2008年09月25日

( ^ω^)変わった人達のようです その1

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 19:44:08.74 ID:CcPdhQurO
僕の前には扉があります。
その扉は七つ。
扉の先には、僕の友人達。

僕はその扉の先に居る友人達と、お話をします。

その友人達は皆、少し、変わっています。


それは傷だらけの少女を愛する彼だったり。

それは双子を深く愛しすぎた彼、彼女らだったり。

それは拘束を至福とするふたりだったり。

それは年齢と言う大きな壁を越えてしまった彼と幼女だったり。

それは死体となった恋人を愛する彼女と、死体になっても恋人を愛する彼だったり。

それは人語を解する獣を愛した彼女と、その彼女を愛した獣だったり。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 19:47:10.16 ID:CcPdhQurO

彼、彼女らは僕にとって大切な友人です。
けれど、彼らは少しだけ変わっているのです。

何がと一概には言えない、少なくとも友人としての人柄は普通な彼らは、確かに
確かに少し、変わっているのです。

どうか皆さん、僕の友人達を見てください。
聞いてください。
感じてください。


彼らが、どのように“変わっている”のかを。



『( ^ω^)変わった人達のようです』



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 19:50:04.29 ID:CcPdhQurO

僕はパイプ椅子に座っていました。
僕の後ろと左右には白い壁、上には白い天井。電気はありませんが、とても明るい、ひどく無機質な空間です。

ぎしり、がたり。
パイプ椅子を軋ませながら立ち上がると、僕はのんびり歩き始めます。
素足から伝わるはずの床の冷たさは感じず、ひどくまったいらな空気が僕を包みます。

白い上着に白いシャツ、白いパンツを纏った僕は、ほんのり栗色をした髪以外、この白い世界に溶け込んでいる事でしょう。

ひたひたひた。
冷たさを感じない足音だけが、白い通路に響きます。


少し歩き続けると、突然、開けた空間に出ました。
左右の壁はひどく遠く、ひどく広く。
向こう側の壁には、数字が刻み込まれた鉄の扉。

右から1、左端に7。
それぞれの数字が刻んである扉達は、殆んど同じ顔をして無機質に通せんぼ。

僕は顎に手を当てて少し悩んでから、どの扉を開くか決めました。


ぷろろーぐ、おしまい。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 19:53:03.65 ID:CcPdhQurO

それは、傷付いた少女の傷を愛する男の話。

それは、ひどく優しい男が愛する傷の話。

それは、そんな男を愛してしまった少女の話。

傷を嘗める舌先は、いったい何を求めているのでしょうか。



『ひとつのきずで。』


始まりは一本の細い傷。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 19:56:06.03 ID:CcPdhQurO

