ヴィンチ作品、
それも小品の宗教絵画が、
多数飾られていました。
それらを、ゆっくり、
時間をかけて1枚1枚鑑賞。
そして、
もうひとつの美術館には、
これまた、
イタリア・ルネッサンスを代表する、
ラファエロやミケランジェロを中心に、
たくさんの、小さな宗教絵画が、
普通の、
どこにでもあるような、
サロンのような場所に、
所狭しと飾られてありました。
……。
そんな絵を、
1枚1枚眺めているうちに、
私は、このイタリアという国の、
芸術に対する造詣の深さと、
芸術や文化の面で、
いかに世界をリードし、
世界に貢献してきたかを、
改めて思い知らされたのです。
この3日間で、
私が見たり、聴いたりしてきた、
建築、彫刻、絵画、音楽。
それはもう、本当に、
すべてが圧倒的でした。
あらゆる芸術や文化の分野で、
イタリアという国が、
どれだけの偉業を成し遂げてきたか、
改めて、敬意を表さずにはいられない。
そんな思いでしたね。
えらいな、イタリア。
♡♡♡
さて、
そうこうするうちに、
ふと時計を見ると、
「いけない、もうこんな時間か…。」
楽しい時間はすぐ過ぎるんですねえ。
急がないと、
飛行機に乗り遅れそうな、
そんな時間になっていました。
私は、大急ぎで美術館を出ると、
大通りに出て、
1台のタクシーをつかまえ、
「MILANO LINATE(ミラノ・リナーテ)」
と言いました。
(余談。
最近、ある友人が教えてくれたのですが、
ミラノにはいくつか空港があって、
この『LINATE(リナーテ)』という、
空港名を覚えていたことは、
本当にラッキーだったんだそうです。)
さて、そのタクシーの運転手のおっちゃん、
「Si(わかった)」と言って、
なんの問題もなく走り出したので、
やれやれ、
これで、ひと安心。
♡♡♡
と、思いきや…、
この運転手のおっちゃんが…、
とんでもない…、
「おしゃべり」だった。
しかも、
おそろしく、
ノロノロ運転。
……。
運転中、
何度も後ろを振り返っては、
私に向かって、
「ペチャクチャ、ペチャクチャ。
○○デヤーノ、△△デヤーモ。
ガハハハハ。」
(あのう、私、イタリア語、
わかんないんですけど…。)
そして、
ノロノロ、ノロノロ。
(あのう、今の黄信号だったら、
行けましたよ、あーた。
後ろの車も迷惑してますよ。)
そして赤信号の間も、
もちろん、
「ペチャクチャ、ペチャクチャ。
ワハハハ、ガハハハ。」
(あのね、私、イタリア人に見えますか?
えっ? 見える。
あっ、そう。)
そしてまた、
ゆったりと走り出す。
(おっちゃん、もっと速く走れないの?)
そしてまた、
「ペチャクチャ、ペチャクチャ。
ガハハハ、キャハハハ。」
(おっさん、しまいにゃ怒るで〜。
ブツブツ…。)
……。
いやあ、
本当に、
困りました。
そして、
その間も、
時計の針は、
情け容赦なく進んで行く。
(まずいな、こりゃ…。
このままだと、絶対間に合わないぞ。
おっちゃん、頼むから、
もっと真面目に走っておくれよ〜。)
……。
私は、あせりにあせる。
なんとか、この窮地を脱する方法はないのか…。
しかし、私の知っているイタリア語といえば、
「Buongirno(こんにちは)」
「Grazie(ありがとう)」
「Prego(どういたしまして)」
「Pel Favore(お願いします)」
それに数字の1から5。
それしか、ないではないか。
なんとか、この運転手に、
「早く行け」「速く走れ」
を、伝える方法はないのか…。
「早く…」
「速く…」
……。
…………。
と、ここで、
私には、ある考えが閃(ひらめ)きました。
「まてよ…。
確か、音楽用語というのは、
みなイタリア語ではなかったかな…。」
たとえば、
「Piano(ピアーノ)」は、
確か「弱く」だ。
「もっと弱く」は、
「Pianissimo(ピアニッシモ)」だ。
「Forte(フォルテ)」は「強く」で、
「Fortissimo(フォルティッシモ)」は、
「もっと強く」。
……。
そうだ、
これ、みんなイタリア語だ!
