October 08, 2010

無責任流芸術論 最終回


さて、

過去4回にわたってお送りした、
「無責任流芸術論」ですが、

最後は、
こんなお話で締めくくりたいと思います。



今日の主人公は、

戦後のパリの画壇に君臨した、
すごい美術評論家の先生です。


いやあ、この人はすごいです!

まさに「究極の無責任」の域まで到達した、
「究極の評論家」であり、

わが「無責任党」の名誉会長にでもなっていただきたい、

そんな人物であります。



さっそくいってみましょう。



「芸術の都パリ」


ここに、一人の著名な美術評論家がいました。


とにかく、

当時のパリの画壇で、
絶大な影響力を持つこの先生が推薦すると、

その画家の絵は飛ぶように売れ始め、
たちまち一流の芸術家の仲間入り。


ですから、

パリの無名の若手芸術家たちは、
なんとかこの先生に認めてもらおうと、
それはもう必死に売り込み作戦を展開。

でも、幸運の女神が微笑むのは、
ごくわずか。


芸術の道は厳しいものなんですね。



で、ここに、ご多分にもれず、

一人の売れない画家の青年がいました。


毎日、毎日、
一生懸命絵を描くのですが、

誰も評価してくれず、

描いても描いても一向に売れない絵が、
貧しいアパートの一室にたまっていくだけ。


でも彼は、あきらめることなく、
アルバイトでコツコツためたお金で、
個展をひらくことにしました。


不安と期待が入り交じった、
そんな気持ちのまま、

さあ、個展の日がやってきました。



でも…、


やはり…、

訪れる人はほとんど無く…、


たまに訪れるお客さんも、

一通り、急ぎ足で眺めただけで、
なんの反応もなく、
また出て行く。

……。



青年は、絶望にも近い気持ちで、

さみしい個展会場にひとり、

ぽつんと佇んでおりました。



そして、無情にも終了の時間がやってきました。

彼は、ため息まじりに、
まったく売れなかった絵を、
1枚1枚、壁からはずし、
さみしく後片付けを始めました。



と、そこに…、


なんと…、


あの美術評論家が現れたのです。



泣く子も黙る、

あの大物評論家が…。



そして、

まだ展示してある絵を1枚1枚、
丁寧に見て廻りはじめたのです。


彼の胸は、
もうもう張り裂けそうでした。

(わかるわかる)



やがて、

一通り見て廻ると、
この先生、彼のところにやってきて、
信じられないようなことを言ってくれたのです。


「この絵を描いたのは君かね?
 いやあ、なかなかいいじゃないか。
 僕には、君の並々ならぬ才能がわかるよ。
 僕が主宰している美術誌で紹介してあげるから、
 もう少し頑張って個展を開いていたまえ。」

「……。」




そして…、

奇跡が起きたのです。


その先生が紹介するやいなや、

個展には、連日多くの人が訪れ、

彼の絵は、あっと言う間に完売。

……。



「これは夢か…。」

彼は、天にも昇るような気持ちでした。



そして、その先生は、
ニコニコしながら最後の日にも来てくれ、

「いやあ、見事に売れたねえ。
 僕の言ったとおりだろ?
 良かった、良かった。
 ま、これからも頑張りたまえ。」

と、またまた信じられないような言葉を、
かけてくれたのです。


青年は、紅潮した顔で、
こう答えました。

「ありがとうございます。
 先生のおかげです。

 で、お礼と言ってはなんですが、
 僕の一番の大作をプレゼントしたいのですが、
 受け取っていただけませんでしょうか。」


そして、裏から1枚の大きな絵を持って来ました。

「この絵は、僕の最高作で、
 これだけは売らずに置いておいたのです。
 これを、ぜひ先生に差し上げたいのですが…。」



すると先生、

ますます満面の笑みになり、

「いやあ、こんな立派なものをくれるのかい。
 そりゃ、ありがとう。
 さっそく我が家の居間に飾っておくよ。」


そして、その大きな絵を抱えて去って行きました。



よかったですねえ。

この青年の喜びが伝わってくるようです。



さらに数日後、

この先生から青年のところに、
またまた信じられないような電話がかかってきました。

「いやあ、君かね。僕だよ。
 実は今度の日曜日に、
 家(うち)で、ちょっとしたパーティーをやるんだがね。
 パリ中から、いろんな著名人が、
 たくさん集まるんだよ。
 もしよかったら、君も来ないかね。」