扉を開けると、そこには見知った友人の姿。
昔からの友人である男と、その恋人である少女が居ました。

二人はパイプベッドに向かい合って座っており、男の右手には、薄い刃のカッターナイフ。
左手には、少女の右手。


僕はそんな二人の姿に微笑んで、そっと声をかけました。


( ^ω^)「おっおっ、相変わらず仲良しさんだお」

( ・∀・)「あ、やあ内藤、どうしたんだい?」

(#゚;;-゚)「こんにちは、内藤さん」

( ^ω^)「こんにちはだお、ちょっと遊びに来たんだけど……お邪魔かお?」

( ・∀・)「ははっ、そんな事はないよ。ね、でぃ」

(#゚;;-゚)「はい」

( ^ω^)「なら良かったお、もしお邪魔なら言ってほしいお」

( ・∀・)「本当に邪魔ならもう追い出してるさ」

(;^ω^)「お……そ、そうだおね……」



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 19:59:13.49 ID:CcPdhQurO

( ・∀・)「ねぇ、内藤」

( ^ω^)「お?」

( ・∀・)「君は僕が非人道的だと思うかい?」

( ^ω^)「……でぃちゃんの事、かお?」

( ・∀・)「ああ、そうだよ」

( ^ω^)「…………」

( ・∀・)「内藤?」

( ^ω^)「聞かせてもらえるかお? どうして、あんな事をしたのか」

( ・∀・)「どうして、こんな事をするのか?」

( ^ω^)「そうだお、良ければ、僕に聞かせてほしいお」

( ・∀・)「うん、うん、そうだね……うん、じゃあ、お話ししよう、かな」



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:03:00.64 ID:CcPdhQurO

カッターナイフを持ったまま、彼は身体の向きを変えてベッドに腰掛けました。
僕はベッドの向かいにあるパイプ椅子に腰掛けて、両膝に肘を乗せて彼の言葉を待ちます。

彼はカッターの刃を見たまま目をそらさず、ゆっくり、薄い唇を開きました。


始まりは、一本の細い傷だった。


( ・∀・)「僕はある日、彼女の手首についた傷を見つけた」


彼と彼女は、近所の知り合いと言う薄い薄い関係でした。
たまに顔を合わせたら挨拶をして、たいして会話もせずに別れる。
ただの、近所の人。


( ・∀・)「それは、夕方。彼女がね、泣いていたんだ、公園で」



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:06:05.76 ID:CcPdhQurO

大人しくて可愛らしい彼女はまだ子供と言える年齢で、彼は大人と言える歳。
そんな二人には大した共通点も何も無い。

けれど、彼はある春の夕方に、公園のブランコで泣く彼女を見つけました。


( ・∀・)「汚れたセーラー服はボロボロで、彼女は俯いて唇を噛み締めていた」


彼がどうしたのかと彼女に近寄り、顔を覗き込むと、彼女は驚いた様に顔をあげて、慌てて涙をぬぐいます。
その涙をぬぐった時、長袖のセーラー服の、袖口から覗く

赤い、細い、傷跡。


( ・∀・)「僕はひどく驚いて、彼女の手首を掴んでしまった」


未だ赤い体液がぽつりと垂れるその傷に気付いた彼は、細く折れそうな白い手首を掴んで、彼女を問いただしました。

彼女はまた、泣きそうな顔で俯いてしまいます。
聞いても何も言わず、手首を振りほどこうともせずに俯く彼女。

困り果てた彼は、止血のために、と
手首の傷に、己の唇を押し当てました。



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:09:06.46 ID:CcPdhQurO

( ・∀・)「彼女はまた泣いてしまったけれど、彼女の血はね、とても、甘く感じたんだ」


彼女の前に跪いて、傷に舌を這わせる彼。
その姿に、彼女はひどく驚いて、何も言えなくなってしまいました。

けれど

傷を嘗められる彼女が感じた物は、言い様のない快感。
傷を嘗める彼が感じた物は、言い様のない恍惚。


( ・∀・)「背筋がね、ぞわりとしたんだ。血の甘さと、彼女の表情に」


背筋をぞわぞわのぼってゆく快感と恍惚、それは所謂悦楽に似た物。
ただ体液を嘗めただけ、嘗められただけ。

それなのに、ひどく「きもちいい」。



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:12:18.90 ID:CcPdhQurO

( ・∀・)「ただ顔と名前を知っているだけの彼女を、僕は、……そう、そうだ、陳腐な言い方かも知れないけれど、……運命の相手だと、感じた」


その「きもちよさ」は、お互いの中が、少しだけ「かわっている」から。
僕には彼らがどうかわっているのか、よくは分かりません。
けれど、おかしいのではなく、少しかわっている事は分かります。