「アルペジオ」も、
「カデンツァ」も、
「カンタータ」も、
「クレッシェンド」も、
「ダ・カーポ」も、
「フェルマータ」も、
「ルバート」も、
「ヴィブラート」も、
「ピチカート」も、
「ダル・セーニョ」も、
「トレモロ」も、
「カンタービレ」も、
みんな、みんな、
イタリア語だ…。
すると、
速度表示はなんだったかな…。
ええと、
「Largo(ラールゴ)」
「Adagio(アダージヨ)」
あたりが、
「ゆっくりと」で、
「Andante(アンダンテ)」が「ゆったりと」で、
ええと、
「速く」が「Allegro(アレグロ)」で、
「もっと速く」が、
「Presto(プレスト)」
ではなかったか…。
(そうだ、これしかない!)
日本人の私が、
学校の「音楽」の授業で、
教わったくらいだから、
この、
イタリア人の運ちゃんにも、
なんとかなるのではないか。
……。
というわけで、
何度目かの赤信号で、
またしても、このおっちゃんが、
後ろを振り返って、
何かしゃべろうとしたとき、
私は、イチかバチか、
こわ〜い顔をして、
腕時計を指差し、
「きっ!」と強い口調で、
こう言ったのです。
「Allegro(アレグロ)!!!」
すると…、
これが…、
通じた…。
その運転手のおっちゃん、
急に真顔になり、
「Si(わかった)」と言って、
今度は脇目もふらず、
おしゃべりもやめ、
スピードをあげて、
ぐいぐい走り始めたのでした。
そして…、
滑り込みセーフ。
私が席に座ると同時に、
その飛行機は動き始めたわけですから、
どうやら、
私が最後の客だったようですね。
まさに、
「間一髪」とはこのことです。
ふう〜…。
♡♡♡
はい、そんなイタリア珍道中でした。
それにしても、
なんと素敵な国なんでしょう。
イタリア。
温暖な気候。
美しい石畳の街並。
歴史の重みを感じる数々の建造物。
彫刻や絵画や音楽における高い芸術性。
最先端を行くファッション。
手作りの美味しいパスタにワイン。
etc.etc.
でもね、
私が最も印象に残ったのは、
人(ひと)です。
陽気でチャーミングな、
イタリアの人たちです。
粗忽にも、机の上にスタンプを押してしまった、
ミラノの入国審査のおにいちゃん。
「モーニング・コール」を忘れていた、
ヴェニスのホテルのフロントのおにいちゃん。
「コカ・コーラ」「レモン・ソーダ」と発音して、
ローマ字の存在を思い出させてくれた、
ヴェニスのカフェの可愛い女の子。
突然私にガバっと抱きついてハグを始めた、
ミラノ大聖堂のおばさん。
ニコニコ顔で紅茶を運んで来てくれた、
ミラノのカフェの綺麗なおねえさん。
「階段を上るから手を貸せ」と言って来た、
ドゥオモ広場のおばあちゃん。
おしゃべりとノロノロ運転で、
私をやきもきさせたタクシー運転手のおっちゃん。
20年経った今でも、
彼(彼女)らのことは、
鮮明に覚えています。
陽気である、
チャーミングであるということは、
なんと素敵なことなのでしょうか。
なんと人生を楽しくするものなのでしょうか。
私は、ときどき、
こんな質問を受けることがあります。
「宮住さんは、お仕事柄、
いろんな所で行かれたでしょうが、
もう一度行ってみたいと思うのは、
どこですか?」
そんなとき私は、
迷わずこう答えます。
「イタリアですかね。」
(おわり)
さて、
3日間にわたり変則開催された、
『ジャミン・ゼブ/ファン・ミーティング 2010』も、
おかげさまで、
昨日(4/24)をもちまして、
無事、大盛況のうちに終えることができました。
予想をはるかに上回るお申し込みをいただき、
日程の追加、
それにともなう参加日の変更依頼、
さらには、
限られたスペースゆえの、
人数の割り振りなど、
かつてない、
運営の難しさを痛感したイベントでした。
ご協力いただいた関係者のみなさん、
ご無理をお願いしたファンのみなさん、
そして、
「東京メイン・ダイニング」のスタッフのみなさん、
本当にありがとうございました。
そして、
ファンのみなさんの、
幸せそうなお顔を拝見していると、
「やってよかったなあ。」
「ジャミンは、
本当に素晴らしいファンの方たちに、
支えられているんだなあ。」
と、改めて実感した次第です。
(ニヤリ)
というわけで、
次回は、
どこで、
なに、やろうかな…。
いいアイディアがありましたら、
そっと、
