August 2010

August 28, 2010

乙子園 その2


黒鉄ヒロシさんの読み切り漫画、

『乙子園(おつしえん)』とは、

いったい、いかなるものだったのでしょうか…?


ちょっと思い出してみることにしましょう。


ただし、今は手許になく、記憶も曖昧なので、
高校の名前とかは、
適当につけさせてもらいました。

ま、だいたいこんな感じということで、
ご勘弁くださいませ。



さて、ここは、
「甲子園球場」(だと思われる)。

夏の全国高校野球選手権大会。
(だと思われる)

ギラギラとした真夏の太陽のもと、
きょうも全国から集まった球児たちが、
熱戦を繰り広げております。


両軍応援団や観客の声援、笛太鼓、歓声。

テレビのアナウンサーの熱のこもった中継ぶり。


と、ここまでは、

私たちが毎年楽しんでいる、

高校野球「夏の甲子園」と、

なんら変わりはありません。



ところが…、


何かがおかしい。

……。



まず、

その試合内容。


これが、

おそまつ極まりない。



凡プレーにつぐ凡プレー。

まあ、みんな、下手なのなんの。

これが、厳しい予選を勝ち抜き、
全国制覇をめざす地区代表同士の戦いか、
と思わせるような、

ひどい泥試合。


「あ〜あ、そんな球も打てないのかよー。」

「あ〜あ、またトンネルだ。
 おまえら、ちゃんと練習したのかよ、ええっ?」

「うそだろ〜、なんでそっちに投げるんだよ〜。」

「おい、ベンチであくびなんかしてんじゃねえよ、
 おまえらヤル気あんのかよ、やる気、ええっ?」


そんな凡プレーのたびに、

観客席や応援団席からは、
情け容赦ない罵声が、
ひっきりなしに浴びせられます。

(ん、これは…?)



一方、アナウンサーや解説者の中継といえば…、

ア「いやあ、○○さん、
  なんといっても全国大会ですからねえ、
  両軍選手には、
  もっともっと頑張ってもらいたいですねえ。」

解「そうですよ。
  なにしろ、ここで負けたら、
  全国に恥をさらすことになるんですからねえ。」

(ええっ? いくらなんでも大げさな…?)
  


そして試合終了のサイレン。

アナウンサーの高らかな声がブラウン管に響き渡る。

ア「試合終了です。
  大本命のLP学園、山松商を押さえて、
  2回戦に進出です!」


そして、

LP学園の選手と審判員たちが、
ホーム・ベース上に整列して、
同校の校歌が流れ、校旗が掲げられる。


と、ここまでは、

これまた「甲子園」と同じ。



ところが…、

勝ったはずのLP学園の選手は…、

みな、がっくりとうなだれ、
しょぼ〜んと、しょげかえり、
なかには、悔し涙でぐしょぐしょの選手もいる。

(???)


一方、ベンチ前に整列した、
敗者のはずの山松商の選手たちは、
みな一様に安堵の表情。

みなニコニコ顔。

なかには、
抱き合って喜びを爆発させてる選手たちもいる。

(な、なんなの、これは…?)



こんな光景が幾度となく続き、

私には、何が何だかわからないまま、

いよいよ決勝戦を迎えます。


LP学園と浜横高校の一騎打ちです。


中継のアナウンサーの声にも熱がこもる。

ア「いやあ、○○さん、
  いよいよ決勝戦の日を迎えました。
  泣いても笑っても、
  今日で日本一が決まるんですね。」

解「そうですよ。どっちも負けられない一戦ですよ。
  ここで負けるということは、
  この上も無い屈辱ですからね。」

(ん、屈辱? この人は相変わらず手厳しい…。
 たかが高校野球ではないか…。)



そして試合が始まる。


さすが決勝戦だけあって、

素晴らしいプレーの連続。


と思いきや…、


これが、

空前の、

おばかなプレーの連続。


両軍応援団のボルテージも最高潮。


「おい、どこ投げてんだよ、どこ〜。」

「バカ〜、なにやってんだよ〜。」

「うそだろ〜、なんでそっちに走るんだよ〜。」

「このヘタくそ、死んじまえ〜。」

「おまえのかあちゃん、でべそ。」

「彼女が見たら、泣くぞ〜、アハハハ。」

「おまえら、当分、メシ抜きだあ〜。」


とまあ、

罵声を通り越して、

怒号、嘲笑の嵐。

(ひどい、ひどすぎる…。)



そして凡プレーのたびに、

スタンドからは物が投げ込まれたりして、

もう球場は騒然とした空気に包まれる。


(いったい、黒鉄さん、なにが言いたいのよ〜?
 これはいったい、何なのよ〜?)