( ・∀・)「その日はすぐに別れたんだ、下腹の辺りが熱くなるのを必死でおさえながら、別れた」


彼はそれから毎日、夕方になると公園に彼女の姿を探しに行きました。
けれど彼女の姿はどこにもなく、彼は肩を落として帰宅します。

そんな日々が一月ほど続いたある日、彼は彼女を見つけました。


( ・∀・)「久々に会った彼女はひどく窶れていた、長い袖から覗く手には、手の甲には、傷があった」


公園の、滑り台の裏側。
そこで膝を抱えて蹲っていた彼女に歩み寄り、彼はそっと、手を伸ばしました。



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:15:06.41 ID:CcPdhQurO

顔を伏せる彼女の髪を優しく優しく撫でてやれば、彼女は驚いて顔を上げます。
そして、驚いていたその表情は、すぐに泣きそうな顔に変化しました。


( ・∀・)「僕は驚いたよ、彼女が、本当に泣きそうな顔をするから。
      だから、僕はそっと彼女を抱き締めたんだ」


覆い被さるようにして彼女を抱き締めた彼。
その背中に腕を回してしゃくりあげる彼女。

彼は彼女が泣き止むまで、何度も、何度も頭と背中を撫でていました。

そして


( ・∀・)「僕は、彼女を連れて帰った」


セーラー服の彼女を連れて帰った、独り暮しの彼。
彼は彼女をベッドに座らせ、すぐに彼女の袖を捲りました。

手首だけでなく、手の甲や腕にまで広がる細い傷。
さかぶたも剥がれたような古い傷から、うっすらと脂肪の見える真新しい傷まで。


( ・∀・)「彼女の傷はみんな綺麗で、どうしようもないくらいに愛しくて、全ての傷に口付けて、舌を這わせた」



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:18:19.90 ID:CcPdhQurO

彼女は少し困った様な、それでもどこか幸せそうな顔で、左腕の傷を嘗める彼の髪を撫でます。

二度目になる行為、舌が蠢く行為は、二人にとっての至福。


( ・∀・)「彼女は虐められていたらしくて、
      弱い自分を叱る為に自分を傷付けていたらしい。
      虐めて居た人達が憎いかと聞けば、憎いのは弱い自分だけだと答える。
      そんな彼女が、僕は、好きだった」


彼女は彼の部屋から出る事は無くなりました。
もちろん監禁されている訳ではなく、彼女が彼の部屋から出たくない、と言ったのです。

彼はそれを大いに喜び、必要最低限の外出以外は、ずうっと彼女の側に寄り添うようになりました。


( ・∀・)「外に出たくない、ここに居たい。
      出会ったばかりと言える男の部屋で、彼女はそう言ったんだ。
      そこらに居る尻の軽い女とは違う、もっと、
      切実な彼女の気持ちは、胸が締め付けられるほどに愛しくて嬉しくて」


そして彼は

そっとそっと、彼女の手首に傷をつけました。



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:21:15.34 ID:CcPdhQurO

( ・∀・)「僕がカッターの刃を彼女の手首に置いた時、彼女は驚かなかった。
      既に知っていた様な顔で、微笑んで、こう言ったんだ」


『私の傷と……私の事、好きになってくれて……ありがとう…………ござい、ます……』


( ・∀・)「僕は彼女を愛していた、もちろん彼女そのものも。
      そして、彼女の傷を」


ゆっくりと描かれる赤い線、玉の様に膨らんで、ぷつりと流れる赤い体液。

カッターを静かに置いた彼は、ゆるゆると、彼女の手首に舌を這わせて血と唾液を混ぜる様にねぶります。


( ・∀・)「ひどく神聖な儀式の様だった。彼女は幸せそうに僕を見ていて、
      僕も傷から彼女に視線を移して、笑った。
      幸せだった、どうしようもなく。
      だから僕はその日を境に、彼女の右手首に傷を増やしていった」


彼は口の回りを赤く濡らして、初めて彼女の唇に、己の唇を押し当てました。
ぬち、と唾液と血とが混ざった体液が音を立てて、二人の間で糸を引きました。



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:24:06.58 ID:CcPdhQurO

『私は、あなたが……好きだから……
嘗められるのが、好き、だから…………少し痛いけど、平気、なんです……』

ささやく様な声が、甘くて細い声が、彼の脳髄にじわりと広がって、染み込んで。


「君が好きだよ、君の全てが好きだよ、君の傷が、好きだよ……だから、どうか、傷付ける事を許して欲しい」

低いけれど優しくて、 懺悔を孕んだ彼の声は、彼女の傷から染み入る様に、血と共に全身を駆け巡る様に。


『ごめんなさい、弱くて……ごめんなさい、悪い子で……ごめんなさい、
 私は、傷つけられて嘗められるのが、好き……ごめんなさい、ごめんなさい……』

 懺悔。


「ごめんね、こんな事をして……ごめんね、傷付けて……ごめんね、僕のエゴで……ごめんね……
 ……僕は君が好きなんだ、君の傷が、何故だか何よりも好きなんだ……ごめんね、ごめんね……」

