2010年01月25日

( ^ω^)僕らは別れを告げるようです

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:27:16.39 ID:CIiXGbZc0
会うは別れの始めなり。

出会いがあれば別れがある。

それは必然のことで、避けられないこと。

僕らは出会いと別れを繰り返し、成長と呼ばれる過程を繰り返す。

僕らはそれを受け入れる。

そこに寂莫たるものを感じつつも、僕はそれを受け入れる。

新しい出会いが、古い別れを塗り替えてくれることを信じて。

別れた人達が、きっと幸せになれると信じて。

それが人の、大人のあり方なんだと納得して。

僕は前に進むために今を置いて行く。


 ── ( ^ω^)僕らは別れを告げるようです ──



2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:29:59.94 ID:CIiXGbZc0
 
 ── 3月22日 ──


( ^ω^)「あと大きいのはテレビぐらいかお?」

今となっては骨董品といっても差し支えのないかもしれないブラウン管テレビに目を向ける。
サイズも14型と小さく、テレビ台なんて洒落たものもないので、カラーボックスの上に乗せてある。

カラーボックスに詰まっていた漫画や小説の類は既に段ボール箱に詰めた。
残っているのはこのテレビとカラーボックスだけだ。

もう来年にはアナログ放送は見ることが出来なくなる。
ならばいっそのこと捨ててしまおうかと思ったが、1人暮らしを始めた時からずっと共に暮らしている相棒のようなものだ。
何となく、捨てるには忍びなく感じてしまった。

('A`)「おーい、あとデカいの何がある?」

玄関の方からドクオの声が聞こえてくる。

( ^ω^)「お、あとテレビとカラーボックスがあるからもって行くお」

僕はすぐに返事をして、テレビの方に向かう。
掴む所すらついていないので、少々埃っぽいテレビを上から底面に手を入れる。



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:32:09.96 ID:CIiXGbZc0
 
(;^ω^)「一応埃は払ったつもりだったけど……結構染み付いてるおね」

あとで水拭きした方がいいかもしれない。
僕はそう思いながら両腕に力を入れた。

(;^ω^)「お?」

コトンという軽い音がした。
テレビから何か部品が外れたのかと思ったが、もともとシンプルな作りだし、そんなことはないようだ。
僕は一旦テレビを足元に下ろし、カラーボックスの方に戻る。

( ^ω^)「何も……お?」

カラーボックスと壁の間に、何か小さな板のようなものが挟まっている。
先の音はこれとテレビのコンセントが当った音かもしれない。

( ^ω^)「……」

僕はカラーボックスを傾け、それに手を伸ばす。
それが何か予期していたが、予想通りだったことに僕は何ともいえないため息をついていた。



4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:35:43.88 ID:CIiXGbZc0
 

【( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ】


2人並んで笑顔でフレームに収まっている写真。

( ^ω^)「……」

木製の写真立てに収められた写真の中の2人は、満面の笑顔だ。
もう2年以上も前になるだろうか。

( ^ω^)(幸せそうに笑ってるおね……)

僕と彼女であったツンの写真。
場所はどこかの動物園だったと思う。
貧乏な学生であった僕らは、それほど頻繁に出かける機会もなかったので、こういう写真はあまり撮っていない。

しかし、後にも先にもこんな風に満面の笑顔でツンがフレームに納まったのはこれ1枚だけかもしれない。
いつもどこか居心地の悪そうな表情でレンズを睨んでたのを覚えている。

けど、僕にはそれが彼女の照れ隠しだということは知っていた。

そのくらいには僕は彼女のことを理解していたのだ。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:38:02.02 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「おい、ブーン、テレビ……何やってんだ?」

(;^ω^)「お……これはその……」

いつまでたっても荷物が来ないことに業を煮やしたのか、部屋に上がりこんできたドクオが、僕の手の中からさっと写真を
抜き取った。

('A`)「……」

(;^ω^)「……」

('A`)「……お前さ」

(;^ω^)「お、これはもう処分するとこだったんだお!」

まずいタイミングで見つかったものだ。
これでは僕がまだツンに未練たらたらだと思われてしまう。

いやまあ、実際に未練はあるんだけど。



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:40:56.84 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「……別に捨てる必要はないだろ?」

(;^ω^)「お?」

そう言ってドクオは僕の手の中に写真立てを戻す。
写真の面を上にして、眩しい笑顔が僕の目に映るように。

( ^ω^)「けどこれは……」

('A`)「終わったもの、か?」

間髪入れず答えたドクオに、僕は無言で頷く。
それはもう何度も話したことで、言わずともドクオもわかってるはずのことだ。

【( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ】

笑顔で並ぶ2人の姿は過去のもので、もう見ることの出来ないものなのだ。

( ^ω^)「……」

もうお仕舞にする。
僕らが、僕とツンがそう決めたのだから。



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:43:07.80 ID:CIiXGbZc0
 
理由は至極簡単なことだ。
大学を卒業し、この春から物理的に距離が離れるから。

僕は実家に戻り、地元の小さな企業に就職する。
彼女は進学し、天文学の勉強を続ける。

僕の地元はここからずっと南の方で、彼女の進む大学院はここからずっと北の方と、見事なまでに距離が広がるのだ。

遠距離恋愛という手もあったが、お互いのことを考えた結果、僕らは半年ほど前に綺麗さっぱりお仕舞いにした。
お互いのこれからの為に、2人で話し合ってそう決めたのだ。

( ^ω^)「……」

('A`)「……」

無言で写真を眺める僕に、ドクオが意味ありげな視線を向けてくる。
重ね重ねマズったかもしれない。
僕の今の様子は、明らかに未練たらたらだ。



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:45:39.29 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「本当にいいのか?」

( ^ω^)「いいんだお」

思えば僕らの別れに最後まで反対していたのはドクオだった。
少々気が強いが誰が見ても美人だと言うであろうツンと、気は弱く、どう贔屓目に見ても並みの壁を突破できない顔の
僕がツンと付き合えるようになったのも、ドクオが応援してくれたお陰もある。

ドクオはいつも気弱な僕を後押してくれていた。
大学に入って初めて出来た友達で、ここが地元だというドクオは色々と不案内な僕を助けてくれた。
今日だって、こうやって引越しを手伝ってくれている。

('A`)「けど……」

( ^ω^)「いいんだお。……ありがとだお」

本当にいいやつだ。
僕は実家に戻ってもきっとドクオのことは忘れない。
いつかまた、会いに来ようと思っている。

惜しむらくは、在学中にドクオにも彼女を作ってあげたかったのだが、本人の高い理想と低い顔面偏差値のお陰で今日の
今日までその夢は叶わなかった。



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:47:52.98 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「僕らのことはいいから、自分のことをがんばれお」

僕は少しだけ意地の悪い笑みを浮かべて見せた。
ドクオに彼女は出来なかったが、最近奇跡的にツン以外の女友達が出来た。
この4年間の惨状を考えれば本当に奇跡と言わざるを得ない。

しかもその女性は、ドクオの理想に叶い、なおかつ今のところ嫌われていないようだ。

('A`)「うるせーな……」

ドクオはばつが悪そうに顔を背ける。
人の恋路には散々口出ししてきたくせに、自分のこととなると妙に奥ゆかしくなる。

僕は再びからかうような笑顔を見せて、引越し作業の続きに戻る。
手の中にあった写真立てから写真を外し、写真立てはゴミ袋に放り込んだ。


【( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ】


( ^ω^)「……」



13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:51:09.41 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「終わったんだお……」

写真を2つに折り、さっきとは別のゴミ袋に放り投げる。
しかし写真は弧を描きゴミ袋の口を外して畳に落ちた。

( ^ω^)「お……」

('A`)「だから、捨てる必要もないだろ?」

( ^ω^)「持っておく理由もないお」

('A`)「……嫌いになったわけじゃねーんだし、写真ぐらいいいだろうが」

その写真をドクオが拾い、壁に掛けていた僕のシャツの胸ポケットに乱暴に押し込んだ。

( ^ω^)「……」

何か言おうと思ったが、あとで捨てるだけだと思い返し、何も言わないことにした。



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:54:02.14 ID:CIiXGbZc0
 
(´・ω・`)「お待たせー」

( ^ω^)「……」

('A`)「……」

そんな空気を全く意に介さぬような、陽気な声がほぼ空っぽに近い部屋に響き渡る。
よく聞き知った声で、呼んだのは僕、正確にはドクオではあるが、約束の時間からすれば随分遅いご到着だ。

('A`)「おい、ショボン?」

(´・ω・`)「何かな、ドクオ?」

('A`)「俺は2時っつったよな?」

(´・ω・`)「そうだったけ?」

('A`)「そうだったんだよ」

(´・ω・`)「うん、それで?」



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 21:58:22.82 ID:CIiXGbZc0
 
(#'A`)「今何時かわかるか?」

(´・ω・`)「さあ、僕は時計を持ち歩かない主義だからね」

( ^ω^)「2人とも、その辺にしとくお」

一触即発の空気を割り、間に入る。
ショボンが時間にルーズなのはこの4年間で身を持って知っているし、それが几帳面なドクオと度々ぶつかりあって
面白いことになるのも毎度のことだ。

(#'A`)「あ?」

( ^ω^)「ショボン、これ頼むお、下のトラックまで」

僕は尚も何か言いたげなドクオを制し、先のテレビをショボンに渡す。

(´・ω・`)「オッケー、何かで包まなくていいのかい?」

( ^ω^)「毛布を貸してもらえることになってるお」

ショボンはわかったと返事をして、そのまま部屋を出た。
ドクオの視線が背中に痛いが、僕は苦笑いでそれに応じた。



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:00:30.25 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「いつものことだお」

('A`)「そうだけど、それでいいわけじゃねーだろ?」

不満げなドクオに僕は苦笑いのまま、手伝ってもらえるだけありがたいのだとなだめる。
色々節約して、2階のこの部屋から階下に下ろす作業は自前でやることになっていた。

大して大きい荷物はないので1人でも十分だったのだが、ドクオが手伝うと申し出てくれた。
ショボンはドクオが呼んだので、僕が直接頼んだわけではない。

('A`)「全くあいつは……今時携帯も持ってねーし、連絡も取りづれーんだよ」

ドクオの愚痴は収まる様子を見せないが、作業を進める手は止まらずに動いてくれている。

ショボンとは小学校からの同級生だというドクオは、僕よりショボンの性格を熟知している。
毎度毎度、同じようなことを腹を立てても仕方がないと思うのだが、それもまた性格故かもしれない。

(´・ω・`)「次はどれ? ほら、ドクオ、もたもたしてないでさっさと終わらせようよ」

(#'A`)「……」

(;^ω^)「おー……」

これからはこの掛け合いも傍で見れなくなるのだ。
僕は少し寂しく思いながらも、荷物が壊れないことを祈りながら作業を続ける。



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:02:56.46 ID:CIiXGbZc0
・・・・
・・・

('A`)「これで全部かな?」

( ^ω^)「お……そうだおね」

それから10分程度で、全ての荷物は運び終わった。

( ^ω^)「……」

がらんとした白い部屋に傾きかけた日が差し、淡いオレンジに染め上げる。

不思議なものだ。
この部屋に入居する時も見たはずなのに、あの時と今では全く違ったもののように感じられる。

( ^ω^)「この部屋、こんなに広かったんだおね……」

('A`)「そうだな……」

あるべき場所にあるはずのものがない部屋は、違和感と同時に何だか物寂しさを覚えた。
白い壁、小さな窓、高い天井。
猫の額ほどの大きさのベランダも、エアコンの室外機があるだけだ。



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:05:24.19 ID:CIiXGbZc0
 
僕のものは全て持ち出すか処分した。
残していくものは何もない。

いや……

( ^ω^)「想い出だけは残していくのかもしれんね」

いつの間にか傍らにいたはずのドクオの姿がない。
気をきかせて1人にしてくれたのだろう。
この部屋に別れを言う時間をくれたのだ。

( ^ω^)「世話になったお」

僕は軽く頭を下げ、起こした勢いでそのまま高い天井を見上げる。
何度となく見上げた天井だが、これで見るのも最後だ。

( ^ω^)「……行くかお」

僕は壁に引っ掛けてあった上着を手にする。
この洋服掛けは入居した時からあったものなのでそのまま残すものだ。



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:07:42.58 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「お?」