アナウンサーも解説者も、
呆(あき)れかえった口調の中継が続く。

ア「いやあ、○○さん、
  今の回のLP学園の攻撃をどうみますか。」

解「アハハハ、もうアホらしくて見てられませんね。
  さすがに本命のLP学園だけあって、
  期待を裏切らない、珍プレーの連続攻撃。
  いやあ、見事といえば見事ですか。」

ア「しかし、相手の浜横高校も、
  負けてはいませんね。」

解「そう、激戦区の神奈川代表だけあって、
  これも有力な優勝候補ですよ。
  いったい、どんな練習をしてきたのか、
  私には想像もできませんがねえ、アハハハ。
  あ、またエラーだ。ひどいなあ、こりゃ。」


(こ、これは、あきらかに甲子園大会ではない…。)



そして、試合終了。

「LP学園、日本一!!」


そして、同校の校歌が流れ、

校旗が掲揚される。



が…、


ホーム・ベース上に整列した選手たちは…、


がっくりと肩を落とし、

うなだれ、

泥まみれの腕で悔し涙を拭き、

なかには、膝から崩れ落ちる選手もいる。

……。


同校の応援団席からは、

「ばかやろ〜、もう帰ってくんな〜!」

「お前らの親は、みな泣いてるぞ〜!」

「恥を知れ、恥を!」


とまあ、ひどい罵声の嵐。


空飛ぶカラスも「カカカカ〜」

アホウドリも「アホウ、アホウ」

とあざ笑う。



一方、日本一を逃した浜横高校の選手たちは、

ベンチ前で整列し、

みな抱き合って、

喜びを爆発させているのです。



そこで物語は終わり。

……。



何なのでしょうね、これ?

……???




はい、もうおわかりですね。


でも、20代後半の青二才だった私には、

ここまで読んでも、

まだ、チンプンカンプンでした。


いったいこの漫画は何なのか?

なんのことやら?

黒鉄さんは、何を言おうとしているのか?


さっぱりわかりませんでした。


彼自身による最後の解説を読むまでは…。

……。



つまり、

こういうことなのです。


夏の「全国高校野球選手権大会」というのは、
まず都道府県別に予選が行われます。

その地区予選を勝ち抜いた49代表が、
「甲子園球場」に集(つど)い、
日本一をめざして、
トーナメントで勝ち抜き戦をやる。


その戦いの軌跡をグラフにすると、
ピラミッドの形になりますね。

4028校が1回戦をやると、
半分の2014校が消えて行く。

回を追うごとに、
ピラミッドの山が三角形に積み上がっていきます。


こうして、
予選までさかのぼると、
膨大な数のトーナメント戦を戦い、

そして最後まで勝ち抜いた、
ピラミッドの山の頂上の一校が、

栄えある優勝校というわけです。


これが『甲子園」。



ところが…、

この『乙子園』というのは、

回を追うごとに、下に積み下がっていく、


「逆ピラミッド」だったんですね。



つまり、こういうことです。


地区予選の1回戦で負けた同士で2回戦をやる。

また負けた方が次に進む。

つまり敗者のトーナメント。


で、地区予選の決勝、

(この場合は「決敗」と言ったほうが正しいか…)

まで行って負けた学校が、


栄えある、

ではなく、

“屈辱”の全国大会に出場。


そして、全国大会でも、
負けたチーム同士がトーナメントを戦い抜き、
そこでも負けた学校がどんどん進出し、
最後の決勝でも負けた1校が、

『乙子園』大会でのチャンピオンになる、

というわけなのです。

(この場合は、LP学園)



ということは…、


この「乙子園大会」のチャンピオンこそは…、


『日本で一番“野球”の弱い高校』


ということになるんですね。


……。




いやあ、すごい発想です。


まさに「逆転の発想」!!


