October 2010
October 23, 2010
SWEET SWEET LIVE
いよいよですね。
ジャミン・ゼブ初の「ライヴDVD」が発売になります。
その名も『SWEET SWEET LIVE』!!
「どこが “スウィート・スウィート” じゃい。
看板に偽りあるんじゃないの〜?」
と言われても仕方のないくらい、
熱気溢れる、ほとばしる若さが眩(まぶ)しい、
ジャミンのライブの素晴らしさを、
あますところなく収録したDVD。
2010年10月27日。
いよいよベールを脱ぐ日が近づいて来ましたよ。
ガオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!

はい、というわけで今日は、
Zeblogに先駆けまして、
いつものようにプロデューサー的見地から、
このDVDについて、
面白可笑しく解説しちゃおうと思います。
(待ってましたー!)
(パチパチパチ)
さて、このDVDは、
全11曲からなる本編(61分)と、
楽しい楽しいボーナス映像(17分)の、
二部構成になっております。
まずは本編。
その曲目リストを見て下さい。
ジャミンのファンの方なら、
すぐにお気づきになるであろう、
ある特徴がありますね。
……。
そうなんです。
デビュー・アルバム『Smile』からの曲と、
オリジナル楽曲がやけに多いんですね。
実は、ここが今回、
私が一番こだわったところでした。
ジャミン・ゼブは、
2006年8月25日に結成され、
2007年の10月17日にメジャー・デビューをしました。
その記念すべきファースト・アルバム『Smile』には、
今なおライブでガンガン演奏し続けている、
4曲の人気曲があります。
「Take The "A" Train」
「Smile」
「You Raise Me Up」
「When I Fall In Love」
の4曲です。
この3年半で、
おそらく300回を超えるであろう様々なライブで、
彼らはこれらの曲を、
何度も何度も歌い、
今では、
レコーディング時よりも、
はるかに進化、レベル・アップした歌唱を、
聞かせてくれています。
だから、これだけは、
どうしてもやっておきたかった。
デビュー時より、
はるかに高いクオリティーのこれらを、
どうしても収録しておきたかったのです。
あとは…、
セカンド・アルバム『Dream』から
「So In love」「New York Life」
クリスマス・アルバム『GIFT』から、
「Peace On Earth」
最新アルバム『Garden』から、
「Route 66」「さくら」「Sweet Sweet Love」
と、まんべんなく散りばめた上に、
アルバム未収録の「I Do」を加えた、
そんな11曲です。
オリジナルが4曲というのも光りますよね。
(と自画自賛)
贅沢な選曲ではないかと思います。
何度もライブに足を運んで下さったみなさんには、
いろんな思い出がいっぱい詰まった、
人気のある曲ばかりです。
そして、
これからジャミンを聞いてみよう、
ライブに足を運んでみよう、
という方には、
「これが噂のジャミン・ゼブだ!」
そんな、
入門編としても最適な選曲になっております。
♪♪♪
さあ、前置きはこのくらいにして、
さっそく楽曲解説といきますか。
とはいえ、
ここは「ユニーク」を売りにする、
私のブログです。
いずれ本家「Zeblog」でも、
中身に関しては、
詳しい説明がなされるでしょうから、
ここは、
私ならではの特別企画でいきたいと思います。
題して、
「この曲の初演はいつ?どこで?」
……。
ね、面白そうでしょ。
今日の午後は、
「Zeblog」の記事やHistoryをほじくり返して、
記憶に間違いがないか資料を集めたので、
まず正解ではないかと思うのですが、
万が一、
「そりゃ違うよー」
を発見した方は、
どうぞ積極的に投稿して下さいね。
それはそれで、
楽しそうだから。
……。
では、いってみましょう。
1. Sweet Sweet Love
最近のライブでは、
オープニングを飾るのがすっかり定番になりましたね。
そんな、この曲が初演されたのは、
昨年(2009年)4月7、8日の「STB 139」2daysでした。
初演では、2セット目のオープニング。
作曲者レンセイが、
自らピアノを弾きながらの熱唱でしたね。
今回のライブでは、
ステージ狭しと派手なパフォーマンスで、
場内のボルテージを一気に上げてくれました。
2. Take The "A" Train
2007年2月28日。