上着を着込んだところで、胸ポケットの写真に気付いた。
先ほどドクオが押し込んだものだ。

僕は2つ折りのそれを取り出した。

( ^ω^)「……」

これも残していく想い出だろうか。
それとも、持ち出してまた使う荷物なのか。

( ^ω^)「……」

僕はそれを元のように胸ポケットに押し込み、部屋を出た。

扉を閉め、プラスティックのカバーがかけられたネームプレートから内藤と書いた紙を抜き取る。
それをくしゃくしゃに丸めてズボンのポケットに押し込み、代わりに鍵を取り出す。

( ^ω^)「お……閉めなくてもよかったんだっけ」

この後、ドクオが簡単な掃除をして、鍵を大家さんに返してくれることになっている。
最後までドクオに世話になりっぱなしだが、折角の親友の好意だ、甘えることにしたのだ。



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:10:20.57 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「まあ、いいお」

僕は鍵を差込み、左に回した。
かちりという乾いた音がして、鍵がかかる。
これで鍵を開けた回数と占めた回数は同じ数になっただろうか。

( ^ω^)「そんじゃ、バイバイだお」

僕は閉まったドアに目を向け、別れの言葉を述べる。
“201”というナンバープレートが見える。
2階の階段を上がったすぐ、そこそこの景色と騒音が入り混じった、良くも悪くもない部屋。

目を閉じれば色々な想い出が浮かぶ。
ドクオやショボン、それにツン。
皆と過ごした忘れられない時間。

ここは僕にとってとても大切な場所だった。

部屋に、そして想い出に別れを告げ、僕は階段を下りる。



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:13:02.61 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「すみません、お持たせしましたお」

(,,゚Д゚)「ああ、大丈夫、大丈夫、予定の時間はもう少し残ってるからね」

トラックの運転手、ギコという名前の人だが、僕はこの人に荷物と一緒に実家まで乗せてもらう手筈になっている。
金のない学生の引越しということで、色々と手を尽くした結果だ。
旅費が浮くのは素直に助かる。

( ^ω^)「ドクオ、頼むお」

('A`)「ああ、任せろ」

僕はドクオに部屋の儀を手渡す。
言うべき礼の言葉は沢山あるが、それら1つ1つをわざわざ言うのも野暮というものだろう。

( ^ω^)「それじゃあ、行くお。色々ありがとだお」

('A`)「気にすんなって。元気でやれよ」

ドクオが右手を差し出す。
僕はその華奢だが頼りになる手を強く握り返した。



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:16:18.60 ID:CIiXGbZc0
 
(´・ω・`)「どうせ僕らはこの町にずっといるからさ、いつでも遊びにおいでよ」

同じようにショボンも右手を差し出してきた。
僕は笑ってそれに応じる。

( ^ω^)「あんまりドクオに世話ばっかやかせんなお」

(´・ω・`)「それは約束できないな」

(#'A`)「おい、こら……」

ドクオは一瞬怒った素振りを見せ、ショボンを小突く。
ショボンが肩をすくめておどけると、ドクオも苦いながらも笑みを見せていた。

( ^ω^)「お、そうだお……」

僕は左手にはめていた腕時計を外し、ショボンに手渡す。

(´・ω・`)「これは?」

( ^ω^)「餞別だお」



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:19:18.58 ID:CIiXGbZc0
 
餞別という言葉は逆な気がするが、僕の言葉にショボンより先にドクオが反応する。

('A`)「いいのか? お前それ、かなり気に入ってただろうが」

( ^ω^)「構わないお」

確かに、ドクオの言葉通り僕はこの時計を気に入ってた。
今日日時計は携帯電話で代用できるし、そちらの方が多機能で使い勝手が良かったりするけど、僕はこの時計を
使い続けていた。

別に誰かからプレゼントされたとかいうわけでもなく、単に初めてのバイトの給料で背伸びして買った、僕なりの
お洒落のつもりのものだった。

お洒落とはいえ、丈夫で機能的なものを選んだので、サークル活動の時にも存分に役に立ってくれたものだ。

( ^ω^)「アラームも付いてるから、それでちゃんと時間を守れるようになれお」

(´・ω・`)「うーん……君の手垢の染み付いた時計ね……何か感染りそう」

(#^ω^)「……」



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:21:37.20 ID:CIiXGbZc0
 
(´・ω・`)「冗談だよ。……ありがたく使わせてもらうよ」

ショボンはそう言って、早速左手に時計をはめてくれた。
シルバーの時計は西日を反射し、淡い光を放っている。

( ^ω^)「ドクオには向こうに着いたら地元の名産品でも送るお」

('A`)「気にすんなって」

それから数語言葉を交わし、僕はトラックの助手席に乗り込んだ。

( ^ω^)「そんじゃ……」

(´・ω・`)「うん、またね」

( ^ω^)「……ドクオ?」

ドクオは何も言わず、僕を見ていた。
いや、何かを言おうとしては言い淀んでいると言った方が正しいかもしれない。

( ^ω^)「ドクオ」

僕は少し強めにドクオに呼びかけた。
ドクオはその言葉に促されるように口を開く。



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:24:22.90 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「……なあ、お前さ」

( ^ω^)「……」

('A`)「お互いのため、そう言ったよな?」

( ^ω^)「言ったお」

お互いのため。
相手のことを大切に思うからこそ、僕らは別れるという決断をしたのだ。

('A`)「じゃあさ、お前自身のためだったらどうなんだよ?」

( ^ω^)「僕自身……?」

僕はツンのことを思えばこそ、別れるという選択肢を選んだ。
そのままの関係でいれば、しっかり者のツンは頼りないところの多々ある僕のことを、離れた場所からずっと心配しながら
暮らす羽目になる。

それに意外と寂しがりやな面があるツンを、僕は傍にいて慰めてあげられない。
それだったらいっそ、僕と別れて心配を減らすなり新しく良い人を作るなりした方がツンのためなのだ。

だから……



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:26:30.86 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「僕自身……」

ドクオに突き付けられた言葉を再び呟く。
僕にとってはツンが一番大切で、僕自身のことは二の次だった。
だから僕は別れると決めたのに。

僕自身……

僕の身勝手が許されるのならきっと僕は……

('A`)「悪い。最後に余計なこと言ったな」

( ^ω^)「いや……」

('A`)「でもさ、自分の気持ちも大切にしてくれよ? お前はお人好し過ぎるんだからさ」

( ^ω^)「わかったお。ありがとだお」

僕の左手が自然に自分の胸に当てられていた。
上着の胸ポケット。
自分自身の気持ち。

でも、少し遅かった。

全ては終わってしまったのだから。



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:29:17.67 ID:CIiXGbZc0
 
( ^ω^)「それじゃ、またねだお」

('A`)「ああ、またな」

僕は笑顔で2人に手を振る。
2人も笑顔で手を振り返してくれる。

僕を乗せたトラックはゆっくりと走り出す。
僕と荷物を乗せたトラックは、親友と想い出を背に走り出す。

僕は2人の姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
2人と、201号室が見えなくなるまでずっと。



 ── ( ^ω^)は別れを告げるようです 終 ──



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:31:31.13 ID:CIiXGbZc0
 
 ── 3月21日 ──


('A`)「ありがとうございましたー」

本日三人目のお客さんが去っていく。
時間に換算したくない来客数だが、何かしら買ってくれているのがせめてもの救いか。

('A`)「しかし……」

俺は客を送り出した場所からそのまま反対側に目を向ける。
商店街の中心に向かうその道は、シャッター街と化したかのごとく静かなものだ。

ぽつぽつと開いてはいるものの、おおよそ活気というものが感じられない。

('A`)「まあ、他人様のことを言えた義理じゃないんだがな……」

この辺りは大学近辺ということもあり、学生の町という雰囲気がある。
そうなると小売よりは出来合いのもの売る店や定食屋の方が流行りそうなものだが、最近の不況の影響か、自炊する
学生は格段に増えている。

しかし、そうなるとより安い店に学生の足は向くわけで、郊外の大型店や、町中でも安さを売りにしているスーパーに
客を取られているのが現状だ。



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:33:04.77 ID:8sdCdP67O
次はドクオ視点か


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:34:57.52 ID:CIiXGbZc0
 
うちを始めとした、古くからの小さな個人商店にとっては苦しい時代といえる。

('A`)「かといって今更コンビニにしたところでな……」

都心部ならまだしも、こんなところでコンビニがそう何件も必要になるわけがない。
それにコンビにでは先に上げた価格的な理由で勝負にならない。

('A`)「何とかしねーとな……」

俺は先ほど売れた大根を並べ直し、スペースを埋める。
その他、商品に不足はないか確認するが、流石に来客数3じゃ不足も何もあったものではないだろう。

('A`)「……」

俺は再び店から通りに出て辺りを見回す。
夕方の買い物時にはまだ早い時間だが、それでも人通りは少なすぎると感じる。

俺は店の方を振り返り、その全体を視界に納める。



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:40:02.76 ID:CIiXGbZc0
 
鬱田青果店。

元は白かったはずの看板に飾り気のない黒で大きくそう書かれた、俺がこの春から継ぐことを決めた店。
その名が示す通り、所狭しと野菜が並ぶごくありふれた八百屋の姿がそこにある。

('A`)「ありふれてるんだよな……」

品揃えが少ないわけでもない
多いわけでもないが。

品物の質が悪いわけではない。
良いわけでもないが。

良くも悪くも、普通の人がイメージする八百屋のそれだ。

('A`)「そもそも、八百屋で買い物する人間自体が減ってるんだよな……」

今は大概、1件で何でも揃うスーパーなどで買う客がほとんどだろう。
商店街を複数の店に寄りながら買い物をしていく主婦の姿を見るのは稀だ。
それどちらかといえば昔からの付き合いやら近所付き合いやら慣習的なものに起因するのだろう。



36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:42:51.66 ID:CIiXGbZc0
 
この店が自分の代になっても、昔からの付き合いで来てくれる客も少しはいる。
しかし、それだけに頼って暮らして行くのは到底無理がある。

('A`)「何とかしねーとな……」

俺は再び看板に目を向け、同じ言葉を呟く。
先代、といってもまだ引退したわけではないが、両親は今商店街の会合とやらに出かけている。

商店街自体も今俺が思っているような問題意識は持ち合わせているらしく、ここの所そういう会合が多くなったと
聞いた覚えはある。

具体的な案は何も決まっていないようだが。
出たところで、年寄りの古臭いアイデアに頼れるかといえばそれもまた疑問ではある。

('A`)「何とかしねーとな……」

本日何度目となるかわからない同じ呟きが俺の口から漏れた。
店を継ぐことを決めた以上、俺自身が何とかせねばと思う。

しかし、大学まで行って実家の八百屋を継ぐと言う話もどうなのかと、我ながら思いはする。
この状況を見れば、店は店で両親にやってもらい、自分は外に出て稼いで来た方が現実的だ。



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:46:48.72 ID:CIiXGbZc0
 
両親に継いでくれと頼み込まれたわけでもない。
親父の体調を考えれば、継いで欲しいとは思っていただろうがそんなことを口にされたこともない。
それどころか、さしてやりたいことのなかった俺のわがまま、大学にまで通わせてくれた。

大学での4年間、色々なことがあった。
そのほとんどが、数人の友人との思い出ばかりではあるが、そいつらと付き合う内に俺は俺で漠然とだが自分の
やりたいことが見えて来た。

そいつらといた時間の大切さ、この場所の大切さ。
自分が何故この町を離れずにいたか、他ならぬ自分の自身の思いが答えを教えてくれた。

俺は自分の好きな場所、生まれ育ったこの場所で大切な人達と、家族とこの店をやりたい。
それが俺の答えだった。

('A`)「どうするかねえ……」

やるべきことは当然売り上げを伸ばすことだ。
食っていくためには、稼がにゃならん。

では売り上げを伸ばすためにはまずどうしたらいいか。
買ってもらうためには何より客に来てもらう必要がある。



39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:54:45.74 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「とは言っても、この商店街の集客力に期待出来るわけもないしな……」

やはりこの店だけで何とかすることを考える方が賢明だろう。

一店だけで賄うとするなら、品揃えを増やすという手もある。
そうすれば、スーパーやコンビニのような感覚で利用してもらうことも出来るかもしれない。
しかしそれは同時に、商店街の他の店の領分を侵すことにもなる。

