2008年12月25日

ハルヒ「メリークリスマス!」その2

ハルヒ「メリークリスマス!」その1の続き

140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 01:25:43.48 ID:L0vyFpLX0
『それとこれとは別よ。世の中、割り切れないことは多々あるんだから』

という電話越しの詰問口調で、ハルヒが寝起きの俺へと波状攻撃を仕掛けてくる。
前日の運動疲れと、今朝方にようやく終止符を打ったパーティの余韻。
それらから醒める暇もなく家のベッドで眠りについていた俺は、
昼時に掛かって来て一向に鳴り止まない着信音に苛まれ、休息から引きずり出されたのである。



「だから、何が?」

よく回らない頭で防戦一方だった俺は、ここらで語調を荒く変化させ、攻勢へ移ることとした。

『昨日、あんたは何処で何をしていたの?』
「それを訊いてどうする気だ」
『別に、大したことじゃないわ』
「所用だって言ってるだろ。人のプライベートにまで足を踏み入れてくるなよ」
『ふーん。あんたさ、あたしに嘘とか吐いてなぁーい?』
「何も。俺のことを信用していないのか?」
『信用はしているわよ。でも、それとこれとは別。割り切れないことなの』

意味不明の理論展開をまたも繰り返しかよ。訳の解らん洋楽曲をエンドレスリピートしている気分だ。

『……まあ、いいわ。それじゃあね』
「そうかい」
『あ、そうそう。一つだけ教えといてあげる』

うふふ、と悪戯を企てる子供のように笑ったハルヒが、ぼそりと呟いた。

『谷口の奴ね、彼女が居たんだって。だから昨日は、放課直後から忙しかったらしいわ』

じゃあね、と嫌に引き際の良いハルヒに、俺は寒気すら覚えてしまった。



145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 01:40:14.80 ID:L0vyFpLX0
押し問答から脱した俺は、緊迫した空気を吹き替えるべくカーテンを開け放つ。
ああ、なんとも眩しいクリスマス当日、晴れ渡った空からの日差し!

といっても、俺は寝直すんだけどな。

それじゃあオヤスミ、と横になった所でまたも着信が来たわけだ。
誰だよまったく。なになに、古泉の野郎か。
シカトで通してもいいところではあるが、恐らくそうはいかないんだろうな。

「はいよ」
『こんにちは』

という挨拶にも演技を通した陽気さが感じられない。
どうやら相手も眠いらしい。なんとも、ご苦労なこった。

「どうしたんだよ」
『御伺いしますが、涼宮さんから何かを問われませんでしたか?』
「問われたな。ってことは、お前もか?」
『ええ、その通り』
「やれやれ。あの時、適当に吐いた嘘が見破られちまったよ」
『困ったものです』
「仕方がないだろうが。俺の隣に居たのが、所用で居ないはずのお前らだったんじゃあな」
『それもそうですが……いくら急場すぎたとはいえ、各所にボロを残しすぎたような気もしますね。
 とにかく、いつもの場所でお待ちしております。一時間後で』

随分と一方的な通達なこったい。
それならシャワーを浴びて、飯は集合場所の駅前喫茶で頂くとするか。



148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 01:58:18.92 ID:L0vyFpLX0
「うーっす」

なんて具合に体育会系ばりの挨拶で皆へと到着を報せる。
駅前喫茶の角席には既に、古泉、長門、朝比奈さんの三名が揃っているようだ。

「あれ、佐々木はどうした?」
「用があるから先に帰るとのことです。必要事項は僕が承っておきましたので」

古泉が端的に付け加えた。
ま、佐々木は佐々木であちらの活動があるんだろうしな。
それにこちらの事情に深く巻き込んでしまっては、第二次大戦を引き起こし兼ねんだろうし。

「あ、すみません! ハンバーグ定食を一つ」

店員へ注文してから席へ着く。
他の皆もそれぞれに昼食を摂っていることから察するに、時間に追われているようだ。
俺は一応、確かめておく。

「古泉、お前、体は大丈夫なのか?」
「ええ、長門さんのお陰さまで」

名前を呼ばれたせいか、長門はパフェを頬る手を止めてこちらを窺ったままに静止した。
いや、お前は気にしないで食べていいぞ。

「あれほどに同時多発的な閉鎖空間は経験したことがなかったもので、移動だけでも一杯一杯でした。
 それも閉鎖空間内だけには留まらず、あと一歩で外へと踏み出される寸前でしたからね。
 我々も必死というものです。クリスマスムード一色の街中にひとたび神人が躍りでれば、大参事は免れませんから」

まるでイブを支える裏方役だな。大変なこった。



153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 02:19:20.50 ID:L0vyFpLX0
それでまずは古泉と別れ、支援するべくの長門も古泉に同行していくこととなった。
ちなみに古泉がハルヒに電話を掛けたのは、ちょうど閉鎖空間が発生し始めた瞬間のことである。
あまりの事態急変にハルヒの身を案じたから、ということらしいが果たして本意はどうだかね。

「そう勘ぐられても答えに窮してしまいますね。
 物的証拠を示せない以上、信用して頂かない他には潔白の示しようもありませんし。
 それに僕、腕が飛んじゃったんですよ? あれには流石の僕も驚いてしまいましたよ」