初めてジャミンが人前で演奏した記念すべき初ライブは、
六本木「All Of Me Club」という、
小さなジャズ・クラブでした。
まだレコード会社も決まっていませんでしたが、
そのライブのセット・リストには、
この曲がしっかり入っておりました。
この時のピアノは不肖私。
「いいグループが出来たなあ…。」
と、感慨無量で演奏していたのを記憶しております。
3. Smile
これまたデビュー前の2007年5月22日。
「代々木ナル」という、
これまた小さなジャズ・クラブが最初のお目見えでした。
この時もピアノは私で、ベースは佐藤有介。
この頃には、ビクターからデビューというのが、
決まっておりましたね。
だから、デビュー・アルバムのタイトルは、
絶対「Smile」でいってやろうと、
心に決めておりました。
横浜大桟橋でのPV撮影も、楽しい思い出です。
「韓流ドラマの撮影ですか?」て聞かれたし…。
ね、スティーブ。
4. New York Life
これは確かな記憶がありません。
でも、おそらく、2008年8月21日の、
「帰ってきた!丸の内マルキューブ・フリーライブ」
が、最初ではないかと思います。
前日に発売された、
セカンド・アルバム『Dream』の記念ライブでしたね。
楽しい曲ではありますが、
演奏するのは至難の業という難曲で、
なかなかアルバムのクオリティーに到達せず、
メンバーも四苦八苦しておりました。
もちろん2年を経た今回の出来は最高です。
5. I Do
せっかくのリリースなので1曲くらいは新曲を。
と思い、たくさんあるCD未発売の曲のなかから、
こんなア・カペラを選んでみました。
この曲の初演は今年(2010年)の6月16、17日。
青山「草月ホール」での、
「Garden/Release・Live」でした。
作曲に編曲に、
著しい成長を見せるレンセイの書き下ろしナンバーで、
適材適所に各自のソロを散りばめたりしながらの、
密度の濃い、美しい小品です
レンセイくんは、ちゃんと、日本人特有の、
きめ細やかさも併(あわ)せ持ってるのです。
ま、当然といえば当然か…。
6. さくら
これは、昨年(2009年)の3月8日。
渋谷にある「東京メイン・ダイニング」での、
初めてのファン・ミーティングでお披露目しました。
続く「日本橋三越」でのフリー・ライブ(4/1)では、
拍手が鳴りやみませんでした。
だから、当初は春限定の予定だったのに、
1年中歌うことになりました。
だから、当然これをはずすわけにはいきませんでした。
「あっと驚くタメゴロ〜」な映像も登場しますよ。
むふふ…。
7. So In Love
これって、いつの初演だかわかりますか?
なんと、群馬県は伊香保にある、
「松本楼」という温泉旅館が最初なんです。
2007年12月24日のこと。
バックは私のピアノ、有介のベース、
そして、はたけやま裕ねえさんのパーカッションでした。
リハと本番の間が随分空いたので、
当然大浴場にドボーン、うい〜〜〜〜っ。
だからその後、当然ビールをグイ〜〜〜ッ。
そして、おいしい懐石料理をパクパク〜〜。
だから、当然、ピアノはメロメロでした。
この頃から、ジャミンのライブで弾くのはやめようと、
真剣に考え始めた私でした。
8. Route 66
この曲の初演も、昨年(2009年)の4月7、8日。
六本木の「STB 139」2daysでした。
このときはとにかく初演ラッシュ。
「Route 66」に「Lady Madonna」
コージローの美しいリードにため息がこぼれた「Alfie」
そして前述した「Sweet Sweet Love」
「さくら」もライブ・ハウスではこれが初演でしたね。
「何かが変わった!?」
そんなジャミンのエポック・メイキングなライブでした。
さて、今回のテイク。
シモンくん、カッコいいですよ〜。
今のジャミンを代表する曲の、
圧倒的な出来栄えかも…。
9. You Raise Me Up
これも初演は2007年2月28日の「All Of Me Club」
つまり、ジャミンの初ライブの時でした。
そのときから、ジャミンのライブには欠かせない、
超人気曲になってしまいました。
丸の内でのフリー・ライブでは、
いったいどれほどの人が、
この曲に足をとめ、聴き入ってくれたかわかりません。
だから、これも今回、はずすわけにはいきませんね。
功労賞をあげたいくらいの曲ですから。
10. Peace On Earth
さあ、これだ。
これが一番わからなかった。
いったい、いつ、どこで初演したんでしょうね…?