日本で最も人気のある、
「国民的イベント」とも言っていい、
高校野球を見ながら、

こんなことを思いつく人は、

まず、いないんじゃないでしょうかね。


30年以上も前のことなのに、
はじめて読み終えたときの印象は、
私の中では、今だに、

強烈に残っております。


たかが「漫画」と侮(あなど)ることなかれ。



そして、

この「逆転の発想」こそ、

私のなかでは、
『バイブル』とも言える教訓として、
今でも、大切に崇(あが)めているのです。


何かを創造する人間にとって、

何よりも大切なのではないかと、

ね…。



というわけで、

次回は、


そんな「逆転の発想」をさらに掘り下げて、


私の独断と偏見による、
(また出たな)

『無責任流芸術論』を、

軽〜くかましてみたいと思います。


ええ、


あくまで、


“無責任流”ですがね。


……。



(乙子園 おわり)





いやあ、昨夜も楽しいライブでした。

月に一度のスポーツ・ピアノ。

学芸大「A'TRAIN」の狂乱ライブ。


私、絶好調で、

久しぶりに最後まで快調にスイングしましたよ。


お越しいただいたみなさん、

ありがとうございました。



そして今日は、

重大なお知らせがあります!


昨夜もご案内しましたが、

次回からこのライブ。


時間が変更になります!!


「2セット目も見たいのに、
 帰りが遅くなるので見れないわ〜。」

といった、
たくさんの方の声にお答えして、

30分ほど繰り上げることにしました。

(パチパチパチ)


つまり、

7:30(p.m.)開店

8:30〜9:30 1回目
10:00〜11:00 2回目
0:00〜1:00 3回目

その後は、
ジモッティー、深夜族の方たちと、
フリー・セッションでワイワイ。

そして2:00(a.m.)にはおひらき〜。

♪♪♪


これならば、

2セットを見ても、
みなさん楽に帰宅することができますね。


寄る年並で、
しだいに体力がきつくなっている、
私やマスターにとっても、

ありがたい時間変更というわけです。


どうぞご理解の上、

お間違いのないように、

お出かけください。


次回は、9月24日(金)です。



さ、

明日からは再びジャミン・ゼブだ。

「ジャミン・ゼブ 秋の陣」だ!


9/2、4、5の「STB 139」もほぼ完売だそうです。


燃えてきましたよ。


久しぶりにやりますかね。



ガオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!


……。



SHUN MIYAZUMI

woodymiyazumi at 19:36コメント(28)トラックバック(0) 
2010 エッセイ 

August 22, 2010

乙子園


あ〜あ、終わっちゃった。

夏の甲子園…。

高校野球…。


でも、素晴らしい大会でした。


今年も、球児たちの熱い戦いを、

存分に楽しませてもらいました。


「伊勢志摩ロイヤル・ホテル」の部屋で。
山形は余目の旅館の食堂で。
庄内町「響ホール」で。
甲府の実家で。
エコ協力、冷房なしの暑い暑い我が家で。

そして、きのうの決勝戦は、
「丸の内オアゾ」にて、
自分のワンセグで見ておりました。


えっ?

その時間はジャミンのライブじゃないか、

ですって?


おっと、そうか…。

……。



興南高校(沖縄)春夏連覇!

いやあ、強かったですねえ。


春も圧倒的でしたが、
この夏はさらにパワー・アップ。

「絶対本命」の重圧を、
むしろ楽しんでたような余裕すら感じました。


圧巻は、準決勝の「報徳学園」戦ですかね。

序盤にあっと言う間に5点を取られたときは、
正直「興南もここまでか…。やはり人の子だな…。」
と、思いました。


しかし、終わってみれば、

6−5でキッチリ逆転勝ち。


あんな「負け試合」を勝ちにもっていけるなんて、
並のチームに出来ることではありません。

驚きました。

歴代の優勝校のなかでも、
間違いなくトップ・クラスのチームだと思います。


東海大相模もよくやりましたが、
一二三(ひふみ)投手は連投の疲れが見えましたね。

万全の状態でやらせてあげたかったが、
これもまたトーナメント、一発勝負の、
「甲子園」ですから…。

仕方ありません。


ここは素直に、

興南の素晴らしさを讃えることにしましょう。


沖縄のみなさん、おめでとうございます。


♡♡♡



というわけで、

毎年「甲子園」が終わると、
一気に秋のムードになって、
なんともいえない寂寥感におそわれるのですが、

今年は別です。


歴史的な猛暑、炎暑ですからね。

早く涼しくなってください。

もう体が持ちませんよー。

……。



と、そんな中、

こんなものを思い出してしまいました。



『乙子園』(おつしえん)


ん?