飯が不味くなりそうな話題を笑顔で語るな。
長門が居なきゃ、お前の腕には今頃ハエが集っていたことだろうに。

「僕も男ですからね、武勇伝というものを語りたくて仕方がないんですよ」
「俺に構わず壁に向かって話してくれよ」
「おや、冷たい方だ。しかし長門さんとは本当に多芸な方なんですね」

だから手を止めなくていいぞ、長門。

「位相がズレ、遮断状態にあった涼宮さんの携帯電話へ向けて、発信されたのですからね。
 それも、地面に落ちていた瓦礫を携帯電話へ造り替えてですよ?」

同意を求められても俺には頷くことしか出来ないんだが。

「これは失礼。とはいえ、長門さんは咄嗟の嘘が苦手なようですがね」

やれやれ。
しかしこれから先も問題は山積みなんだろうから骨が折れそうだ。
……おっとと、ようやくハンバーグ定食のご到着か。待っていたぜ。



155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 02:42:50.50 ID:L0vyFpLX0
「ところでどうして、こんな面倒な事態へと発展しちまったんだろうな?
 俺達はアレだろ、元はと言えばイブに期待感を膨らませたハルヒの想いが、
 何かを引き起こすと踏んだから街中を警邏していたわけだろ?」

その提案をしてきた張本人、古泉が言を取る。

「当初はその予定でした。あくまでパーティまでの時間つぶしとしてですね。
 ですがどうにも不穏な状態……と言いますか、既に”予兆”があった為に、
 あの場所から離れざるを得なかったというのが現状です。
 故に、僕や長門さん、朝比奈さんは出席の断りを入れたと。となると、大元の原因はあなたですね」

古泉にピシャリとフォークで示された。

「俺が悪いのかよ?」
「そうは断言できませんが、あの時点であなただけでも涼宮さんの元へと戻っていれば、
 恐らく、今回のような大層な事態へとは発展しなかったことでしょう」
「そうは言われてもな、お前等だけを残して俺だけ楽な思いができるかよ。
 俺だって団員なんだから。何か出来ればいいとの善意で、あの時は動いてたんだからさ」

まあ、謝っておくが。

「いえ、結果的には良い方向へと転がったのですから考えこまずに良しとしておきましょう。
 それから涼宮さんの”予兆”ですが、アレは恐らくパーティ以前の計画段階から始まっていたのかもしれません。
 秘密裏にしたいという強い想いで隠匿されてはいましたが、本心ではもしかすると……。
 いや、やめておきましょう。ここでの僕はあくまで一般人。人の心を読み解くことなど到底できやしないんですからね。
 ともかく、落ち度はそれに勘付けなかった僕達SOS団員の全員にあったわけです。
 クリスマス・イブというワードは、『特別な日だ』という暗示やプラシーボ効果に近いものなのだと推測します。
 もちろん、その心理的効果が彼女にとっては重大な事態を引き起こす撃鉄なのですがね」



156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 03:00:05.34 ID:L0vyFpLX0
お前って、よくもまあそんなにハルヒの心理状態が分かるもんだな。

「何も解ってなんかいませんよ。あくまで、事実に沿って後付しているだけです。
 もし僕が100パーセント彼女のことを理解できているのなら、事故は未然に防いでおきますから。
 さらには団員としての枠組みを超えた、親密な関係にもね。おっと、これは僕なりの冗談ですよ?
 さて、強引に纏めてしまいますが、誰だって他者へと成代わることはできません。
 僕の推測が正しいのか悪いのか。その答えは涼宮さん本人のみぞが知る訳です」

古泉は難しい顔つきを見せながらコーヒーを啜る。
確かに、こいつが何を考えているのかは俺には分からない。
つまりは、こいつにとってのハルヒも、それと同じことなのかもしれない。
ってことはだ、こういうことか。

「お前だけに任せずに、俺や長門、朝比奈さんも含めて団長様のご意向を理解するべきってことか?」

古泉がカチャリとカップをおろし、さらに難しい顔付きへと変わった。

「僕は、涼宮さんがそこまで我儘なことを考えていらっしゃるとは思いませんよ?
 単純にう、なんというか……」

言葉に詰まった古泉の代わりに、今まで俺達の話を上の空で聴いていた朝比奈さんが割り込んできた。

「たぶんですけど、その、ちゃんと見て欲しい、と思われたのではないんでしょうか」
「お訊ねさせて頂きますが、その根拠はありますか?」
「根拠っていうかなんというか……昨日の涼宮さんは、いつもより何となくですが優しかったような気がしますし。
 それに柔らかかったような気もします。それから、お茶の味がそんな感じがしたといいますかその……違ったって……」

なるほど。拳で語り合うように、お茶で語りあったと。
って、なんだそりゃ。そんなワケあるかい。あいつが自分で茶を淹れるなんて一時の気まぐれだろうに。



161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 03:49:58.16 ID:L0vyFpLX0
「ですが」

またも古泉だ。
俺は口を噤み、ハンドジェスチャーで先を促した。

「最終的に涼宮さんが居た場所。あれは、閉鎖空間とは似て非なるものでした。
 人っ子一人、そう、閉鎖空間への進入を生業としていた僕ですら踏み入れることを許されず、
 涼宮さん本人以外の他者は全く以って寄せ付けない空間。
 そうですね、この場では拒絶空間とでも仮称しておきましょうか。
 まるで世界が涼宮さん一人だけを切り取り、パラレルへと分岐していくかのような場所。空間。時空。
 それを示す証拠として、彼女と僕達が居た世界の時間の流れにズレが生じていましたからね。
 もしかすると、あともう一歩遅ければ……そう、何か一押しの瞬間までにあなたが到達できていなければ……
 涼宮さんは帰っては来れなかったのかもしれませんね」

その空間とやらに進入できないくせに、どうして連絡は取れたんだ?