で、いろんな資料を集めて検証した結果、
私はひとつの結論に達しました。
これは、2008年11月22日。
「秩父宮ラグビー場」における、
「日本-アメリカ」戦での、
ハーフ・タイムではなかったでしょうか。
大型スクリーンに彼らの写真と紹介が映し出され、
ラグビーのユニフォームに身を包んだジャミンが、
高らかにこの歌を鳴り響かせ、
観客席のあちこちに陣取ったファンのみなさんが、
手を振り、目一杯声援を送ってくれたのが、
嬉しかったですねえ。
作曲者冥利に尽きるというものです…。
はい。
11. When I Fall In Love
もう最後はこれしかありませんね。
これもジャミン初ライブの2007年2月28日が初演です。
さらに付け加えるならば、
2008年の6月16、17日の「代々木ナル」
これが、私がジャミンと一緒に演奏した、
最後のライブになりました。
なぜならば、体力的に無理だとわかったからです。
もう二日目は、
途中で呼吸が荒くなり、目の前が黄色くなり、
生命の危機を感じながら、
最後にこの曲を演奏したのでした。
だから、こいつは、
私に引導を渡したにっくき曲なのです。
あははは。
でも、このテイクは素晴らしいですよ〜。
若いって素晴らしい〜♪
〜んだから〜…。
(やや自虐的…)
はい、そんな11曲でございます。
どうぞお楽しみに。
さらに!
このDVDには、
楽しい楽しいボーナス映像(17分)が収録されております。
1年をかけて、
いろんな映像を撮りまくり、
素晴らしい編集で、この上もなく楽しいものを作り上げた、
映像スタッフのみなさんに、
改めてお礼を申し上げたいと思います。
さあ、もうこれ以上書くのは野暮というもの。
あとは、みなさんで、
存分に楽しんでいただけたらと思います。
最後に、
このDVDには、
ファンのみなさんの表情もたくさん入っております。
「不本意にも映ってしまった方」
「不本意にも映らなかった方」
どうぞ、大目に見て下さい。
1年がかりで撮影した、
膨大な映像のなかから、
綿密に構成した結果、
こういう仕上がりになっただけのことですから。
「ジャミンの記念すべき初DVD」
ということで、お許しいただければ幸いです。
そして…、
このDVDを見て、
また新たなファンの人が増えてくれればいいなあ…。
……。
そんな切実な思いも抱きながら、
さ、カウント・ダウンといきますか。
5、4、3……。
……。
(おわり)
あ、そうだ!
ここだけの耳よりな情報を、
ちょっとお教えしますね。
間もなく「Zeblog」は、大変身をします。
大変立派でゴージャスなホーム・ページに、
華麗な変身を遂げます。
現在、最後の仕上げに、
突貫工事の真っ最中と思われます。
そのため、
時おり、画面に不具合を起こしますが、
どうぞご了承ください。
そして、この秋から来年にかけて、
素敵なライブ情報、イベント情報、○○情報が、
続々とアップされていくものと思われます。
どうぞ、今まで以上に、
ひんぱんに訪問していただきますよう、
お願い申し上げます。
えっ?
こっちはどうなんだ、
ですって?
こっちは、なにも変わりません。
あいかわらずのマイ・ペースで、
のんびりやっていきますわ。
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
(笑うところか…)
SHUN MIYAZUMI
October 16, 2010
ばらの騎士
「芸術の秋」ですねえ。
そしてこの秋、
私は、とてつもないものに、
ブチ当たってしまいました。
まさに衝撃の出会いです。
それは…、
『ばらの騎士』というオペラ。
リヒャルト・シュトラウスというドイツの作曲家が、
1911年に発表した大傑作です。
私が、
デアゴスティーニ社から発売されている、
「DVDオペラ・コレクション」シリーズに、
ハマってしまったことは、
年明け早々からこのブログでも、
5回にわたって熱く紹介させていただいたので、
覚えてらっしゃる方も多いと思います。
じつは、その後も、
続いていたのですよ、
定期購読。
飽きっぽい私にしては、
珍しいことです。
今現在、30作目。
でもね…、
有名な、馴染みやすい、
“傑作”と言われている作品から、
順次発売してきたようで、
そろそろ、
玉石混淆の感も否めなくはなってきました。
なかには、
「筋がつまらない」
「曲がつまらない」
「歌手のキャスティングが悪い」
「演出がダサい」
「演奏が二流」
なんて作品も、
稀(まれ)に出てくるようになってきたことは事実。
ところが…、
22番目に登場した、
これはどうでしょう、
『ばらの騎士』
……。

いやあ、驚きました!
