February 27, 2009

バンド用語 その2


たとえば…。

今日の夜、
レコーディングがあるので、
スタジオに行くとする。

あるいは、
ジャズ・クラブやナイト・クラブに、
演奏しに出かけたとする。


そんなとき、
私たちの挨拶は、

「おはようございます。」

なんですね。

夜なのに…。


いかにも業界っぽいし、
なんだか、
‘裏社会’に生きてるような感じがして、
個人的には、
あんまり好きではないのですが、

ま、古くからの慣習だから仕方ありません。



ところが、これ…、

アメリカでも同じなんですね。


夜遅く、
ミュージシャンやエンジニアや、
レコーディング・スタッフが、
どやどやとスタジオにやって来る。

すると、みな、
顔を合わせるたびに、

「Good Morning!」

と言うのです。

今日は、始めて会ったのだから、
これでいいんだ、

と、彼らは言ってましたが…。

(なるほど)



戦後間もなく、

アメリカの進駐軍が、
横田を始めとする日本各地の基地に、
やって来ましたね。

そこで夜な夜な繰り広げられる、
本場のジャズのセッションを見る(聴く)、
あるいは勉強するために、

日本のジャズメンたちは、
毎夜毎夜、熱心に、
基地を訪れたそうですが、


おそらく、そのときに、

むこうのジャズメンたちが、
「Good Morning!」
と言ってるのを聞いて、

真似したんじゃないかな…。


「何でも形から入る。」

これ、この世界の鉄則ですからね。


そして、
あの奇妙奇天烈な、
「バンド用語」も、

おそらく、その頃に、
誕生したのではないかと、


私は、推測しているのですが…。




『バンド用語 その2』


はい、お待ちかね。

(待ってないから)


きょうは、この、
「バンド用語」について、
詳しく講義をしてみたいと思います。

みなさん、ペンのご用意を。



まず、数字から行きますかね。


これは、
「ドイツ語の音楽表現を使うのだ」
と、先輩から教わりました。

ハ長調の、C(ド)の音を基調にして、

C(ツェー)=1
D(デー) =2
E(イー) =3
F(エフ) =4
G(ゲー) =5
A(アー) =6
H(ハー) =7

こうやるのだ、と。


ここで注目すべきは、
7の音ですね。

B(ビー)ではなく、
H(ハー)とやるあたりが、
なるほど、ドイツ語っぽい。


では、8はどう言うかというと…、

「オクターブ」の「オク」

かなり苦しいところですが、
8人編成のコンボを、
「オクテット」と言うので、

ま、これは納得。


問題は、次の9です。

これは…、


「ナイン」


「あのお…、先輩…、
 ナインは英語ですよぉー。」

と言いたいところでしたが、
ここも、じっと我慢の子。


じゃあ、10…?

これは、単純に、
1=C(ツェー)に
ジューを足すだけ。

つまり、

「ツェージュー」

(おい、ジューは日本語だろ)


そしてここから上の単位は、

ヒャク、セン、マン、

と、極めて普通に、

日本語。

(……。)


ま、これ以上考えるのが、
面倒くさかったんだろうと、

勝手に解釈。


では、実際にやってみましょうか。

<15,789円>

制限時間は3分です。

……。



はい、答えは、

ツェー(C)マン、ゲー(G)セン、
ハー(H)ヒャク、オクジュー、ナインエン。


出来ましたか?



次は、

言葉を「逆(さか)さま」にします。


3文字の名詞が、
一番やりやすいのですが、

これには一大原則があります。

面白い。
笑いが取れる。
くだらない。


「逆(さか)さま」にしても、面白くないものは、

敢(あ)えてやる必要がない。

面白ければ、
必ずしも、真正直に、
「逆さま」である必要もない。


楽器を例にしてみましょうか。

「ドラム」


これは、存在しません。

なぜか…?


「ムラド」とやっても、
「ラムド」とやっても、

面白くないから。

笑えないから。

こんなものは、
さっさと無視して、
普通に「ドラム」と言います。



え…?

いい加減だなあ、ですって…?


いいんです。

存在そのものが、

いい加減なんですから。



ベース。

これは、「スーベ」です。

簡単ですね。

ギターは、「ターギ」


では、トロンボーンは…?

「ボーントロン」

いえいえ、そんな、
かったるい表現はしません。


もっとシンプルに、

「ボントロ」

これで充分です。



サックスは、

「クーサ」

なぜか、これで通用します。

ただし、
「クッサー(くっさ〜)」とやると、
意味が変わってくるので、
要注意。

「クーサ」です、「クーサ」。


面白いのは「ピアノ」で、

これは、

「ヤノピ」


昔は、「ピヤノ」と言ったのでしょうか…?