なんですかね、これ?


……???



これ、

かつて黒鉄ヒロシさんが発表した、

「書き下ろし短編漫画」のタイトルなんです。



ずいぶん昔の話。

私がまだ20代の若僧で、
アルファ・レコードのディレクター、
をやってた頃の話。


私は、この、黒鉄(くろがね)先生と、
一度だけ、
仕事をご一緒させてもらったことがあります。



打ち合わせのため、
渋谷のご自宅を訪ねてみると、

いましたよ、いましたよ、

黒鉄ヒロシさん。


和室の仕事部屋で、
大きなテレビをつけっぱなしにしながら、
せっせと、お馴染みの漫画を書いておりました。

(おお、こうやって書いてるのか…)


なにせ、私、
この先生の大ファンでしたからね。

「よのすけ」「赤兵衛」「結作物語」etc.


その新作を、
今、目の前でご本人が書いている。

いやあ、興奮しましたねえ。



ちょっぴりエッチでお下品だけど、
なんともいえない可愛い画で、
大笑いさせてくれる軽妙なタッチが最高でした。


とくに、

「困ったとき」
「邪(よこしま)なことを考えてるとき」
の、主人公のとろ〜んとした目つきが、

なんともユーモラスでケッサク。


だから、当時は大変な売れっ子で、
なんでも、週に13〜4本の連載を抱えていると、
おっしゃってましたね。

超人的な活躍です。



ちょうど私が訪れた時は、
「大相撲」が中継されていました。

と、突然、なにか閃(ひらめ)いたらしく、
いきなりこんな話を、
初対面の私にしてくるのです。


「そうだ、宮住くん。
 こんな話はどう?

 この相撲取りはね、
 初日に勝って、あと全部負けてるのね。
 つまり初日だけ白丸で、あと13個黒丸なのよ。

 で、ついに千秋楽まで来てしまった。

 親方はカンカンでね。
 “おまえ、やる気あんのか”って叱るのね。

 そしたら、その力士、
 笑いながら平然とこう言うのよ。
 “なあに親方、千秋楽に勝って白丸がついたら、
 真ん中の黒丸は、
 全部白に変わるんですよー”。

 親方 “バカ! そりゃオセロだろ”。

 どう、面白い?

 ねえ、どう思う、宮住くん?」



もちろん私は、

「最高じゃないですか。
 よくそんなバカなこと思いつきますねえ。」

と、ほめ讃える。


すると先生、ニコっと笑い、
「よし!」とばかりに、
テーブルの上にあるメモ帳に、
そのアイディアを書き付けると、

また、連載漫画の執筆に戻る。


その間に、併行して、
私との打ち合わせを進める。

ずっとうつむいて漫画を書きながら、
口では私との打ち合わせ。


で、何か面白いアイディアが浮かぶと、
メモ帳に書き付けて、
また執筆、
併行して打ち合わせ。


なんとも気さくな方で、

私のような初対面の若僧にも、
どんどんアイディアを披露し、
意見を求める。


その傍(かたわ)ら、
おそろしいスピードで、
せっせと連載漫画を片付けていく。

それも楽しそうに。


すごいでしょ。

いっぺんに3つくらいのことを、

平気で進めていくんです。



さあ、また、

なにか閃いたようです。


「ねえ、こんなアイディアがあるんだけどさあ。

 ○○の△△△ってどう思う?

 ○○△△△ってつなげると、
 別の意味になって最高だろ。

 アハハハ。」



ところがそれは、
別の歌手が、すでにやっていて、
レコードにもなっていて、
大いに話題をよんだのですが、

あまりにも過激なので、
発売禁止、放送禁止になってしまった代物でした。

(ここで、○や△でごまかしているのは、
 そのためです。
 ええ、書けませんとも、そんなこと。だめです。
 だめよ、ムフフ、ニヤニヤ、ククク…。)



どうやら黒鉄先生、

ご存知なかったようですねえ。


で、私がそのことを告げると、


「ええっ?