懺悔。


赦す人間は居やしないのに、二人は懺悔を繰り返す。

そして、ひとつの結論へ。



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:27:02.83 ID:CcPdhQurO

彼は彼女を抱き締めながら、そっとそっと、カッターを握って、振り上げて──────


( ・∀・)「僕の話は、これだけだよ」

( ^ω^)「どうして、そんな、」

( ・∀・)「僕は彼女を愛しすぎた、彼女は僕を愛しすぎた。
      いつかは引き裂かれるだろうと、分かっていたんだ。
      もちろん、いけない事だとも分かっていた」

( ^ω^)「だから……」

( ・∀・)「だから、終わらせた。あの場で終わらせるのが、幸せだと分かっていたから」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「非人道的だと笑ってよ、内藤。僕は今、でぃとこうしているのが、ただただ幸せなんだ」

( ^ω^)「笑わないお、罵りもしないお……幸せなのが、一番だお」

( ・∀・)「……ありがとう、内藤」

( ^ω^)「じゃあ、僕は失礼するお。お邪魔しましたお」

( ・∀・)「うん、またね─────」



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:30:07.15 ID:CcPdhQurO

僕は席を立ち、手を振ってから部屋を出て行きました。

ぱたん、と扉を閉めて、ひっそり溜め息を吐きます。


僕は彼女の傷付いた笑顔が好きだった


最後に耳に届いた、彼の言葉。

傷、か。


どうか、幸せに。


『ひとつのきずで。』
おしまい。



42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:33:04.96 ID:CcPdhQurO

ひたん。

1と書かれた部屋から出て来た僕は、目を瞑って俯きます。

ああ、彼は幸せなんだなあ、と。

噛み締めるように、ゆっくりと目を開けて、隣の扉を見ました。

左隣の扉には2。
少しだけ移動して、ドアノブを捻ってドアを開けました。



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:36:08.95 ID:CcPdhQurO

それは、双子を愛した彼らの話。

それは、同じ顔をした二人の話。

それは、半身に抱いた愛の話。

彼らのひずんだ愛情は、何を求めるのでしょうか。


『ふたつのこころ。』


始まりは、生まれ落ちた二つの心。



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:39:03.98 ID:CcPdhQurO

ドアを開けた先には、1の部屋と同じベッドと椅子。
ベッドには彼、兄が。
椅子には彼、弟が座っていました。


( ^ω^)「兄者、お邪魔するお」

( ´_ゝ`)「あ、内藤じゃないか、どうしたんだ?」

( ^ω^)「遊びに来ましたお」

( ´_ゝ`)「野郎同士で遊ぶってもなあ……まあ良いや、座れよ。弟者、こっちに」

(´<_` )「ああ、わかった」

( ^ω^)「失礼しますお」

( ´_ゝ`)「失礼されます」(´<_` )