「だからこそ拒絶空間なんですよ。涼宮さん本人が拒絶したもの以外は、例外として許されるわけです。
 例えば携帯電話。ノイズで妨害されたものの繋がったということから推察するに、
 拒絶はしつつも最終ラインとして、若しくは連絡は取りたいという根底にあった想いが叶えられたのかもしれません。
 といってもやはり微弱なものだったので、通話には僕達や長門さんの力が必要だった訳ですし、
 ”通話が繋がる瞬間”を待つ必要があったわけです。その瞬間の真実は不明ですが、こちらとしては殆ど運任せでしたよ。
 仮に、涼宮さんが完全に心を閉ざし、拒絶していたとしたら……これ以上は、僕が語るまでもないでしょう」

これであの事態について不審に感じていた一通りの点は、古泉の口から噛み砕かれて説明されたわけだ。
残るは最終的な部分となるが、その点については俺自身が知っている。
なんせ古泉・長門チーム。俺・朝比奈さんチームで行動したんだからな。



163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 03:57:52.15 ID:L0vyFpLX0
といっても、俺にはとても理解できなかったのであるが。
それでも判っている範囲で手短に列記していくと、
ハルヒの居る場所を突き止めるべく朝比奈さんがハルヒとの通話を試み、
相手の現在時刻を聞き出す事で時空間座標を特定した。
この際、どうしても時空間がズレた場所に居たハルヒへと電話を繋ぐ為、
まるで携帯電話の電波を探り当てるように俺達も時空間を飛んだのであるが、
時間的猶予も見境も無く飛んじまった為、
豪雨が降り注いでいた場所へと出くわしてしまい、全身ズブ濡れとなったわけだ。

まあ、結局は古泉が先ほど言った”通話が繋がる瞬間”とやらが判明し、
元の場所へと呼び戻されてから通話を行ったので徒労と終わったのだが。
その時には長門も神人との連戦に次ぐ連戦で全身ズタボロとなっており、
いつかみた対 朝倉の時に近い状況であると共に、
古泉の頬の傷を治す余力すらも残っていないような状態だった。
以前、古泉の機関と長門が属する情報統合思念体は協力関係にあると聞かされた記憶があるので、
不確かではあるが各地でも見知らぬ仲間達が共闘態勢を敷いていたのかもしれない。

で、それが済むと今度はハルヒに近似した力を持った人間、
つまりは佐々木の協力を仰ぐ事で強引に拒絶空間とやらを抉じ開け、侵入し、
朝比奈さんが補足した場所を目指して俺はひたすらに走ったという寸法である。

こうやって言葉にしつつ思い返せば短いもんだな。
二度とはやりたくはないけどさ。



167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 04:13:56.97 ID:L0vyFpLX0
「ごちそうさまでした」

駄弁りながらも着々と食事を摂っていた俺は、合掌を以ってその場を締めた。
他の団員達も食事を終えてしまったようだ。
ってことは、そろそろここから動かねばなるまい。

「ところで、今日の行動目的はなんなんだ?」
「証拠の隠滅。又は隠匿、撹乱」

俺が訊ねると、食事中に会話を封じられていたのがよほど悔しかったのか、
珍しくも長門が即答してくる様を目撃することになった。
ところで何をどう隠匿するんだよ?

「涼宮ハルヒは、わたしたちの行動状況を詳細に書き留めていたことが分かった。
 それは言動や会話時刻だけでなく、その背景状況や相手の心理状態までもを含めた総合的で高精細な物。
 現在、涼宮ハルヒはそのメモを元に大通り方面で訊き込みをしていると考えられる」

なぜ?

「まずは時間的矛盾を衝くと予測出来る。22時を回ると、本来あの場所ではクリスマスソングが流れない。
 次に古泉一樹のアルバイトについて。これの場所と、アルバイトの種別についてを探ると考えられる。
 その他、わたし達4名の目撃情報などの方面からも当然、詮索してくると考えられる」

ちょっと待てよ。

「それって結構、まずいんじゃないのか?」
「……」

長門はコクリと頷いた。



169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 04:28:50.10 ID:L0vyFpLX0
「安心してください。実は各所に協力を要請しまして、情報撹乱の為のスパイを多数泳がせてあります。
 その中には長門さんや朝比奈さん方面からのバックの方々から賛同を頂いた結果、
 互いに協力するという形で動いて貰っています」

