2009年06月05日

「娘さん下さい!」って言いに行く その1

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:08:34.74 ID:4QDc0c6v0
俺さ、今日の夜にさ、彼女の母親に「娘さん下さい」って言いに行くんだw
ようやく・・ようやくなんだ。
んで今さガチでさ緊張してるんよ
だからさ、ちょっとこれまでの事を書いていきたいとおもうんだ。
聞いてくれよ、な?w



2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:09:21.78 ID:4QDc0c6v0
俺は今年28になるおっさん。
大学卒業して就職した先をすぐに辞めてプーになり
しばらくしてようやく見つけた仕事先で安定してきたので春先に彼女にプロポーズをした。
彼女は21になる普通の女性(仮名:ユウ)
特段綺麗だとか、可愛いとか、スタイルがいいだとか、性格がいいとかじゃないんだけど。
でも一つだけ、一般の人とは違う。彼女は高度の難聴者。人の声はほとんど聞こえません。



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:10:35.00 ID:4QDc0c6v0
出会ったのは随分前の話。
だから話が曖昧になるかもしれないけれどそこは・・すまん。
俺は大学に入学してからは福島から上京して一人暮らしするようになった。
仕送りも少しもらってたんだけどなんだかんだで金はそれ以上に必要になる。親の負担を少しでも軽くしようって孝行心もあった。
そこでバイト。近くの個別指導塾の講師。正直面倒だったんだけど金のためだと週3くらいのペースで入っていた。
塾講師やったことある人は結構いると思うんだが、最初は研修みたいな形で先輩講師と一緒に授業をしてた。
そこは1対2の塾で小学生から中学生まで教えていた。
んでバイト初日。
欠席が出てマンツーマンの授業。マジで後悔した。
『普通』の生徒の授業をするもんだと思っていたからな。
教室長に「今日見る生徒・・難聴者の生徒さんでね。一応言葉は話せるけど声は聞こえないからなるべく筆談でお願い」って言われた。
なんだそれwって思いながらも生徒の下へ。
机の上にテキストと筆箱を出してボーっと前も見ながら座る女の子。
それがユウとの出会いでした。



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:12:12.83 ID:4QDc0c6v0
近づいたけどなんか俺には気づいてない。
「初めましてw」
ついつい耳が聞こえないのを忘れてそんなことを言ってしまったw
声にではなく存在に気づいたようで軽く会釈をしてきた。
見た目からは全く判断できない。
白のカチューシャをしたその子は円らな瞳を俺に向けたんね。
ホント見た目は普通の女の子。白のワンピースを着ていたのを今でも覚えている。
それと一番の印象は綺麗な髪だった。
肩まで伸びた黒髪。今も昔も髪型は変わらない。ストレートの黒髪。
その髪の毛の間から覗く補聴器。ああ、そういえばこの子は耳が聞こえないんだった。
そんで、無神経にもほどがあったんだが俺は自分の耳を指して「聞こえないんだっけ?」なんて言ってた。
それも彼女には聞こえないのになw
そしたユウは「はい」って言った。
たぶん動作で分かったんだろう。
意外にもはっきりとした口調だったことには驚いたね。
俺は少しドギマギしながら彼女の隣に着いた。
それと同時にユウはノートとテキストを開いた。
「ここからここまてがしゅくたいてす」
ん?
「しゅくたいてす」
あー、宿題ね。
やっぱなんか発音がおかしい。これが難聴者なのかと。
今でこそ『難聴』について詳しくなったものの、この時はマジで焦ったw
幼稚園生、いやそれ以下が話すような喋り方を時たまするからね。
それに声がちょっと大きい。



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:13:10.74 ID:4QDc0c6v0
難聴者にも色々ある。
一般的に生まれつき耳が聞こえない人、音声言語(喋り方みたいなもん)を取得する前に耳が聞こえなくなった人を『ろう者』、
取得後に耳が聞こえなくなった人を『難聴者』、『中途失聴者』なんて言う。
そしてユウは『高度』の難聴者として障害者手帳も持っている。
高度ってのは70デシベル〜90デシベル以下が聞こえない難聴者だ。
彼女の耳には怒鳴り声さえも届かない。耳元で大声(結構本気)を出してようやく聞こえるそうだ。
100デシベル以上でも聞こえない人は『ろう者』と認定されるんだけどね。具体的に言うと飛行機の音とか地下鉄とかだな。
んでユウは5歳のときに頭部の打撃と強度のストレスが理由で失聴した。
ようするに音声言語の獲得している最中に耳が聞こえなくなった。
そのせいで『発話障害』も持つようになる。
ユウの発話障害は『聴覚性構音障害』と呼ばれるもの。
舌足らずの人いるだろ?サ行が弱いとか、濁音、半濁音が弱い人って。簡単に言えばそれ。
彼女は『ダ行』が特に弱い。完全に点を抜かしてしまう。
それと言葉を短く言う(単語によりけりだけどね)、学校を『がっこ』、先生を『せんせ』って言うような具合。
中学校からろう学校に通い始めたから訓練はしたようでこの頃と比べたら今の発音、発声は格段に良くなった。
ダ行はどうしても弱いが短く言う癖は減った。



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:13:31.61 ID:hXUM1jiHO
>>1
マジレスすると
下さいはヤメロ
嫁はモノか?