「ほんとですか!?」


……。




そして、日曜日の当日。

彼は緊張の面持ちで、
この先生の邸宅を訪ねました。


予想どおり、
大きなサロンは、
おびただしい数の来客であふれ、
その中には著名人もたくさんいました。

彼は、どうふるまったらいいのかわからず、
ただただ呆然と、
華やかな社交界の光景を眺めておりました。


と、そのとき、

先生が彼を見つけ、
ニコニコ顔でやって来てくれたのです。

「やあ、君か。来てくれたんだね。
 ほら、あそこを見てご覧。
 ちゃんと君の絵が飾ってあるだろ。」


なるほど、

大きなサロンの一角に、
確かに、この青年がプレゼントした絵が、
堂々と飾られておりました。



しかし…、


それを見て…、


彼は大いに落胆してしまいました。



なぜなら…、


それは…、



上下が逆さまだったからです。


……。





どうです。


これぞ、“究極”、ではありませんか。


みんなが幸せになれる、

究極の無責任!!



えっ?

でも、この青年は大いに傷ついたのだから、
「1.人を傷つけない」
の、無責任3大原則に違反してるじゃないか。

ですって?



なんの、

彼はこの先生のおかげで、
世に出ることが出来たのですから、
傷つくなんて、もっての他です。

感謝以外に、なにがありましょう。


そもそも、

どっちが上で、どっちが下だか、
わからないような絵を描く、
この青年のほうが悪いのです。


それに、

ひょっとすると、

上下を逆にしたほうが、
芸術的には価値のある構図だったのかも、
しれないではありませんか。

……。




はい、こんなお話でした。



このように、

芸術とは曖昧なもの。

そして、無責任なものなのです。


でも、それでいいのかも…。


その作品を「芸術」とみるか、
「そうでないもの」と見るかは、

個人の自由であって、
人にとやかく言われるものでは、
ないように思います。

……。




さあ「芸術の秋」ですよ。


みなさん、

かって気ままに、

いろんな芸術に触れながら、

大いに有意義に過ごそうではありませんか。


(パチパチパチ)




それにしても…、


本音を言わせてもらえば…、


いくら芸術には、

「逆転の発想」が必要だといっても…、



こりゃ、あんまりだわ。


あははは。




とまあ、



無責任に締めくくってみました。



……。




(無責任流芸術論 おわり)






さて次回ですが、


この秋、私が遭遇した、

素晴らしい一品を、

ぜひ、ご紹介させてください。


いやあ、これにはまいりました。

いまだ興奮冷めやらずです。


こんなすごいものにブチ当たっただけでも、

生きていた甲斐があると言うもんです。


乞うご期待です。

……。



では、アレンジに戻るとしますか。


たくさんありますからねえ。



せっせ、せっせ。


いそげ、いそげ。



ふう〜。


………。。。




SHUN MIYAZUMI

woodymiyazumi at 13:04コメント(9)トラックバック(0) 
2010 エッセイ 

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コメント一覧

1. Posted by あん    October 08, 2010 20:49
叔父が、画廊を経営してまして、
折々、絵をくれるのです。

やっぱり、上下のわからないものもありますよね。

「これは、どちらが上?」と聞くと、
叔父は何の迷いもなく
「裏のヒモの位置を見るんだよ」

私は、子供の頃から、物事は裏が大事ということを学びました・・・・
2. Posted by mariko   October 09, 2010 09:01
今日も雨〜
おはようございます。

こんなオチがあったとは。
画家の青年も複雑な心境だったでしょう。きっと逆から見ても構図のバランスとかが良かったのでしょうね。本当の名作かも。

逆と言えば、私の部屋の地デジテレビには映像を反転させるモードがあるのですが、誰がそのような機能を使うのでしょう。当然鏡に映せばノーマルに見えますが。
美容院で? ナ・ル・ホ・ド。。。

先生がブチ当たられたスゴイものって何なのか、気になります。(ワクワク)
3. Posted by ni-na   October 09, 2010 13:57
更新ありがとうございます。

旅から帰ってみれば更新されていて、とっても楽しませていただきました。

そして、「遭遇した素晴らしい一品」…気になって気になって、頻繁にのぞいてしまいそうです。
4. Posted by JUPITER-8   October 10, 2010 19:39
5 例えが少し違うかも知れませんが…レコード制作にしても作る過程での手直しと言いますか、歌詞の一番と二番を入れ替えたり、タイトルを変更したりして、制作者が当初意図していなかった形に変えられたものの、結果的にはそれが功を奏して作品として評価を受けた事もあったと伝え聞きます。ですので私は、作品を制作する事自体、全てが必然性ばかりで作られる訳ではなく、完成に至るプロセスでは偶然性も含まれていると考えます。