俺だけなら構わないのだが、近所付き合いを考えると、両親が肩身の狭い思いをするのは避けたい。

となると、やはりこの野菜、果物といった八百屋が扱える範囲のもので勝負するしかない。

その点から考えると、価格、そして質といったところか。
両立させるのがベストだが、どちらに重きを置くかは決めておいた方が良いかもしれない。

('A`)「質だろな」

どちらにするかは悩むまでもなく、単純な消去法で決まる。
価格で勝負するなら、薄利多売でやっていく必要があるのに対して、この店では狭すぎるからだ。

そうなると、必然的に質で勝負するしかないのだ。



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 22:57:21.11 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「質ねえ……」

質で勝負すると考えた時、いくつかの手段が思い付きはする。
有機農法や生産農家記載の顔の見える品物など、高品質、安全性などを前面に押し出したものだ。

だが、それは今の時代、それほど珍しいものでもない。
それこそ大型店やスーパーでも取り扱っているようなありふれたものだ。

('A`)「他にないものといえば……」

俺は先ほど売れた大根の方へ目を向ける。
そういえばその前の客も買っていった。
季節的なものもあり、値段も手ごろということを差し引いても売れている。

('A`)「確かに他にないものではあるが……」

他にない付加価値、それはこれがこの町で取れた地のものということだ。
それとわかるようにダンボールに書いた値札にそのことを明記している。



41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:00:10.82 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「地のものねえ……」

路線としては十分ありだと思う。
他にはない特色、この町ならではのものだ。
しかし、さして特徴もない、競合は同じ町の店という問題もあり、何よりこれは……

('A`)「あいつの家のだしな……」

俺は頭を振り、こめかみを押さえる。
大根自体に罪はないはないが、問題点はいくつもある。

('A`)「何とかしねーとな……」


「確かにその顔は何とかした方がいいな」


もう何度目か数えるのも億劫になった呟きの合間を縫って、背後から涼しげな声が響く。
遠慮会釈も愛想もない、よく通るその声の持ち主に俺は先程からの仏頂面のまま返事をする。

('A`)「……顔の話じゃねーよ。いらっしゃい」

川 ゚ -゚)「客商売でその不景気な顔は止めた方が良いというアドバイスのつもりだったのだがな」



43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:02:42.58 ID:CIiXGbZc0
 
セミロングの髪を掻き上げ、悪びれずに言う。
毎度のことだがどう考えても後輩の取る態度とは思えない。

('A`)「あのなあ、クー、いい加減先輩を敬うことを覚えろよ?」

俺より3つ下の後輩は、俺の諭すような口調に悪びれることなく答える。

川 ゚ -゚)「敬ってるさ、ちゃんとな」

('A`)「どの辺がだよ……」

全体的に、と変わらぬ口調でクーは答える。
俺達が所属するサイクリングサークルの後輩なのだが、こいつは当初からずっとこんな風だ。

もっとも、ツンやブーンにはちゃんと敬語で話すところを見るに、当人が主張する程度にはわきまえているのかもしれない。
ツンやブーンが真面目だということや、俺がそういうことを気にしないことなどわかってやっているのだろう。
勘は良過ぎるくらい、いいやつだ。

当然、ショボンには俺以上にひどい態度で接している。

('A`)「まあ、いいや。どうせお前との付き合いもあと数日だ。で、何の用だ?」
  _,
川 ゚ -゚)「八百屋に用と言えば、買い物に決まってるだろうが」



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:04:59.07 ID:CIiXGbZc0
 
クーは眉をひそめ、先程よりなお不機嫌そうな口調で用向きを告げる。
愛想に関しては他人のことは言えないだろうと思うが、言ったところで素直に聞くようなやつではない。

川 ゚ -゚)「で、その不景気な面の原因はなんだ?」

('A`)「あ?」

店内に戻り、注文を待ち構えた俺にクーは聞いてくる。
野菜はどうしたと返しそうになったが、どうせ客もいなくて暇だ。
少しぐらいだべっていても大丈夫だろう。

川 ゚ -゚)「やはりあれか? ブーン先輩たちのことか?」

クーは俺が答えるより早く、勝手に決め付けるような口調で言う。
その自信に満ちた目に、今は全然違うことを考えていたとは言い辛いので、俺は曖昧に頷いた。
実際、それも今の俺の悩みの内の1つであることには代わりはない。

川 ゚ -゚)「ただでさえ友達のいないドクオにとって、2人も友達が居なくなるのは死活問題だしな」

('A`)「うるせー」



47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:07:38.81 ID:CIiXGbZc0
 
川 ゚ -゚)「残った友達はショボンだけか」

('A`)「止めろ……それは考えないようにしてんだよ」

俺達はブーンとツンの、そして俺たち自身の想い出を語り合った。
そのほとんどが、たわいもないバカ話で、俺がこの町を好きだと思える理由になったものだ。

川 ゚ -゚)「ブーン先輩は全くしょうがないよな。だのにどうしてツン先輩と別れるなんて」

('A`)「あいつらが決めたことなんだよ」

そういえばこいつは俺以上にあの2人が別れることに反対していたよな。
あの時はまだこいつがサークルに入って半年も経ってなかったというのに、いつの間にか数年来の既知のような
馴染み方をしていた。

('A`)「あいつらが決めたことだ。俺らが何か言うべき話じゃない」

川 ゚ -゚)「全く納得してない顔で言うなよ」

('A`)「……理屈はわかってるつもりだ」



48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:09:56.55 ID:CIiXGbZc0
 
川 ゚ -゚)「気持ちは納得いかないと」

羨ましいほど自由に物を言うクーに、俺はただ苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

わかってる。
ブーンの気持ちも、ツンの気持ちも。

そして俺の気持ちも、わかってはいるのだ。

それでも……

('A`)「あいつらはお互いのことを思って別れると決めたんだ」

川 ゚ -゚)「それだよ」

突然クーは語気を強め、俺の方を指差す。

('A`)「どれだ?」

川 ゚ -゚)「その“お互いのため”ってやつだよ」



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:13:35.50 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「ん? 何かおかしいか? 離れ離れになることを考えれば……」

川 ゚ -゚)「理屈はいいんだ、理屈は」

クーは苛立たしげに俺の言葉を遮る。
普段はあまり感情を浮かばせることのない涼しげな目に、明らかな怒りの色が見て取れる。

川 ゚ -゚)「お互い悲しむ結果になることが、本当にお互いのためなのか?」

('A`)「それは……」

クーの言っていることはわかる。
俺だってそれは何度も考えたことだ。
しかし……

('A`)「そうでもしなきゃ、あいつらはお互いを潰すことになるってわかってるんだよ」

川 ゚ -゚)「……」

クーの無言の視線が俺に突き刺さる。
それは本心なのかとその目が問う。



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:17:10.14 ID:CIiXGbZc0
 
期せずして、同じ答えを導き出した2人の顔が思い出される。
やさしい笑顔で、悲しい心を隠した2人の顔が。

('A`)「そりゃあな、俺だって完全に納得したわけじゃない」

俺は観念して、クーに本心を漏らす。
とはいえ、既に俺の胸のうちなんざクーにはお見通しだったのだろう。

クーは少し意地の悪い笑みを浮かべて、1つ頷く。

川 ゚ -゚)「私とて、2人が至った結論の真っ当さは理解しているさ」

('A`)「けど、納得は出来ない」

クーはまた頷く。
その点は俺も全く同じ思いなのだ。

正しい結論だが、正しくない。
上手く言えないが、俺はそう思っている。



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:19:52.65 ID:CIiXGbZc0
 
川 ゚ -゚)「お互いのため、そういえば聞こえはいい」

お互いのため、ブーンとツンが口にしたその言葉は、本心から出たものだ。
相手のためを思うからこそ、別れるという答えを口にしたのだ。

川 ゚ -゚)「けどな、自分のためを思えばどうなんだ?」

('A`)「自分のため……?」

俺はクーの言葉をそのまま口にしていた。

自分のため。

相手のためを思えばこそ、2人は別れた。
自分のためを思えば、2人はどうしただろう。

誰よりも大切な人を、ブーンは、そしてツンは、手放すことが出来るだろうか?

俺は首を振り、考えるまでもなく導き出された答えを口にする。

('A`)「……別れたくはないだろうな」

川 ゚ー゚)「ああ、そうだ。きっと別れない」



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:22:33.49 ID:CIiXGbZc0
 
クーは我が意を得たとばかりに笑顔を見せる。
こいつの表情がこうも変わるのは初めて見た気がする。

川 ゚ -゚)「今からでも遅くない。自分のためを考えろと先輩達に伝えるべきじゃないか?」

('A`)「しかしな……」

そのことを伝え、2人が考えを変えたとして、それがもたらすものは困難な道だ。
それがわかってるからこそ、2人は別れを選び、俺らはそれを受け入れたのだ。

川 ゚ -゚)「私は、2人に苦労してもらっても構わないと思っている」

('A`)「おいおい……」

クーは最後まで聞けと俺を制し、言葉を続ける。

川 ゚ -゚)「最初は苦労するかもしれない。でも、2人ならきっと乗り越えられる」

それは理想論で、ドラマ化漫画の見過ぎだ。
そう茶化そうとした口は、開かれることはなかった。
クーの目は真剣そのもので、心からそう思っているのが俺にはわかった。



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:25:00.47 ID:CIiXGbZc0
 
川 ゚ -゚)「一緒にいれば、2人でがんばることも出来る」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「でも、別れてしまえばそれさえも出来ないんだ」

('A`)「……」

それは理想論だと、笑い飛ばすことも簡単で、普段の俺ならきっとそうしたと思う。
しかし、俺はあいつらのことを知っている。
あいつらなら、きっとクーが言うように、そばにいれば何とかなると思えてしまう。

俺は、改めてクーの方を見る。
そこにはいつものクールな面持ちはなく、向ける対象を間違った睨み付けるような眼差しがある。

いや、俺にも腹を立てているのかもしれない。
良くないと思いつつも親友でありながら2人の別れを受け入れた俺を。

('A`)「それをお前が言ってやればいいんじゃないか?」

そこまであいつらのことを思っているお前が言うべきだと俺はクーに言った。
その思いがどういう思いなのか、どちらに向けられているのかは、考えるまでもないことだ。



57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:28:24.53 ID:CIiXGbZc0
 
川 - -)「私が言っても、謝られるだけだ」

後輩に心配をかけてごめんと、謝る2人の姿が目に浮かぶ。
どんなに思っていようが、付き合いの短い私の言葉は、2人の言葉を覆すには足りないと言う。

川 ゚ -゚)「だが、お前なら、お前の言葉なら届くだろ?」

('A`)「……」

俺はクーの視線をそのまま見詰め返す。

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……言ったところで、何も変わらないかも知れんぞ?」

川 ゚ -゚)「何もしないよりはいい」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「確かに、変わらないかもしれない。でも、何もしなければ、何も変わらない」

クーは視線をそらさず、はっきりとそう言った。
不言実行、というには喋りすぎだが、こいつはこれまでも己が正しいと思うことに対しては躊躇いなく行動に移してきた。



60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:31:35.74 ID:CIiXGbZc0
 
それが本当に正しいのかはさておき、まっすぐな姿勢でまっすぐにぶつかって来るこいつが、俺には眩しかった。
ずっと、眩しかったのだ。

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……そうだな」

俺は観念して頷いた。
少しだけ、クーの視線が和らぐ。

正しくはないのかもしれない。
クー自体も、自分のこれまでの行動が独善であるということを理解した上で敢えてその道を選ぶんでいる節が見られる。

それを若さ故の特権だと思うほど、俺はこいつと年は離れていないはずなのに。
そう思った時には言葉が自然に俺の口を吐いていた。

('A`)「年をとるとさ……」

川 ゚ -゚)「うん?」



62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:34:31.96 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「何で相手の答えまで推し量って自分で決めようとするんだろうな」

川 ゚ -゚)「……」

珍しく、呆気に取られた表情でクーが固まっている。
打てば響く普段のような返しもなく、ただ俺のことを見詰めていた。

('A`)「何だよ?」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……悪い、聞かなかったことにしてくれ」

妙な空気に居心地の悪さを感じ、俺は左手を軽く振って発言を取り消そうとした。
しかし、それにはすぐさまクーが反応する。

川 ゚ー゚)「……いや、聞いた。そして覚えたよ」

('A`)「何だよ、急にニヤニヤしやがって」

川 ゚ー゚)「いや、お前がそういう風に自分のことを話すのは珍しいと思ってな」

('A`)「……そうか?」



65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:37:14.55 ID:CIiXGbZc0
 
言われてみればそうかもしれない。
どちらかと言えば聞き役でまとめ役というのが俺の立ち位置だった。
決断力のなさから、サークルの部長はツンにお願いすることになったが。