 もうあんの?

 くそ〜、一生懸命考えたのになあ。

 残念、無念…。」


と、本当に悔しそうでした。



ところが、

その数週間後。


「ビッグ・コミック」だか、
「漫画アクション」だかを手に取ってみると、

まったく同じアイディアで、
もっとナンセンスで可笑しいものが、
掲載されておりました。


私は、思わずほくそ笑みましたね。

「さすがだ。あきらめなかったんだな。

 しかも、これがまた、ケッサクだなあ。

 アハハハ。」



いずれにしても、


とてつもないアイディアを生み出す力。

あくなき創造への執念。


やはり並の人ではありませんね。

天才だと思いました。



こうして私は、

ますます黒鉄ヒロシさんの、

大ファンになったのでした。



それから数年後のこと。


「漫画アクション」だか「ビッグ・コミック」

だかの宣伝文句に、

私は、こんな一文を発見したのです。

 
「黒鉄ヒロシ・書き下ろし新作!

 超ナンセンス・ギャグ漫画 『乙子園』

 一挙公開!!」


 
『乙子園』


なんじゃそれ?


……?



また黒鉄先生が、

おかしなものを書いたようですね。


さっそく本屋で手に入れた私は、

その『乙子園』なるものを、

一気に読んでみました。



と…、


これは…、



す…、


すごい…、


……。



(つづく)




はい、ご存知のかたは、

黙っててくださいね。(笑)



さあ、甲子園も終わり、

「ジャミン・ゼブ秋の陣」にむけて、

本格始動です。


まずは、

9/2(木)、4(土)、5(日)の、

「STB 139」3 Days!!


これ、すごいですよ。

何度もジャミン・ライブを見ている方なら、

度胆をぬかれるであろう構成になっております。


こちらも、大変なプレッシャーですが、

進化するためには、

つねにチャレンジしないとね。


9/2と9/5は、

まだ若干お席があるようです。


どうぞお早めに。



これは見ないと損です。


ホントに…。



と言って、


ますます自分にプレッシャーをかける私…、


ううむ…。


……。



SHUN MIYAZUMI

woodymiyazumi at 19:37コメント(17)トラックバック(0) 
2010 エッセイ 

August 16, 2010

狂言


早いもので、

船(飛鳥II)を降りて、
もう一ヶ月が経つんですねえ。


その後も、なんだか旅ばかりしていたような…。



でも、行く先々で、
ジャミンは、しっかり足跡を残せたような気がします。

私も、行く先々で、
しっかり美味しいお酒を頂いたような気がします。

(ん?)



さて、ZEBLOGでも紹介されておりましたが、

先月私たちは、その「飛鳥II」のクルーズで、

大蔵流若手狂言「SHIN」のみなさんと、
ご一緒させていただきました。


そして私は、お恥ずかしながら、

この『狂言』というものを、
初めて、じっくり見させていただきました。

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P1060451

(写真はクリックで拡大)


いやあ、こう言ってはなんですが、

とても感動しました。

新鮮な体験でした。



時代が700年前にタイム・スリップしたかのような、
なんとも不思議な空間。


客席の中に、
豊臣秀吉や足利義満がいて、
大笑いしているのではないかと、

そんな錯覚を覚えてしまうかのような、
なんとも不思議な感覚。

……。



最初に、長男の大蔵千太郎さんが出て来て、
「狂言とはなにか」の前口上。

(上の写真:向かって右から二人目)


千「狂言とは、ひと言で言うとショート・コントです。」

  (なるほど)

千「我々の主な舞台は『能楽堂』でして、
  ここでは、能と狂言が交互に演じられます。
  従って、私たちの正式名称は、
  『能楽師 狂言方』と言うんですね。」

  (へぇ〜)

千「そして、能のテーマが、
  『平家物語』などの史実であるのに対し、
  狂言は、その辺にころがっている、
  庶民の暮らしがテーマなんです。」

  (ふむふむ)

千「さらに、言葉は昔の語り口調です。
  ですから、なんのことやらわからない言葉も、
  ふんだんに出てきますが、
  深追いしないで下さい。
  深追いすると、もっと筋がわからなくなります。」

  (おいおい)

千「そして、面白かったら、
  腹の底からワーッハッハッハと笑いましょう。
  では、今から笑いの練習をします。
  私がワーッハッハと笑ったら、
  みなさんもワーッハッハと笑ってください。」

  (よーし、来い)


千「ワーッハッハッハッハッハッハッハッハッハハハハ」

私「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

 (ん?)