よってこの観点から私は、絵描きさんが評論家に絵を逆さまにされて「いい絵だね」と評価された事も、偶然性から生まれた芸術評価だと考え、「逆さまにされたんだから、いっそのこと逆さまで通してやれっ」と頭を切り替え、堂々と胸を張っていれば良いじゃないかと思ってしまいました…。無責任な意見ですみません(^^;)

こんな事を言うと絵描きさんに「芸術家がそんな妥協できるか!」と怒られますね(^^;) でも、どの分野でも、まだ駆け出しの頃は変に芸術家としてのプライドにこだらわず、うまく波に巻かれていた方が得策なのではないかと…。あっ益々無責任ですね(^^;) 失礼いたしました…。

次のシリーズも楽しみにしています!
5. Posted by 只野 通行人   October 10, 2010 21:42
5 よく銀行の粗品で名画カレンダーがありますよね。
油絵の風景画なんかをポスターにしている訳ですが、知り合いでこの絵の中から二つないし三つの部分を抽出して切り取り、例えば松林の絵、船の絵、海の絵に分解し、それぞれを手製の額に入れ、家の中の別々の場所に飾る。それを趣味にしている人がいました。
まあ、公でやると、著作権侵害、作品の改変などになるでしょうが、これも極私的芸術かも?
6. Posted by わらっくま   October 10, 2010 23:45
宮住様、こんばんは。 

"芸術の秋"ですかぁ。

あの猛暑から、いきなり涼しくなって、とても過ごしやすくなりましたね。
突然の季節の変化に、キョトン(@.@)として、いまだに秋がやってきた事が信じられません。^^;

強烈な夏の太陽でしたが、たくさんあったジャミンのライブのおかげで元気に過ごせました。感謝!感謝!です♪
「この秋、私が遭遇した素晴らしい一品」
いったい、なんでしょう? 興味津々です。

新しいアレンジ。
とっても楽しみです。いつ頃、お耳にかかれるんでしょう?

明日は久しぶりに美術館へ娘と行ってきます。
無責任流に鑑賞してまいります。(^-^)v

7. Posted by 栞   October 11, 2010 02:00
宮住先生、こんばんは。

可笑しくも哀しい、シュールなオチです〜(>_<)

「表現したい気持ち」と「伝えたい気持ち」、
作り手側にはバランスが必要なのかもしれませんね。

芸術は幅広く、さまざまな作品がありますが、
作り手と受け手のキャッチボールが成り立ってこそ、
存在意義があるような気もします。

だから受け手側もしっかり感性を磨いて、
傑作が「猫に小判」にならないように、ですね‥
8. Posted by SHUN MIYAZUMI   October 11, 2010 19:30
みなさん>

こんばんは。
今回も楽しいコメント、ありがとうございます。

この1週間は、家に籠(こも)りきりでした。

12/2「渋谷オーチャード・ホール」での、
辛島美登里さんのコンサートに、
ジャミン・ゼブがゲストで呼ばれておりましてね。

その共演曲のコーラスアレンジを、
やっていたのです。
斉藤由貴さんとの共演もありまして、
その数、なんと7曲…。

ひや〜。

でも、無事に完成。

ほっ…。

で、これからは、
ようやくジャミンのクリスマス曲に、
とりかかります。


と、その前に、
明日は「日本橋三越」で、
久しぶりのジャミン・ライブがあるので、
明日は、ちと休憩。

彼らとも久しぶりですし、
ファンのみなさんともお会いできるので、
きょうは遠足前の子供のような浮き浮き気分です。

お天気もよさそうですしね。

いやあ、楽しみですわい。

ではでは。

近況報告でした。
9. Posted by サリィ   October 13, 2010 19:25
5
宮住さん、おつかれさまでした♪
辛島さんのゲストライヴは、7曲もですか!?
わたくし、どストライク世代ながらお名前しか存じませんでしたが、辛島さんがブログでジャミンをご紹介下さったのをきっかけに、ファンになりました!
あの動画の、クールな♪ウェルカム・トゥ・ジャミン・ゼ〜ブ♪の作曲も宮住さんですか?
う〜ん、いかすーっ!
共演が楽しみだわ〜

芸術には造詣が深くなくて、大したコメントはできませんが、私の判断基準は、好きか嫌いかですねぇ…
ジャミンを語る時、色々なうんちくが言葉になって出てきますが、結論は、
「だって好きなんだも〜ん♪」

昨日の三越は少ししか拝聴できませんでしたが、ステージの正面でにこやかに見守ってらした宮住さんを拝見して、ジャミン・ファミリーが益々大好きになりましたよ (*^o^*)
もうすぐ、デビュー3周年ですね!!!

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