December 17, 2011

ルネ・シマール その2


「東京音楽祭」か…。

なつかしいですねえ。


その年の国内外のトップ・アーティストたちが、
東京は『日本武道館』に一堂に集まり、
最も優れた楽曲とパフォーマンスを競うという、

なんとも絢爛豪華で贅沢なイベントでした。


その当時、

「テレビ音楽業界のドン」と畏(おそ)れられていた、
TBSの大プロデューサー渡辺正文さんが提唱し、
1972年に始まった音楽祭で、
その第一回のグランプリは、
雪村いづみさんの歌った「私は泣かない」という曲。

聞くところによると、
これもアルファが絡んでいたそうです。


私がアルファに入社した1974年の第三回からは、
急激にその規模も巨大になり、
世の注目を浴びるようになったようです。


しかも、この年は、
スリー・ディグリーズという大物が、
「天使のささやき」という楽曲でエントリー。

また、特別ゲストに、
フランク・シナトラが参加するということもあって、
外国の音楽メディアもどっちゃり来日。

そして日本からは、
布施明、五木ひろし、ザ・ピーナッツ、
といった人気歌手たちが本戦出場。

いやあ、まさにお祭りムード一色です。


「ドン渡辺の春、ここに来たれり」という感じですかね。

(ここだけの話ですが…、
 この渡辺プロデューサーという人ね…、
 怒るとね…、
 ギョロ〜っと凄い目をひんむいて、
 あたりかまわず大声で恫喝するんです。

 恰幅もよく、
 まるで映画『ゴッド・ファーザー』の、
 ドン・コルレオーネみたい。

 だからアダ名は “ギョロなべ” と裏では囁かれている。
 いやあホント、恐かったですよ、怒らせるとね。

 だけど…、頭は…、ヅラ…。)


わ〜っ、言っちゃった。

どうしよう、どうしよう…。

……。。。


ま、いいか。

どうせ天国までは聞こえまい。

それに私、けっこう可愛がられてたし。

あははは。



というわけで、

この年のグランプリの本命は、
なんといってもスリー・ディグリーズです。

ま、今の言葉でいうところのガチ。

ガチもガチ。
ガチガチの大本命。


だから…、

各レコード会社は、
グランプリは早々にあきらめ、
それに続く金賞、銀賞狙いで、
様々なプロモーションや審査員対策に奔走。

とまあ、そんな感じだったようです。

……。



ところが…、

わがアルファがエントリーした、
カナダの無名の少年ルネ君が、
予想を大幅に覆(くつがえ)して、

なんと、グランプリを獲得してしまった!


そして表彰式で、

フランク・シナトラさんから、
グランプリのトロフィーを渡されると、
その愛らしいお目目からは大粒の涙がポロリ。。。


「わ〜〜〜〜〜〜〜っ。」

またまた場内、割れんばかりの大拍手。


でも、なにはともあれ、
これから私がお世話になる会社にとっては、
最高の結果になったわけですから、

よかった、よかったです。

めでたし、めでたしです。

うんうん。

♡♡♡



というわけで翌朝、

鼻歌なんぞ歌いながらお気楽気分で出社してみると…、


と……、


これが大変なことになっていました。

……。



とにかく、会社中の電話という電話が、

鳴りっぱなしなのです。


そして私より早く出社していた先輩たちが、

汗だくになって電話を取って応対しています。

(何ごとなの…?)


すると総務のS課長が大声で、

「宮住くん、何をモタモタしてるんだ!
 早く君も電話を取ってくれよ。
 もう朝から大変なんだから。」

「……???」



で、仕方なく私も1本の電話を取る。

「はい、アルファ&アソシエイツです。」


すると電話の向こうから、
小学生か、はたまた幼稚園かと思(おぼ)しき、
可愛らしい女の子の声で、

「ルネいますか〜。」

「……。」


私は、仕方なくこう答える。

「ル、ルネはここにはいないんですよ〜。」


すると、その女の子も負けてはいない。

「じゃあ、ルネはどこにいますか〜。」

「……。」


そんな間にも、
デスクの上の電話という電話は鳴りっぱなし。

リ〜ン、リ〜〜ン、リ〜〜〜〜ン、リ〜〜〜〜〜〜ン。

リ〜ン、リ〜〜ン、リ〜〜〜〜ン、リ〜〜〜〜〜〜ン。

リ〜ン、リ〜〜ン、リ〜〜〜〜ン、リ〜〜〜〜〜〜ン。


「あのお、ちょっと待っててね、
 別の電話も鳴りっぱなしだからね。
 はい、アルファ&アソシエイツです。」

と、また別の電話を取ってみると、
これまた女の子の声で、

「あの〜、ルネは今何してますか〜。」

「あのねえ、ルネはここにはいないんですよ。」

「じゃあ、どこにいるんですかあ?」

「……。」



そして、どの社員もみな、

同じような受け答えで苦闘しているのでした。


総務のS課長も、Mさんも、T女史も、
社長秘書のE女史も、
制作のA課長も、N君も、S君も、
ディレクターのAさんも、Kさんも、
録音課のY課長も、Sさんも、K君も、