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:14:09.64 ID:HlmtQF2/0
父「娘はモノじゃない。カエレ!」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:18:52.61 ID:4QDc0c6v0
「ください」はダメか・・。
マジで緊張してるw
書き込んで少し緩和中w
長くなると思うから勘弁・・。



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:15:40.07 ID:4QDc0c6v0
すまん・・話が逸れた。
宿題が解かれているノートを覗いたら他の講師の文字が書かれていた。
赤で書かれた講師の言葉に彼女はこれまたペンで答えている。いやー、こんなんで授業が成り立つのかよと思ったねw 
ああぁ・・俺もこんな授業しなくちゃなのかぁ・・って正直ダルかった。
取り敢えず○付け。
んで途中で気づく。小数の計算?え?小学校六年だよな・・。ゆとりってこの事?まさかな。はっきり覚えてる。
彼女は小学四年生の問題を解いていた。しかも出来は五分五分。
「えっと・・あまり分かってない?」ってまた音声発信。
慌ててノートに書き込む。
彼女は曖昧な反応。
俺は授業の要領分かってなかったし、先輩講師もどっかいっちゃってるし・・。
取り敢えず間違ったところを見て何がどう間違っているのかチェックした。



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:17:07.63 ID:4QDc0c6v0
なんてことはない。要は基本が理解していなかっただけ。
なんとなくの理解で済ませてしまっているようだった。
俺は一から教えた。次の単元とかお構いなしにね。
彼女も最初は無表情で淡々と俺の説明を見ては解いていた。
間違いがあるとなるべく丁寧に解説した。
彼女も次第に理解してきてチャレンジ問題もこなした。
ふむ、理解力はいいじゃない。
自分で作ったちょっと意地悪な問題もあっさりとこなしやがった。
なんかムカついたw
「そんな簡単に解くなよーw」なんてノートに書いたら初めて笑った。笑ったというよりも照れたような感じだった。
後半になるとお互い少し慣れてきたのか世間話。
まぁ、小学生と大学生がする世間話だからたかが知れているけどさ。
映画の話で盛り上がった。小学六年生なのにめっちゃ知ってるw 
俺も映画は結構好きだったから授業そっちのけで盛り上がったw 
小学生と話が合うってのもなんだけどな。ユウは最初の印象とは違いよく笑う子だったよ。
最後に「せんせ」と言われて手渡されたものがある。
彼女が今でも大好きなリンツのリンドールホワイト。
「いっこあげる」
俺は甘いもの好きじゃないんだが笑顔で受け取った。
そして出口まで見送る。
チョコをほお張りながら彼女は帰っていった。



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:20:31.10 ID:4QDc0c6v0
授業後に教室長に「授業どうだった?」って聞かれた。
「いやーw大変でしたw」
「でも良かった」
「どういうことですか?」
「あの子ね、他の先生だと態度が全然違うんだよ」
「へぇ・・」
「悪い子じゃないんだけどね、人によっては全く反応しないんだ」
そんな生徒を新人に回すなwって思ったけど黙っておく。
「彼女があんな笑ってるの初めてみたよ」
「そーなんっすか?w」
「これからも頼むね」
「はぁ・・」
それからユウの担当は俺になった。



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:25:08.40 ID:4QDc0c6v0
週一で通っていた彼女の通塾日と俺の固定シフトがたまたま合ったのもあるだろうけど、
それ以上に他の講師が彼女の授業に入りたくなかったのだと思う。
手間がかかる。反応をあまり見せない。
なんてのがその理由だと思う。
大抵のバイト講師なんて適当に教えてりゃーいいだろって考えの人が多いと思う。
かくいう俺も最初はそうだったしな。
だから、ダリーなぁ・・とも思いながらも最初の内は彼女の授業をこなしてい。
でもな、その内に筆談にも慣れ、他の小学生の生徒よりも飲み込みが早くてやる気があるその子を見るのが楽しくなってきたんだよなw
彼女は宿題も与えられた以上にこなしてきて七月に入るまでに六年生のテキストに突入した。
当初と比べるとやる気が違った。
そんなんだから傍から見れば難聴者の授業なんて面倒だと思うかもしれないけれど俺にとってはめちゃくちゃ楽なものになってた。
なによりも授業の終わりには決まって映画の話が楽しかった。
俺より詳しいと本気で凹んだなw 
でも楽しそうにノートに映画の内容を書く彼女を見ていると愛らしくて気持ちが和んだ。