教えてくださいね。
そっとですよ。
そっと。
ね……。
SHUN MIYAZUMI
April 19, 2010
イタリア その8
「ミラノ・スカラ座だ…」
その名前を、
目の前にしたときの驚きと感動は、
筆舌に尽くしがたいものがあります。
(あのオペラの殿堂が、
ドゥオモ広場の大聖堂の近くにあったとは…)
これは本当に嬉しい誤算でした。
その「La Scala」。
思ったほど大きな建物ではないので、
おそらく、
地下をぐっと掘り下げて、
作られてるのでしょうね。
(ああ、中に入ってみたい…)
そして、玄関口には、
かつて、ここで活躍した、
歴史的な歌手の名前が、
ズラリ並んでいました。
Mario Del Monaco(マリオ・デル・モナコ)
Maria Callas(マリア・カラス)
Renata Tebaldi(レナータ・テバルディ)
……。
さらには、
偉大なオペラ王「ヴェルディ」の肖像画も…。
さらには、
今日の演目も。
(「オテロ」だったか、
「ドン・カルロス」だったか…。
いずれにしても、
ヴェルディの作品だったような記憶があります。)
ああ、見たいなあ…。
……。
ま、今回、それは、
かなわぬ夢ではありますが、
それでも私は、
しばらくの間、
ここで華々しく活躍したであろう、
あの全盛期のカラスやデル・モナコの勇姿に、
ひとり想いを馳(は)せておりました。
「いつか、絶対来てやるぞ」
と、心に誓いながら。
♪♪♪
さて、そうこうするうちに、
ちょっと喉がかわいてきたので、
「La Scala」に別れを告げ、
私はさっきのアーケードのガレリアに戻り、
小ぎれいな、
一軒のコーヒー・ショップに入りました。
で、
じつは、
ヴェニスを出るときに、
私は、簡単なイタリア語をいくつか、
仕入れておきました。
まずは、
日本語の「こんにちは」にあたる、
「Buongirno:ブォンジョールノ」
それから、
「Grazie:グラーチェ」(ありがとう)
「Prego:プレーゴ」(どういたしまして)
さらに、数字の1から5、
「1=Uno:ウノ」
「2=Due:ドゥエ」
「3=Tre:トゥレ」
「4=Quattro:クワートロ」
「5=Cinque:チンクエ」
ま、このぐらい覚えておけば、
なんとかなるだろう。
てな感じでね。
(安易すぎないか)
そうそう、もうひとつ。
それは、
英語の「Please」(お願いします)にあたる言葉。
これは、どうしても必要だと思いました。
たとえば、
「コーヒーを一杯お願いします。」
これ、英語で丁寧に言うと、
「Can I have a cup of coffee, please?」
みたいな感じですよね。
でも、
「A coffee, please.」
でも、充分通じる。
ところが、
この「Please(プリーズ)」がないと、
チンピラのおにいちゃんが、
「おい、コーヒー持ってこい。」
みたいな感じに聞こえるかもしれません。
だから、これは絶対必要。
で、これは、
「Pel Favore:ペル・ファヴォーレ」
と、言うんだそうです。
ま、これを語尾に付けてさえおけば、
殴られることはないだろう…。
たった、それだけの知識での、
ひとりミラノ行脚だったのです。
(やっぱり安易だ)
でもね、バッチリでしたよ。
私が席につくと、
可愛いウェイトレスのおねえさんが、
ニコニコしながらやってきて、
「ブォンジョールノ(こんにちは)」
はい、こっちもニコニコと、
「ブォンジョールノ」
そして、メニューを見て、
これが「紅茶」だと目星をつけ、
こう言うのです。
「Uno te, pel favore.」
(ウノ、テ、ペル・ファヴォーレ)
前々回も書きましたが、
イタリア語の発音は「ローマ字」でOK。
で、英語で紅茶は「Tea(ティー)」だから、
イタリアでは「Te(テ)」
これが紅茶だろうと思ったわけです。
だから、これを訳すと、
「紅茶を一杯お願いします。」
はい、なんの問題もなく、
紅茶がやってきました。
私は、またしてもニコニコと、
「グラーチエ(ありがとう)」
するとウェイトレスちゃんもニコニコと、
「プレーゴ(どういたしまして)」
ワハハハハ。
通じたぞ。
おれはイタリア語で会話したぞ。
(単純だなあ)
♡♡♡
さあ、こうなると、
気分はルンルン。
お店を出て、
通りで素敵な女性を見ると、
私の方からニコッと笑って、