みんなみんな、

「ルネは、今ここにはいませんよ〜。」
の応対に大わらわ。



そうなんです!

これはもう「パニック」といって差し支えありません!!


なにしろ取る電話、取る電話、みな、

「ルネ」「ルネ」「ルネ」「ルネ」「ルネ」……。


キャ〜〜ッ、助けてくれ〜〜〜。

(だめ)



で、学校が昼休み時間になると、
そのパニックはさらに凄いものになりました。

今のように携帯電話の無い時代ですから、
みんな学校の近くの、
公衆電話からかけてくるんでしょうか…。

「ルネは何が好きですか〜。」

「ルネは今、何食べてますか〜。」

「ルネは今日何時に起きましたか〜。」

「ルネの好きな食べ物はなんですか〜。」

「ルネの好きな番組はなんですか〜。」



あのね!

いい加減にしなさい!


と言いたいところですが、、、

彼女たちに情けは無い。

……。


次から次へと情け容赦なく襲って来る電話の嵐。

(す、すごい…。)



ひどいのになると、

「あの〜、ルネと代わってください。」

「…‥…。」


あのね、

あーた、フランス語しゃべれんの?


そう、カナダといっても、
ルネの住むケベック州はフランス語圏なのです。

もう、この大胆さといったら…。

……。



そんな中、
またしても電話を取ると、

「バカヤロー、お前の会社はどうなってんだー!
 朝から全然電話が繋がらないじゃないか!
 いいかげんにしろ!!!」

「あー、やっと繋がった。
 いったいアルファはどうなってんのよ。
 例の件はどうなってんのよ。えっ。
 ちょっと村井社長に代わりなさい。
 えっ?いない?
 バカヤローーーー!!!!」


たまに、繋がった仕事の相手先からは、

こんなお叱りを受けるありさま。

なにしろ携帯の無い時代ですからねえ。

……。



こうして、

この日のアルファ・スタッフは夜遅くまで、

誰一人まともに仕事をさせてもらえず、

食事にも行けず、


ヘロヘロになるまで、一日中、

少女たちのお相手をさせられたのでした。


あ〜あ…。

……。



もしも、これを読んでる女史のなかで、

あの時、アルファに電話した覚えのある方は、

大いに反省しましょうね。


私たちは、

まるで仕事にならなかったのですからね…。

(ブツブツ…)

……。



というわけで、

大学を卒業して音楽業界に入ったばかりの私は、

このとき…、


“一夜にして生まれるアイドル・スター” の凄まじさを、


嫌(いや)というほど思い知らされたのでした。


ふ〜…。


……。



(つづく)




ああ、やっと更新できました。

事故もあったし…。


でも、おかげさまでこの2週間、
最高に充実した日々を送らせていただきました。

名古屋地区では、
たくさんの新しいお客さんとの出会い。

久しぶりの手羽先ちゃんとの出会い。
(また30本食ったぞ〜。わははは。)


さらに、一昨日、昨日は、
これまた本当に久しぶりに、
関東圏のジャミン・ファンのみなさんに、
お目にかかることが出来ました。

至福のひとときでした。


感謝…。

……。



そして、

いよいよ、

12/22、23日「@恵比寿ガーデン・ホール」

『X'mas Fantasy 2011』が迫ってきましたね。


いろんなことがあった、
いろんなことが “ありすぎた” 2011年を、
最高の形で締めくくりたいと思っています。

ジャミンと私たちスタッフの今年の総決算です。


みなさん、来て下さいね。

感動の一夜(二夜?)をご一緒しましょう!


というわけで今宵は、

久しぶりに吠えたいと思います。

月に向かって…。


ガオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!