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:29:09.57 ID:4QDc0c6v0
しばらく彼女の授業を担当していると先輩講師が「よく嫌がらずに面倒みてるなw」なんて同情してきやがった。
バイトといえどサービス・接客業に近い塾講師をやっているのにも関わらず髪は明るいし服装はだらしないし香水はきついし・・。
「いやー、楽しいですよw」
てめーみたいな野郎に教えられている生徒が可哀相だわwと思いながらその場はかわした。
時折、講師間で交わされるユウの話。馬鹿にしたようなその会話に反吐が出る。
こんな空気の悪いバイト先辞めようかと思った。
でもそれを思いとどまらせてくれたのはユウだった。



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:31:52.99 ID:4QDc0c6v0
辞めようか悩んで突入した夏休み。
夏期講習なるものがあったが彼女は通常授業のみの参加。俺もサークルなんかで忙しくて夏の間は一度も彼女と会わなかった。
その間にも他のバイト先をサークル内の人に教えてもらったりしてた。
辞めてもっと割りのいいバイトにしようと思った。
んで夏休み明け。
授業が終わったら「大学が忙しいので辞めます」って教室長に言おうと決めていた。
担当表を確認。そこには一人彼女の名前があった。
久々だなーと思いながら彼女の下へ。
「久しぶりだねーw」
ってノートに書くとユウは急ぐようにそれへの返答をペンで書く。
「先生の授業うれしい^^」って書いてそれを指でさす。
そして言葉で「やった」って言った。
そしてまたリンツのチョコレートをくれた。
俺はバイト規則なんぞお構いなしにその場で口に入れた。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:32:37.26 ID:4QDc0c6v0
「しー」
俺は人差し指を口元に持っていきそう言った。
ユウもコソコソとそれをほお張って「しー」と同じ動作をして笑った。
海かどこかに言ったのだろうか小麦色に焼けた彼女が一瞬可愛いと思ってしまった。
もちろんロリに興味はなかった。
そういう性的な意味じゃなくて、自意識過剰なのかもしれないけれど、
自分が少しでも誰かに必要とされていることが嬉しかったんだと思う。
ホントすっげー嬉しそうに笑うの。
中学・高校と共学だったにも関わらず浮いた話は一切なかったし、大学デビュー!と思ってもサークルでは地味な存在だったしね。
俺が隣に来るだけで喜んでくれる彼女を見てるとなんか無性に嬉しかった。
もちろん辞めようなんて既に思わなくなっていた。



63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:38:13.28 ID:4QDc0c6v0
それから半年ずっとユウの授業を見ていた。
成績は概ね良好。
冬の頃には学校の授業の先取り、応用もこなすようになっていた。
俺も俺で授業に関係のない算数パズルみたいなもんを持ってきては解かせていた。
彼女も悩みながらも楽しそうに解いていたよ。
それになによりもユウと筆談、それに会話をする機会も増えた。
教室長にも言われたが俺以外の先生とはほとんど筆談すらもしないのに俺には心を開いてくれていると。
なんかなーwと思ったが悪い気はしなかった。
俺から彼女についての話を聞くことは少なかったが彼女から俺の大学での話なんかを良く尋ねられていたな。
後、変わらず映画の話もね。
そして三月。
いつも通りの授業だが彼女にとっては最後の授業だった。
事前に教室長に知らされていた俺は若干の寂しさはあったが新たな旅立ちを祝う気持ちの方が勝っていた。



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:39:09.06 ID:4QDc0c6v0
最後の授業は中学校の準備講座だった。
文字と式辺りまでをサクサクと終わらせていつもの雑談。
「せんせ、わたし、きょうてじゅくやめるの」
珍しく雑談で言葉を発してきた。
「知っているよ。中学校でも元気で頑張ってな」
俺はいつものようにノートに書き込む。
「せんせはまたいるの?」
「いるよー。たまには顔出してな」
またノートに。
「せんせ!」
なんか声が尖ってる。



72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:41:16.54 ID:4QDc0c6v0
ついつい「どうした?」って言葉を発する。
「いま、しゃべってるの」
ああ、なるほど。
彼女が読唇術を少し身につけていることを知っていた。
俺は口を大きく開けてゆっくりと会話をした。
「ごめんね」
「せんせ、わたしのじゅぎょたいへんたったてしょ?」
「ぜんぜん」
「めいわくをかけてごめんなさい」
「馬鹿wなんでユウちゃんが謝るんだよ」
突拍子もないこと言うから早口になってしまった。
(関係ない話だけど早口は当然理解しにくい。それに区切りすぎるのも良くない。
大きく口を開けて。なるべく短い文で話すのがよろし)



