May 2015

May 14, 2015

ブルックナーはお好き その3


世の中に、

「If(もしも…)」ということは存在しません。

残念ながら…。


しかし、

「もしも‥チェリビダッケという指揮者が、
 もう少し上手に立ち振る舞っていたら…」

大指揮者フルトヴェングラーの後継者として、
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の、
常任指揮者は、
彼になっていたことでしょう。


すると、、、

あの、カラヤンの人生は、
どうなっていたのでしょう…?

あれほどまでの富と名声と栄光を、
勝ち取ることができたのでしょうか…?

……?



私がクラシック音楽にめざめた60年代。

当時の、どんな音楽雑誌にも、
世界最高のオーケストラは、
このベルリン・フィルと、
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、
と書かれてありました。


これを、相撲の番付に例えると、

東横綱:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
西横綱:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

とまあ、こんな感じになりますかね。

あはは。


ということは、
ベルリン・フィルの常任指揮者こそは、
世界一の指揮者という称号をも与えられる。

チェリビダッケの脱退のおかげで、
その座は、
するりとカラヤンの手に滑り落ちる。

……。



Herbert von Karajan
ヘルベルト・フォン・カラヤン
(オーストリア 1908-1989)

_SX425_

カラヤン。

「天は二物を与えず」という言葉は嘘ですね。

神にこれほど愛された人もいますまい。


音楽的才能はもとより、

イケメンで、
スタイリッシュで、
華麗な指揮ぶりで、

彼は、たちまち世界のクラシック界の、
スーパー・スターに駆け上がります。



さて、「四日市」シリーズでも書いたように、
60年代は、あらゆる文化が一斉に華開いた時代。

録音技術も急速に進化します。


3分くらいしか収録できない、
しかも音の悪いSP盤から、
長時間収録でき、しかも音のいい、
LPというレコード盤の開発により、

クラシックという音楽は、
コンサート会場に出向かなくても、
一般家庭で楽しめるようになりました。


ここに着目したカラヤンは、
手勢ベルリン・フィルを率いて、
積極的にレコーディングを敢行していきます。

モノラルからステレオへ。

2CH(チャンネル)同時録音から、
マルチ・トラックでの録音へ。


時代がどんどん進化する波に乗って、
彼は「パンチ・イン」という、
ポップスの世界では当たり前の手法すら取り入れ、

「より完璧に、より売れる!」
作品作りを精力的にこなします。

(「パンチ・イン」とは、曲の途中、
 演奏のまずかった部分だけをピック・アップして、
 録音し直す技術。)