古泉が心強い一言を加えた。
しかし、その表情はどう見ても安心しているようには見えない。

「やけに自信なさげだな」
「相手が、相手ですから……」

呟いたのは朝比奈さんだ。

「それにしても、このクリスマスという日の街中には異能者ばかりがウヨウヨしているのかよ。
 ハルヒにとっちゃあパラダイスじゃねぇか。まさにクリスマスプレゼントだな」

再び古泉。

「ですが、どうやら本人はそこまで突き止めてはおられないようでして。
 あくまで僕達が”何か怪しい”という段階でしょうし、
 訊き込みの際も通行人を異端だとは思わずに、至ってありきたりな普通の人としか見ないはずです。
 だから主観的には平凡なままなんですよ。彼女にとってはね。
 というより、そこを見抜かれてしまっては最早どうしようもありません」

とうとう匙を投げやがったぞこいつ。



173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 04:44:02.76 ID:L0vyFpLX0
朝比奈さんの表情が曇る。

「ですけど、始まりがある事には終わりがあるんだと思います。
 たぶんですけど、これが終われば禁則事項ですになるんでしょうね」

大事な部分を禁則されては身も蓋もないというものだ。

「ですが朝比奈さんの言葉には頷けます」

古泉、お前今ので意味がわかったのかよ!?
エスパーか、お前? あ、エスパーか。

「いえ、いつかこういう日が来ると予測はしていたんです。
 いつか必ず、涼宮さんが僕達団員へと疑惑の視線を向け、探りを入れてくることくらいね。
 そもそも今までの僕達は何かにつけて付かず離れず、
 ざっぱに言うなら、重要な事柄からはいつだって涼宮さんを遠ざけ、除け者としてきました。
 そのような状況が長らく続いていたにも拘らず、現状のようなバランスが保てていたことが奇跡なんです」

お前の言いたいことには、俺にも思い当たる節があるな。
自分だけ事情を説明もされずにいるなんて少々、気の毒だと感じたこともあったさ。

「涼宮さんが自身だけの力で真相へと辿り着く。その時がきっと、終着点なのでしょう。
 それは彼女自身が自分の持っている能力を受け入れる瞬間になるとも思います」

つまり?

「だから、その時は……」

古泉は首を振って、「その時が来たら、またその時に話しましょう」を苦く笑った。



175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 04:59:57.07 ID:L0vyFpLX0
だったらだ。

「だったら、どうすりゃいいんだよ? ハルヒはこちらを探ってくるんだろう?
 それに対して、俺達はどういうリアクションを取ればいいんだ?」
「単純明快」

長門がキッパリとした口調で、

「全力で、阻止する」

力強く宣言した。心なしか、ニヤリと笑っているような錯覚すらをも覚えてしまいそうになる。
しかし今日の長門はやけにアクティブだな。病み上がりのハイテンションというものなのだろうか。

「僕も、同意見ですね」
「その、あたしも大方は賛成です……」

おいおい、いいのかよそんなんで?

「なにを仰っておられるのですか、あなたは。これでようやくフェアでイーブンな立場となったんですよ?」

古泉が指を立てて説明を始める。

「今までの僕達は一方的に彼女を騙す側だったわけです。
 それに罪悪感がなかったと言えば嘘になるでしょう。これは嘘偽りではありません。
 ところが今現在の彼女は、僕達を真向から疑って掛かってきているわけです。
 だとしたらこの関係。いえ、この勝負。実に、面白そうだとは思いませんか?」

古泉がいつもとは僅かに異なる、挑戦的な笑みを浮かべている。



176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 05:16:11.06 ID:L0vyFpLX0
やれやれ、そんなことでいいのやら。これから先、今までにも増して大変そうじゃないか。
些細なことで拾い上げた頭痛の種から花が咲き、新たに種を撒き散らかしてしまったかのようだ。

「取り敢えず会計、済まそうぜ。そろそろ急がなきゃならないんだろ?」

俺が団員達を見回したところ、やはり古泉が先に口を開いた。

「そうですね。とりあえず僕は、アルバイトを適当に見繕っておく必要性がありそうです」

古泉から料金を徴収し、次に長門。

「……」

長門から手早く徴収。
はい、次は朝比奈さん。

「あたしは、そうですね。何をしたらいいんでしょうか?」
「余計なことを喋らないように、口を噤む練習からですよ」
「……古泉くんが酷いこと言いました」

こら古泉。あと料金は忘れずに。

「ですが相手が相手なだけに、手を抜いてはどうこうなりそうにもありませんが」
「それは言えてるけどな。あ、会計お願いします!」

うーむ、ここは俺が一つ良策を考え付かねばな。



177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 05:36:10.76 ID:L0vyFpLX0
カラコンと鳴った鈴音に見送られるようにして俺達が店外へと出ると、
高く済み渡った大気と、抜けるような青空からの日差しに包まれた。
外気は身を竦めてしまいそうなほどに寒いけれど、
迷いの感じられない青天を見上げていたら、俺の心持も感化され高鳴ってきたというものだ。

そうだ、こんなのはどうだろうか。

「ちょっといいか、俺は一番効き目がありそうな案を思いついたのかもしれない」

朝比奈さんが目を丸くする。

「どんな案なんでしょうか?」
「ええと、自分が作業をしている時に一番されたくないことって何だと思います?」
「んーと……」

回答へと至りそうにないので俺が勝手に進める。

「自分の邪魔をされることです。それも、今回はハルヒの邪魔をしてやればいいんですよ。
 なぁーに、任せといてください。俺はこれまでハルヒに散々引き摺り廻されてきましたからね。
 今度ばかりは俺が引き摺り廻す側へとまわっても、文句は言えないってもんでしょう」