自分自身の相談、家業を継ぐ時の相談なんかはしたと思うが、よく考えたらその辺はブーン達にしたのであって、
クーにはしていない。
進路の話を大学に入ったばかりの1年生にするのもどうかと思うので、当たり前といえば当たり前のことだ。

そんなクーだったが、いつの間にか悩みを話せるぐらいには近しくなっていたのかもしれない。
そう思えることが俺には少し嬉しかった。

川 ゚ -゚)「お前も人並みに悩むのだな」

('A`)「……当たり前だ。こう見えても悩み多き男なんだよ」

浮かび上がった思いを隠すべく、肩をすくめ、おどけてみせたがクーは鼻で笑う。
どうせくだらない悩みだろうとクーは言う。

そうかもしれない。
先の話と同じく、俺は何もやらずにただ考えていただけで、自分で問題を難しくし、答えを決めていた。

やってみれば意外と答えは簡単なのかもしれない。
その逆で、実は難しいのかもしれない。



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:39:34.15 ID:CIiXGbZc0
 
でも、どちらにせよやらずに決め付けるよりはいいだろう。
それが別の何かに繋がる可能性もある。

考える俺を余所に、クーは意地が悪いようでどこか嬉しそうな笑みを浮かべている。
俺もきっといつも通りの仏頂面で、親しい人間が見れば笑みとわかるそれを浮かべていたのだろう。

川 ゚ -゚)「まあ、いいや。取り敢えず大根1本な」

('A`)「……何がだ?」
  _,
川 ゚ -゚)「何がだ? じゃないだろ? 私が何しにここに来たと思ってるんだ?」

眉をひそめ、呆れた様子で言うクーに、俺はようやくその意味を理解した。
八百屋に来て大根1本と言うのだから、答えは考えるまでもない。

しかしまた大根か。

('A`)「毎度あり。250円な」

川 ゚ -゚)「まけろ」

即座にふざけたことを言ってくるクーだが、いい加減慣れたものだ。
俺は即座に返事をする。



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:42:23.04 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「240円」

川 ゚ -゚)「200円」

('A`)「230円」

川 ゚ -゚)「200円」

('A`)「220円」

川 ゚ -゚)「200円」

('A`)「210円」

川 ゚ -゚)「200円」

全く譲る気配のないクーに、毎度のこととはいえ感心する。
今度家電を新調する時は買い物に付き合ってもらおうかと思っている。

('A`)「お前なぁ……」

川 ゚ -゚)「相変わらず狭量だな。スパッとまけろよ」



68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:46:07.55 ID:CIiXGbZc0
 
('A`)「200……」

諦めてクーの提示額を飲もうとしたが、最後の一言で気が変わった。
狭量の俺はささやかな抵抗を試みる。

('A`)「201円」
  _,
川 ゚ -゚)「お前……」

俺は無言で右手を差し出す。
クーはなおも何か言いたげではあったが、大きなため息とともに俺の手に3枚の硬貨を叩き付けた。

('A`)「毎度」

代金を受け取り、大根を新聞紙に包もうとするがクーはそれを制し、俺の手から大根を抜き取った。

('A`)「包まなくていいのか?」

川 ゚ -゚)「いらんよ。どうせこのまま食うんだし」

('A`)「このまま? 今日中に食っちまうってことか?」



70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:49:53.64 ID:CIiXGbZc0
 
川 ゚ -゚)「いや、このままだよ」

そう言ってクーは大根にかぶりつく。
洗ってはいるものの、味も何もついてていない生の大根に。

(;'A`)「流石にそれはないわ」

川 ゚ -゚)「何故だ? 生でも食えるだろ?」

鮮度の話を言えばそれは食べられる。
しかし、皮すら剥かずにそのまま大根をアイスか何かのように食うやつは初めて見た。

川 ゚ -゚)「そんなものはお前の勝手な常識に過ぎん」

何もつけずともこの大根は美味いと、人差し指を突き付け、堂々たる姿勢でそう宣言するクー。

どちらかと言えば味がどうこうよりも、見た目の部分でどうなのかと思ったのだが、本人がいいならいいのだろう。
俺は諦めてクーに話を合わせるように頷いた。

川 ゚ -゚)「わかればいい」

('A`)「はいはい、わかりましたわかりました」



73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/23(土) 23:58:47.70 ID:CIiXGbZc0
  _,
川 ゚ -゚)「本当にわかったのか?」

('A`)「わかってるさ」

俺はクーの方は見ずに頷く。

川 ゚ -゚)「ふむ……ならば最後に1つだけ」

('A`)「何だ?」

川 ゚ -゚)「お前もたまにはやらずに悩むより、やってみてから悩めよ」

振り向いた俺の目に、大根を小脇に挟み、上方を指差すクーの姿か映る。
その指が指す先には、鬱田青果店の看板がある。

('A`)「……お前」

川 ゚∀゚)「フハハハハ、悩め若人よ」

芝居がかった尊大な哄笑と共に、大根をかじりながらクーは去って行く。
俺はその背をただ見送っていた。



74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:01:02.37 ID:INnfFLsn0
 
('A`)「何が若人だよ……お前の方が若いだろうが……」

クーの姿が見えなくなって、俺はようやくそう呟いた。

('A`)「……不思議なやつだ」

あいつは俺の悩みに気付いていたのだろうか。

この道を選ぶ時に、ブーン達には相談こそしたものの、決めてからは心配を掛けぬよう、極力隠してきたはずだ。
それ以前にクーには相談した覚えはないのだが、勘のいいあいつのことだ、断片情報からでも察しているのだろう。

('A`)「やってみてから悩めか……」

随分乱暴な意見だ。
あいつの言葉は、時に理想論過ぎる気がする。

まるでそれが必ず叶うかのように、失敗をまるで恐れずに。



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:03:59.68 ID:INnfFLsn0

('A`)「若いな……」

何にせよ、こちらを気にかけてくれていたことには感謝すべきかもしれない。

('A`)「後輩に心配されるのも情けない話だがな」

俺は手の中の3枚の硬貨を小銭入れのざるの中へ放り込んだ。
重い2つの音と少し遅れて乾いた音が響く。

自由になった右手を大きく広げ、空にかざす。
まだ高い日が澄んだ青空に眩しく輝いている。

('A`)「……やってみるかな」

俺は大きく息を吸い込み、人気のない通りに向かって呼び込みを始めた。



 ── ('A`)は別れを告げるようです 終 ──



76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:06:10.70 ID:INnfFLsn0
 
 ── 3月23日 ──


(´-ω-`)

(´・ω・`)「……朝か」

朝、いつも通りの時間に目が覚める。
目覚まし時計に頼らなくても、長年に渡り染み付いた慣習がそれを可能にする。

上体を起こし、軽く頭を振る。
幸いと言うべきか、当然と言うべきか、昨夜の酒は残っておらず、体調は万全だ。

(´-ω-`)「とはいえ、ちょっと飲み過ぎたな……」

それほど飲むつもりはなかったのだが、昨日はいつになくドクオのペースが速かった。
そんなに強くもないくせに、大量に酒を買って来て、倒れるんじゃないかと思うくらい飲んでいた。
仕方なく僕もペースを上げ、ドクオに回る分を減らす作業に努めた。

(´・ω・`)「まあ、昨日は仕方ないかな……」

この4年間、僕達にとって一番の友人だったといえるブーンとの別れ。
笑って送り出せたけど、内心は寂しく思う気持ちでいっぱいだった。



78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:08:27.94 ID:INnfFLsn0
 
ドクオは何でもないように振舞っていたけど、小学校以来の付き合いだ。
僕にはそれが虚勢だということは察しが付いていた。

(´・ω・`)「あ、時計……」

起こした上体を再び倒し、うつ伏せで枕元に手を伸ばす。
すぐに少しごてごてした銀の腕時計が僕の指に触れる。
どちらかといえばシンプルな方が好みなのだが、多機能ということなのでこのくらいの装飾は仕方がないか。

僕はそれを手に取り、目の前に持って来る。
針は6時数分前を指していた。

(´・ω・`)「やはり時間通りだね」

時計を確認するという、今までにない行動を習慣付けることに意味はないのかもしれない。
少なくとも、日常生活を送る上では時間の感覚は身体に馴染んでいてわざわざ時計を見る必要はない。

しかし、この時計は特別なものだ。
友人がくれた大切なもの。

だから僕はこれを生活に組み込もうと思う。

僕にしては珍しい考え方のような気もするが、僕はごく自然にそう考えていた。



79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:10:43.11 ID:INnfFLsn0

僕は時計を左腕にはめ、布団から出る。
布団を畳み、押入れに片付け、洗面所へ向かう。

この時計は防水だから、着けたままで大丈夫だろう。

顔洗い、作務衣に着替え外に出る。
暦の上では春とはいえ、まだまだ冬の朝の刺すような冷たい空気だ。

僕は手にいつもの木刀と手ぬぐいを持ち、僕が寝起きしている離れの裏手の方へ回り、日課である素振りを始めた。

(´・ω・`)「1、2──」

もう10年以上も振り続けている木刀は、身体の一部であるかのように手に馴染んでいる。
風を切る音も、腕にかかる重みもいつも通り。

(´・ω・`)「11、12──」

少しだけ左手に違和感は感じるものの、じきに慣れるだろう。
慣れるだけの時間はあるのだ。

時間だけはある。



81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:14:47.23 ID:INnfFLsn0

(;´・ω・`)「──98、99、100」

いつもと同じ回数、同じ時間で素振りを終える。
野菜の添え木に掛けていた手ぬぐいで汗を拭う。

(;´・ω・`)「ふう……」

何の気なしに時計に目を落とすが、そこには見慣れぬ時間が浮かぶ。
いつも通りの時間だとはわかっていても、それが何時何分なのかを意識したことはなかった。

連続した行程の中の一部。
この後も同じ時間に始める別の日課が控えているのだ。

(´・ω・`)「さてと……」

僕は手ぬぐいを首に巻き、木刀を離れの壁に立てかける。
傍らの畑に目を落とし、今日の作業の大体の目星をつけた。

(´・ω・`)「こっちの白菜と、あっちの大根の周りかな」

僕は畑に入り、畝の間にしゃがみこむ。
冬場はあまり雑草も生えないから、作業量も大したことはない。
汗が乾くと流石に身体が冷えるので、早めに終わらせることにしよう。



82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:16:58.13 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「今日はまだドクオは来ないよね……」

立派に育った大根を眺め呟く。
取れた野菜の一部は、ドクオの店に卸している。

もともとは作り過ぎたものの処分という意味合いでのお裾分けのようなものだったが、流石に八百屋に野菜をお裾分けと
いうのも馬鹿にしてるように取られ兼ねないので自重していたが、それならば買い取るとドクオから申し出があった。

(´・ω・`)「しかし、こんなものが商品になるのかねえ……」

何の変哲のない、どこにでもあるような大根。
作る際には丹精込めて育てはしたから愛着はあるが、どう贔屓目に見ても普通の大根だ。
ドクオからは何も言って来ないが、売れないようなら無理に買わなくていいと伝えるべきだろうか。

(´・ω・`)「うちで食べちゃえばいいだけだからね」

しばらく大根付けになるのは覚悟しなければならないだろうが、幸いなことに、僕は大根が好きだ。
うちの皆も嫌いではないだろうから問題はない。
最悪、沢庵にして漬け込めば日持ちもきく。



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:19:08.45 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「さて、この辺にしておくか」

一通り作業を終え、離れに戻る。
浴室に向かいシャワーを浴びる。
ほぼ和式の造りの家ではあるが、風呂やトイレは洋式だ。

それほどこだわりもない上、そちらの方が便利なのでそれはそれで構わないと僕は思う。

(´-ω-`)「トイレはともかく、和式の風呂なんてそうそうはないだろうしね」

風呂に関しては和洋折衷というべきか。
僕はそんなどうでもいいこと考えながら汗を洗い落とした。

(´・ω・`)「ふう……」

シャワーを終え、朝食を取りに母屋に向かう。
この離れは現在僕しか住んでいない。
別に、特別な理由があるわけでもなく単にあるから使っているだけのようなものだ。

家族仲が悪いとか、そういう変な確執があるわけでもない。



85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:21:37.59 ID:INnfFLsn0

朝食はいつも通りの和食。
父母、それに祖母と共に取る。
いつも通りの変わらぬ風景で、いつも通り美味しかった。

朝食の片付けを終え、本堂へ向かいお経を上げる。
僕の左手に光る時計を見た父が、不思議なものを見たような顔をしたが、友人から頂いた大切なものだと告げると、
普段はあまり見せることのない、柔和な笑顔で頷いてくれた。