(;^ω^)「おー……」

( ´_ゝ`)「ははは、そんな困った顔するなよニヤケ面、まあ何もないけど寛いでくれ、茶なんか出さないけどな」

(;^ω^)「最初から期待してないお……」

( ´_ゝ`)「これは手厳しい」



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:42:21.14 ID:CcPdhQurO

( ´_ゝ`)「さて」

( ^ω^)「お?」

( ´_ゝ`)「話があるんじゃないのか? こんな所に来て、何もないじゃ済まさんさ」

( ^ω^)「お……」

( ´_ゝ`)「言ってみろよ内藤、聞いてやるさ」

( ^ω^)「……僕は話をしに来たんじゃなくて、話を、聞きに来たんだお」

( ´_ゝ`)「なんと、逆だったとは……しかし俺の話なんぞ楽しくも無かろうに、俺は弟者と違って話が下手だ」

( ^ω^)「それでも」

( ´_ゝ`)「なんなら弟者にタッチ……ん?」

( ^ω^)「僕は、兄者に聞きたいんだお」

( ´_ゝ`)「…………」

( ^ω^)「聞きたいんだお」

( ´_ゝ`)「……強情な奴め、しょうがないからワガママ野郎の期待に応えてやるか……さ、何を聞きたい? 恋愛遍歴か?」

( ^ω^)「んなもんどうでも良いお」

( ´_ゝ`)「ひっでぇなお前」



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:45:34.86 ID:CcPdhQurO

( ´_ゝ`)「じゃあ何が聞きたいんだよ……恋愛遍歴じゃないなら何だ、性癖か」

( ^ω^)「だからどうでも良い……いや、少し、良くないかも知れないお」

( ´_ゝ`)「お前に恋はしないぞ」

( ^ω^)「余計な事言ってると鼻もぐお、聞きなさいお」

( ´_ゝ`)「うわこえぇ……何だよ、言えよもう……」

( ^ω^)「どうして、あんな事をしたか」

( ´_ゝ`)「……何で、こんな事をしているか、か」

( ^ω^)「聞かせてくれる、かお?」

( ´_ゝ`)「…………良いよ、話が下手で混乱しても知らんからな。
       非人道的だって、非生産的だって、笑っても良いからな」

( ^ω^)「笑わないお、僕は、笑わないお」

( ´_ゝ`)「よく言うよニヤケ面め……」


始まりは、すれ違う二つの心だった。



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:48:15.58 ID:CcPdhQurO

彼らは双子でした。
まるきり同じに近い身体、そしてぴったり同じ事を言い、考え、感じるその心。

彼らは、双子でした。
クローンの様な、存在。


( ´_ゝ`)「ええと、な……何が始まりだったのか…………いや、生まれた時からある意味、始まってた、のかな」


兄は好奇心が旺盛で人当たりの良い、外向的な性格。
弟は人と関わる事を避けて本の世界にのめり込む様な、内向的な性格。

それでも二人はとても仲が良く、兄が弟を連れて遊び回っていました。
弟はそんな兄が好きで、兄もそんな弟が好きでした。


( ´_ゝ`)「ただ、一番大きな変化があったのはー……中、いや、高……んん? ……まあ十代の半ばくらい、か……?」


おとなしい弟を連れ回す明るい兄。
そんな関係の二人は歳を重ねる毎に増して行く、ある違和感に気付きました。

それは、お互いに全く恋愛話がないと言う事。

二人は、誰かに恋をすると言う事を知りませんでした。



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:51:07.86 ID:CcPdhQurO

( ´_ゝ`)「いや驚いた、よくよく考えてみりゃ弟者も俺も恋愛沙汰には無縁でな。
       それを弟者に言ったらやっぱりポカンとしてさ、
       もうアホ面アホ面、俺も似たような顔だけど。
       それを言ってからな、なんか、こう……ぎくしゃくって言うのか、しだしてな」


その話題を境に、二人の間に生まれた壁。
端から見れば相変わらず、弟で遊ぶ兄、その兄に冷たく当たりながらも楽しそうな弟。
変わらなく見えて、変わった二人。

不思議と、違和感は膨らむばかり。


そしてある日、夕暮れ時。
弟の部屋に入ってきた兄に向かって、弟は兄に言いました。

『俺に構わないでくれ、関わらないでくれ』

兄は突然の言葉に目を丸くするばかりで状況が飲み込めず、弟の言葉の冷たさと意味を理解しきれず、驚いた顔のまま弟に追い出されてしまいました。


( ´_ゝ`)「あれが高校生、くらい、か? 驚いたさ、
       色恋沙汰に無縁って分かった時よりも驚いた。
       今まで弟者は何だかんだ言いながら結構楽しそうにしてたんだ、
       それなのに、いきなりもう構うなって。
       怒るとか悲しむとかよりも、驚きのが勝ってな、何も言えなかった」