73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:42:24.39 ID:4QDc0c6v0
彼女の表情は???ってなった。
「あやまらないで」
「うん」
彼女が席を立つ。
出口で彼女が口を開ける。
「せんせ、つくえのなかみてね」
周囲の視線が気になった。
いつもそうだったんだが、彼女の独特な喋り方は他の生徒、講師からの好奇な目を浴びてしまう。
こっちみてねーで授業に集中しろ!と毎度毎度思っていた。
「わすれもの?」
彼女は首を振る。
俺はおkサインを出して彼女を見送った。
その日は彼女の授業で最後だったので机の掃除をしながら引き出しの中を覗く。
そこには二つ折りになった紙が入っていた。



76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:43:59.60 ID:4QDc0c6v0
「俺先生〜、ユウちゃんが呼んでる」
教室長に呼ばれた。
俺は紙をポケットに入れて出口に行くと彼女が立っていた。
その後ろには彼女の母親も立っていた。
母親に会釈をして彼女の顔を見る。
「どうした?」
「しゃしん」
今ではあまり手にすることのない使い捨てカメラを手にしていた。
「ん?」
「いっしょにとって」
顔を赤らめて言う彼女。ませてるなーなんて思いながらも快諾。
教室長にツーショットを撮ってもらった。



78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:45:32.34 ID:4QDc0c6v0
「娘がお世話になりました」
深々と挨拶をする母親。
「いえいえ、僕も楽しかったです」
「ありがとうございました」
もう一度頭を下げると母親は彼女を連れて帰っていった。
彼女が車に乗り込み、見えなくなるまで俺は手を振った。
んで戻って帰宅。
家に帰ってスーツをハンガーに掛けていた時に例の紙の事を思い出した。
ポケットを探り取り出す。
開くとそこには彼女の綺麗な字で
『一年間ありがとうございました。先生の授業とても楽しかったです』
と書かれていた。
可愛らしい絵も添えられていた。
彼女は絵が得意だった。よくノートに書いていたよ。
俺はその紙を閉じて財布に入れた。
そして冷蔵庫からビールを取り出す。
その日のビールは少ししょっぱかった気がするんだぜw



79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:46:50.65 ID:4QDc0c6v0
大学二年生になるとやたらサークルが忙しくなった。
バイト代も貯まってたし、その頃から始めたスロットも調子が良くバイトに入らなくなっていた。
んで久しぶりに塾に行くと教室長が
「この前ユウちゃんが君に会いにきてたよ」
5月の中旬だったね。
「そうなんすか?なんか用でした?」
「これ置いていった」
封筒みたいなものを手渡された。
中身を見ると最後の日に撮った写真の焼き増しだった。
俺の顔キモw今でもスキャンして撮ってあるがマジできもいw
そして一枚の紙。
『携帯買ったのでメールしましょう』
ってアドレスを添えて書かれていた。



83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:49:10.71 ID:4QDc0c6v0
なんだそれwと思いながらも封筒をしまいその日は授業をこなした。
帰宅後思い出したかのように彼女からもらった紙を見た。
そして携帯を手に取る。
アドレスを打ち込む。
本文入力。
でも送信ボタンは押さなかった。
なにかいけないことをやっているんじゃないかという衝動に駆られたんだな。
中学生にメールなんてって思った。
万が一トチ狂って犯罪チックな展開になったらどうすると思い結局メールは送らなかった。
そしてそれ以降彼女が塾に来ることはなかった。
もちろんアドレスの紙もどこかに消えていた。



87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:52:17.07 ID:4QDc0c6v0
月日は流れて大学四年生。
単位も残り4単位、そして就職も無事に決まりフラフラしてた。
そこ頃、大学のサークルの一年後輩の子とも付き合っていた。
どちらが告白したとか、きっかけなんかも今となっては思い出せないほどのなんとなくま付き合い。
でも俺にとっては初めての彼女であり。
初めてのデートであり。初めてのキスであり。初めてのセクロスだった。
正直期待以下だったなと思う。
なんだかなー。
たぶんよっぽどの事がなければこの子と結婚するんだろうか、もし振られたら一生独身かもな。
当時はそんな感じで焦燥感に駆られていた。
その頃になるとバイトも再開。
結局塾講師しかバイトしてなかったなぁ、なんて。
なんだか無味乾燥な大学生活だったなと思っていたよ。
そんな感じで大学生活は終了した。