アハハハ。

そういえば、大昔、

「会奏演ノヤピ」
というチラシを、
見たような記憶が……。


難しいのは、

「ヴォーカル」


そうです。

4文字以上になると、
ぐっと難易度があがるのです。

それに、これは、
どうやっても面白くならない。


こうした場合は、

ヴォーカル=うた(歌、唄)

と、日本語に置き換えて、

「うた=ターウ」

と、やればよろしい。


イントネーションは、
基本的にはノー・アクセントで、
まっ平(たいら)に、
が原則。

渋谷(しぶや)、B’z(ビーズ)、ZARD(ザード)。

あんな感じをイメージして下さい。



はい、応用編です。


しごと(仕事)=「ゴトシ」

「トゴシ」では、面白くないので、
この場合は、「ゴトシ」を採用です。

トイレ=「イレト」
パンツ=「ツンパ」
でんわ(電話)=「ワデン」
ふめん(譜面)=「メンフ」
バンド=「ドンバ」
はなし(話)=「ナシハ」
めがね(眼鏡)=「ガネメ」


べんじょ(便所)。

これ、我々ライト・ミュージックは、
単純に、「ジョベン」と言ってました。

しかし、ある日、
ライバルである、
W大「ハイ・ソサエティ・オーケストラ」のやつが、

「ヨジンベ」

と言ってるのを聞いて、
明らかに、こっちの方が面白いので、
即、採用。

クリエイティブな発想や、いいものは、
意地を張らないで、
すぐに取り入れる。

この柔軟性。

これが、優れたミュージシャンの鉄則です。

(どこがじゃ)



次に、2文字の場合。


例えば、

「ソロ」


これを、

「ロソ」とやると、

なんか、しまりがない。

落ち着かない。

イカさない。


したがって、この場合は、

「ローソ」と、

後の音の‘母音’を伸ばして言えばいいのです。


めし(飯)=「シーメ」
すし(寿司)=「シース」
はな(鼻)=「ナーハ」
あし(足)=「シーア」
キス=「スーキ」
さけ(酒)=「ケーサ」


ちなみに、

バカは、「カーバ」で、
カバは、「バーカ」

この辺りは、
ちょっと、ややこしい…。



後ろに「ん」が来る言葉も、
かまわずやります。


ペン=「ンペ」
ビン(瓶)=「ンビ」
ほん(本)=「ンホ」


面白ければ、
おかまいなしにやってしまう。

そういえば、私のことを、

「ンシュ」などと呼ぶ、
不遜な先輩も居ましたわ。



それから、形容詞。

これがスラスラ出るようになれば、
かなりの上級者でしょう。


おもい(重い)=「モイオ」
かるい(軽い)=「ルイカ」
きれい(綺麗)=「レイキ」
うまい=「マイウ」
まずい=「ズイマ」
はやい(早い)=「ヤイハ」
おそい(遅い)=「ソイオ」



4文字、5文字の形容詞になると、
さすがに数が限られる。


あぶない=「ナイアブ」
きたない(汚い)=「ナイキタ」
たまらない=「ナイタマラ」
むずかしい(難しい)=「カシムズイ」
くだらない=「ナイクダラ」



こんな、凄腕の先輩がいましたよ。


「きょうの試験は、
 カシムズだったなあ。
 ナイタマラもトコイイ(いいとこ)だぜ。
 ああ、イッタマ、イッタマ。
 (まいった、まいった)」


「バンド用語博物館」があったら、
入れたくなるような、
名言、迷言、珍言、奇言。

ここまで来ると、
もはや、人間国宝級ですな。

(……。)



さらに、別の先輩。

『セドリック』という車が走ってるのを見て、

「おっ、『ドックリセ』が走ってるぞ〜。」


たちまち、周りは、大爆笑。



『どんぐりころころ』
という唄を、

「♪コングリドロドロ、コンブリド〜♪」

と歌ってるやつがいましたが、

この男の「脳細胞」は、
もはや、無きに等しいと考えて、

差し支えありません。



では、

1字の場合。

例えば、「め(目)」


これは、どう表現すればいいのでしょうか。



えっ…?


1字を、どうやって逆さまにするの…?