もうもう素晴らしいのひと言です!!
なんと上品でカッコいい音楽なのでしょう。
時折、ヨハン・シュトラウスばりの、
優雅なウインナ・ワルツも混ぜながら、
息もつかせぬ見事な作曲テクニックで、
これでもか、これでもかと、
舞台はスピーディーに進行していきます。
さらに、それを支える、
ロココ調の18世紀ウィーンを見事に再現した演出。
キャスティングがまたすごい。
宝塚歌劇団のお手本ともいうべき、
男装、女装を繰り返しながら、
見事な歌唱と演技で魅せてくれる、
美しいことこの上ない、
アンネ・ゾフィー・オッターという名ソプラノ。
もう大ファンになってしまいました。
あなた女優でも立派に主役やってけますね。
そのオッター扮するオクタヴィアンと不倫の関係ながら、
最後は、彼(男役)とその若き恋人の幸せのために、
事態を見事に収拾してさっと身を引く、
フェリシティ・ロット扮する元帥夫人。
ああ、この人も、なんて素敵なんだろう…。
今度一緒にお酒でも飲みたいなあ。
だめですか…?
そして、騒動の発端となる、
女好きで下品なオックス男爵を演じる、
クルト・モルという素晴らしいバス。
この人も適役中の適役で抜群の歌唱力。
おっさん、歌も演技も上手(うま)すぎるよー。
そして…、
名指揮者カルロス・クライバーが指揮する、
ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団の、
一糸乱れぬ、
美しくもダイナミックな演奏。
いやあ、こんな贅沢があっていいものでしょうか。
もう完璧な作品です。
まいりました。
♪♪♪
さて私、クラシック音楽では、
オーケストラ物が一番好きです。
メロディもさることながら、
いろんな楽器を巧みに組み合わせながら、
ドラマチックにサウンドを展開していく、
そんな「アレンジ能力」に秀でた作曲家が好み。
ざっと挙げると、
ベートーヴェンは別格として、
バルトーク、マーラー、ブラームス、ワーグナー、
ストラヴィンスキー、ブルックナー、ラヴェル、
あたりをよく聴きます。
でも、
このリヒャルト・シュトラウスだけは、
なぜか敬遠していました。
(ちなみに、このリヒャルト・シュトラウスと、
ワルツ王ヨハン・シュトラウスちゃんとは、
なんの関係もありません。)
そのリヒャルト・シュトラウスが、
前述した大作曲家たちと、
なんら変わらぬ評価を得ている、
大巨匠であることは知っていましたが、
なぜか敬遠していた…。
バルトークやマーラーやラヴェルと、
ほぼ同じ時期の作曲家なのに、
なぜか、この人だけは馴染めなかった。
その原因が、
これを観て、
ようやくわかりました。
これは「大人の音楽」なのです。
そして、
「大人のお芝居」なのです。
つまり、
私は、
ようやく大人になったのです!
59才にして、
ようやく、
大人の仲間入りができたのです。
若かりし頃は理解できなかった、
リヒャルト・シュトラウスが、
ようやく楽しめる年になったのです。
ヤッター!ヤッター!ヤッター!
わ〜い!わ〜い!わ〜い!