「それで?」

古泉と共に、長門がほんの僅かな期待の眼差しで俺を眺めている。

「まあアレだ。取りあえず何処かへ遊びに行こう。5人全員でな。
 そりゃもう捜査ごっこなんてやりようがないくらいに徹底的にだ。そうしてりゃあ、じきにハルヒも飽きることだろうよ」



306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:38:48.84 ID:YDzcDW4+0
遊びに行くという傍目にみれば最も高校生らしい時間の使い方を打ち出した俺は、
それなり得意げな顔をしつつも結論へと入った。

「目には目を。歯に歯を。俺達は4人も居るんだから、
 各々が交互にハルヒを引っ張ってきゃ、判定勝ちくらいには持っていけると思うぞ。
 むしろ、俺達が率先して不思議探しとやらをやれば一転した状況に錯乱しちまうかもな、あいつ」

「果たして、あの涼宮さんに通用するんでしょうか」

朝比奈さんは今一つ不安気な様子だ。

「僕は悪くない案だと思いますけどね。
 今までとは違った行動パターンで相手を撹乱するというのは、陽動における常套手段でもありますし。
 何より、現在の涼宮さんの興味が『どこかにある不思議』より、『ここにある不思議』へと変化しているようにも窺えます。
 ここにある不思議とは、つまるところ僕達を指しているのですが」

サラリと根拠を加えた古泉は、果敢なほどに強気である。
長門は、何も言わない代わりに溜めのある頷きで異議なしを表現してくれたようだ。

「実は妙案としても一応、古泉が裸で踊って”不思議”ではなく”ただの変人”でアピールする線も考えてはみた」
「謹んで御遠慮させて頂きます。というか僕、怒りますよ?
 僕サイドの意向としては、涼宮さんに勝つか負けるかは死活問題でもあって大議論が巻き起こっている最中なんですから」
「冗談だよ。そんなことをしてしまえば、却ってハルヒの興味を惹いてしまう可能性が無きにしも非ずだから」
「涼宮さんは常識的な方なんです、それも想像以上にです。有り得ません」
「そういえばそうだったな」



309 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:56:27.39 ID:YDzcDW4+0
よし。

「じゃあ、決まりな。暇そうにしている団長様を見つけるなり、声を掛けてやることにしよう」
「あのぉー……何をして遊ぶのかは決めてるんですか?」
「そんなものは、後で考えることにしましょう。ただ」
「ただ?」

俺は笑いを堪えながら、皆へ向けて下らないアイディアを披露してやる。

「微塵すらも面白味の感じられない、珍妙不可思議な遊びへと誘ってやりましょう。
 蟻の観察とか、通過する車種を列記したりとか、道端にある雑草の食用性についてとかね。
 まずは今まで訳の解らん遊びに付き合わされてきた分の仕返しをしてやらんことには、
 こっちも納得できそうにないし、腹の虫が治まらないってものですから」
「それはやりすぎなのでは?」
「知るか。とことん付き合ってやるだけだ。どっちかが飽きるまでな」

だからハルヒ、覚悟してろよ?



310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:00:13.52 ID:NEbgMH8sO
ハルヒは幸せだな


311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:08:40.17 ID:YDzcDW4+0
いざ、ハルヒの元へ。
目的地が決まった俺達は、脇道に逸れることなく大通り方面へと連れ立って歩いていく。
その途中、俺は佐々木のことについて古泉に訊ねることにした。

「佐々木はなんと言っていた?
 いや、そもそもどうして佐々木をイブパーティの席にまで付き合わせたんだ?」

古泉は先ほどまでの昂揚状態から脱し、説明役としての立場を担う。

「彼女に協力を依頼した根本的理由は、何も拒絶空間への進入が目的だった訳ではありません。
 いえ、確かに彼女しかあの事態を解決できず、他に打つ手がなかったというのは紛れもないことなのではありますが。
 しかし、重要なのはそこじゃあないんです。彼女が拒絶空間へと進入できたという事象なんです」
「佐々木がその空間に進入できたということが重要なのか?」
「はい。何もかもを拒絶した涼宮さんだけの場所。その扉を抉じ開けることができた。
 これはつまり、佐々木さんと涼宮さんの相性が良かったからこそ成し得たのではないかと僕は考えているのです。
 拒絶空間は深層心理に関する空間。だから、上辺ではなく、もっと深い人間性という部分での相性ですね。
 佐々木さんが涼宮さんと類似した力を持っていたからこそ可能だったというのは、表面的な部分にすぎません」

佐々木とハルヒがねぇ。
扱いが難しいという部分では似た者同士ではあるけどさ。



316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:21:48.70 ID:YDzcDW4+0
「似たような力を所持している。それは彼女らが”共通した何か”を持ち得ているからこそなのかもしれません。
 それが何なのかまでは、現時点の情報量からすると推測すらも難しいのですが。
 結論に入りましょう。要するに、あの場所に佐々木さんを引き合わせたのは後のことを考えてと、
 先述した”共通する何か”を探しだす目的と、現在の涼宮さんについてのコメントなりヒントなり、
 とにかく何でもいいので取っ掛かりがを掴めればとの重複した試行実験だったわけです。
 後者については鑑定士みたいなものですね」

それで、佐々木鑑定士はなんと宣われたのでせうか?