「ブォンジョールノ」
すると、その女性もニコッと笑って、
「ブォンジョールノ」
あはは、いいなイタリア人。
日本だったら、
絶対こうはいかないよな。
「おっ、可愛い犬だなあ。」
と、その犬の頭を撫でてやると、
飼い主のおばさんが、ニコニコと、
「グラーチエ(ありがとう)」
私もニコニコと、
「プレーゴ(どういたしまして)」
アハハハ、
いいな、いいな、イタリアって。
……。
と、そうこうするうちに、
私はまた、広場に戻っていました。
そして、
石畳の大きな広場の端の、
3段くらいの石段の一番上に座って、
美しいミラノの建物や、
陽気なイタリア人たちを、
ぼんやり眺めていました。
と、そこに…、
その階段の下に…、
1人のおばあちゃんが、
杖をつきながらやってきて、
私の真ん前に立った。
そして、
「握手をしろ」
とばかりに右手を開いて、
私にむかって差し出し、
早口のイタリア語で、
ペチャクチャ喋りはじめたのです。
「ペラペラ、ペチャクチャ、
○○デヤーノ、△△ダモーレ、
××ナノーネ、▲▲デヤーモ」
「……?」
私は、
そんな見知らぬおばあちゃんと、
握手をするなんて、
どうにも気味が悪いので、
手を左右に振って、
「かんべんしてよ。」
の意思表示。
しかし、そのおばあちゃん、
全然あきらめようとしない。
どうしても握手をしろと、
さらに右手を差し出す。
そして、
「ペラペラ、ペチャクチャ、
ペラペラ、ペチャクチャ、
ペラペラ、ペチャクチャ。」
「……???」
英語で「No」と言っても、
日本語で「なんで、あんたと握手すんのさ。」
と言っても、
全然あきらめない。
右手を引っ込めない。
あっち行ってくれない。
……。
しかたなく私は、
うす気味悪くはあったものの、
恐る恐る、
そのおばあちゃんと握手をしました。
すると…、
そのおばあちゃん…、
私の手をギュッと握りしめ、
私の手をてこ(支え)にして、
「よっこらしょ」
とばかり、階段を「一段、また一段」
と登り始めたのです。
そして、一番上まで上がると、
手を離し、
「グラーチエ(ありがとう)」
と、ぶっきらぼうに言うと、
杖をつきながら、
悠然と、
大聖堂の方へ歩いて行きました。
……。
なあんだ、そういうことだったのか…。
「階段を上るから、
手を貸せ。」
て、言ってたんですね。
あははは。
やっぱり、
いいな、いいな、
イタリア人って。
……。
(つづく)
ね、
素敵なイタリア女性だったでしょ?
ま、こんなこと、
日本じゃ考えられませんよね。(笑)
さて、
そんな、楽しかったイタリア珍道中も、
次回が最終回です。
それにしても、
たった3日間の旅行を、
こんなに膨(ふく)らませる私って、
いったい何者…?
……。
SHUN MIYAZUMI
April 12, 2010
イタリア その7
ああ、やっと出来ました。
ジャミン・ゼブ『Garden(ガーデン)』
ようやく完成です!
ふう〜。
……。
思えば、長い道のりでしたね。
昨年の夏頃から、
スケジュールの合間を縫(ぬ)って、
ちょこちょこ始め、
今年に入って一気に加速。
「一音たりとも妥協しないぞ…」
と心に決め、
レコーディングと、
緻密な作業に明け暮れる、
そんな毎日でした。
♪♪♪
制作期間も、
楽曲数も、
収録時間も、
アレンジ・スコア(総譜)の枚数も、
音符の数も、
録音テイク数も、
スタジオに通う電車賃も、
駅で立ち飲みした栄養ドリンクの数も、
スタジオで食べた弁当の数も、
「崎陽軒」のシュウマイ弁当のシュウマイも、
帰りに食った「焼きトン」の串の本数も、
ビールとホッピーの杯数も、
いずれも、
過去最高ではないかと思います。
♡♡♡
でも、メンバーも私も、
現在の持てる力は、
すべて出し切りました。
(と思います。)
あとは、5/26の発売を待つばかり、
みなさんの審判を仰ぐばかりですが、
なにはともあれ今日は、
心地よい満足感に浸っております。
ホッ…。
ま、発売が近づいたら、
このブログでも、
毎度お馴染み、
私の独断と偏見による、
「『Garden』楽曲解説」
「『裏・ガーデン』制作秘話」
なるものを、
連載しようと思っておりますが、
とりあえず、
しばらくは、
私の、20年前の、
「イタリア珍道中」
を続けることにしましょう。
今回からは、
「ミラノ篇」です。
で、これがまた、
ケッサク…。
(ひとり受け…?)