(どこが大人だ…)
ま、これからご覧になる方のために、
これ以上筋書きを教えるのは、
差し控えるますが、
とにかく、
ぜひこの作品を手に取ってみてください。
決して難解な音楽ではありません。
むしろわかりやすいチャーミングな音楽です。
ジャミン・ゼブがお好きなら絶対大丈夫です。
この上もなく上品でカッコいいですから。
だからジャズが好きな人ももちろんオーケー。
優雅なジャズ・ハーモニーのようなものも、
ふんだんに登場します。
宝塚ファンはもう文句無しね。
映画好きのあなたも、
演劇好きのあなたも、
少女コミック好きのあなたも、
絶対いけます。
無責任な私が、
責任を持っておススメする、
この秋最大の収穫。
超ど級の芸術作品。
ああ、生きていて良かった…。
というわけで、
きょうはオチがありません。
リヒャルト・シュトラウスさんに敬意を表して。
……。
ちなみに、
1911年1月26日。
この作品が初演されるや、
たちまち大評判となり、
公演が行われているドレスデンに向けて、
毎日、ドイツ各地から、
特別列車が運行されたといいます。
100年も前に、
こんなすごい作品を生み出し、
すぐさま理解してしまう、
ドイツという国の芸術レベルの高さには、
今さらながら脱帽です。
こちらも改めて、
敬意を表したいと思います。
こんな美しさや優しさを理解できる国が、
なぜあんな戦争を…、
……?
(おわり)
昨夜の私…。
学芸大にある、
「珈琲美学」というお店に、
秋元直子ちゃんのライブを見に行きました。
お目当てのもう一つは、
ベースが、
あの、岸徹至(てつゆき)君だったから。
岸君といえば、
ジャミンのCDでお馴染みの、
若手を代表する、
素晴らしいベース奏者です。
その岸君が、
あの忙しい岸君が、
わが町学大にやってくる。
これはもう、
行かずばなりますまい。
で、当然のことながら、
数曲セッションしてきました。
あははは。
ああ、楽しかった。
突然の飛び入りで、
お客さんには失礼しましたが、
楽しかったから許してください。
アハハハハ。
ピンポーン♪
おっ、
なにか来たぞ。
……。
おお!
なんとジャミン・ゼブ『Sweet Sweet Live』の、
サンプル盤ではありませんか!
うん、なかなか綺麗に出来ましたね。
そうか…、
発売まであと10日余りなんですねえ。
……。
では次回は、
このDVDのお話でもしましょうかね。
表裏取り混ぜながら…。
SHUN MIYAZUMI
October 08, 2010
無責任流芸術論 最終回
さて、
過去4回にわたってお送りした、
「無責任流芸術論」ですが、
最後は、
こんなお話で締めくくりたいと思います。
今日の主人公は、
戦後のパリの画壇に君臨した、
すごい美術評論家の先生です。
いやあ、この人はすごいです!
まさに「究極の無責任」の域まで到達した、
「究極の評論家」であり、
わが「無責任党」の名誉会長にでもなっていただきたい、
そんな人物であります。
さっそくいってみましょう。
「芸術の都パリ」
ここに、一人の著名な美術評論家がいました。
とにかく、
当時のパリの画壇で、
絶大な影響力を持つこの先生が推薦すると、
その画家の絵は飛ぶように売れ始め、
たちまち一流の芸術家の仲間入り。
ですから、
パリの無名の若手芸術家たちは、
なんとかこの先生に認めてもらおうと、
それはもう必死に売り込み作戦を展開。
でも、幸運の女神が微笑むのは、
ごくわずか。
芸術の道は厳しいものなんですね。
で、ここに、ご多分にもれず、
一人の売れない画家の青年がいました。
毎日、毎日、
一生懸命絵を描くのですが、
誰も評価してくれず、
描いても描いても一向に売れない絵が、
貧しいアパートの一室にたまっていくだけ。
でも彼は、あきらめることなく、
アルバイトでコツコツためたお金で、
個展をひらくことにしました。
不安と期待が入り交じった、
そんな気持ちのまま、
さあ、個展の日がやってきました。
でも…、
やはり…、
訪れる人はほとんど無く…、
たまに訪れるお客さんも、
一通り、急ぎ足で眺めただけで、
なんの反応もなく、
また出て行く。
……。
青年は、絶望にも近い気持ちで、
さみしい個展会場にひとり、
ぽつんと佇んでおりました。
そして、無情にも終了の時間がやってきました。
彼は、ため息まじりに、
まったく売れなかった絵を、
1枚1枚、壁からはずし、
さみしく後片付けを始めました。
と、そこに…、
なんと…、
あの美術評論家が現れたのです。
泣く子も黙る、
あの大物評論家が…。
そして、
まだ展示してある絵を1枚1枚、
丁寧に見て廻りはじめたのです。
彼の胸は、
もうもう張り裂けそうでした。
(わかるわかる)
やがて、
一通り見て廻ると、
この先生、彼のところにやってきて、
信じられないようなことを言ってくれたのです。
「この絵を描いたのは君かね?