88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:54:04.04 ID:4QDc0c6v0
社会人生活一年目。だいぶ慣れた(仕事的には、でも既に辞めたかった)頃、夏の日。
会社の同僚と上司と飲んだ帰り。
いつもの最寄駅のホームで酔い覚ましにとペットボトルの水を飲んでいた。
なんか上司の愚痴、説教が多い飲みの席だったので俺の気分は悪く家に帰っても一人なのでなんとなくそこにいた。
今ではその上司に感謝している。
その時、そこにいなければ彼女と再会はしていなかったかもしれないからね。
突然後ろから声が掛かった。
「せんせ」
振り返ると学生が一人。
すぐに彼女だということは分からなかった。
「おぼえてる?」
たどたどしい喋り。ようやく気づく。
変わらず地味な子ではあったが三年の月日が彼女を大人にした。
制服にも新鮮さを覚えた。
考えてみれば高校生の歳になったのか。
小学生のあの子がな・・。完全にオサーンだったw



91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 14:58:47.28 ID:4QDc0c6v0
「ユウちゃんか?」
彼女は笑って頷いた。
そしてノートを取り出すと「暗いから筆談で」と書いた。
おいおい、今はほって置いてくれよなんて思った。でもお構いなし・・。
「仕事の帰りですか?」
変わらず綺麗な字を書くもんだなと感心しているのもつかの間、
「お酒臭いよ」と書かれた。
そんな匂うかなと思いながら俺も自分のペンを取り出してノートに書き込む。
「社会に出れば分かる」
「体は大事にしないと」
「言うようになったね」
久しぶりの筆談だった。
パソコンばかり打っていたので文字を書くのも久しぶりだった。



94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:00:43.31 ID:4QDc0c6v0
「それにしても久しぶりだね」
「そうだね」
「でも高校生がこんな遅くに出歩いてていいのかよ」
「遅いってまだ九時だよ」
「十分遅い」
「友達と遊んでたの」
「夜遊びも程ほどにな」
「厳しいよ、先生」
「でも元気そうで何より」
「元気じゃないよ」
「どうして?」
「先生がずっとメールくれなかったから」
彼女の顔を見る。悪戯に笑っていた。



97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:01:28.03 ID:4QDc0c6v0
ああ、あの時のことか・・。
「あの紙なくしちゃったんだよ」
バレバレの嘘。文字も焦っていた。
「じゃあ、今日は教えて」
そう書くと彼女は携帯を取り出した。俺は参ったと言わんばかりに携帯を取り出す。そしてお互いに交換する。
当時はいい年こいてアドレスに付き合っていた彼女の名前を入れていたんだが、案の定彼女に突っ込まれた。
「彼女さんの名前?」
「そうだよ」
「先生モテるね」
「どこがだよw」
「私は彼氏の一人も出来ないよ」
「意外と可愛いのに」
ちょっと調子に乗って意地悪を言う。



98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:02:33.97 ID:4QDc0c6v0
「じゃあ先生が振られたら彼女にして」
え?俺は思わず彼女を見た。
彼女はペンで何かを書く。
「冗談だよ」
「からかうのはやめろw」
そして彼女はノートを閉まって携帯を指差す。
ボタンを押す仕草。
「わかってるよ」
俺はベンチから腰を上げて彼女と一緒に歩き出し改札を出た。
そして急に立ち止まってバッグを漁ると懐かしいリンツのチョコを出してきた。
どんだけ好きなんだよw
と思いながらもありがたく受け取る。
口の中で溶かしながら食べるそれは口に残るアルコールの味と混ざった。



99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:03:23.30 ID:4QDc0c6v0
ロータリーに出向くと彼女の母親が待っていた。
うわwこんな酔っ払いの姿見せたくねぇwと思いながらも挨拶。
言葉は交わさないまま俺は帰宅した。
そしてその時は彼女にメールをした。
『勉強も頑張れよ』ってな感じのを送ったと思う。
『先生もお仕事頑張ってね』って返ってきた。
今は先生じゃねーけどなw
それから彼女とのメールのやり取りが少しずつ始まったんです。



102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:04:44.72 ID:4QDc0c6v0
毎日がルーティンワークな社会人二年目。
大学で出来た彼女とはまだ続いていた。
でも彼女のほうがいい所に就職して俺は若干負い目を感じていた。
それに会う機会も月に一、二回。付き合っているのかって感じだったw
そんなつまらない生活に一通のメールが届いた。
ユウからだった。
数ヶ月ぶりのメール。何気なく開いてびっくり。
『この前全国のろう学校主催の絵画コンクールで金賞を貰いました』
ほうほう。すごいじゃないか。



104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:08:15.54 ID:4QDc0c6v0
『おめでとう』
『ご褒美下さい』
益々マセガキになりやがってwwと思った。
『高いものは買えないぞー』
『デートして』
馬鹿かwと思った。
『冗談はやめろよー』
『冗談じゃないよ。本気だよ』
『彼女いるんだぜ?』
正直それは逃げるためのいい訳だった。
付き合っていた彼女のことを思って言ったわけじゃない・・。