そして、舞台が始まりました。

いやあ、見事に、
700年前(室町時代)にタイム・スリップです。


で、私は、

「へぇ〜、昔の人はノンビリしゃべるんだなあ…。」

「「こはなそ」か。
 「これはなんだ」だな。たしか古文で習ったぞ…。」

「なんか、のどかでいいなあ…。」

「おそらく、ここは、笑うところなんだろうなぁ…。」

「おや、もう終わりなの?
 どこでワーッハッハッハをやればよかったんだろ…?」


と、変なところで感心したり、

チンプンカンプンになったりしてる間に、

そのお話は、

いつしか終わってしまう。


(……???)



しかし、これでいいんですね。

現代人が、逆についていけない、
ゆるやかすぎるテンポの寸劇が、
なんとも平和な気分にさせてくれるのです。


どこで「ワーッハッハッハ」ではなく、

この“平和な気分”そのものが、

「ワーッハッハッハッハッハッハッハッハッハハハハ」

なんですね。



さらに、その数日後、
彼らによって行われた「狂言ワークショップ」なる講座は、

この「狂言」を、
もっと身近に感じることができました。


「芝居」という言葉の由来。

「紋付羽織はかま」の由来。

などの説明にも、
「目から鱗(うろこ)」状態だったのですが、


なによりビックリしたのが、

彼らが伝統を守るために、
日々、とんでもない訓練をしているということ。

これがまさに「目から鱗」だったのです。


「コント55号」も顔負けの、
全身パフォーマンス。

扇を膝のところにおいて、
その扇を前後にまたぐ屈伸跳び。

自分の体重より重い人をかつぎ、
「すり足」で歩いたり跳んだり。


これ、みんな平然とやってのけるんですねえ。

まさに、スポーツの世界です。


そしてもちろん、

「謡(うた)い」

「舞(ま)い」

「演じる」

これらも、一級品でなければなりません。



まさに総合芸術。

総合エンターテインメント。


毎日のように、彼らと接していたジャミン君たちにも、

大いに刺激になったのではないでしょうか。



その「SHIN」のメンバーの中でも、

とくに基誠(もとなり)さんことナリちゃんとは、
何度も一緒に飲みながら、
いろんな話をしました。

(上の写真:向かって左から二人目)



とにかく感心したのが、

700年の伝統を受け継ぐことを、
誇りに思っているということですね。


ロックやラップが大好きな現代っ子でありながら、
日本古来の古典芸能の素晴らしさに心酔している。

これを命がけで演じ、
後世に伝えようとしている。


というよりも、
一人でも多くの人に、
この「狂言」の素晴らしさを知ってもらいたいと、

何度も熱く語ってくれました。


そして嬉しかったのは、

「自分たちは、とにかく本物をめざしている。
 でも、ジャミンの4人にも同じようなものを感じる。
 素晴らしいグループだと思います。
 本物をめざす同士で、
 いずれなにかコラボをやりたいですねえ。」

と言ってくれたことです。



ええ、やりましょうとも。


ええ、私の中には、

今とてつもないアイディアが浮かんでおりますぞよ。



その「大蔵流」には、
豊臣秀吉公から直々に贈られた衣装があって、
(写真で見せてもらいましたが)

毎年、正月には、
奈良の春日大社にて、
その衣装で舞うんだそうです。


「衣装は眺めて楽しむのではなく、
 着て楽しんでもらうものだ。」

これが、「大蔵流」の伝統だとか。


この発想も素晴らしいですね。



そんな太閤秀吉は、

自身が熱心な「狂言」の支援者のみならず、
こんなことを言ったと、
司馬遼太郎さんの本で読んだことがあります。

「いやさ、この世は、
 いわば長い狂言の場ではありますまいか。」


いやあ、ここまで開き直られると、
どんなに騙(だま)されても、
腹も立たないというものです。

生きる名人というやつですかね。


見習おう〜っと。

(おい)