いやあ、なかなかいいじゃないか。
僕には、君の並々ならぬ才能がわかるよ。
僕が主宰している美術誌で紹介してあげるから、
もう少し頑張って個展を開いていたまえ。」
「……。」
そして…、
奇跡が起きたのです。
その先生が紹介するやいなや、
個展には、連日多くの人が訪れ、
彼の絵は、あっと言う間に完売。
……。
「これは夢か…。」
彼は、天にも昇るような気持ちでした。
そして、その先生は、
ニコニコしながら最後の日にも来てくれ、
「いやあ、見事に売れたねえ。
僕の言ったとおりだろ?
良かった、良かった。
ま、これからも頑張りたまえ。」
と、またまた信じられないような言葉を、
かけてくれたのです。
青年は、紅潮した顔で、
こう答えました。
「ありがとうございます。
先生のおかげです。
で、お礼と言ってはなんですが、
僕の一番の大作をプレゼントしたいのですが、
受け取っていただけませんでしょうか。」
そして、裏から1枚の大きな絵を持って来ました。
「この絵は、僕の最高作で、
これだけは売らずに置いておいたのです。
これを、ぜひ先生に差し上げたいのですが…。」
すると先生、
ますます満面の笑みになり、
「いやあ、こんな立派なものをくれるのかい。
そりゃ、ありがとう。
さっそく我が家の居間に飾っておくよ。」
そして、その大きな絵を抱えて去って行きました。
よかったですねえ。
この青年の喜びが伝わってくるようです。
さらに数日後、
この先生から青年のところに、
またまた信じられないような電話がかかってきました。
「いやあ、君かね。僕だよ。
実は今度の日曜日に、
家(うち)で、ちょっとしたパーティーをやるんだがね。
パリ中から、いろんな著名人が、
たくさん集まるんだよ。
もしよかったら、君も来ないかね。」
「ほんとですか!?」
……。
そして、日曜日の当日。
彼は緊張の面持ちで、
この先生の邸宅を訪ねました。
予想どおり、
大きなサロンは、
おびただしい数の来客であふれ、
その中には著名人もたくさんいました。
彼は、どうふるまったらいいのかわからず、
ただただ呆然と、
華やかな社交界の光景を眺めておりました。
と、そのとき、
先生が彼を見つけ、
ニコニコ顔でやって来てくれたのです。
「やあ、君か。来てくれたんだね。
ほら、あそこを見てご覧。
ちゃんと君の絵が飾ってあるだろ。」
なるほど、
大きなサロンの一角に、
確かに、この青年がプレゼントした絵が、
堂々と飾られておりました。
しかし…、
それを見て…、
彼は大いに落胆してしまいました。
なぜなら…、
それは…、
上下が逆さまだったからです。
……。
どうです。
これぞ、“究極”、ではありませんか。
みんなが幸せになれる、
究極の無責任!!
えっ?
でも、この青年は大いに傷ついたのだから、
「1.人を傷つけない」
の、無責任3大原則に違反してるじゃないか。
ですって?