と、思われるでしょうが、


やるのです。


ちゃんと出来るんですよ。



ウシシ。



(ああ、バカバカしい…。)




(つづく)



さて、これで前回の問題が、

スラスラ解けるはずです。


答え。


「あしたは、仕事があるから、
 おまえら1年生は、
 車3台で、
 楽器をはこぶように。
 とくに、ベースは、きをつけろよ。
 危ないからな。
 タクシー代は、あとではらう。
 譜面のケースは、重いから、
 てわけしたほうがいいな。
 じゃ、よろしく。」


……。



あっ、雪が降ってる。

どうりで寒いと思った。


みなさん、


どうぞお風邪など召しませぬように…。



SHUN MIYAZUMI

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2009 エッセイ 

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コメント一覧

1. Posted by ni-na   February 27, 2009 15:08
今回もお〜笑いしながら拝見しました。

残念ながら知っているのは片手ぐらいでしたが…。とっても不思議なのは、いいかげん(ごめんなさい!)に採用しているのに、全員統一なのですね。

その3が楽しみです。

2. Posted by mariko   February 27, 2009 15:15
宮住先生こんにちは
寒いですね〜こんな日は熱燗で一杯、なんて。

バンド用語、もうルールも秩序もないですね。楽器を扱うよりも厄介?

以前私のフツーの友人がトイレのことを「オベンドコロ」と言って、私ら大うけしました。
3. Posted by HM   February 27, 2009 23:11
 こんばんは。
 
 宮住教授!
 私、これを習得するには
 けっこうな時間と脳細胞が必要です。
 
 自分の物になった時には
 世界が広がるような気がします(笑)
4. Posted by アグリーベティ   February 27, 2009 23:49
 宮住先生

 仕事が忙しくPCの前にじっくり
坐る時間もなかったのですが ひさしぶりに訪問したら なんとバンド用語のその2まで 進んでいるではありませんか! 、なるほどと興味深く読ませて
頂きました!慣れていない私にとって良い脳トレになります(笑)ありがとうございます!

 身内にしか分からない隠語って確かに楽しい!人前でも平気で噂話ができるし! 大学時代は本人には秘密のあだ名をつけて遊んでました。(笑)下唇がはれぼったい人には「びるげ」目が少し出ている人は「だぼはぜ」からダボ、とある雰囲気から「ムーチョ」、すごくイケメンにはイケメンぽくない「トンペイ」、「チンペイ」・・などなど絶対バレないあだ名をつけてました。 そういうことで仲間との友情も深まったような(笑)。私もどこかで変な名前で噂されていたかも知れませんが・・
ちなみにトイレは ワシントンクラブでした・・。今思うとほんとカーバみたい♪♪ うちの息子も「ンシュ」で〜す!
5. Posted by 越前jazz   February 28, 2009 11:42
5 宮住先生
 いつも含蓄のあるBlogを読んで人生癒されてます。ところでバンド用語(隠語)面白いですね。どんな業界にも、これと似た用語を使って自分の世界を楽しんでいるのでしょうね。
ところで、前回の試験問題のうち「キーガ」が分りませんで、恐らく「楽器」のことと思ってました。これを解説して下さい。 先生のBlogはマランタです。
6. Posted by 只野 通行人   February 28, 2009 12:13
5 映画界では「おくりびと」が話題になっていますが、私があの世に旅立つ時は、オールナイトでセッションをしてもらいたいです。
出棺の時は、葬祭センターのエントランスにドラムを2セット置き、激しいドラム合戦で送り出してほしい。曲は、「天国への7つの階段」と「ドラム・ブギー」で(笑)。
7. Posted by 栞   February 28, 2009 19:03
宮住先生

「バンド用語講座・第2講目」を、ありがとうございました!
お忙しい月末に続きを催促してはいけないと思い、
いい子にして待っていました(笑)
場合やフィーリングによって不規則変化するバンド用語は、
とっても奥が深いですね(勉強になりました♪)
先日TVに、業界用語で話す若手芸人さんが出演されていて思わず聞き入ったのですが、「24時」を“てっぺん”と言っていて面白かったです(と言うか、そこしか聞き取れませんでした 笑)
航空用語では大抵英語をそのままか(シップ:機体 ホールド:上空待機 バードストライク:最近NYでありましたね‥ など)、短縮して使います(パックス:お客さま ビズ:視程 メンテ:機体整備、つまり機体の不具合 など)
ちなみにアルファベットは、A(アルファ)・B(ブラボー)・C(チャーリー)・D(デルタ)・E(エコー)‥と読みます。
ポイントは、シンプルでわかりやすい事です^^
8. Posted by 断食娘   March 01, 2009 02:06
「おはようございます」の謎が解けました