『イタリア その7』
美しい「水の都」を後にした私は、
一人、アリタリア航空の国内便に乗り、
ふたたび、
「MILANO LINATE(ミラノ・リナーテ)」
空港に到着。
そして、
計画どおり、
すぐに出国手続きなどはせず、
6時間のトランジット時間を有効に使うべく、
荷物を空港のコイン・ロッカーに預けると、
外に出てタクシーをつかまえ、
ヴェニスの現地女性スタッフが書いてくれた、
1枚の紙きれを、
運転手に渡しました。
そこには、
イタリア語で、
こう書いてあったはずです。
「ドゥオモ広場に行ってください。」
彼女はこう言っておりました。
「ミラノへ行くなら、
ぜひ、ドゥオモ広場の、
ミラノ大聖堂へ行くべきですよ。
幸い、きょうは日曜日ですから、
ミサをやってるはずです。」
30分くらい、
だったでしょうか?
ミラノの市街を左右に見ながら、
タクシーに揺られて到着したそこに、
私が見たものは…、
おお、
おおおおおお…。
……。
大きな広場。
そして、そこにそびえ立つ、
圧倒的な、
巨大な建造物。
それが、
「ミラノ大聖堂」でした。
(ご存知ないかたは、
ぜひインターネットでご覧になってください。)
それは、
1386年に着工して、
500年後に完成したという、
世界で2番目に大きいという、
巨大なゴシック建築の大聖堂。
3段くらいの石段を上がり、
おびただしい数の鳩が群がる、
広い広い石畳の広場は、
日曜日とあって、
多くのイタリア人、
観光客などで、
たいそう賑(にぎ)わっておりました。
そんな中を歩いて、
「ミラノ大聖堂」の入り口に到着すると、
なるほど、
ミサをやってるということもあって、
すんなり、
中に入ることができましたね。
と…、
「こ、これは…」
……。
外観もすごいが、
聖堂内も圧倒的です。
1,000人は軽く収容出来そうな大きさ。
すさまじい天井の高さ。
にもかかわらず、
細部にまで神経の行き届いた、
その建築技術の見事さ。
左右のステンド・グラスいっぱいに描かれた、
数々の宗教絵画。
その芸術性の高さ。
イタリア、おそるべし…。
……。
そんな大聖堂では、
彼女の言うとおり、
厳粛なミサの真っ最中でしたね。
で、お恥ずかしながら、私、
無宗教なものですから、
こうした「ミサ」というものは、
初めてなんですね。
でも、せっかくですから、
2、300人はいたであろう、
イタリアの人たちに混じって、
長椅子の一角に陣取りました。
一応、
厳粛な顔をして。
……。
ステージ(と言っていいのかな?)では、
1人の神父さんが、
イタリア語で、
(あたりまえですが)
聖書の朗読をやっている。
そして、そばには、
制服(聖服?)に身を包んだ、
若い男女の合唱団が控えていました。
さらには、
パイプ・オルガンの席にもひとり。
みんな、
真剣に、
そのお話に耳を傾けておりましたね。
ま、これも、
あたりまえの話ですが。
そして、
神父さんの朗読がひと区切りすると、
パイプ・オルガンの伴奏に合わせて、
いよいよ、
混声合唱団が歌い始めました。
♪♪♪
ところが…、
その演奏水準の高さに、
私は仰天しました!
ミラノという一都市の、
教会専属の人たちでしょうから、
ほとんど、ボランティアに近い形で、
参加しているはずです。
でも、
みんな、
上手い…。
オルガンがまた、
上手い…。
……。
本当に、ビックリしました!
これ、日本だったら、
トップ・クラスの、
プロの合唱団として、
立派に通用するはずです。
オルガン奏者も。
いや、もう、今度は、
イタリアの音楽水準の高さに、
圧倒されてしまいましたね。
ヴェニスの彼女が、
「幸い、きょうは日曜日だから、
ミサをやってるはずです。」
その“幸い”とは、
このことだったのかもしれません。
こんな美しい音楽が、
タダで聴けるなんて…。
またしても、
おそるべしイタリアですね。
♡♡♡
さて、
彼らが2、3曲歌うと、
また、神父さんの朗読が始まります。
と、そのとき、
みんなが一斉に立ち上がった!
(???)