なんの、
彼はこの先生のおかげで、
世に出ることが出来たのですから、
傷つくなんて、もっての他です。
感謝以外に、なにがありましょう。
そもそも、
どっちが上で、どっちが下だか、
わからないような絵を描く、
この青年のほうが悪いのです。
それに、
ひょっとすると、
上下を逆にしたほうが、
芸術的には価値のある構図だったのかも、
しれないではありませんか。
……。
はい、こんなお話でした。
このように、
芸術とは曖昧なもの。
そして、無責任なものなのです。
でも、それでいいのかも…。
その作品を「芸術」とみるか、
「そうでないもの」と見るかは、
個人の自由であって、
人にとやかく言われるものでは、
ないように思います。
……。
さあ「芸術の秋」ですよ。
みなさん、
かって気ままに、
いろんな芸術に触れながら、
大いに有意義に過ごそうではありませんか。
(パチパチパチ)
それにしても…、
本音を言わせてもらえば…、
いくら芸術には、
「逆転の発想」が必要だといっても…、
こりゃ、あんまりだわ。
あははは。
とまあ、
無責任に締めくくってみました。
……。
(無責任流芸術論 おわり)
さて次回ですが、
この秋、私が遭遇した、
素晴らしい一品を、
ぜひ、ご紹介させてください。
いやあ、これにはまいりました。
いまだ興奮冷めやらずです。
こんなすごいものにブチ当たっただけでも、
生きていた甲斐があると言うもんです。
乞うご期待です。
……。
では、アレンジに戻るとしますか。
たくさんありますからねえ。
せっせ、せっせ。
いそげ、いそげ。
ふう〜。
………。。。
SHUN MIYAZUMI
October 02, 2010
無責任流芸術論 その4
ようやく秋らしい気候になってきましたね。
今朝は久しぶりに、
「駒沢公園」を散歩してきました。
なんとも清々(すがすが)しい気分です。
いいですねえ、秋。
特に今年は猛暑の連続でしたから、
いつもの年よりよけいに有難みを感じます。
「スポーツの秋」
「読書の秋」
「食欲の秋」
「芸術の秋」
そうだ、忘れてはいけない。
「芸術」だ。
「芸術とはなにか」だ…。
……。
前回のコメントの中に、
やや結論めいたものがあったので、
これはノンビリもしていられなくなりました。
先を急がねばなりませんね。
じつは私も、
同じような考えを持っておりましたから。
つまり、
「芸術」とは、
本来無責任なものではないか。
なぜ、そう思うかといいますと、
最初に私が提起した3つの命題。
1.「芸術」とはなにか?
2.「芸術」と「そうでないもの」の境界線はどこか?
3. それを決めるのは誰か?
この問いに、
明確に答えられる人がいないからです。
もしも、明確に答えられる人がいたら、
その人もまた、
極めて無責任な人ではないかと、
逆の意味で、私は尊敬します。
ええ、私は「無責任崇拝者」ですから。
かつて、
「無責任教育講座」でも触れましたが、
芸術家の大半は、
崇高な「無責任」の発想にもとづいて、
作品を作り続けたはずです。
「だって、やりたかったんだも〜ん。」
この発想です。
でも、これでいいんです。
あとは受け手の問題です。
受け手もまた、
無責任に評価していればいいのです。
さらには、
その芸術家と受け手の間を仲介する、
「評論家」という名の先生たちや、
「評論」という行為。
これがまた、
なんとも無責任な存在ではないか、
と、私は思いますね。
あっ、誤解のないように言っておきますが、
私は、「評論家」や「評論という行為」を、
断じて否定するものではありません。
芸術の発展のために、
彼らがいかに貢献してきたかは、
歴史を見ればわかることです。
彼らの慧眼(けいがん)と正しい紹介により、
どれほどの埋もれた才能が開花したことか…。
しかし、一般的に見れば、
他人の作ったものに「ああだこうだ」と言う、
「評論」というのは、
そもそもが無責任な行為と思われがちです。
でも、それはそれで、
いいのではないでしょうか。
作り手も受け手も無責任な「芸術」という分野を、
仲介、紹介する「評論」という分野だけが責任を持て、
というのは酷です。
むしろ、
この「評論家」の先生こそは、大いに開き直って、
“究極の無責任”であって欲しい、
というのが、
私の持論です。
作り手の無責任と、
受け手の無責任を超える度量と実力が必要な、
「これぞ無責任!」の旗手でなくてはならない。
私は、そう思います。
だからこそ、
「無責任の3大原則」は、
絶対に守ってもらわねばなりません。
無責任の3大原則:
1.人を傷つけない
2.人に迷惑を与えない
3.人に損害を与えない
これをクリアしない「無責任道」は、
まだまだ未熟です。
私なんぞは、
まだまだ道半ばですから、
この「究極の無責任」には到底到達しておりません。
さて、
このシリーズの一回目で、
私は2人のクラシックの評論家先生を、
ご紹介しました。
もう一度、思い出してみましょう。
一人目は、
一刀両断のもと、
作品をバッサリと評論する先生。
「ベートーヴェンの第9は、ずばりコレだ。
これ以上の名演を、私は未だ知らない。」
「モーツァルトの○○は、これがベストだ。
この曲は、これ1枚あれば事足りる。」
そして、
クラシック音楽のビギナーだった頃の私は、
この先生の言葉を信じて、
ずいぶんつまらない物を、
たくさん買わされてしまいました。
この先生が正しいかどうかは別にして、
少なくとも私にとって、
「3.人に損害を与えない」
という原則には違反しているわけですから、
私は、この先生は、
まだまだ「無責任」を極めてはおらんなあ、
と言いたい…。
どうせなら、ここまで言って欲しかったですね。
「ベートーヴェンの第9は、ずばりコレだ!