そこから、午前中の様々な作務をこなし、昼食、午後からもまた作務に従事する。

(´・ω・`)「……」

僕は離れのそばで畑作業に没頭していた。
やるべきことはわかっていて、考え事をしながらでもこなせる作業ではあるが、僕は畑仕事に集中した。

丹精込めて、というわけでもないが、他に考えることも思い付かなかっただけだ。

(´・ω・`)「……本当はあるはずなんだけどね」

僕は作業の手を止め、ため息混じりにつぶやく。

変わらないはずの日常。
しかし、その全てが毎日寸分違わず同じであるわけはないのだ。



87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 00:24:21.97 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「昨日のこの時間は、ブーンの引越しの手伝いに行ったんだしね」

それがわかっていながら、僕は僕を日常という枠に押し込める。

僕は左手の時計に目を向ける。
昨日までのいつもに、ほんの少しの変化をもたらしたもの。
けれど、告げられる時間が、僕のいつもに変化をもたらすことはない。

それはただの経過で、身体が認識している感覚を、数字として頭に入れ直しているだけだ。

(´・ω・`)「変わらないんだよね……」

僕の日々は何も変わらない。

それは嘘だ。

毎日毎日、何かしらの些細な変化はあり、時には大きな変化もある。
昨日と今日の朝ご飯の献立が違うというような小さな変化、昨日、ブーンが故郷に帰ったような大きな変化。
一日とて今日と同じ日は来ないのだ。

それはわかっている。



94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:05:00.76 ID:INnfFLsn0

でも……

(´・ω・`)「僕の日々は変わらない未来に向けて進んで行くしかない」

いつからだろう、そんな風に考えるようになったのは。

僕はこの町が好きで、この家が好きだ。
ここで暮らすことに、何の不満もない。

僕は母屋の方に目を向ける。
澄んだ青空の下に佇む古めかしいお堂が見える。

(´・ω・`)「……」

長男で一人っ子である僕が、この寺を継ぐことにも何の疑問も持っていなかった。
幼い頃からずっと、そうするものだと漠然とだが認識していたと思う。

年を経るにつれ、他の選択肢の存在も知ることになり、そういった考えに魅力を感じることもあった。
両親も、無理に継ぐ必要はないと常日頃から言ってくれてはいたが、僕は考えを変えることはなかった。
僕は僕の毎日に何の疑問もなく、そして不満もなかった。

それは今でも変わらないはずだ。



96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:07:33.55 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「……だのに、どうしてこうも心がざわつくのかな」

僕は作業の手を止め、収穫の終わった畑の上に寝転んだ。
まだ冬の色が残った馬鹿みたいに青い空が目に痛い。

僕は左手を空にかざす。
空色、肌色、銀色、いくつかの色が混ざり合い眩しさに目を閉じた。

(´-ω-`)「ブーンには悪いことしたかな……」

僕は目を閉じたまま左手の時計に右手で触れ、留め金を外した。
身体を反転させ、地面にうつ伏せになり、時計を覗き込む。
そこに刻まれた時間は、普段なら意識せずに通り過ぎる時間だ。

(´・ω・`)「気持ちは嬉しいんだけど、僕には使い道がなあ……」

変わらない日々を送る僕には、必要のないものなのだ。
僕は何の気なしに時計を裏返す。



97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:10:29.83 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「BN……201……? ああ、型番か」

そういえばブーンがこれを買ったすぐ頃に、何度も名前を聞かされた覚えがある。
初めての1人暮らし、初めてのバイト、初めての高い買い物、あのときのブーンは傍目からも面白いくらい浮き足立って
いたのがわかった。

同時に、とてもいい顔で微笑んでいたことも覚えている。

(´-ω-`)「色々あったな……」

目を閉じれば思い出す、数々の思い出。
4年間という、人生でいえば5分の1にも満たない時間だが、僕の人生の中で一番充実していた時間だったと思う。
あまり活動的ではない僕が、散々引っ張り回されていろんな場所を自転車で走り回った。

狭かった僕の世界が、一気に広がった気がする。

(´・ω・`)「……」

そんな充実した時間も終わり、僕はまたいつもの日々に戻った。
ブーンはいなくなったけど、昔からの付き合いであるドクオはまだいる。
その気になれば、また一緒に自転車で走り回ることも出来るだろうけど、ドクオも家業を継ぎ、僕も家業を継ぐ。



98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:13:10.26 ID:INnfFLsn0

僕らは学生ではなくなり、以前のように時間に余裕は持てなくなる。
僕の場合は作務と授業が入れ替わっただけの、変わらないはずのいつもであるのに不思議な話だ。

(´・ω・`)「……何だかよくわからないな」

僕自身が何を考えているのかよくわからない。
不満がないはずのいつもが、どうしてこうも不安をもたらすのだろう。

(´・ω・`)「僕は──」

(#'A`)「サボってんじゃねええええ!!!」

(´゚ω゚`)「グハァッ!?」

突如として背中に衝撃が走った。
油断しきっていた身体からリバースしそうになる昼食を押し戻し、僕は転がるようにその場から回避する。

('A`)「てめえ、畑荒らすんじゃねーよ」

(;´・ω・`)「随分なご挨拶だね、ドクオ。何の用だい?」

作務衣に付いた土を払い、僕は立ち上がる。
野菜の仕入れは明日だったはずだが、一体どうしたのだろうか。



100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:16:30.78 ID:INnfFLsn0

('A`)「何の用だい? じゃねーよ。昨日話しただろうが?」

(´・ω・`)「昨日? ……何だっけ?」

('A`)「お前……」

ドクオがお世辞にも見栄えが良いとは言えない顔をさらに歪め、睨み付けるような目で僕を見る。
覚えてないのか、と再度問われるも、昨日の泥酔状態のドクオがまともに話なり約束なり出来たとは思えないのだが。

('A`)「言っただろうが。仕入れを増やすって」

(´・ω・`)「ああ……」

そういえばそんな話もしてたな。
てっきり酒の席での話かと思ったら、その前の掃除の時にそんな話をちょっとし掛けて、また後でとなったような。

(´・ω・`)「君が酔っ払ってたから話はまた後日かと思ってたよ」

('A`)「だから後日に来たじゃねーか」

僕は頭を掻き、ドクオに説明を求める。
理由と具体的に僕がやること、それを端的に話してもらった方が話が早い。



101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:19:31.72 ID:INnfFLsn0

('A`)「理由は……売り上げを伸ばすためだ」

少しだけ、間が空いたがドクオははっきりと宣言するように言った。
いつもは回りくどいドクオにしては妙に明快なのが気になるが、そのこと自体はわからない話ではない。
商店街の現状は僕も把握してるし、何かしらてこ入れが必要なのは明らかだ。

それでうちの大根の仕入れを増やす理由がいまいち繋がらないけど、その辺は追々聞いていくとしよう。

(´・ω・`)「うーん……漠然としすぎてるけど、まあいいや。それで、僕はどうすればいいの?」

('A`)「1つは増産だな」

(´・ω・`)「いや、流石にもう遅いでしょ、今からじゃ」

畑を増やせだの無茶を言うドクオだが、取り敢えずは売る分を増やすことで納得してもらった。
しばらくは大根尽くしの食事が食べられると思っていたのだが、どうやらその夢は叶わぬようだ。

('A`)「もう1つは……」

(´・ω・`)「まだあるの?」

('A`)「こっちが本題だ」

(´・ω・`)「お手柔らかにね」



104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:22:00.83 ID:INnfFLsn0

普段より少々どころじゃなくやる気に満ち溢れているのが気になるが、大体においてこういう時はろくなことがない
のを経験的に僕は理解している。

('A`)「新しい仕入れ先を開拓する」

(´・ω・`)「がんばれ」

('A`)「……」

(´・ω・`)「いや、それは僕には関係なくないかな?」

('A`)「手伝えよ」

(´・ω・`)「今日は珍しく直球ばかりだね。 何かあった?」

何もない、普段通りだとと答えるドクオだが、それが嘘なのは僕にはわかる。
大方、ブーンがいなくなって寂しいと思う気持ちを別のことで紛らわせたいのだろう。
昔から、振られる度に奇行に付き合わされた身はそのことをよく理解している。

(´・ω・`)「手伝うのは構わないんだけど、僕は農家の人につてはないよ?」

('A`)「わかってる。お前は顔を貸してくれるだけでいい」



105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:25:37.95 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「整形するの?」

(#'A`)「ちげーよ、馬鹿。顔っつーか名前だ。一応お前は地元の名士の息子だろうが」

(´・ω・`)「ああ……そういうことか」

名士と言われると御幣があるのだが、お寺の住職ともなれば多少は一目置かれるようだ。
特にお年寄りの方には名が通るので、そういう年代が多い農家の方には話しやすいかもしれない。

(´・ω・`)「じゃあ、訪ねるうちの目星はついてるんだ」

('A`)「……いや、まだだ」

(´・ω・`)「……何度も言うけど、僕にあてもつてもないからね?」

わかっていると言いながらも、その目は僕を当てにしている目だろう。
丸投げするつもりはないだろうし、それも手伝えということか。

(´-ω-`)「……檀家の中に当てになりそうな農家の方はいないか聞いてみるよ」

('A`)「恩に着る」



107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:29:58.48 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「その代わり、何で急にそんなやる気になったのか聞かせてね」

出来る範囲で協力することにはやぶさかではないが、やはりドクオの心変わりの理由を知りたいと思う。
ドクオはもともとこれほど積極的に動くタイプではない。
正確には、自分のことに対してはという前置きが付くのだが。

('A`)「……別に急じゃねえよ」

(´・ω・`)「前々から考えてたことだと?」

ドクオは視線をそらし気味に頷く。
その中途半端な態度に、僕は頭を掻きながら続ける。

(´・ω・`)「考えてはいたけどやる気はなかった、ってとこかな」

僕の指摘にばつの悪そうな顔を浮かべたドクオ。
恐らくそれが正解なのだろう。

となるとやはり、その心変わりの理由が知りたいところだが、思い付くのは2つほど。

1つはブーンのこと。
そしてもう1つは……



108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 01:34:07.58 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「またクーにやり込められた?」

(;'A`)「ち、ちげーよ!」

正解。

まあ、そんなとこだろうとは予想ははしてたけど、こうもわかりやすいと張り合いがない。
終始気難しそうな顔をしてる割には、昔から隠し事が下手だ。

僕は更にからかいたい衝動を抑え、何にせよ、やる気になったのはいいことだとフォローしておく。
あんまりからかうとすぐ拗ねるから性質が悪い。

('A`)「何でお前はそんな上から目線なんだよ」

(´・ω・`)「僕は僕のやるべきことをちゃんとやってるからね」

('A`)「その割には、珍しく浮かない顔してたじゃねーか」

(´・ω・`)「……鋭いね、顔の割には」

僕がドクオのことをわかるように、ドクオも僕のことはわかる。
そのくらい長い付き合いなのだ。
お互い上手く隠せた試しはない。



113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:00:42.50 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「君と似たような話だよ」

('A`)「俺と……?」

ドクオは言葉を切り、僕の方をじっと見詰める。
僕はドクオが口を開く前に自己申告で答えを告げる。

(´・ω・`)「このままでいいのかなって……結論としてはいいんだけど」

('A`)「何だそりゃ?」

このままでいいなら似てじゃないと言うドクオに僕はそうだねと頷く。
憮然とした顔をするドクオだが、別に馬鹿にしているわけじゃない。
悩む原因、きっかけが同じで、最終的に辿り着く結論が違うだけなのだ。

さして難しい話じゃない。
互い、従事している職業が違うだけなのだ。

(´・ω・`)「お寺で何を変えるのさ?」

('A`)「檀家を増やすとか、そういうのは……」



114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:03:04.31 ID:INnfFLsn0

昔からの繋がりで成り立ち、寺ごとの領分も暗黙の内に決められている。
そんな中で、僕に求められることは現状維持だろう。
僕が望まれることは、僕でなければならないことではない。

(´・ω・`)(……ああ、それか)