(お前はオオカミか…)


……。



SHUN MIYAZUMI

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2011 エッセイ | マイ・ディスコグラフィー

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コメント一覧

1. Posted by shimazaki rune   December 17, 2011 22:28
宮住様

お仕事でお疲れのところ、ルネについてのエッセイを
お書きいただき、誠にありがとうございます!
心より御礼申し上げます。

それにいたしましても、7月1日は
散々な1日だったのですね★
その日ルネ・シマールご一行は、
カナダの建国記念日で、カナダ大使館の
パーティーに招待されていたんですよね。
ちなみに私は。その時はまだルネを
知りませんでしたから、電話でご迷惑は
おかけしておりません(ホッ…)。

そして、ALFAレコードには、1983年、
第12回東京音楽祭世界大会のプレゼンターで
ルネとナタリーが来日した時伺っております。
あの時、ルネのちびっ子物まねで関西で優勝し、
歌手デビューに向けてレッスンに入っていた
ペンフレンドとルネの来日を求める署名をして
彼女がTV局かどこかに送っていたのですが、
ルネの来日に少しは影響していたのでしょうか?
ALFAレコードでは、ナタリーとクルティエ氏にしか
会えなかったのですが、あの時は大変お世話に
なりました(宮住先生はいらしたのでしょうか?)。

話は変わりますが、現在ルネは、カナダで来年7月3日から
ミュージカル『雨に唄えば』にコズモ・ブラウン役で出演し、
CDも発売される予定です。

「ルネ・シマール その3」を
楽しみにしております!



2. Posted by pat   December 18, 2011 08:07
宮住先生、おはようございます。

楽しく読ませて頂いただいております。正直、私はルネさんのことを全く存じ上げませんでした。名前も今回の初めて聞きましたし、写真も見たことありませんでした。動画を見ましたが、本当に天使のような美しい歌声ですね。その時代に生まれていたら、私も同じように一夜にして熱狂的ファンになったでしょうね。ジャミンに出会った時も同じ気持ちでしたし。当時の女の子達のようにシュン・コーポさんに電話したくなりましたよ。

「あの〜、コージローさんは今どこにいますか〜?」
「スティーヴさんの好きな食べ物は何ですか〜?」
「シモンさんは今日何時に起きましたか〜?」
「レンセイさんに代わって下さい〜」

…もちろん、冗談です(笑)

名古屋もセイジョーもとても楽しかったです。毎回毎回違った音楽で、驚かされます。恵比寿は一夜のつもりでしたが、二夜にしてしまいました。楽しみにしております。
3. Posted by 26.5   December 18, 2011 17:27
5 今宵のN響は、リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」が紹介されますよ…。
4. Posted by mariko   December 19, 2011 10:09
こんにちは

素晴らしい歌唱力のルネさん。
まさにシンデレラ・ボーイですね。
それにしてもメディアの力って凄いです。
音楽祭の翌日にそれだけの反響があるなんて。
若い女の子たちが一生懸命アルファの電話番号を調べて授業の合間に掛けてくる、なんか純情で微笑ましいです。

でも会社は大変でしたね。うれしい悲鳴といっていいのかしら??


いよいよ本年を締めくくるクリスマス・ライヴ・ウィークになりました。
家の大掃除をさっさと済ませておでかけしましょ。
ポカポカと暖かい日差しがありがたいです。

 
5. Posted by TOMATO   December 20, 2011 20:28
宮住先生、大爆笑とともに読ませていただきました
「東京音楽祭」でシナトラさんに祝福されるルネ君の姿やスリーディグリーズの歌声が記憶のかなたから蘇ってきました。
もちろん私はアルファさんに電話なんかしてませーん事務所に電話するなんて考え付かず、やっと買った「明星」をなんども読み返していたものです。
今も昔も女のパワーは侮れませんね。毎回長蛇の列ができるジャミンのサイン会の光景しかり…。

先日のセイジョーライヴは本当に楽しい企画で、おおいに楽しませていただきました。久しぶりに見た四人は充実した秋を過ごしたと思わせるいいお顔でした
恵比寿のクリスマスも期待度MAXで臨みます!会場で先生の笑顔を見つけるのも楽しみにしています
6. Posted by ミンミンゼミ   December 21, 2011 17:21
宮住先生

こんばんは。
またもや、名古屋にもお伺いさせていただきました。
私もランチタイムに15本手羽先を食べましたよ〜(^_^)v
まだまだ入る感じでしたが、肝心のライブで眠くなっては大変なので控えておきましたが(笑)。

ついに明日から恵比寿ですね。patさんと一緒に、とても楽しみにしています。今回は、母とその友達にもクリスマスプレゼントということで、チケットを渡しています。二人ともコーラスをやっているので、きっと楽しんでくれると思います。

年を締めくくる、素晴らしいライブになることを、心よりお祈りしています。

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