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:54:03.53 ID:CcPdhQurO

翌日から、兄は弟に言われた通り、構う事を止めました。
理由は分からないけれど、弟が言うならばしょうがない。

兄は困った顔で、それでも笑って、弟との関わりを少しずつ断ち切って行きます。


弟に話し掛ける事はなくなり、弟の話題を出す事もなくなり、弟と共通の趣味も手放して。
兄はただ、弟に言われた通りに構わないように、関わらないように。
学校で顔を合わせても、目を合わせる事は無く。


二人の間の距離は、みるみる内に広がって行きました。


そうなれば周囲の人間もおかしいと思い、兄にその事を問いますが、
兄はただ、困った様な笑顔だけを返しました。
何かを言うわけでもなく、ただ、困った様に細い目を更に細くして、笑っていました。


頑なに何も答えようとしない兄の姿に諦めたのか、周囲の人間は弟の事を聞くのを止めました。


急に遠くなった兄弟の距離。
その大きな距離をそのままに、数年の月日が流れました。



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 20:57:31.48 ID:CcPdhQurO

その数年は、弟を失ったとも言える兄にとって、苦痛の日々でした。

毎日顔を合わせて、話して、いじくって、遊んで、笑って。
幸せだったそれら全てを失った兄は、何を糧として生きれば良いのか分からなくなっていました。


そうして気付く事は、兄の弟に対する依存。
己の半身である弟が居たからこそ持てていた自己が、ゆっくりと足元から崩れて行く感覚。

兄はそれでも以前と同じように明るく振る舞います。
けれど兄が明るく振る舞えば振る舞うほど、その笑顔は悲しみは色濃くなるばかり。


( ´_ゝ`)「寂しかったなあ、あれは。
       俺は弟者大好き兄者って奴だからさ、
       弟者が、こう……側から居なくなるっての、想像すらしてなくてな。
       どうすれば良いのか分からないけど、
       取り敢えず笑ってた、笑ってりゃまあ良いと思ってた。
       でも結局、阿呆みたいに寂しくて、我慢するしかなくてなぁ」


ベッドの中で一人、身を抱いて訳の分からない感情に苛まれながら枕を噛んで。
毎晩毎晩、何がいけなかったのか、嫌われていたのかと自問自答を繰り返して。

弟は、変わらず部屋にこもって本を読み、必要最低限の事はせず、言いもしません。
兄と関わらなくなっただけで、弟の閉鎖された世界はさらに狭まったみたいでした。

端から見れば明るい、当人からすれば孤独でしょうがない兄の毎日。
その毎日に、打たれる終止符。



60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:00:14.46 ID:CcPdhQurO

( ´_ゝ`)「でもな、俺が大学に入ってすぐの頃、これは忘れてないぞ。
       この時な、弟者が俺の部屋に来てさ、ビックリしたよそりゃあもう、
       何年も口をきいてなかった弟が俺の部屋に来たんだから。
       俺ビックリしてばっかりだな、ははは」


あの日と同じ様な夕暮れ時。
弟は兄の座る椅子の側までやって来て、項垂れていました。



『どうしたんだ? 弟者』

「ぁ、に、じゃ」

『何だ何だ、情けない声を出して』

「俺は、どう、すれば良いんだ?」

『話が全く見えん、取り敢えず座れ』

「兄者、俺は、」

『ん?』

「ぁ、あ……ああ、もう……」

『何だ気持ち悪いな……』



61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:03:16.68 ID:CcPdhQurO

『ごめん、な、兄者』

「は?」

『ご、め……』

「何だよ気持ち悪い、気にするな気にするな」

『あ、ぁ』

「どうしたんだ弟者、お前はもっと冷静に突っ込む奴だろう? 今日は様子がおかしいぞ」

『俺は、俺は……兄者、が、兄者を、』

「俺を?」



兄者を殺したい。



『…………は?』

「どうすれば良いんだよ、どうすれば良いんだよ兄者、もう嫌だ、もう嫌なんだ!!」

『お、おい、時に落ち着け弟者、ちゃんと説明しろ。そんなに俺が嫌いなのか?』



64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:06:27.18 ID:CcPdhQurO
『違う、違うっ!! 逆だ、逆なんだ! 俺は兄者が好きなんだ、だから殺したいんだ!!』