変わらないことに不満がないはずの僕の不安。
僕は必要とされて、でも、それは僕自身ではなく、単に僕の位置にいる人であるということ。

それが僕の考えすぎであることはわかっていて、僕が僕としてこの場所にいることに必要性を見出せないだけなのだ。

(´・ω・`)「……」

僕は外したままだった時計に目を落とす。
これは僕を僕として必要とされた数少ない結果の1つなのかもしれない。

('A`)「ちゃんと持ち歩いてるんだな」

大切なもの大事に取っておくタイプだと思っていたとドクオは言う。
僕自身もそう思っていたし、これを生活に組み込もうとした自分が少し珍しく思えた。



116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:06:17.13 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「ブーンはずっとこれを使ってたからね」

急に使われなくなるのもかわいそうだからと僕は言う。
僕はブーンがくれた変化を、壊れるまで使おうと思う。
壊れたらそこでまた新しい変化になるだろう。

('A`)「まあ、いいや。とにかく手伝えよ」

暇なんだろと言うドクオだが、僕は暇というわけでもない。
決まりきった日常だが、それも必要な日常で、不安はあれど僕はそれが嫌なわけでもない。

(´・ω・`)「めんどくさいなあ……」

やる気のない僕の返事に、露骨に怒りの表情を見せるドクオ。
面倒だとは言ったけど、僕は親友の申し出を受け入れるのだろう。

変化への憧れとまでは言わないが、人生、時にはアクセントも必要だと思う。
穏やかすぎる人生は、それはそれで退屈だろう。

そしてもう1つ、僕にはドクオの申し出を受け入れる理由がある。



117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:08:32.00 ID:INnfFLsn0

(´・ω・`)「それで、増産にしろ仕入先の交渉にしろ具体案は考えてるのかな?」

それはドクオが僕を僕として必要としてくれるから。

僕は腕時計をはめ直し離れの方を指差した。
お茶でも飲みながら話そうとドクオを誘う。

にこやかのはずが残念としか言いようのない笑みを浮かべるドクオに、僕はため息を吐く。
変化のない日常の方が良かったと後悔しそうだ。

まあ、その時はその時でまた考えよう。
この変化もまた日常に組み込まれ、いつしか変わりのない日々になっているだろうしね。

(´・ω・`)「で、僕の大根の売れ行きはそんなにいいの?」

('A`)「……まあまあだ」

僕は親友のわかりやすい反応に、軽く笑ってみせた。



 ── (´・ω・`)は別れを告げるようです 終 ──



118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:11:05.50 ID:INnfFLsn0
 
 ── 3月22日 ──


ξ゚゚)ξ「よっと」

優れないはずの気分も、旅という非日常の空気が高揚させるようだ。
私は自然に口から漏れた呟きと共に、バスのステップから最後の一段を飛び降りた。

いちいち掛け声をを掛けてしまう癖は、子供っぽいとか年寄り臭いとか、人によって正反対な評価を受けて来たけど、
長年染み付いた癖はそう簡単には拭えないらしい。

ξ゚゚)ξ「わぁ……」

降り立った歩道には前日の雪がまだ残っている。
空には青が広がり、地面には白が広がるこの景色は嫌いじゃない。
雪の多い場所で暮らしたことのない私には、雪が珍しく、良いものにしか見えない。

でも、これからここで暮らし、長くいるとこういう気持ちも消えてしまうのだろうか。
それが日常になり、目新しさが消えると煩わしさだけが残るのかもしれない。

慣れることは良いことだと思う。
でも、それが感覚が鈍化することならば本当に良いことなのだろうか。

私は、この雪をずっと好きでいたいと思う。



119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:14:20.73 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「……」

眼下に広がる白に覆われた地面。
まだ踏み荒らされた跡が少ないのは、きっと大学が休みの期間で人が少ないからだろう。
それでなくても町全体がひなびた印象ではあるが。

なんだかあの町と似たような空気を感じる。
ここもいい町であって欲しい。

あの町のように。

ξ゚゚)ξ「……さてと、行きますか」

私は足を踏み出す。
新たな一歩、前に進むための別れの一歩を。


      ステーン


     ヽξ゚゚)ξ   
    \(.\ ノヽ
  、ハ,,、  ̄


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:17:32.40 ID:INnfFLsn0

転んだ。

それはもう見事に転んだ。
視界の端に自分の足が空をバックに見えるぐらいの見事さだ。

私はしばらく呆けていたが、どうするべきなのかに気付くとようやく立ち上がった。
周りを見回すが幸い誰にも見られずに済んだようだ。

ξ--)ξ「なんだかもう雪が嫌いになりそうだわ……」

私はしこたまぶつけたお尻に付いた雪を払う。
スカートじゃなくてよかった。

ξ゚゚)ξ「はあ……幸先悪いわね……」

新たな門出の一歩としてはどうしようもないものだろう。
一歩目から躓くどころか転倒なんて。

少し雪を甘く見ていたようだ。

私は、視線を後方に向ける。
私の転んだ跡が綺麗に雪の上についている。



123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:19:59.44 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「……」

この様を見て、大笑いをするである馬鹿2人はいない。
そして、転んだ私に手を差し伸べてくれるあいつもいない。

笑顔で手を差し伸べる、あいつはもう私のそばにはいないのだ。

ξ--)ξ

私は大きく首を振り、浮かび上がった考えを振り払った。

決めたのは私達だ。

私とあいつで決めたことなのだ。

ξ゚゚)ξ「私は大丈夫」

私は自分に揺れを抑えるように、言い聞かせるように呟く。

あいつもきっと大丈夫だから。
私は私の道を歩くのだ。

私は再び大きく足を踏み出す。
先に進むために、私の道を行くために。



124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:22:48.95 ID:INnfFLsn0

      ステーン

     ヽξ゚゚)ξ   
    \(.\ ノヽ
  、ハ,,、  ̄


……畜生、もう雪蒸発しろ。


・・・・
・・・

「ありがとうございました。またおいでください」

事務的な挨拶に見送られ、不動産会社を後にする。
いくつかの物件は見せてもらったが、どれも今一つピンと来ない。
1人暮らしをするには十分な広さで、大学にも程よく近く、家賃もそこそこな物件もあったのだが、どうしても決め切れなかった。

ξ゚゚)ξ「出来れば今日中に決めたいとこだけど……」



126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 02:30:24.16 ID:INnfFLsn0

一応明日までの余裕はとってあるが、なるべくなら今日の内に決めたい。
明日は大学に向かい、院への入学の正式な手続きやら色々なことを済まさなければならない。

ξ゚゚)ξ「別の不動産屋に行ってみるかな」

ひなびた感じで、賑わっているとは言い難い空気の町ではあるが、大学があるので学生の町としては相応に不動産屋の数はある。
ここ以外にも町中に数件、さして探さなくてもすぐに見つかるぐらいだ。

ξ゚゚)ξ「どうしようかな……」

私は見慣れぬ商店街の中を外れの方に向かって歩く。
流石に除雪されており、もう転ぶようなことはなかった。

道に雪はないが、吐く息は白く、屋根に残る雪も白い。
見上げる空の透き通るような青さと雪の白さのコントラストが目に眩しい。

気付けば空を見上げる自分に苦笑する。
いつから空ばかり見上げるようになったのか、自問せずとも答えは明白だ。

私の隣にいたあいつが空が好きだったから、私もつられて、いつしか見上げるのが癖になっていた。



134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:14:12.67 ID:INnfFLsn0

ξ--)ξ「……」

私は静かに目を閉じる。
思い浮かぶいくつもの空の下の情景。
それを一緒に見続けてきた横顔。

私は……


      ステーン


     ヽξ--)ξ   
    \(.\ ノヽ
  、ハ,,、  ̄


……除雪されているとはいえ、滑りやすくなっている道を上を見ながら歩くのは危険だ。
さらに言えば目を閉じて歩くのは論外だと私は文字通り身を持って味わった。



136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:18:07.59 ID:INnfFLsn0

ξ;゚゚)ξ「最悪……」

雪こそ付かなかったものの、除雪され、湿っていた道に尻餅をついてしまった。
それがどういうことに繋がるか、言わずもがなである。

ξ゚゚)ξ「先に宿に向かうかな……」

そう思い、踵を返そうとしたが考え直してこのまま大学に向かうことにした。
大学なら暖房もきいているだろうし、確か不動産の斡旋もやっていたはずだ。
手荷物も1泊分なのでさして多くない。

ξ゚゚)ξ「お腹も空いたしね」

私は再び歩き出す。
ちゃんと前を見て、しっかりと足を踏み出す。
転ばないように気を付けて、窮屈そうに足を伸ばす姿はきっと滑稽だったかもしれない。

でも、それが今の自分の姿なのだ。

私は1人で、この道を自然に歩けるようにならなければならない。

ξ゚゚)ξ「それが私達の決めたことだから」

私は大学に向かい、1人歩き出した。



137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:22:13.54 ID:INnfFLsn0
・・・・
・・・

ξ゚゚)ξ「ごちそうさまでした」

休日の学食は閑散としていたが、暖を取るには十分の暖かさを保っていた。

ξ゚゚)ξ「味はまあ、どっこいどっこいかな……」

これからまた4年間お世話になる味が、卒業した大学のそれと大差なくて安心したような残念のような複雑な気分だ。
不満があるなら自分で作ればいいという話もあるが、これから忙しくなるだろうし、料理の腕を振るう相手もいない。

料理自体も得意ではないというか、一度振舞ってみたら、馬鹿その1に、これは料理という名の暴力だという甚だ
心外な評価を頂いたのでそれ以降作っていない。

ξ゚゚)ξ「そんな料理でもあいつは残さず食べてくれたけどね」

翌日学校休んだけど。

ξ゚゚)ξ「さてと」

私はトレーを手に立ち上がる。
食器を返却し、階下に降りた。
下が生協になっており、ここで不動産の斡旋もやっているようだ。



139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:26:27.96 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「あら?」

さして広くもない店内を抜け、奥のカウンターに向かうも、そこには昼休み中のプレートが置かれていた。
昼休みが一番学生が訪れそうなものだが、よく考えたら今は大学は休みだ。
営業しているだけマシなのかもしれない。

ξ゚゚)ξ「仕方ないか……」

私はどこかで時間を潰すことに決めた。
再び学食に戻り、のんびりお茶でも飲んでいてもよかったのだが、折角だから少し大学の構内を歩いてみることにした。

試験の時に一度来てはいるが、その時は見回る余裕もなかったし、丁度良い機会だ。

私は取り敢えずの目標は定めずに歩き出した。
春期休暇中の構内は人もまばらで、踏み荒らされていない新雪も所々残っている。
もう日は昇ってしまっているが、溶け出すほどには気温が上がってはいないようだ。

ξ゚゚)ξ「なんだか別世界って感じよね」

卒業した大学のある町も故郷の町も、雪が降ることはあったがここまで積もることはまずなかった。
今後はこの見慣れぬ光景が馴染みのものに変わっていくのだろうか。



141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:33:49.47 ID:INnfFLsn0

私は1人歩く。
すれ違う人もなく、ただ1人。
1人で歩くのがこんなに寒いものだったことを思い出しながら。

ξ゚゚)ξ「ホントに寒いわね……」

雪が溶けない気温だ。
寒いのは当たり前だ。

でも、それ以上に私は寒さを感じているのだろう。

ξ゚゚)ξ「……」

私は足を止め、また空を見上げる。
日は少し傾き、既に昼休みは終わってるのではないと思うぐらいには歩いた。

広さも古さも、卒業した大学と同じぐらいに感じる。
この町からも感じたように、どことなく似た匂いがする。

違うのはこの雪と、隣に誰もいないことだけだ。



143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:37:05.76 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「馬鹿みたい……」

私は空を見上げたまま呟いた。

本当に馬鹿みたいだ。

今日だけで何度あいつのことを思い出したのだろう。
あいつと別れてから、ずっと、そのことを考えない日はなかった。

今日で201日目だ。

あの夏の終わりの日からずっと、過ぎた日は数えるまでもなく覚えている。

わかっているのだ。

私はまだあいつを……

ξ゚゚)ξ「馬鹿みたい」

私が目指した空へ顔を向けたまま、同じ言葉を呟く。
顔を下げれば涙がこぼれるかもしれない。



144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:42:20.20 ID:INnfFLsn0

ξ--)ξ「……」

私は目を閉じる。
幾度となく繰り返し、その都度同じ答えを選んだ問いをまた繰り返す。

私たちが選んだ答えは、間違っていたのだろうか?