この演奏の良さがわからない者は、
はっきり言ってベートーヴェン、
いや、そもそもクラシック音楽などを、
聞く資格はない。
私は、自分こそが、
世界で唯一、本物を聞き分けられる耳を持ってると、
自負している。
しかるに、
私が推薦したレコードがつまらない、
と苦情を言う輩(やから)の、なんと多いことか。
そんな輩は、
自分には芸術を理解する能力が無い、
と自ら認めているようなものだ。
哀れとしかいいようがない。
そんな奴らは、
くだらない商業音楽を聞いておればいいのだ。
だから、ごく稀(まれ)に、
私のことを褒めてくれる人に出会うと救われる。
この連中だけが、
私が神に使(つか)わされた、
真の音楽の伝道師であることを、
理解している人たちだ。
そんな私が言うのだから間違いはない。
第9は、ずばりコレだ!!」
ここまで言われたら、
仮にその作品がハズレでも、
私は怒りません。
むしろ「自分の耳は神の使者に勝った!」
と、誇らしく思うでしょう。
もちろん、それが素晴らしかったら、
永遠にこの先生を崇拝し、
人に薦めてまわるでしょうね。
もう一人は、
ハイドンのチャーミングな音楽を、
ヘーゲルの哲学書よりも難解な文章で紹介した、
あの先生です。
「ソナタ形式における諸問題ー
即ち1楽曲内での2主題性、
各主題を連結する経過部の有機的な進行、
小結尾部の確立、」
「主題の楽想展開的即ち
有機的な分解と再結合による立体的な展開部、
再現部における省略と演釈の方法」
「2主題の葛藤に対する統一的な意味を持つ結尾部
(しかも結尾部は展開部の膨張と共に、
主調確立という調的な意味においても、
亦その重要さを増すべき性質のものであった)。」
……。
クラシック音楽の評論家は、
その作曲家や作品を正しく紹介すると同時に、
クラシック音楽を食わず嫌いの人たちに、
一人でも多く、その素晴らしさを教えてあげるのが、
使命ではありますまいか。
一人でも多く、
クラシック・ファンを増やすのが、
仕事ではないのでしょうか。
でも、こんな紹介をされたら、
みんな引いちゃいますよね。
「クラシック聴こうと思ったんだけど、
なんだか難しそうな音楽だなあ…。
やめとこかな…。」
「そうね、ハイドンて、
もっとわかりやすい音楽だと思ってたんだけど、
ちょっと私には無理だわ…。」
だから私は、
この先生も、
「究極の無責任」には、
まだまだ到達していないのではないかと思います。
えっ?
でも、3大原則には違反してないじゃないか、
ですって?
たしかに、
「1.人を傷つけない
3.人に損害を与えない」
これはクリアです。
でも、
「2.人に迷惑を与えない」
これは、どうでしょうね?
私は、この評論、紹介によって、
一番迷惑を被(こうむ)っているのは、
当の、ハイドンさんではないかと、
思うのですが…。
(つづく)
7〜9月のジャミンと私は、
北の方にご縁がありましたね。
アラスカやロシアは言うまでもなく、
山形、仙台、金沢etc.
で、どうやら、
来月からは、
中京地区あたりから風が吹いて来そうです。
そよそよ、そよそよ…。
さ、五線紙もいっぱい作りました。
明日からは、
せっせせっせと書いていかないと、
この秋、冬を乗り越えられません。
やりますからね。
飲んでる場合じゃありませんよ…。
誘惑に負けてはいけませんからね…。
だから、みなさん、
誘わないで下さいね。
ほんとに…。
誘っても、ちょっとだけですよ。
ほんの一杯だけですよ。
ええ、
本当に…。
じゃ、ちょっとだけ…。
……。
SHUN MIYAZUMI