106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:09:05.80 ID:4QDc0c6v0
『そうだよね。忙しいのにごめんなさい。またメールします』
って返ってきた。
俺もだらしない男だわな。少し可哀相に思っておkの返信をした。
『嬉しい』
フラグとかそんなことは当時の俺に考える余地はなかった。
ただ元教え子と遊びに行くくらいの感覚。
『どこに行きたいの?』
『映画館に行きたい』
申し訳ないけれど耳が聞こえないのに平気なのかという疑問を当然に抱いた。
でも彼女が行きたいと行っているのだ俺がケチをつけるところではないしな。
『いいよ』
日時と集合場所を決めてその日のメールは終わった。



109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:11:51.10 ID:4QDc0c6v0
その日は快晴だった。
久々の休日でずっと寝ていたかったが約束を反故には出来ない。
鞭打って集合場所に向かったよ。
彼女は俺よりも先についていた。
「せんせ!」
ユウが手を振ってきた。それはまるで彼氏を待つ彼女の様子だった。
「おまたせ」
ユウは首を振る。
俺は指で「行こうか?」の合図を出す。
ユウは頷いた。
駅近くの映画館。
何を見るかは聞いていなかったが当時ヒット上映していた映画『バタフライエフェクト』だったのを覚えている。
今での好きな映画の十本には入る名作だと思う。



113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:13:30.28 ID:4QDc0c6v0
でも当時鑑賞したときは彼女の事が気になって映画どころじゃなかったw
聞こえないのに理解できているのかなーってね。
それに補聴器をしていないし。
なんでも大きな音になると補聴器が必要以上に反応してしまって逆に不快になるのだという。
補足すると、私くらいだと補聴器の意味はほとんどない、と最近教えてもらった。
でも必死に見入っていた。
鑑賞後も「おもしろかった」と満足げだった。
字幕だけでも分かるものだなーと関心。
後に音声を消して自宅で映画を見たことがあるが・・正直楽しめなかったw 
健聴者にとっては難しい作業なのかしれんw



122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:18:39.48 ID:4QDc0c6v0
デート?中は言葉のみだけではなくジェスチャーも交えて『会話』をした。
周りの視線が最初は気になったがすぐに慣れた。
今もそうなのだが俺と彼女間で手話はあまり使わない。
それは彼女の通う学校が『聴覚口語法』を採用していたから。
一般的な手話法ではなくて精度の高い補聴器を持って耳から言葉を聴き、そして言葉で伝える手法のこと。
ろう社会では今でも賛否両論あるのだがドラマなんかで見られる手話をしながら話す(トータルコミュニケーションなんて言われているが)ことはしなかった。
とにかく音声を持ってして人とのコミュニケーションを図ろうとしていた。



125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:20:35.33 ID:4QDc0c6v0
今は『人口内耳』なんて便利なものもあるらしい・・。
手術で埋め込むらしいのだが、ユウが失聴した頃には日本であまり普及はしておらず高額なものになるので彼女はそのオペを行わなかった。
幼少期ならばそのオペを受ければ効果は大らしい。
今は本当に便利な世の中になっているとユウは言っている。
そんな感じで『会話』をするユウに対して初めは理解に欠けて苛立ちもしたがなw
今は造作なく会話できる。
でも喧嘩する時なんかは面白いもんだぜw 
背中を向けていても彼女の怒りは俺に伝わるのに俺の言葉は伝わらないw
だから何の効果もないんだw
それを分かって喧嘩のときや都合の悪いとき、彼女は俺の顔を見ない。
手話も見ないw
テラヒドスw



127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:22:33.07 ID:4QDc0c6v0
それはさて置き。
ユウとのデートは当時付き合っていた彼女と会っている時間より楽しかった。
新鮮さもあってだとは思うが、
こうただ手をつないで適当な会話をして、適当な場所で遊んで・・。
って言うのよりもしっかりお互いの顔を見て自分の伝えたいことを身振り手振り口ぶりを駆使して会話することに心地いい疲れと共に満足感を得られたんだわw
単調な生活がその日だけは楽しいものになったよ。
そして俺は七時過ぎにユウと別れた。
「せんせ、きょうはあそんでくれてありがとう」
高校生になって礼儀も覚えたかw
深々とお辞儀をして帰っていった。
それにもう一つ、
塾にいた頃授業が終わると「ありがとございました」って言ってたんだ。
「ありがとう」って言えなかったの。
最後の「う」が本人は言っているんだろうけど切れるわけ。
「ありがとっ」みたいな感じかな。
それがこの時はちゃんと「ありがとう」って言えていた。
成長しているんだな・・・って何か切なくなった。
いいな・・学生って。
俺はつまらない生活を送っているなって。
誰かが言っていたよな?w向上心のない奴は馬鹿だってw
まさにその通り。
すげー自分のやること全てがだるくなった。
俺はダメダメだと鬱になった。
こうゆう状態って急に来るものなのな。