小学校の頃1度パンツ丸見えだったが為に、
「ツンパ」と呼ばれてた同級生の女の子がいましたよぅ(^_^;)

「ジョベン」と「ヨジンベ」は、もうどっちもロイオモシーッ
→合ってますか w(@_@)w

1文字の「目、歯、血、毛、手、胃、酢、矢」等の解説を楽しみにしてます
2文字連続の「耳、腿・桃、危機、笹、母・父、頬」等はどうなるのかなぁ??
→ 例を考えるのも一苦労でしたぁ

4/7&8のスイートベイジルでの、
春らしい新曲と新しいお衣装が楽しみです
しもんさんの進級確定のニュースも待ち遠しいです
9. Posted by CHIKA   March 01, 2009 11:39
先生ー!お待ちしてましたー!!(いっつも、ここまで書きこんだところで、家族にPCを奪われてた状況が続いてたもんで・・今頃のカキコですが
「バンド用語」って、面白いですねっ!!奥が深くて!?楽しいですー!!
ただ、音楽無知なワタシにとって、ハ長調の数え方は、、「超カシムズ」!!
「チンカンンプンプ」!?(ちんぷんかんぷん)でした

「サックス奏者」って・・「クーサ奏者」!・・でも、きっと急いでたら・・「クッサー奏者」って空耳できこえちゃうやも・・
デ○ヤで使ってる「まいう〜!」はバンド用語だったんだすねーっ!!
先生の学生時代には、5000ってあったんですか?・・ゲーセン(ゲームセンター) あー!!ホントに面白いっ!!

「目」・・カシムズ・・
英語の「アイ」で「イーア」じゃ、つまらない!?・・「目」を「もく」と読んで「クーモ」・・うーん・・「眼球」と言い換えて「うんがきゅー」・・「め」に濁点つけて、「め”」=「べ」!?
「ウーー!シークル、シークル!イッタマ!イッタマ!ゲテオアだー!」
乱文失礼しましたっ!!
ご解答、楽しみに待ってますーっ!!
10. Posted by SHUN MIYAZUMI   March 01, 2009 12:36
ああ、心配になってきた。(笑)

みなさん、重ねてご忠告申し上げます。
こんな、くだらないものを、
真面目に習得してはいけません。
いたずらに脳みそを損傷させるだけです。

「あ〜ら、おバカな時代だったのね〜。」
と、サラリと笑いとばしてくださいまし。

(こりゃ、早く終わらせないとまずい…。)

ご質問の数々は、
次回(最終回のつもり)の本編にて、
まとめてお答えしますね。
なるべく早く…。

それにしても、ここ数日は寒いです。
早く、春が来ないかなあ…。

ぶるぶる。

さむい。

ムイサ…。

(こら!)
11. Posted by CHIKA   March 01, 2009 21:13
先生ー!
そんな〜、リームしないで下さいねッ!
変てこな質問攻めにしてしまい・・先生をシークルメタのでは・・と、イシパンになってきましたッ。。
ゾード、ゾード、ゴックリユーお願いしますm(_ _)m
ムイサな日が続きますが、くれぐれも、リームされず、オジイダになさってくださいねッ!!
ビアソすぎて、メンゴなさいm(_ _)m
それにしても、シータノすぎます!!
12. Posted by 只野 通行人   March 02, 2009 09:14
5 その昔、タモリ氏の本の中に「ワーカのトリホにズンタッタ…」と言う箇所があって、そりゃあクリビツテンギョウして、アーパになりそうでしたよ(笑)。
バンド用語ではないが、山下洋輔氏の曲名の付け方にはなかなかスルドいものがあり、中でも「ぐがん」なんかゴイス!
13. Posted by 可奈ママ   March 02, 2009 10:41
5 ちょっと温泉つかりに行ってる間に
その2が!
教授、有難うございます!!
数字表現ヨオークわかりました。

しっかし、今回もめちゃ笑えました!
「いい加減(良い加減?)さ」の中にある「こだわり」というか「美学」ですか
マジでおバカな感じが大好きです!!
14. Posted by SHUN MIYAZUMI   March 02, 2009 13:47
みなさん。

センスいいですねえ。
とても、初心者とは思えません。
驚きました。

ところで、
もうすぐ「ファン・ミーティング」ですね。
きっと楽しいものになると思うので、
期待してて下さい。

さ、ゴトシ、ゴトシ。
(まだ、やるか)

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