2008年04月20日

新ジャンル「USB幼女」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 07:37:17.28 ID:UFjhJnWO0
男「頼むよッ! レポートの内容を思い出してくれ!」
USB「わかったー、ちょっとまっててー」

数分後
男(えらい読み取りに時間がかかるな……)
男「おい、早くしてくれ!」
USB「ふぇぇ……かんじがおおくてよめないよう」


USB幼女

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 07:43:20.99 ID:UFjhJnWO0
男「買い物に行っている間に、かわりにこの写真をプリントアウトしておいて欲しいんだ。……できるよな?」
USB「もちろん! ひとりでできるもん!」
男「じゃあ任せた」

一時間後
男「ただいま――」
USB「ねーねー、じょうずにかけたよー」
 手渡されるクレヨンで描かれた風景画。
男「まさか……プリンターは?」
USB「わたしがかいたのー」
男「そうか……上手だな……」
USB「でしょー」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 07:47:17.32 ID:UFjhJnWO0
USB「あ、まどのそとにねこさん!」
窓に近寄る幼女
USB「ふぎゃ!」
男「おい! どうした!?」
USB「………………」
男「大丈夫か!? しっかりしろ!」
パソコンをよく見ると、USBケーブルが外れている。
男「バスパワー電源……?」



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 07:55:04.77 ID:UFjhJnWO0
男「レポート書き直しかよ! コーヒーでドーピングして一気に書き上げるぞッ!――あちっ!」
USB「だ、だいじょうぶ!?」
男「ああ、冷めるまでちょっと持っていてくれるかな?」
USB「おーけー」

USB「ふーふー」
男「ん?」
USB「ふーふー」
男「何しているんだ?」
USB「のみやすいようにねー、さましてるんだー」
男(USBコーヒーウォーマーの逆なのか……?)



13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 08:08:21.22 ID:UFjhJnWO0
男「さて、USBのフォルダの中身でもみるか……マイコンピュータ、リムーバブルディスクっと……」
USB「らめっ! しらないひとにはふぉるだのなかをみせませんっ!」
男「USB……」
USB「じーっ」
 目を見つめ始めるUSB幼女
男「いきなりなんだよ、恥ずかしい……」
USB「じーっ。
 しらないひとじゃありませんでした、ほんとうにおとこさんです」
男(こいつ……虹彩認証も出来るのか?)




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 08:16:50.97 ID:UFjhJnWO0
男「容量も少なくなってきたし、要らないファイルを削除するか……」
USB「!?」
 男、USBのフォルダの中を見る。
男「えーと、なんだこの沢山のファイルは?」
……
2008年4月17日
2008年4月18日
2008年4月19日

男「ダブルクリック……と」
 きょうは“おとこ”おにーちゃんにねこのがぞうをいっぱいみせてもらった。いつかこねこにもふもふしたいとおもった。
USB「らめー! わたしのえにっきをけしちゃ、やなのー!!」
男「痛ッ! たたくなって! そんなことしないからさ」
USB「ほんとうに?」
男「ああ、本当さ。だけれども……」
USB「?」
男「これからはBMPじゃなくて、jpgで保存しような……」



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 08:41:06.07 ID:UFjhJnWO0
男「そういえばさ……USBって差し込む方は“オス”だよな……」
USB「ビクッ!」
男「まさか……そんなわけないよな……」
USB「そ、そんなこと……」
男「なんてな。USBケーブルでつながっているお前は正真正銘の女の子だよ」



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 08:52:13.99 ID:UFjhJnWO0
男「またケーブル抜いて倒れている……」
 ケーブルを差し込む男。
USB「ひゃあっ!」
 びくっ!……と痙攣するUSB
男「それにしてもお前、最近ケーブル抜きすぎだぞ? それにぼんやりして、調子でも悪いのか?」
USB「///……そ、そんなことないもん!」



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 09:12:57.84 ID:UFjhJnWO0
USB「どきどき……」
 男がいない隙を狙って、インターネットをしているUSB。