だから、
なんだかわからないけど、
私も立ち上がった。
すると…、
なんと…、
私の右隣のおばさんが…、
ガバっと私に、
抱きついてきたではありませんか。
さらには、ハグハグ。
……?
「おい、おばさん、な、なにをする…。
血迷ったか!」
と、狼狽してしまった私でしたが、
そのおばさん、
しばらくハグしたあと、
私から離れると、
今度は向こう側の人と、
ハグを始めた。
(この人、気でも狂ったのか…?)
すると、今度は…、
私の左隣にいたご夫婦の、
ご主人らしき男性が抱きついてきた。
そして、ハグハグ。
(ん? あなたはもしかして…?)
でも、
ふと見ると、
どこでも同じ光景が、
繰り広げられていました。
私は、ようやく事の真相が、
わかるような気がしましたね。
「なるほど。
これは、
『汝の隣人を愛せよ』
という、くだりなんだな…。」
とまあ、かってに解釈。
いやあ、それにしても、
ビックリしましたね。
(ああ、おどろいた…。)
さて、朗読が終わると、
また美しいバロック宗教音楽の調べです。
「これはバッハかな。
いや、ヘンデルだったかな。
いや待てよ、
パレストリーナかもしれないぞ。
ここはイタリアだからな。
それにしても、上手いなあ…。」
と、うっとり聞き惚れる私。
と、そのとき…、
またしても、
みんなが一斉に立ち上がった!
「すわ、またしてもハグか…。」
と、私も立ち上がり、
今度は、自分から、
右隣のおばさんに抱きつこうとした私。
……。
ところが…、
そのおばさん、
今度はバッグから譜面か何かを取り出して、
合唱団と一緒に歌いだした。
他のみんなも、
一斉に歌いだした。
(なあんだ、
ここは歌を歌う場面だったんだ…。)
いやあ、よかったです。
うっかりハグなんかしたら、
こっちの身が破滅でした。
(あぶない、あぶない…。)
そして、また朗読。
そして、また音楽。
私は、時のたつのも忘れて、
この素晴らしいミサに、
うっとりと身をまかせていました。
……。
と、そのとき…、
今度は…、
私の左隣のご夫婦が…、
ガバっと立ち上がった!
だから、
また、なにかあるのかと思い、
私も立ち上がった!
ところが…、
それは…、
な〜んだ、
ただ、帰って行った、
ただ、それだけのことでした。
1人だけ立っている私が、
いかにも滑稽に映ったのでしょうか。
私が、恥ずかしそうに席に座ると、
右隣のおばさん、
赤い顔をして、
うつむきかげんに、
「くっ、くっ、くっ。」
と、笑っておりましたね。
あははは。
(ぽりぽり)
こうして、
あっというまに1時間が過ぎたわけですが、
退屈なんかこれっぽちもしませんでしたね。
できれば、
もっといたかった。
あの素晴らしいオルガンと合唱を、
もっと聴いていたかった。
でも、時間がもったいないですからね。
このあたりには、
まだまだ面白そうなところが、
いっぱいありそうですから。
♡♡♡
というわけで、
教会を出て、
イタリアの眩しい太陽がふり注ぐ、
石畳の広場に再び出た私は、
今度は、
大聖堂から見て右側にある、
立派なアーケードの商店街を、
プラプラ歩いてみました。
お洒落なレストランや、
コーヒー・ショップや、
ブティックや、
素敵な民芸品のお店などが立ち並ぶ、
なんかいい感じの通りでしたね。
(よし、あとでここもゆっくり見てやろう)
そうこうするうちに、
アーケードの商店街も通り過ぎ、
車が行き来する大通りに出た私。
と、そのとき、
通りの向こうに、
なにやら歴史のありそうな建物が、
目に入りました。
私は、通りを渡って、
その建物の前まで行ってみました。
すると、そこには、
こう書いてありましたか。
『La Scala』
(ミラノ・スカラ座だ…)
……。
(つづく)
ところで、
このブログの左の方に、
ジャミン・ゼブが発表した、
3枚のCDジャケットの写真が、
掲載されてますよね。
あれ、
プチッとクリックすると、
私の書いた、
解説文が出てくるのですが、
ご存知でした?
私の憎っくき相棒の、
20年間ののしりあってる、
あいつの、
あの男の仕業(しわざ)です。
(ショーちゃん、ありがとう)
もうすぐ、あそこに、
『Garden』が、
加わるんですよね。
イエ〜イ!
そんな、楽しい初夏まで、
もうすぐだ。
イエ〜イ!