お互いの道のためには、正しい答えだった。

また繰り返す。

私の答えとあいつの答え。
私達の答えを。

お互いのために、お互いが幸せになるために選んだ答えを。

ξ--)ξ「今頃引越しの最中かな……」

あいつはあの町を今日で去って行く。
もう、会うことはないかもしれない。
いや、友達としてならまたいつか会えるのかもしれない。

いつか、遠い未来、想い出を懐かしめるような関係で。



145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:47:20.88 ID:INnfFLsn0

友達として。

ξ;;)ξ

見上げたままの顔を涙が伝う。

それが私の本当の答えのはずなのに、どうして私は1人ここにいるのだろう?

あいつの答えも私と同じじゃなかったのだろうか?

どうして同じ答えが二つ合わさったら、全く反対の答えになってしまったのだろう?

思い起こせばすぐに浮かぶあいつの横顔。
少し頼りない、でも、いつもやさしい笑顔を浮かべていた。

私に向けられるその穏やかな視線が嬉しくて、でも気恥ずかしくて、私はいつも気難しい表情を浮かべていた。
すごく感謝しているのに、引きつった笑顔を見せる私に、わかっているから大丈夫とただ笑ってくれた。

私は顔を下ろし、提げていたバッグを漁る。
探すまでもなく目的のものは見つかり、二つ折りにされたそれを取り出し、そっと開いた。


【( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ】



146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 03:53:05.43 ID:INnfFLsn0

私が初めて自然な笑顔で映ることの出来た写真。
後にも先にも、これ一枚だけだったかもしれない。
普段でさえ、強張った笑みしか浮かべられないのに、写真ともなると緊張してダメだった。

この場所も、この時のこともよく覚えている。
初めて出かけた動物園、どちらかといえば大失敗の部類に入る日だった。

時間を間違えたり道を間違えたり、雨に降られたり、色々と散々なことばかりだった。

あの時の私はすごく不機嫌だった。
あいつはオロオロするばかりで、頼りにならなくて、でも、一生懸命挽回しようとしてくれた。

その度に余計に失敗を重ねて、最後はもう、呆れるを通り越して馬鹿馬鹿しくなって笑うしか出来なかった。
なんだかそれが本当におかしくて、そしたらあいつも笑い出して、私達は2人で大笑いした。

いつの間にか雨も上がり、私達は雨上がりの動物園を手を繋いで歩いた。

ごく自然に手を取り、ごく自然に笑顔を向けて。


【( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ】



148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:00:22.20 ID:INnfFLsn0

そんなときに撮った写真だ。

それ以降は、私も自然な笑顔を向けられる回数が増えた。
写真はダメだったけど、あいつのそばで自然な自分でいることが出来るようになった。

私が私でいられたのはあいつがいたからだ。

私は写真をゆっくりと元のように二つに折った。
そしてそれをバッグの中に大事に仕舞い込む。

私はまた空を見上げる。

こんなにも答えがわかり切っているのに、私は何をしているのだろうか?

ξ゚゚)ξ「あの写真、あいつはどうしたのかな……」

律儀なあいつのことだ。
私に迷惑がかからぬようなどと考えて、処分してしまったかもしれない。
それとも、友達との想い出として、故郷に連れ帰ってくれたのだろうか。

どちらにしても、私は寂しい。

どちらにも、私自身はあいつのそばにいないのだ。



149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:02:35.36 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξっ[]

私はバッグから携帯電話を取り出す。

アドレス帳を開き、目的のページ辿り着くがそこで手が止まった。

ξ゚−゚)ξ[]「今更何て言えば……」

私が寂しい言えば、あいつはすぐに飛んでくるかもしれない。
色々なものを投げ出して、全てを置いて。

ようやく掴んだ未来さえも捨てて。

ξ゚−゚)ξ「それはダメ」

私は携帯電話を閉じる。
あいつがそうするとわかってるから、私は別れることを決めたのだ。
あいつのために、お互いのために。

だのに今更、泣き言を言ってあいつを困らせるわけにはいかない。
私はここで、私の道を歩むと決めたのだ。



151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:05:02.16 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「よし」

私はもう一度携帯電話を開く。
アドレス帳の別のページ、あいつの手伝いをしているであろう馬鹿に電話をかける。

ξ゚゚)ξ[]「引越しの状況を聞くくらいいいわよね……」

ξ゚゚)ξ[]

[]<「はい、もしもし……てか、何で俺にかけるんだよ?」

数回の呼び出しの後、電話に出たドクオは相変わらずの悪態で応対する。
そういうとこを直さなければモテないと思うのだが、今はそのことは置いておく。
直したところでモテるとも思えないし。

ξ゚゚)ξ[]「もしもし? 仕方ないじゃないの、ショボンは携帯持ってないんだし」

[]<「ちげーよ、直接かけろって話──」

ξ゚゚)ξ[]「その話はいいから、それで、引越しはどうなったの?」

[]<「だから直接かけろよ……」



153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:08:28.11 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ[]「……」

[]<「……」

ドクオの言葉に私は押し黙る。
はぐらかしが通用しない相手だとわかっているが、同時に察してくれもする相手だ。
私は要点だけを尋ねる。

ξ゚゚)ξ[]「……無事に帰ってった?」

[]<「……ああ、ほんのさっき送り出したとこだよ」

ξ゚゚)ξ[]「そう、良かった。ありがとね」

[]<「待った」

それだけ聞けばそれで良かったのに、ドクオが私を引き止める。
ドクオにはずっと気を揉ませ続けて申し訳なかったと思うが、私とあいつで決めたことなのだ。

ξ゚゚)ξ[]「……何?」



155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:13:19.79 ID:INnfFLsn0

[]<「お前、それでいいのか?」

ξ゚゚)ξ[]「……いいわよ」

いつも以上にストレートな質問に私は一瞬だけ言い淀むが、極めて普段の調子で返した。
声は震えていないはずだ。
震えていたとしたら、それはここが寒いからなだけだ。

[]<「嘘吐け。いいわけないだろ?」

ξ--)ξ[]「……いいのよ、もう」

それが私達2人のためなのだから。
私は電話を切る旨を告げ、携帯電話を耳から放す。

しかし、ふと思い立ち、あのことをドクオに質問してみた。

ξ゚゚)ξ[]「ねえ、ドクオ、ブーンは写真どうしたか知ってる?」

[]<「写真?」

私達2人が写った写真。
あいつは想い出を捨てていったのか、それとも……



157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:17:22.49 ID:INnfFLsn0

[]<「持っていったよ」

ξ゚ー゚)ξ[]「そう……」

そのことがほんの少し嬉しかった。

[]<「大事そうに、胸ポケットに入れて」

ξ゚゚)ξ[]「そっか……ありがとう」

私は携帯電話を耳から放し、通話終了ボタンに手をかける。
切る直前、ドクオの声が届いて来た。

[]<「自分のしたいようにしろよ。あいつのためとかじゃなく、普段通りわがままに──」

ξ゚゚)ξ「……」

私は携帯電話を見詰めたまま立ち尽くす。
201日前に変えたっきり、デフォルトのままの待ち受け画面を見ながら。

ξ゚゚)ξ「自分のため……?」

ドクオは何を言ってるのだろうか?



158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:22:08.30 ID:INnfFLsn0

私がここにいるのは、私とあいつ、お互いのためだ。
それはつまり私のためであり、あいつのためなのだ。

ドクオは何を言って──

ξ゚−゚)ξ「違う」

私は大きく首を振る。
前髪が揺れ、視界に映る白い世界にわずかに影を落とす。

ξ゚゚)ξ「これはお互いのためだけど、私のためじゃない」

私のためなら、どうしてこうも寂しいのか。
私のためなら、どうしてこうも悲しいのか。

私はこんな場所を望んでいない。

私は、私がこの道を選んだきっかけを思い出した。
いつも空ばかり見ていたあいつの視線を追い、同じ世界を見るべく、同じ世界を知るべく、私はこの道を選んだのだ。

それなのに私は……

私は再び首を振る。



159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:25:58.79 ID:INnfFLsn0

あいつは気付いていたのだろうか?
あいつは今どんな気持ちなのだろうか?

お互いのため、でも、私の望まない答え。
私は間違った答えに従い、あの町に別れを告げた。
きっとあいつも望まない答えを抱えて、あの町に別れを告げたのだろう。

そう思う。
あいつならきっとそう思っている。
私は、あいつのことなら何でも知っているから。

少し気弱で、でも責任感はあって、いつも笑顔で、頭はそんなに良くないけど相手のことを第一に考えるやさしいあいつ。
私が一番あいつのことを知っているのだ。

でも、きっとあいつは答えを変えない。
変え切れないのだ。

ξ゚ー゚)ξ「やさしさと、気弱さと、そして馬鹿なところで」

私は口の端を緩める。
わがまま呼ばわりしたあの馬鹿は許さないけど、確かに私が引っ張らなければあいつは答えを変えないだろう。

だから……

ξ--)ξ「私は……」



161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:33:26.23 ID:INnfFLsn0

私はくるりと踵を返し、歩いて来た方向へ向き直る。
進むために別れた道を、戻ればやり直せるのだろうか?

それはわからない。

でも、私にはまだやれることがある。
いや、私がやりたいことがあるのだ。

ξ゚゚)ξ「行きましょう」

私は大きな声で自分に言い聞かせ、足を踏み出す。

私が私のために、そしてあいつのために選んだ道へ。

私の一歩は力強く踏み出され、そして──


      ステーン


     ヽξ゚゚)ξ   
    \(.\ ノヽ
  、ハ,,、  ̄


宙を舞った。


 ── ξ゚゚)ξは別れを告げるようです 終 ──



162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 04:37:28.80 ID:INnfFLsn0
 
 ── 3月23日 ──


頭上に広がる満天の星空。

風にそよぐ緑の大地。

傍らで空を見上げる君の横顔。

あの時の見た景色は、きっと僕の心に一生残るのだろう。

あの町から持ち帰ったもの、想い出。
僕はそれを胸に抱え、お互いが選んだ道を歩いて行くのだ。


( -ω-)「お……」

(,,゚Д゚)「おお、起きたか」

(;^ω^)「すみません、寝ちゃってて……」

(,,゚Д゚)「何言ってんだ、別に構わねーよ」

そう言って、トラックの運転手、ギコさんは豪快に笑う。



167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:02:56.88 ID:INnfFLsn0

もう数時間で着くから、着いたら起こそうと思ってたと言ってくれたが、助手席に座る身としては、運転手が眠く
ならないように話し相手は務めるべきだろう。

僕は目を擦り、窓の方へ顔を向ける。
いつの間にかどこかで見た景色に帰り着いていた。

(,,゚Д゚)「この辺はもう馴染みの場所か?」

( ^ω^)「ええ、そうですお」

山と田んぼしか見えない味気ない景色。
さして広くもない幅の道。
これでも国道というのだから驚きだ。

(,,゚Д゚)「身体は大丈夫か?」

( ^ω^)「え? あ、はい、大丈夫ですお」

ギコさんは僕の疲れを心配してくれたようだが、一応大学での4年間、サイクリングサークルで鍛えた身だ。
このくらいは問題ない。



168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:06:02.32 ID:INnfFLsn0

(,,゚Д゚)「別に手伝ってくれなくても良かったんだが、何か悪かったな」

( ^ω^)「いえ、大丈夫ですお。身体を動かすのは好きですし」

このトラックは3件分の引越しの荷物を積んでいた。
僕は引越しのトラックに便乗し、最後の自分の荷降ろしだけ手伝う約束ではあったが、その前の2件の荷降しも自発的に
手伝った。

受け取り側の人間もいるにはいたのだが、何もせず、1人だけ助手席に座ってただ眺めているのも居心地の悪いものだ。
お前はお人好し過ぎると、ドクオに揶揄されそうだが、ただ待っているのも暇だったから僕としては丁度良かった。

(,,゚Д゚)「しかしお前、中々筋がいいな。行くとこなくなったら俺の所に来いよ」

( ^ω^)「ありがたいお言葉ですお。覚えておきますお」

ギコさんは笑って言う。
僕も笑って返した。

半分冗談だとは思うけど、こういう仕事も中々いいものだと思えた。
実際にやってみると大変な仕事なのだろうとは思うけど、こういう風に何も考えずに身体を動かす仕事の方が僕向きだと思う。
それに、いろんな場所に行けるのもいい。