さらにジャケットにおける、
自らの写真にも、
細かく注文をつけたといいます。

「光をもう少し強く」とか、

「自分の顔だけが、もっと浮き出る感じに」とか。


自分の「イケメン」をも最大に利用する、

徹底的なショーマンぶり。

_SX425_

さらにライブでは、

目をつぶり、
いかにも哲学者のような風格を演出し、

これが、一般素人からも、
「この人、カッコイイ〜!!」
と人気を独り占め。


全世界で、彼のレコードは、
それまでのクラシック界の常識を超える、
セールスを記録していくのです。


しかも、

ベートーベン交響曲全集、
ブラームス交響曲全集、
チャイコフスキー交響曲全集、

といった人気曲は、
録音技術の進歩に合わせて、
何度も録音し直す。

そしてこれがまた全世界で、
売れに売れる。

そして印税をガッポガッポと手に入れる。

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「クラシックって、そんなに売れるの?」

そんな疑問もあるでしょうね。


でも、マーケットが世界ですからね。

カラヤンくらいになると、
日本で1万枚でも、
アメリカで3万枚、イギリスで1万枚、
フランスで、ドイツで、オーストラリアで、
……、、、

とまあ、これらを足していくと、
大変なセールスになっていくわけです。



例えばあなたが、
初めてクラシックのレコードを買おうと決めます。

「まずは、有名な、
 ベートーベン交響曲第五番(運命)を、
 聴いてみようかしら。」

そしてレコード店に行ってみると、
この曲だけで、
なんと何十種類もの盤が並んでいる。


何もわからないあなたは、店員にこう聞く。

「ねえ、この曲、どの盤がおすすめ?」

すると店員は、

「そうですね、ベルリン・フィルだと、
 演奏に間違いはないでしょうね。」


ところがベルリン・フィルを振った指揮者も、
たくさんいるわけです。

その中で、一番イケメンのカラヤン盤が目につく。

「あ〜ら、この人イケメンね。
 この人有名?」

すると店員、

「ええ、今世界で一番有名な指揮者ですよ。」

「じゃ、これにする!」


とまあ、こういうプラスの連鎖。

当然、コンサート・チケットも、
全世界でソールド・アウトの嵐。


神に愛された男は、

何から何までうまくいくんですねえ。

……。



ベートーベンが、
あの名曲『交響曲第9番(合唱)』で得たお金は、
今のレートに換算すると、
100万円ポッキリだったそうです。

ブラームスも、シューベルトも、
決して裕福ではない人生。

モーツアルトやバルトークに至っては、
葬式代もないような貧困の中、
その生涯を閉じました。


そんな偉大な作曲家の曲を振るだけで、
(「だけで」というのは、
 いささか貧乏人のひがみもありますが。笑。)
彼は莫大な富と名声を築き上げていきます。


ザルツブルグ郊外の別荘は、
まるで中世の『城』。

自家用ジェット機を操縦して、
ヨーロッパ各地の演奏旅行に出向くニクイ奴。

大変なカー・キチで、
自宅のガレージには、
ベンツ、ポルシェ、ジャガー、フェラーリなど、
世界の名車がずらりと並んでいたそうです。


嫌なやつですねえ、カラヤン。

ズルイぞ、カラヤン。


でも仕方ありませんね。

売れるんだから。

売れるように作ってるんですから。


で、当然のことながら、
古い体質の音楽界からは、
批判も続出します。

「お金の魔術師」

「大衆に媚(こ)びている」

「音楽のセールス・マン」


しかし、カッコいいカラヤン氏は、

自信満々のカラヤンちゃんは、

そんな批判など、どこ吹く風。


今日も、人さまの書いた曲で、

ガッポガッポと稼ぎまくり。



しかし、、、

もしも…チェリビダッケが、
あのままベルリン・フィルの常任指揮者で、
君臨していたら…、

……、、、



そう、

自業自得の部分があるにせよ、

ベルリン・フィルを去った、

チェリビダッケ氏は、


その後、

どんな人生を歩んでいくのでしょうか?


ううむ……。



(つづく)



珍しく風邪をひいてしまいました。

コンコン咳が止まりません。


原因は、
最近の昼夜の温度差、寒暖差。

真夏のような昼間、
軽装で出かけたら、
夜は北風ピューピュー。

「おお、寒っ!」


みなさんもお気をつけください。


コンコン…。



SHUN MIYAZUMI

woodymiyazumi at 14:24コメント(18)トラックバック(0) 
2015 エッセイ 

May 02, 2015

ブルックナーはお好き その2


いやあ連日、いいお天気だこと。

あまりに気持ちよさそうなので、
今朝も駒沢公園行ってきました。

いろんな競技場で、
「U-14」という、
ユース・サッカーの国際試合をやってましたね。

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コリンチャンス(ブラジル)、ベルリン、
ボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)、
といった、名門少年クラブも来日参加。

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いやあ、少年とはいえ、
上手いもんですなあ…。

ちなみに、これらと対戦している日本チームは、
どの会場もみなボロ負けでしたぞ。

こらぁ、がんばれニッポン!

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そして今日も「肉フェス」は大にぎわい。

この二つのイベントは、
このGW中、ずっと続くようですよ。

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歩いて5分とはいえ、
他にどこへも行くあてのない私にとっては、
ま、ここが唯一の「行楽地」ですかね。

あははは。

(やや自虐的笑い)



えーと、

なんの話だったかな…?


そうだ、チェリビダッケさんのお話でしたね。

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最近ハマっている、
学芸大駅前某喫茶店における、
「iphone6」による、
「You Tube」クラシック動画鑑賞。


いやあ、このイヤホンがまた、
いい音してるんですねえ。

豊かな低音、迫力あるサウンド。

フル・ヴォリュームで聴いて(観て)いると、
まるでコンサート会場にいるみたい。



そんなある日、偶然にもぶち当たった、

『Celibidache(チェリビダッケ)指揮
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
 ドヴォルザーク / 交響曲第9番(新世界より)』


(「チェリビダッケ」て誰だっけ?)

ま、くだらないダジャレはさておき、
演奏が始まりましたよー。


(ん? なんだこのテンポの遅さは?)

で、あまりに遅い演奏を好まない私は、
いつもだったら、さっさとやめるのですが…、

なぜか、次第に引き込まれていきます。

(なるほど、遅いがゆえに、
 弦楽器の内声の動きとか良くわかるし、
 これはこれで楽しめるかも…。)



前回も書いたように、
私が嫌いなのは、
曲の途中でテンポが揺れる演奏。

だって、リズムがなくなってしまうんですから。

テンポを揺らしてまでの感情表現。

これは、作曲家に対する冒涜とすら、
私は考えます。


しかし、この演奏は、
途中で揺れたりはしません。

遅く始まったら、
そのテンポをキープしたまま、
ずーっと進んで行く。

したがって「Groove(乗り)」は、
しっかりあるのです。

(ううむ…、これは…?)