・USBメモリの使い方
 1,図のようにメモリをUSB端子に差し込みます。

・トラブルシューティング
 USB端子を何度も出し入れした際に、メス側の接触口が広がってしまった場合の対処法について

男「ただいまー。なに熱心に見てるんだ?」
 高速でwindowsキー+Dを押して、ブラウザを最小化させるUSB。
USB「///……なんでもないもん」



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 09:43:04.53 ID:UFjhJnWO0
男「怪しいなー、一体どんなサイト見ていたんだ?」
USB「ひみつー」
椅子から降りると同時に、足下をふらつかせるUSB
USB「きゃっ!」
抱きとめる男
男「……大丈夫か?」
USB「うん……大丈――」
男「おい――」
USB「ふぇ……、ちょっと――くらくらしただけ――」
意識が朦朧としだすUSB
男「まさか――USBにコンピューターウイルスが!?」
USB「わたし……しんじゃうのかな……?」
男「待ってろ! 今すぐ駆除してやるから!」
男「くそッ! ノートン先生は一体何をやっているんだ! しっかりしろ! USB!」
USB「…………」
男「USB?」
USB「――おにいちゃん、だれ?」
USB「ここはどこ? わたし――いったいだれなの?」



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 10:04:58.41 ID:UFjhJnWO0
男(まさか、USBメモリの中のデータが全てフォーマットされてしまったのか……?)
 全てを失って、脅えているUSB。
男「全部俺のせいだ――、アップデートとバックアップさえ怠っていなかったらこんなことには……」
謎の声「あまり自分を責めるな」
男「あなたは――もしかして、ノートン先生!?」
ノートン「いかにも。」
男「なぁ、ノートン先生。あいつを救ってよ! いくらでも払うからさ!」
ノートン「いくらでも……と、今おまえは言ったな?」
男「?」
ノートン「だったら耳をそろえて300万、お前に出せるならその娘を救ってやろう」
男「そんな……法外だ!」
ノートン「ハードディスクのデータリカバリーにかかる値段を考えたら、妥当だとは思わんか?それにお前は、その子を諦めて、新しくUSBメモリを買い換えることだってできる」
男「このぼったくり野郎!」
ノートン「私は強制はしない。頭を冷やしてよく考えなさい」
立ち去るノートン先生の姿が見えなくなるまで、
男はその場で呆然としたまま、ただ立ち尽くしているだけだった。



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 10:14:30.33 ID:UFjhJnWO0
男「そんな金――あるわけ無いじゃないか。あの藪医者め――」
男「やっぱり、もう諦めるしか――」
全てに絶望して、諦めようとした時だった。かつてUSBがプリントアウトした絵日記を見付ける男。

男「これは――あいつの絵日記――」

2008ねん4がつ16にち
きょうはおにいちゃんといっしょに、ねこさんのどうがをたくさんみた。
わたしはねこをかいたいと、おにいちゃんにいったのだけれど、「うちじゃかえないからだめだ」……とことわられた。

男「こんなことなら、猫に触らせてやれば良かったな――あれ?」
片付けようとした男は、重なっていたもう一枚の絵日記を見付ける。
男「これは一番初めの絵日記……?」



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 10:32:39.20 ID:UFjhJnWO0
2007ねん11がつ4にち

まっくらなひきだしはとてもこわくて、つめたい。
わたしはもう、やくにたたないというだけで、すてられた。
そして、こわれてしまうまで、
ずっとここにいなければいけなかった。

だけれどもきょう、まっくらなせかいがあかるくなった。
だれかが、わたしをたすけてくれた。

そのひとはわたしにいってくれた。
「まだつかるよ」――って。

わたしはおぼえていられることもちょっとで、
たくさんめいわくをかけてしまうかもしれない。
けれど、きょうあったことだけは、
わたしはぜったいにわすれない。わすれたくない。


男「USB……」



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 10:47:44.86 ID:UFjhJnWO0
――あいつと始めて逢った日のことを、僕は思い出した。

男「32MBのUSB……? 親父のかな? まぁレポート書くのにはまだ使えるはずだ」
男「それ、接続! 認識しろ!」
起動するUSB
USB「……」
男「どーした?」
 男の顔を見て泣き崩れるUSB
USB「ひっく――こわかったの……とても……。ごめんなさい……なきむし、すぐにやめるから……。それに……」
男「それに?」
USB「わたし……やくたたずだから。
すこししかものをおぼえられないの。
だから、めいわくにちがいないの……」
なにも言わずに手をUSBの頭の上に乗っける男
USB「?」
男「心配するなって。確かに容量不足だけれどな、お前はまだ使えるよ。
どんなものだって、役に立たないものなんてないんだから。
――ばあちゃんの受け売りだけれどね」
USB「ありがと……わたし、がんばるから。いっしょうけんめいがんばるから」
USBが始めて笑顔を見せた瞬間だった。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 10:56:41.53 ID:UFjhJnWO0
男「USB……お前はまだ終わってなんかいない!」
僕はノートン先生の元に走った。
男「ノートン先生! 払うよ! あんたが言った言い値で構わない! 何年かかっても300万円、返してみせる! 俺には、あいつが必要なんだ! 」
ノートン「お前のその覚悟の言葉が聞きたかった。今すぐ治療を開始しよう!」
カバンからなにかを取り出すノートン先生。
男「それは!?」
ノートン「ノートン・システムワーク。こんなこともあろうかと、自動バックアップをしておいたのだ! 大丈夫、あの子の失われたデータは復元できる!」
男「ノートン先生!」