それにしても、
いつまで寒いのだ今年は。
ブ〜〜!
今年は、
「十九寒二十温」
ですか?
SHUN MIYAZUMI
April 05, 2010
イタリア その6
いやあ、怒濤の一週間でした。
「STB 3Days」の余韻を味わう間もなく、
今度は「ファンミ」の準備と開催。
さらには次の大きなライブの案内や、
様々なイベントの企画ミーティング、
CDジャケットの校正、
プロモーション打ち合わせ、
etc.etc.
いやあ、今年は、
よく働きますねえ、
私たち。
私とY浅ショーちゃん。
おかげで、
ののしり合ってる時間など、
ありませんわ。
あははは。
……。
でも、
きょうは待望のお休み。
だから、あの、
眩(まぶ)しかったイタリアの太陽を、
久しぶりに、
思い出してみることにします。
デヤーノ。
……。
『イタリア その6』
何度も言うように、
「水の都」ヴェニス(ヴェネツィア)は、
本当に素敵なところでしたね。
美しい景色。
歴史の重みを感じる建造物。
温暖な気候。
そして、美味しい料理に、
陽気で楽しいイタリア人。
いやいや、
それはもう、最高でした。
「おい、お前は、
イタリア観光局の回し者か。」
と言われそうですが、
本当なんだから仕方ない。
♡♡♡
でもね、
イタリアのいいところは、
まだまだ、あるんですよ。
まず、イタリア女性ね。
(ウシシシ)
……。
私、それまで、
イタリアの女性というのは、
みな、太ってると思ってました。
なぜならば、その昔、
私が少年時代、
ソフィア・ローレンや、
クラウディア・カルディナーレが、
活躍していた頃、
映画に出てくるイタリア女性というのは、
みな、グラマーだったから。
(ムフフ)
少年の私には、
あまりに刺激的すぎる、
目も眩(くら)むような、
豊満な胸をあらわにした、
グラマーな女性ばかりだったから。
(くわ〜〜っ)
そして、
中年のオバサンたちは、
みな、太っていたから。
(ぶよ〜ん)
ま、そりゃ、そうですよ。
とにかく、
イタリア料理の、
量の多さったら、
半端じゃないんですから。
オリーブ油ギトギトのパスタ。
肉料理に魚料理。
甘い甘いケーキ。
あんなものを、
あんなにたくさん、
毎日食べてたら、
太らないほうがおかしい。
と、思ってました。
ところが…、
ヴェニスで…、
道行くイタリア女性たちを見て、
そんな偏見は、
吹っ飛んでしまいましたね。
イタリアの女性は、
みな、
きれい…。
(うお〜〜〜っ)
みな、
スタイル抜群…。
(うひょひょひょ)
みな、
歌手の、
「マドンナ」みたい。
(ぐわ〜〜ん)
で…、
じつは、この数年後、
ロス・アンジェルスに行ったとき、
そんな話を、
親友のロック・ミュージシャンの、
ジム・インガーにしたんですね。
(過去ログ「ジム・インガーと私」参照)
すると彼、
別に驚いたそぶりも見せず、
こう言いました。
「なーに、シュン。
俺は行ったことないけど、
イタリアの女性が綺麗で魅力的って話は、
アメリカのミュージシャンの間でも、
有名だよ。
俺の知り合いのミュージシャンでも、
イタリア・ツアーに同行して、
むこうの女性と恋に落ちて、
帰って来なかった奴が2人もいるからね。
綺麗かつ情熱的なんだろうな。
そうそう、先日も、
マドンナのツアーで、
イタリアに行った有名なベースの○○が、
イタリア人の女性とそのままできちゃって、
結局、帰って来なかったんだぜ。
アハハハ。」
でしょ〜。
よーく、わかりますよ〜。
だから…、
道行く、美しいイタリア女性たちを見ると、
隣を歩いているあの男に、
やっぱり、皮肉のひとつも言いたくなる訳です。
あの、Y浅ショージに。
……。
み「ねえ、なんで君はここにいるの?
あんなにきれいな女性が、
いっぱいいるのにさ。」
ゆ「それは、こっちのセリフです。」
み「あっ、あの子もかっこいいなあ。
ハーイ、チャオ!