しかも、全員のリズムは、
しっかり、小気味いいほどキレがよく、
ピターッ、ピターッと合う。

(素晴らしいなあ…。)


実は、、、

遅いテンポで「Groove」を感じさせながら、
リズムをきっちり合わせるというのは、
大変に難しいんですね。

そう、遅い演奏ほど難しいのです。

相当の全体練習を積まないと、
決してこうなりません。

(これは、相当にリハーサルをして来てるな…。)


しかも、楽団員の目が、とにかく真剣で、
この指揮者に対するリスペクト(尊敬)が、
いたるところで感じられるのです。

(これは、ただ者じゃない人かも…。)



さて、私がクラシックを好きになったのは、
先の四日市シリーズでも書いたように、
中学1年のとき。

毎月「レコード芸術」なる本を読み、
お小遣いを工面しながら、
いろんなレコードを買い漁って、
夢中になって聴いていたものです。


しかし、このチェリビダッケという指揮者は、
今日まで、まったくといっていいほど、
知りませんでした。


ということは、レコード嫌い?

録音嫌い?

「ライブこそが芸術」と言う偏屈男?

楽団員に、猛烈なリハーサルを要求する、
サディスト?

実力はすごいのに、
トラブルばかり起こして、
世界の名門オーケストラから敬遠されて来た?


私は、動画を見ながら、

そんな人物像を想像してしまいました。

(まあ、見事に当たっておりましたが。
 エヘン。。。)


でもね、

好みは別にしても、

本当に立派な演奏だと思いました。


こんな遅いテンポにもかかわらず、
一糸乱れぬ全体演奏。

おそらく、
すごいリハーサルを要求したのでしょう。

チェリビダッケさん。


それに耐え、
文句のひとつも言わず、
彼を信じて、要求に応えたのではないでしょうか。

ミュンヘン・フィルハーモニーのみなさん。


それが証拠に終了後は、

オーディエンスもミュンヘン・フィルも、
スタンディングで彼の指揮を讃えています。

いつまでも、いつまでも…。


さあ、深い感銘を受けた私は、
さっそくWikipediaで調べてみました。

と、そこにはこんなことが書かれてありました。


Sergiu Celibidache(セルジュ・チェリビダッケ)
(ルーマニア 1912-1996)

_SL1500_


(以下、要約すると…)

・第二次世界大戦後、
 世界最高峰のオーケストラ、
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団における、
 大指揮者フルトヴェングラーの後任を決める、
 指揮者コンクールで見事優勝。

 (やっぱり、すごい才能なんだ。当りだ。
  でも遅刻したらしいぞ…。)


・しかし、楽団員に、
 あまりにも高い演奏技術を求めたり、
 ベテランの団員の入れ替えを求めたりして、
 次第に楽団と亀裂が生じていく。

 (ああ、これも分かる気がする。
  気難しそうだもん。完璧主義者のようだし。)


・「自分はフルトヴェングラーより耳がよい」
 などと公言したり、
 派手なアクション、指揮台での足踏み、唸り声、
 など、あまりのスタンド・プレーに、
 ベルリンの演奏会批評でも叩かれ始める。

 (あははは。やりますねえチェリビさん。)


・そして、あまりに激しいリハーサルに、
 ついには楽団員と大衝突を起こして、
 ベルリン・フィルを去ることになる。

 (やっぱりなあ…。ううむ…。)



そして、

天下のベルリン・フィルの常任指揮者は、
ヘルベルト・フォン・カラヤン、
が継ぐ事になるのですが、

ここからこの二人は、
まさに太陽と月、
まったく真逆の人生を歩んでいくわけですね。

51kdHW1Y+NL


いやあ、面白いもの(人)に出くわしました。


チェリビダッケとカラヤンか…。

興味津々の人間模様。

運命のいたずら。


まるで、誰かと誰かのようだな…。


ん…?



おっと、もう時間ですか?


ううむ…。


……。



(つづく)




ちょっと硬派なテーマとは思いつつ、
こんな話もどうかなと始めてみましたが、
大丈夫でしょうか?(笑)

一応音楽家のブログですしね。
たまにはいいかな、とも…。


ま、なるべく分かりやすいように、
心がけて書きますので、
どうかお付き合いのほどを。

……。


それにしても、くどいようですが、
ホント爽やかな毎日。

ま、東京の話ですが…。


生きていて良かったと、

しみじみ思いますね〜。


(大げさな…)


ん…?


……。



SHUN MIYAZUMI

woodymiyazumi at 19:35コメント(12)トラックバック(0) 
2015 エッセイ