「ただ一言、『面白くなりそうだね』と」

あまりにも他人事すぎるコメント。
しかし佐々木ならばそうだろうと納得できてしまう自分もいるから不思議なもんだ。

「一応触れておくが、鶴屋さんにも理由があったりするのか?」
「彼女はまぁ……」

濁す古泉に代わって朝比奈さんが二の句をつぐ。

「単純に暇だったらしいです。あたしも危ないから遠ざけようとは思ったんですけど……」
「そうなんですか。結局、最後まで付き合ってましたからね。
 表向きと振る舞い通りにノリで突っ走る人だからなぁ、あの方は。
 クリスマスなんだからもっと有意義な過ごし方をするべきだと思うんですがねぇ」
「あのー……それを言っちゃうとあたし達も……」
「……」

やっぱ、クリスマスなんて無くなっちまえよ、ちくしょう。



318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:44:24.96 ID:YDzcDW4+0
食後の運動とばかりのウォーキングにも熱が入り始めたところで大通りへと到着し、
クリスマスムード一色に染め上げられた街中には、活気と同じく人並みが溢れていた。
さて、このなかにどれだけの異能と呼ばれる人達がいることやら。
それらについては一般人代表である俺には判断のしようがないんだけどな。

「そういえば、もう一つ言い忘れたことがありました。
 これは長門さんの口から説明して頂くのがいいでしょう」

古泉が手ぶりで長門へバトンを渡すと、長門は黒曜石のような瞳を俺へと向けてきた。
待ってしましたと言わんばかりに(言うわけないだろうけど)長門が口を開く。

「今回の事態は、あまりにも突発的で不可測だった。
 わたしや、情報統合思念体すべてにおいて前兆の観測すらもできないほどに唐突。
 その為に事前対策が施せず、多くの不手際を残し、涼宮ハルヒの疑念を増長させる結果となった」

毎度の事ながら長門に説明されても今一つピンとこない俺ではあるが、
長門にすら予測が不可能だったのは相当に異常であることらしい、というのは今まで経験してきた事柄から察せる。
かつて長門は、自身がおかしくなることすらも予測していたんだからな。

「しかし、それこそが涼宮ハルヒの狙いだったのだと我々は結論付けている」

長門が結論を述べた。らしい。
当然ながら俺が飲下せるには言葉が足りていないので、その先を促す。



321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 02:15:14.02 ID:YDzcDW4+0
「念の為に補足しておきますと、涼宮さんが意図してそれを引き起こしたわけではありません。
 ただ結果論として見てみると、涼宮さんにとってプラスに転んだのでそう考えられるだけです」

ハルヒの肩を持つらしい古泉が、やんわりと補足してきた。
それで長門、そのハルヒの狙いとやらはなんなんだ?

「わたしや古泉一樹、朝比奈みくるから各々の正体を明かす手掛かりを得るのが狙い。
 しかしあの時点での涼宮ハルヒは、今挙げた人物等が異能であることは未知としていた。
 よって、自身が抱いた何かに対する疑念を解消させる布石としての問題提起。それが本件の動機。核心部。
 そしてその心境が変わり、逸れることで、間接的にわたしや古泉一樹、
 朝比奈みくるのような異能と呼ばれる存在の正体を解き明かす方向性へ、涼宮ハルヒは向かっていくと推測される」

一体、探偵ハルヒは俺達をどの程度まで推し量れているんだろうね。
その俺の疑問に長門は僅かに首を捻って黙り込む。どうやら黙秘権を持ち出したようだ。
と、ここで古泉。

「繰り返しとなりますが、概ね怪しいという段階でしょう。
 といっても、最終的には神のみぞ知るとしか申せませんがね」

古泉もお手上げとばかりに辺りの様子を見回している。
人波に潜んだ仲間うちでアイコンタクトでも交わしているのだろうか。
朝比奈さんはというと、クリスマス装飾で彩られた街の様子を、呑気にも好奇露わに楽しまれている御様子だが。

「なるほど、あちらの方向に涼宮さんがいらっしゃるとのことです」

どこから仕入れた情報なのかは不明だが、それを元に古泉が先陣を切って歩きだす。



323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 02:38:16.65 ID:YDzcDW4+0
古泉に誘導されるうち、辺りからは今日という日を祝福するかのようなクリスマスソングが溢れだしてきた。
前日、俺が走り回っていた頃にも同じ曲が掛かっていたのを憶えている。
あの時にはそれを愉しむ暇も余裕もなかったものだが、
こうやってお祭りムードな街中をのんびり遊歩するというのも悪くはないように思える。
ところで団長さんよ、

「こんな所で何やってんだ?」

訊き込み、もとい詰問されていたのか迷惑面を浮かべた通行人に俺が頭を下げ、次いでハルヒに笑い掛ける。
ハルヒはというと余程に虚を衝かれたのか「わっ」と弾かれたように飛び退いたものの、
数瞬で繕って普段通り、きりりとした眉を整え返答してきた。