いずれにしても、

いい出会いでした。


なによりの収穫は、

彼らが「芸」のために、
日々体を鍛えているのを見たジャミンが、

負けじと、
トレーニングに励んだことでしょうか。


おかげで、

我々の心配をよそに、
スリムな体型で「DVD Shooting Live」
に臨めたことでしょう。


いやあ、よかった、よかった。


私は心の底から大声で、

こう叫ばずにはいられません。


では、みなさんもご一緒に。



「ワーッハッハッハッハッハッハッハッハッハハハハ」


……。



(おわり)





いやあ、それにしても暑いですねえ。

きょうの東京は38°とか。


まるでサウナか蒸し風呂のようでした。

ふう〜〜。


こんな中で、

毎日熱い戦いを見せてくれている高校球児諸君には、

毎年のことですが、

「ごくろうさん」と言いたいですねえ。


彼らには、熱中症なんてないんでしょうか。


おじさんは、もうフラフラだというのに…。



そういえば、


ジャミンも元気だなあ…。



♪若い〜ってすばらしい〜♪


か…。


ヵ……。



SHUN MIYAZUMI

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2010 エッセイ 

August 09, 2010

旅週間


暑中お見舞い申し上げます。


7(土)、8(日)と、
伊勢志摩に行って来ました。

ええ、もちろんジャミン・ゼブの仕事です。


私は元来出不精なので、
休暇を利用して旅行などという経験は、
まずありません。

家でごろごろしているのが1番好き。

家に飽きたら、学芸大をプラプラ。
「A'TRAIN」や「Kacky's」で、
気の合う仲間たちとワイワイ飲むのが好き。


でも、この夏は、
どうやらそうもいかないようです。

『飛鳥II』の船旅気分がぬけないうちに、
今週は旅ざんまい。


「伊勢志摩」から帰ってきたと思えば、
明日から3日間(10〜12)は山形遠征。

そして、
13〜15は甲府に行かなければなりません。

ま、これは父の墓参りと、
老母のご機嫌伺いといったところですが。

(私の家は甲府とは縁もゆかりもありませんが、
 わけあって、そういうことになっております。)


日頃、仕事にかまけて、
母など放ったらかしの親不孝ものですが、
この季節くらいは行ってあげないとね。


というわけで、
今週珍しく東京にいる今日も、
打ち合わせなどで忙しく、
きちんとした更新ができません。

飛鳥の話でも書こうかと思ったのですが、
あちら(Zeblog)で、
マルコメXさんに派手にやられましたからねえ。

アハハハ。


また、新たなネタで、
しっかり書こうと思ってはいますが、
ちょっと時間が足りませんね。


はい、というわけで、
今日は、近況報告程度のことしかできません。

あいすみませぬ。


でも、みなさんも今週は夏休みなんでしょうね。

思い思いの休暇を、
存分に楽しんでらっしゃることでしょうね。

なにか素敵な思い出話ができましたら、
ぜひ、コメントお待ちしております。


でも、「伊勢志摩」はよかったです。

久しぶりに近鉄特急に乗って、
懐かしい四日市の街も見る事ができました。

(私、小学校の4年生から中学校の2年生まで、
 四日市に住んでいました。)


そして、明日からは山形。

(その後、中学校の3年生から高校1年生までは、
 山形に住んでいたのです。山形市内ですが…。)


そして、わけあって父の眠る、
母が一人で暮らしている甲府に行く…。


おやまあ、なにか因縁めいた場所ばかりですねえ。

……。


期せずして、こうなってしまったのですが、

そんな縁も、
シマウマ君たちが作ってくれたのでしょうか。

ありがとう、ワンワン。


そう思うと、
なんだか楽しくなってきましたね。

ワンワン。

(シマウマは、こう鳴くんだそうですよ)


そして、山形でお会い出来るゼブ・ファンも、
たくさんいらっしゃるのでしょうね。

楽しい時間が過ごせるよう、
がんばりたいと思います。


では、みなさんも、

素敵な夏休みをお過ごし下さい。


今日は臨時便でした。



それにしても、


仕事と遊びの区別が全くついてないなあ…、



今に始まったことではありませんが…、


……。



SHUN MIYAZUMI

woodymiyazumi at 12:46コメント(11)トラックバック(0) 
2010 エッセイ