あ〜あ、なんで俺は、こんなところで、
君と歩いてなきゃいけないんだろうなぁ、
ブツブツ…。」
ゆ「だからぁ、それも、
こっちのセリフですって。
ブツブツ…。」
み「ねえねえ、あの子も可愛いよねえ。
おっ、あの子も…。
まいったなあ。
ねえ、やっぱりここは、
君みたいな男と、
来るとこじゃないんデニャーノ?」
ゆ「そのお言葉は、そっくりそのまま、
お返しするデニャーノ。」
(……。)
そんな、女性にたいして、
男性はイマイチでしたかね。
ま、平均して、
イタリアの男性は、
首が短い。
背もそんなに高くなく、
ややマッチョ系が多い。
チョビひげ男も多い。
だから、
ひとことで言ってしまえば、
『スーパー・マリオ』
そう、あんな感じです。
さらに、
私の経験から言うと、
C調で無責任な奴が多い。
ね?
だから、
イタリアの男性はおススメしませんね。
「ヤマトナデシコ」のみなさん。
日本の男性のほうが、
ずっといいですよ。
絶対です。
はい。
♡♡♡
さて、イタリアの素晴らしいところは、
まだあります。
それは、
言葉ですね。
3日目の午後。
きょうもまた、
とびこみのレストランで、
美味しいパスタをいただいた私たちは、
ちょこっとだけ仕事をして、
(なんの仕事だったかは、
まったく覚えておりません。)
喉がかわいたので、
とあるカフェに入ってひと休み。
で、私はコーラを注文しました。
すると、
イタリア人の、
ウェイトレスの女の子が、
「Si(わかりました)」と言って、
大きな声で厨房にむかって、
こう叫んだのです。
「コカ・コーラ!」
(ん?)
さらに、誰かが、
レモン・ソーダを頼んだら、
その子、
またしても、
「レモン・ソーダ!」
(ん? これは…?)
じつは、
その「発音」も、
「イントネーション」も、
「アクセント」も、
まったく日本人と同じだったのです。
……。
で、このとき、
私は気づいたのです。
日本人が、
外来語を読み書きするために、
小さい頃から教わった
アルファベット表示。
あれは、
「ローマ字」
と言うではありませんか!
(だから「Coca-cola」はコカ・コーラで、
「Lemon Soda」はレモン・ソーダなんだ…。)
ツマーリ、
イタリア語は、
アルファベットを、そのまま、
「ローマ字」のように発音すれば、
いいのです。
たとえば、
「COME」
という単語がありますよね。
もちろん、
意味はまったく違いますが、
英語で「COME」は「カム」と発音します。
でも、イタリア語では、
「コメ」なのです。
「SUPERMAN」は、
「スーパーマン」ではなく、
「スーペルマン」なのです。
「NO」は、
「ノー」ではなく、
「ノ」
(オオ、こりゃ簡単デヤーノ)
さらに、イタリア語には、
英語における、
「r(あーる)」
「f(えふ)」
「th(す)」
といった、
とてもカナ表示できない、
難しい発音もありません。
日本語と同じです。
(ウレシイデヤーノ)
このように、
日本人にとって、
最も近い言語は、
最も習得しやすい言語は、
「イタリア語」であることが、
わかったのです。
このとき私は、
イタリアという国に、
さらに、
とてつもない親近感を覚えました。
「遠くて近い国」
それが、
イタリアだったんですね。
Bravo!(ブラーヴォ!)
♡♡♡
さて、
そんな楽しいヴェニス滞在も、
あっというまに3日が過ぎ、
私は、
彼らを残して、
一人日本に帰国することになりました。
最初にも申し上げましたが、
この後彼らは、
一ヶ月をかけて、
イタリア半島を一周する予定になっています。
しかし私は、
帰らなければならない。
一人寂しく…。
しかも、
帰りの行程を聞いて、
私は愕(がく)然としました。
まずミラノまで飛んで、
そこで、6時間も、
トランジットの時間があると、
言うではありませんか。
6時間…。
6時間も空港で、
ただボンヤリ過ごすなんて、
耐えられな〜い。
というわけで私は、
この6時間を利用して、
ひとりミラノの街を冒険してやろうと、
決意したのでした。
そう、ミラノ(MILANO)。
で、これがまた、
ケッサクだったんだなあ…。
(つづく)
そういえば私、
若い頃、
ニューヨークへ行くと、
よく「イタリア人」に間違えられました。
次がユダヤ人。
「日本人でしょ?」
というアメリカ人は、
3人に1人くらいでしたかね。
どこかに、
イタリア人の血が混じってるんでしょうかね。
そういえば、
基本的には、
ノー天気だし。
陽気だし。
C調だし。
無責任だし。
(そのうち、イタリア人に、
殴られそうだな…。)
SHUN MIYAUZMI