そして記憶を取り戻すUSB
USB「……おにーちゃん?」
男「まったく……迷惑かけやがって」
USB「でも、どうして、わたしなんかを……?」
男「///……お前に記録しておいたレポート、無くなっちゃ困るんだよ……」



62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 11:16:39.91 ID:UFjhJnWO0
――数年後

男「ノートン先生――これが最後の、あいつの治療費です」
ノートン先生「確かに受け取ったよ
それにしても、君にこんな根性があるとは思っても見なかったな」
男「ええ――大変でした。学業やアルバイトにね」
ノートン「君の噂は聞いているよ。
なんでも“現在の、書き込み制限のあるフラッシュメモリーに替わる新技術に関する論文”だそうじゃないか」
男「ええ、実用化されれば、今よりも安全にデータを保存できる記録媒体が生まれるんです」
ノートン「そうか。じゃあその技術を元に会社でも興すのかね?」
男「いえ――日本に、ベンチャーに気前よく金を出してくれる人なんて、そうそういませんよ――」
うつむく男。
ノートン「そうだ、これはわたしからのプレゼントだ」
 ノートン先生から手渡されたのは一冊の貯金通帳だった。
男「これは……?」
ノートン「ベンチャーを立ち上げるときに、少しは足しになるだろう」
男「受け取れません――これはあいつの治療費です!」
ノートン「誰が返すと言った? わたしは個人的に、君に投資をしようと思っただけだよ」
男「ノートン先生……」



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 11:19:17.75 ID:UFjhJnWO0
タイピングをする音が、部屋に響いていた。
男が熱心に日曜の朝早くから、文章を書いているようだった。

『ひょこひょこと、あいつは今も未だ32MBのちっちゃな身体で部屋を彷徨き回っている。
無線USBになってからは、ケーブルが引っこ抜けることもなくなった。
1TBや2TBが当たり前の今の時代でも、32MBのこいつは元気に働いていた』

USB「おにーちゃん! すこしはやすむの!」
男「もうこんな時間か」
USBに邪魔されて、タイピングする手を止める男。

USB「ふーふー。……はいっ!」
男「ありがとう、USB」
男は手渡されたコーヒーを一口飲む。
USB「ねー、ねこさん、さがしにいこー」
男「ああ、そうだな。でもこれが書き上がったらね」
USB「おにーちゃん、なにをかいているのー?」
USBがディスプレイをのぞき込む。
男「ああ、備忘録みたいなものだよ」

そのテキストエディタの一行目には、こう書かれていた。
「USB幼女」――と。
それは数年後にUSBメモリ業界に革命を起こすひとりの男の、始まりの物語である。

終わり



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 11:20:37.73 ID:2cNtrWMp0
>>65
全俺が泣いた
GJ



73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 11:28:16.37 ID:9YVJKuMeO
なんか鳥肌たった
GJ



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/04/20(日) 11:30:54.27 ID:ApOJEiqV0
なんだこの完成度はw乙


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この記事へのコメント
  1. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年04月20日 16:52
  2. ちょっとUSB(32MB)買ってくる
  3. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年04月20日 17:23
  4. ノートン先生の優しさに全俺が涙した。
  5. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年04月20日 17:49
  6. ※1
    俺の分もお願い
  7. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年04月20日 20:50
  8. このスレのおかげで眠ってた256MBUSBを復活させました!
  9. Posted by   at 2008年04月20日 21:36
  10. なんか感動したwww
  11. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年04月21日 01:13
  12. とりあえずこの作者がブラックジャック大好きなのは
    よく分かった。
    が、せめてセリフはもう少しイジった方がいいんじゃないかと思った。
    違和感なく1本にまとめた腕は見事だと思う。
  13. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年04月21日 04:26
  14. これはなかなかの良スレ