130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:24:12.23 ID:4QDc0c6v0
決してユウのせいなんかじゃない。
自分が弱かったんだと思う。
彼女とのデート後、しばらくしてから俺は仕事を無断欠席することが多くなった。
すぐに会社はクビになった。
そりゃそうだわな。別にいいし・・なんてふざけた考えをしていた。
貯金は結構あった。
それを崩しながら堕落した生活。
パチンコ、スロット、競馬に、競輪・・。
吸わなかったタバコも吸うようになった。一気に部屋が黄色くなる。



132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:26:33.22 ID:4QDc0c6v0
そして付き合っていた彼女には仕事をやめたことは伝えていなかった。
会うことになるとスーツで向かった。
意外にもバレないw
つーか俺に関心がなかったんだわな、この頃既にw
でもユウには気づかれた。というか目撃された。
ユウと遊んでから半年くらい経ってからかな。
ボサボサ頭のスウェット姿でパチンコ屋から出てしばらくすると肩を叩かれた。その日は負けていて苛立っていたので「ああ?」なんて低い声で振り向いた。
すると少し怯えた様子のユウがそこにはいた。
たぶん俺の表情さえもひどかったんだと思う。
「せんせ、やすみ?」
構うなと思ったが、あの日遊んだきり会うことも連絡することもなかったユウの手前、邪険には出来なかった。



136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:30:58.72 ID:4QDc0c6v0
「やすみ」
「そんなかっこうでみっともないよ」
カチンときた。ガキに説教される覚えはないと思ったからね。
タバコを取り出して火をつける。
ふとユウを見るとタバコをふかすジェスチャーをする。
しかも驚きと疑問の顔で。
「わるいかよ」
ユウと話すときの癖で大きく口を開けてしまった。
煙が彼女に掛かる。
「す、すまん・・」
ユウは咽ながら首を振る。
「せんせ、しごと・・」
何かを言いたげだった。
「へいじつ、さいきんよくみる」
「え?」
「しごとやめたの?」
俺はユウの顔を見ずにタバコを吸った。何も言えない。
こんなだらしない男に勉強を教えてもらっていたのかと幻滅されてんだろうなって思ってユウを見ることが出来なかった。
俺チキン。



138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:32:16.65 ID:4QDc0c6v0
「せんせ」
タバコの火をサンダルの裏で消して彼女を見る。
「べんきょ」(小文字の後の母音発声は今でも困難な模様w)
「は?」
「おしえて」
俺は手を横に振った。嫌だよ。
「えいご」
「は?」
「えいごをおしえて」
彼女はバッグからプリントを取り出した。英語のテキストだった。



145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:39:54.63 ID:BpAVZi0D0
>>小文字の後の母音発声は今でも困難な模様w

本人が必死で言っているだろうに草をはやしている
精神を疑う
逆に他の連中が草をはやしていないだけにな
ユウの今後の人生のためにも釣りでありますように



148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:41:53.32 ID:VCYzqKmS0
>>145
俺も>>1と同じ福島県民だが、きっと「w」の使い方とか意味が良くわかっていないんだと思う
田舎者の間違いだと思って許してやってくれ



139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:35:12.50 ID:4QDc0c6v0
俺はテキストを受け取り中身を見た。
懐かしいな・・、大学受験を思い出す。
「ため?」
ため?ああ・・ダメ?って聞いてるのか。なんかユウの発音に可笑しくなった。
馬鹿にしているわけじゃない。なんかユウと接していると面白いんだわw
俺は人差し指を上に向けて「いっかいだけ」と言った。
ユウは頷いた。
そして数日後、俺は初めてユウの家に出向くことになった。



141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:36:10.33 ID:4QDc0c6v0
別に彼女の家に行くわけでもないのに俺は久しぶりに髪を切ってユウの家に向かった。
地区は同じだが駅を背に反対側に位置する俺とユウの家。
その方面に行くのは何度しかない。
着いた先は四階建てのアパートだった。
俺の住んでいるボロアパートなんかよりは断然マシだが結構年季が入っている。
ユウの家の玄関前に立ちチャイムを鳴らす。
出てきたのは母親だった。
「どうも」
「お忙しいところすいませんね」
変わらず低姿勢なお母さん。
俺は言われるがままに中に通された。
家の中は綺麗に整理されていた。無駄なものが置かれていない。
俺の実家とは大違いだ。
ユウはリビングでテレビを見ていた。
違和感を覚える。テレビ?聞こえるの?
画面を見ると英語字幕の映画を鑑賞していたのだ。
すげーwと感心した。