「お、弟者? ええと、……俺にはまだ、何が何だかよく分からないんだが……取り敢えず落ち着け、うん。
 で、あー……好きとな?」

『好きだよ、兄者が』

「あ、お、おう、俺も弟者が好きだからな、うん」

『兄弟としてではなくだ』

「……なん、と……え? あ、そ、そうなの? いいいいつから?」

『知らん、ずっと前からだ。兄者の首とか、指とか、耳とか、唇とか、鎖骨とか。好きなんだ』

「それ何てフェティシズム……」

『しょうがないだろう、好きなんだから』

「うんまあ、そうなんだけどさ……」

『なあ兄者』

「ん?」

『気持ち悪いと思うか? 双子の弟に告白されて』

「いや、別に?」



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:09:09.83 ID:CcPdhQurO

「……え?」

『いや、俺も弟者好きだしな』

「……だから、兄者」

『兄弟としてではなくだ』

「…………兄、者?」

『当たり前だろう、双子なんだから』

「は……はは、はははっ、なんだよ、俺がこんなに悩んで、兄者と距離を置いてた、のに」

『ははは、流石だよな俺ら』

「ああ……流石だよな、俺ら……」


やっと一つに戻れた二人は、泣いていました。
やっと一つになれた二人は、笑っていました。


二人でベッドに潜り込んで、久し振りに交わす言葉は、どれも幸せに満ちていました。
二人は笑って、幸せを言い合いました。



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:12:05.99 ID:CcPdhQurO

そして兄は問いました。

「俺を殺したいのか?」


そして弟は答えました。

『いや、今は、殺したくはない』


またも兄は問いました。

「そうか、なら、殺してほしいか?」


またも弟は答えました。

『ああ、兄者に、殺されたい』


そうして兄は、静かに静かに、弟の首に手を掛けました。

今が幸せなら、今で止まれば良い。


ぺきり。



70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:15:16.96 ID:CcPdhQurO

( ´_ゝ`)「さ、これで話はおしまいだ、満足か?」

( ^ω^)「どうして、そんな、」

( ´_ゝ`)「俺はな、弟者な依存してたんだ。
       弟者もまた、俺に依存してたのかな。
       男同士の近親相姦のオチに、救いがあるわけないだろう」

( ^ω^)「だから……」

( ´_ゝ`)「だから止めたんだ。もう俺は弟者と一つになりすぎて、
       混ざって、俺が弟者なのか兄者なのかも分からなくなった。
       頭がおかしいんだと自分でも分かっていた、だから俺は、止めた」

( ^ω^)「……」

( ´_ゝ`)「なあ内藤、俺はな…………いや、もう、良いか……」

( ^ω^)「……じゃあ、僕は失礼するお。話を聞かせてくれて有り難うだお、兄者」

( ´_ゝ`)「本当に、軽蔑も笑いもしないんだな」

( ^ω^)「当たり前だお。……じゃ、兄者、また」

( ´_ゝ`)「ああ、有り難う、内藤…………俺は─────」


ぱたん。



71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/24(水) 21:18:33.51 ID:CcPdhQurO

俺だって、殺したいほど、愛していた。


扉を閉める時に聞こえたその言葉に、僕は小さく、きつく、奥歯を噛み締めました。

ああ、彼もまた、幸せなのだなあ、と。


背筋をぞわぞわ
彼の言葉が、絡み付く。



『ふたつのこころ。』
おしまい。



( ^ω^)変わった人達のようです その2に続く

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