「あんた達こそなにやってんのよ」
「クリスマスだからな、熱心な団員達は街の様子を視察にきているんだよ」

皆もそれぞれに「どうも」といった旨の挨拶を呈す。

「で、あたしに何か用?」
「一人で寂しそうにしていたから、遊びに誘ってやろうってな」
「馬鹿じゃないの? あたしが寂しがるわけないじゃない」
「そうか?」
「そうよ。とにかく今は忙しいの、後にして」



325 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 02:58:30.13 ID:YDzcDW4+0
「ところがどっこい、そうは問屋が卸さないんだよ」

逃げようとしたハルヒの手を強引に掴み、
俺は幼稚園時代から温めていたネタをここにきて持ち出すこととした。

「サンタクロースっているだろ?
 実は俺さ、幼稚園時代にはアレが偽物であることを見抜いていたんだ。
 コスプレしていた園長の動作がどうにも嘘臭いし、一年で一日しか働かないってのも変な話だからな。
 そう、見抜いていた。いや、正確には見抜いていたのだと思いこんでいたと言い換えよう。
 しかし驚く事に今日な、なんと朝起きた俺が靴下を覗くとプレゼントが入っていたんだよ」

正確には俺が起きたのは昼時で、プレゼントは親経由で妹に渡されたものの御裾分けだったのだが。
まあそれもこの際はどうでもいいことだろう。

「俺は思ったんだよな。SOS団たるもの、本物のサンタクロースを探してみるべきだって。
 ほら、本気で探せば見つかるかもしれないだろ? あわよくばプレゼントも貰えるかもしれないぜ?」

語りつつも、自分でも訳の分からないことを口走っているなと笑いそうになってしまう。
けれどもこれはこれで、吹っ切れてしまえば割と楽しめるのかもしれないな。
現に、俺の眼前で珍しくも困ったような表情をするハルヒを眺めていると、そのような感情に心を擽られるから。

「どういう風の吹き回しかしら、あんたの方から誘ってくるなんて。でもね、あたしは忙しいの。
 というかさ……どうせ、あたしの捜査の邪魔をしにきたんでしょ?」
「捜査? 邪魔? なんのことだか」

俺は古泉から学んだ肩竦めのポーズを披露してやる。



329 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 03:15:55.24 ID:YDzcDW4+0
「とぼけないでよね。あんた達が何かに噛んでるってことは知っているんだから」

陽光にも劣らないギラリとした眼光を宿らせ、ハルヒが俺へと詰め寄ってくきたので、
雰囲気に押された俺は思わず二三歩ほど後ずさってしまう。にしても、恐ろしく鋭い奴だ。
これから先、このドギツイ視線に耐え続けなければならないと思うと居た堪れなくなってくるぞ。

「さあ、本当のことを言いなさい。昨日、どこで何をしていたの?」

ハルヒが本物の探偵のように、俺達の表情一つすら見落とすまいといった様子で、じっとりと探りを入れてくる。
その自信のありようからするに、この問いは聞き込み結果との差異を目的としているのだろう。
この分じゃあ、下手な嘘は言えそうにないな。ならばこうだ。

「そんなこたぁどうだっていい。俺はサンタクロースの方が気になって仕方がないんだ。
 昨日だってサンタさん探しに全力を尽くしていたくらいだしな。なあ、皆もそう思うだろう?」

振り返る。

「ええ、実は僕も幼少時からの疑問でしてね。後学の為にも是非解明をと」
「あたしも実は、本物のサンタさんの衣装を今後の活動に役立てないなぁ〜なんて」
「……」

最後一名もコクリと同意。
俺は機を得たとばかりに続けた。

「団員一同の願いが聞けないってのか? あぁ、冷たい団長様だ」



332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 03:32:14.91 ID:YDzcDW4+0
心底から沁み出してしまいそうになる笑みを、俺は必死に抑えようと努める。
それは古泉、長門、朝比奈さんにしたって同様の面持ちであるはずだ。
ただ一人だけ、状況から取り残されたように唸っているハルヒ。
あとはお前だけだな。

「あんた達、本気で言ってんの? サンタなんているわけないじゃないの」
「それは探してみないことにはわからんだろう?
 仮にお前が拒否したって、俺が今までお前にされてきたように、
 無理やりにでも手を引いて付き合わせてやるから考えるだけ無駄ってもんだぞ」

脅迫めいたことを口にする俺も流石にどうかと思うね。
人間、一度火が点いたら止められないってやつなのかもしれない。

それからハルヒは十二分なほどに迷い、唸り、団員達それぞれを窺い、
長く、そりゃはもう長ぁ〜い溜息を一つ吐いてから決断した。

「わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば。
 あたしはアクティブでパラダイスなSOS団の団長なんだからね。
 団員達の願いとあらば、断れるはずもないわ」
「流石は団長、格が違うな」
「うるさい黙れ」

ハルヒがやれやれと頭を振り、今度は長門を主眼に据える。

「風邪は大丈夫なの?」
「……平気」
「そう、なら良かった」

またも溜息。おいおい、そう面倒そうにするなよな。こっちはやる気満々ってのに。



335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 03:57:22.71 ID:YDzcDW4+0
さて、これで本日の団活内容が晴れて決定されたわけだ。
その名もズバリ、『サンタクロース捜索』。わかり易くて実にタイトルだと思わないか?