152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:44:35.38 ID:4QDc0c6v0
英語を教えると言っても彼女に教えるところはほとんどなかった。
だってほぼ満点に近いものだったから。
学校の宿題をただ一緒に解いては見せ合っていくだけ。
俺のほうが間違っているなんてこともある。
俺いる意味あんの?wってくらい。
そしてその日は終わった。
二時間で一万も頂いた。
タダでいいと言ったのだが母親は言って聞かなかった。
渋々それを受け取る。
帰り際に玄関先でユウに「せんせ、まいしゅ、おしえて?」と言われた。
絶対言われると思った。
でも『教える』ってのは嫌いじゃないし。ユウと過ごす時間も嫌いじゃない。
俺は「はいはい」といった感じでおkを出した。



153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:46:28.52 ID:4QDc0c6v0
相変わらずユウの家に行く日曜日以外はダラダラと過ごしていた。
でも身だしなみは人並みに整えるようになったし、転職サイトも覗く(だけ)ようにはなっていた。
そして何度目かの家庭教師訪問の日。
二月くらいだっけか。
俺はユウの母親と話す機会も持つことになった。
いつも通りユウにはテキストの問題を解かしていた。
テキストの巻末の入試問題に挑戦ってのを時間を計ってやらせていた。
俺は「トイレを借りるね」と言って部屋を出る。
人の家で小の方とは言え気兼ねしたが我慢がならずトイレを借りた。
そこで気づいたのだがトイレにはびっしりと紙が張られていた。
映画のワンフレーズだと分かった。
一文が書かれておりその下には映画の名前。
相当な映画好きなんだなと思って出た。
するとリビングで洗濯物を取り込んでいた母親と目が合った。
俺はトイレのお礼を言うとすぐに部屋に戻ろうとした。
「男さん、ちょっといいですか」
母親に手招きをされた。



161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 15:50:01.86 ID:4QDc0c6v0
「はい・・」
何かクレームか?
俺は一切手を出してはいないが・・。
そんな不安に駆られて近づくと椅子に座るように言われた。
「失礼します」
「ユウの調子はどうですか?」
「家庭教師なんかいらないくらいですよw」
あはははと笑うのは俺だけだった。あれ?まずいこと言った?
「ユウはね、本当に男さんが好きなんですよ」
「はい?」
「変な意味じゃなくて。小学生頃、私にも見せないような笑顔でユウは塾から出てきました」
「はぁ・・」
「塾が楽しいって、あの日初めてそんな言葉を口にしました。『楽しい』なんて初めて聞きましたよ」
「特別変わったことはしてませんでしたけどw」
「そこなんです」
「はい?」
「私でさえ最初の頃は難聴者であるが故に娘とうまく接することが出来なかった。
でも男さんは普通に接してくれた。ユウはそんなことを言っていました」
「あ・・でも僕も補聴器を見て、『聞こえないんだっけ?』なんて尋ねてしまいました・・」
「知ってますよ。最初はその点でユウも不信に思っていたんでしょうが男さんの授業、会話が本当に楽しかったみたいです」
確かに、それ以降は彼女の難聴に対してこの時までに触れたことは一切なかった。
「ユウは五歳の時に・・」
そこで母親は口を閉じた。
「すいません。こんな話をしてしまって・・」
「話してくれませんか?」
ユウの事がもっと知りたいと、素直に思っていたね。
母親は思い出すかのように話してくれた。



「娘さん下さい!」って言いに行く その2へ続く

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この記事へのコメント
  1. Posted by 字一色 at 2009年06月05日 09:32
  2. 5
    いつも思うけど編集(その1その2とかの区切り方)うまいよなw
    続きが気になるようにうまくまとめてあって止まらないんだぜwww
  3. Posted by at 2009年06月05日 09:36
  4. ネットに田舎もクソもねーよ
  5. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2009年06月05日 12:03
  6. 今では高性能の補聴器があると思うよ
    10万ほど用意して、福祉から金を頂くことが出来れば片方は買える
    ほんと、難聴は金がかかる
  7. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2009年06月05日 18:37
  8. オレは>>148のフォローに惚れた。
    こんな事をさらっと言える人間になりたい
  9. Posted by   at 2009年06月06日 13:49
  10. 面白けりゃなんでもいいだろと
  11. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2009年06月07日 22:58
  12. ていうか145の突っ込みこそわかってないと思う
    なんというかうまく言葉にできないけど、俺はそこの部分からこの2人が本当に仲がいいんだろうなって感じたよ
  13. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2010年09月26日 11:21
  14. コメ6と同意見だ。信頼してるから言える冗談もあるしな。乙武さんと嫁さんもそんな話をしてた