「どこがよ。もう少し捻った名称くらいは考えておきなさい」
「悪かったな。これでも、お前のネーミングセンスにあやかっただけなんだけど」
「そーですか」
「そーですよ」
「……で、目的地は決まっているの?」
「目的地ねぇ」

古泉、苦笑い。
朝比奈さん、照れ笑い。
長門、微小に首を傾ける。

やれやれ、俺に任せるという塩梅らしいな。
アドリブは苦手なのではあるが致し方あるまい。

「手始めとしてこの近辺からだな。ま、そのうち行き着けるだろうから気長に行こう」
「はぁー……あんたってホント、無計画なのね」
「お前に言われたくはない」
「あたしならもっと上手くやるのに」
「考えるより動くべきだってのが俺のモットーなんだよ。今この瞬間からだけどな」

ハルヒが威勢を失い、萎びた白菜のように黙り込んだ。
こいつは、なかなかに困らせ甲斐のあるやつなのかもしれない。

「さあ、行くぞ」

ぐずるハルヒに先駆け、俺は歩きだす。団員達も待ち兼ねたように俺へと続き、
置いて行かれそうになったハルヒは慌ててその最後尾を辿る並び。



338 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:27:54.87 ID:YDzcDW4+0
俺が皆を先導していく。
そうしながらもう一度、街の景色を眺めまわした。

普段ならばどこか鬱屈として割り切れない何かを抱えているような街並みも、
この日ばかりは晴天からの日差しも手を貸したことで、隅々までが煌びやかに息吹いており、
日向と日蔭、その陰影もくっきりとしていてコントラストが何処までも映え渡っている。
それらはあまりに俺の心情へと訴え掛けてくる光景なので、直視しすぎれば目が痛くなりそうなほどだ。

次いで俺は、SOS団全員が揃い、連れ立って歩くその様を眺めた。

いつもと同じ、不思議探し。
いつもと違う、真逆の順序。

傍目に見て変わったことと言えば、ただ並び順が変わったという些細なことだ。
けれども明らかに別の、視認することが叶わない深い部分が。
12月24日から25日に掛けてという時間にしては一日に満たない僅かな間に、
随分と変遷を遂げたように感じられる。

それはたぶん、良い方向に。

恐らく、赤い衣装に身を包み、立派な髭を蓄えたサンタクロースとやらは見つからないことだろう。
しかし、もしかするとこの変遷こそがサンタクロースからのプレゼントだったのかもしれない。
少なくとも今の俺は、悪い気がしないのだから。

だとしたら、こう言うしかないだろう?

「メリークリスマス。これからもよろしくな、皆」

本当によろしく頼むぜ、皆。
そして、ハルヒ。お前もな。



339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:32:06.62 ID:YDzcDW4+0

団長編/独りきりのクリスマス・イヴ
団員編/皆へのメリークリスマス




344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:38:43.91 ID:oUIDAeed0
おつかれさま
あの出だしからこの結末へとは・・・
大変面白かったです



345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:41:13.91 ID:daaiewCMO
起きたら完結してたー



347 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:44:53.83 ID:YDzcDW4+0
という訳で長きに渡った物語も終了となります
うまいこと感想でも書こうと思ったが、何も浮かばないんでまあそれもいいかな
ひとまず、この大事な2日間を潰してまで付き合ってくれた人達にメリークリスマス
もう26日になっちゃったけどね

ってことで、また今度あった時にはよろしゅうございます
ではさようなら、皆さん
メリークリスマス



350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 05:25:12.79 ID:Hw+hM34oO
楽しかったよ
今日も明日もまだ仕事があるけど、頑張ってみようかなと思えてきた
ありがとう



353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 07:20:23.45 ID:mU/MF81aO
今全部読んだ
アニメしか知らない俺にゃ佐々木って奴の
顔が浮かばなかったが面白かったです乙でした
皆に幸あれ




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この記事へのコメント
  1. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年12月26日 08:35
  2. 佐々木はちょうどイフカルトの過去ログにあるぜ

    しかし・・・よかった。もう26だがメリークリスマス
  3. Posted by   at 2008年12月26日 09:18
  4. 大変面白かったどふ
    そしてメリークリスマス
    管理人さんも乙っした
  5. Posted by at 2008年12月27日 17:52
  6. 佐々木とハルヒって冬の時点ではまだ面識ないよな?

    でも面白かった
  7. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年12月28日 00:46
  8. 久しぶりに良いハルヒSSをみたよ
    乙です
  9. Posted by   at 2008年12月28日 03:15
  10. 多分二年生の冬休みなんじゃないかな?
  11. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年12月29日 17:57
  12. もう新刊とか諦めかけてきた所に良いSSを読めた
  13. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2008年12月30日 00:52
  14. 古泉「くん」と平仮名の「くん」なとことか、細かいとこまで原作準拠だな
    原作儲だからおもしろかった
    そして出ない新刊を思い出して悲しくなった