170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:09:09.70 ID:INnfFLsn0

( ^ω^)「……」

僕はそっと右手で胸ポケットを押さえる。

うん、わかってる。

そう思うのはきっと捨て切れなかった想い出のせいだと。

僕は再び窓の外を眺める。
代り映えのしない田園風景が続く。

結局僕は写真を捨てられなかった。
胸ポケットに入れたまま、取り出すことも出来なかったけども。

僕は右手に少しだけ力を込めた。

(,,゚Д゚)「なあ、胸ポケットに何が入ってるんだ?」

(;^ω^)「お!? な、何の話ですかお?」

突然かけられたギコさんからの言葉に、とぼけてみるもどうやら遅かったようだ。
ニヤニヤとした笑い顔を見せ、ギコさんは隠すなよと楽しげに言う。
事あるごとに胸ポケットを押さえる僕の姿は何度も見られていたらしい。



171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:15:21.21 ID:INnfFLsn0

僕は観念して胸ポケットから写真を取り出す。

別に突っぱねてもよかったはずなのだが、ただ僕がこれを取り出したかっただけかもしれない。

ギコさんは写真を受け取り、片手にハンドル握ったまま写真をちらちらと確認する。

(;^ω^)「いや、ちらちら見すぎじゃないですかお?」

ギコさんは何故か何度も写真をちら見しては時折目を擦ったりする。
しばらくしてよっぽど信じられないものでも見たかのような顔で僕に写真を返して来た。

(;,,゚Д゚)「……盗撮?」

(;^ω^)「いや、こんな堂々と並んで映ってんのにそれはないですお」

言いたいことは何となくわかるが、ちと失礼すぎる反応だろう。
不釣合いなのは僕が一番良く理解している。

(,,-Д-)「ふーむ……世の中信じられないこともあるもんだな……」

だから失礼すぎだろうと思うが、僕はその言葉を飲み込み、もう別れましたと軽く述べた。
努めて平坦な口調で、ただ事実だけを。



174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:20:20.97 ID:INnfFLsn0

(,,゚Д゚)「何だそりゃ? 何でだ?」

( ^ω^)「いや、それは諸般の事情でとしか……」

ふられたかと言うギコさんに、僕は無言で首を振る。
僕らはお互いの進む道のために別れたのだと、また事実だけを伝える。

(,,゚Д゚)「お互いのねえ……」

( ^ω^)「はいですお」

ギコさんは何か言いたげに僕の方へ視線を向ける。
安定した運転の腕ではあるが、もう少し前方に注意を向けて運転した方がいいのではと思わなくもない。

( ^ω^)「何ですかお?」

(,,゚Д゚)「……いや、何でもないよ。それがお前らの決めたことなんだろ」

僕はまた無言で頷く。
ならば部外者が言うべき話じゃないとギコさんは正面を向いてただそれだけを言った。

( ^ω^)「……」



176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:25:45.92 ID:INnfFLsn0

ギコさんから返してもらった写真に目を落とす。

僕とツン、2人で決めた答えは正しかったのだろうか?
僕はそれが未だによくわからずにいる。

でもきっと、お互いの道のためにはそれが一番良かったはずだ。

( ^ω^)(僕が歩み寄れれば……)

答えは変わったのかもしれない。
ツンに内緒でツンの行く大学の近辺の企業も受けてはみたのだがことごとく落ちた。
不況の折もあり、ようやく手に入れた就職を手放すことが僕には出来なかった。

ツンは学問という夢を追い、僕は仕事という現実に囚われた。

僕もツンも、お互いの道を譲れという言葉を言うはずがなかった。
自分から譲っても、きっと相手に重荷を背負わせることになるだろうから。

( ^ω^)(もう、終わったんだお……)

僕はそっと写真を折りたたむ。
捨てられなかった想い出を、また胸ポケットに仕舞い込んだ。

僕と僕の想い出を積んだトラックは、国道201号線を軽快に走る。
もうすぐ僕は帰り着く。

あの町に別れを告げ、故郷の町に帰り着くのだ。



177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:30:13.85 ID:INnfFLsn0
・・・・
・・・

( ^ω^)「おー……」

トラックは国道を抜け、細い道を行く。
見覚えのある景色に囲まれ、時折見つかる変化に驚く。
普段帰る道とは違う道だが、気付かぬ内にこの町も色々と変わっているものだ。

そんな行程を繰り返し、トラックはやがて止まった。

(,,゚Д゚)「よし、この辺で良いか?」

( ^ω^)「はいですお」

道は狭いがスペースは広くていいとギコさんが言う。
隣の家まで間に田んぼをいくつか挟むので、ここにトラックをしばらく止めて置いても大丈夫だろう。

( ^ω^)「んじゃ、ちょっと人手を連れて来ますお」

(,,゚Д゚)「おう。俺は降ろす準備をしてるよ」

助手席のドアを開け、故郷の地に降り立つ。
正月に帰ったばかりなので、さほど感慨はないが、やはりどこか今までの帰郷とは違う気持ちに満ちている。



180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:35:54.97 ID:INnfFLsn0

( ^ω^)「お?」

( ΦωΦ)从'ー'从(´∀` )J( 'ー`)し(゚、゚トソン

呼ぶまでもなく、トラックの音を聞きつけたこちらに向かってくるのに気付いた。
祖父母に父母、妹と家族総出だ。

大体の時間は伝えてたし、大型のトラックが通ることは滅多にない道なので気付いてもおかしくないはないが、
全員に手伝ってくれるよう頼んだ覚えはない。

( ^ω^)「ただいまだお」

僕は挨拶もそこそこ、荷降ろしの作業に向かう。

家族皆で来てくれたのは嬉しいが、爺ちゃんや婆ちゃんにまで手伝わせるのはどうかと思い、断ろうとしたが皆さっさと
荷物を運んでいく。
やれやれ、元気なことだと思う。

僕はギコさんと家族の間に立ち、ギコさんが降ろした荷物を皆に手渡す作業に就いた。



181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:40:31.93 ID:INnfFLsn0

    オッ    ウム
( ^ω^)つ□⊂(ΦωΦ )


  ハイハイ    オッ
从'ー'从つ品⊂(^ω^ )


    オッ    モナ
( ^ω^)つ回⊂(´∀` )


   エエ    オッ
J( 'ー`)しつ品⊂(^ω^ )


    オッ    ハイ
( ^ω^)つ○⊂(゚、゚トソン


  ヨイショット  オッ
ξ゚゚)ξっ□⊂(^ω^ )



182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:40:57.17 ID:hNfDybU50
!!!


183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:41:00.98 ID:f0F+ywJn0
えっ


184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:45:00.83 ID:INnfFLsn0

( ^ω^)「……」

( ΦωΦ)「おい、次はどうしたんじゃ?」

(;^ω^)「お……」


    オッ    ウム
( ^ω^)つ□⊂(ΦωΦ )


  ハイハイ    オッ
从'ー'从つ品⊂(^ω^ )


    オッ    モナ
( ^ω^)つ回⊂(´∀` )


   エエ    オッ
J( 'ー`)しつ品⊂(^ω^ )


    オッ    ハイ
( ^ω^)つ○⊂(゚、゚トソン



185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:50:26.97 ID:INnfFLsn0
 ドッコイショット  オッ
ξ゚゚)ξっ□⊂(^ω^ )


( ^ω^)「……」

...ξ゚゚)ξっ□ スタスタ

(;^ω^)「いや、ちょ、ちょっと待てお!!!」

......ξ゚゚)ξっ□ ピタゥ

ξ゚゚)ξヽ

(;^ω^)「そうだお、お前だお」

┐ξ゚゚)ξ┌ 「?」

(;^ω^)「いや、そんな意味がわからない風なジェスチャーされても、こっちが意味わからんお」

僕は手にあった荷物を放り投げるように父に渡し、ツンの元へ向かう。
何故ここにツンがいるのか。
ツンは今頃、大学院の入学手続きをしているはずなのに。



186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 05:55:29.57 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「進学は止めたわ」

ツンは進学を取り止め、昨日の内にここに来たと言う。
以前、住所を教えた覚えはあるが、いくらなんでも急で、そして滅茶苦茶な話だ。

(;^ω^)「何で……勉強は、天文学は夢じゃなかったのかお!?」

気付けば僕は叫んでいた。
彼女がここにいるのが、夢を捨てたのが僕のせいなら、僕は……

ξ--)ξ「……別に進学は止めたけど、夢は諦めたわけじゃないわよ?」

(;^ω^)「お?」

ξ゚゚)ξ「勉強は、あの大学院じゃなくても出来るわ。ううん、働きながらでも出来る」

ツンは穏やかな口調で語る。
自分が夢を捨てたわけではないことを。
自分の見る夢が変わっていないことを。



187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 06:00:07.51 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「そりゃあね、だいぶ遠回りだと思うし、大変だとは思う」

( ^ω^)「……」

ξ゚゚)ξ「でも、思い出したの」

( ^ω^)「……」

ξ゚゚)ξ「私がこの夢を見始めた理由」

( ^ω^)「……」

ξ゚ー゚)ξ「あの日一緒に見た、星空を思い出したの」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚ー゚)ξ「私は私がどこで夢を見たかったのか、思い出したのよ」

ツンの手が僕の手を握る。
まだ肌寒い春の午後に、冷ややかで暖かい感触が僕を刺す。



189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 06:02:27.10 ID:INnfFLsn0

僕はツンの目をまっすぐに見詰めた。
ツンは僕の目をまっすぐに見詰め返した。

それがツンの本当の答えだと、僕はやっと理解出来た。

そして僕の本当の答えは……

( ^ω^)「ツン……ごめんお……」

ξ゚゚)ξ「……」

( ^ω^)「本当は僕がそうするべきだったんだお」

僕はツンを1人で悩ませ、1人で大きな決断をさせてしまった。
ツンの気持ちに気付いて、そして僕の本当の気持ちに気付いて、僕がツンのために、ツンのそばに向かうべきだった。

それが僕の本当の答えだったのだから。

ξ゚ー゚)ξ「鈍いあんたにそこまで期待してないわよ」

( ^ω^)「でも……」

ξ゚゚)ξ「私は、夢への遠回りという重荷を背負うわ」

( ^ω^)「うん……ごめん──」



191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 06:04:56.51 ID:INnfFLsn0

ξ゚゚)ξ「あんたは、自分がちゃんと答えを出せなかったことを重荷として背負いなさいよ」

( ^ω^)「お……」

ξ--)ξ「それでおあいこよ」

( ^ω^)「……ツン」

ξ゚ー゚)ξ「ま、そんなもの、一緒に背負えば軽いもんでしょ?」

( ^ω^)「そうだおね……ありがとだお、ツン」

僕らは再び見詰め合う。
随分情けない僕だったけど、ツンはそこまでわかってくれて、僕の元へ来てくれた。

僕はもう迷わない。

僕の本当の答えは、ツン、君と一緒にいたい。

僕はツンの方へ足を踏み出す。
もう1歩、足を踏み出そうとしたところで僕はこの場所がどこかに気付いた。


(,,゚Д゚)+( ΦωΦ)+ 从'ー'从+ +(´∀` ) +J( 'ー`)し +(゚、゚トソン



192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 06:10:26.36 ID:INnfFLsn0

(;^ω^)「……お」

僕は家族+1の生暖かい視線を避けるようにツンの横に並ぶ。

ξ--)ξ「情けないわね……」

(;^ω^)「おー……」

ξ゚゚)ξ「でもまあ……」

ξ゚ー゚)ξ「その方があんたらしいわ」

( ^ω^)「おっおっお」

僕らは笑う。
あの写真のように2人並んで。

あの日とは別の空の下で。
あの日と同じ気持ちで。

間違った答えに別れを告げて。
本当の答えを胸に僕らは笑う。


 ( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ



 ── ( ^ω^)僕らは別れを告げるようです 終 ──



194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 06:12:44.90 ID:INnfFLsn0
以上でした。

オムニバス風な予定が連作短編風に。
わかる人は多分いない、とある歌が最初のモチーフです。
数字はそこから。

こんな時間まで支援等感謝です。
早く規制解けて、ブーン系が賑わってほしいですな。


そんな感じで、読んで頂いてありがとうございました。



204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 10:58:56.90 ID:2Jf5iZCOQ
ほっこりした
乙乙



210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/24(日) 12:37:01.16 ID:6dsfn/pB0
乙。久しぶりにいい作品に出会えた




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この記事へのコメント
  1. Posted by 釘宮なんて嫌いじゃ at 2010年01月25日 01:42
  2. 1
    しばらく休業してください
  3. Posted by た at 2010年01月25日 03:34
  4. リアルで見たけど良い話でしたね。最近ブーン系少ないからのぉ…
  5. Posted by 名無し at 2010年01月25日 10:14
  6. 中々良かった。
  7. Posted by 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 at 2010年01月25日 12:19
  8. ハッピーエンドで良かった
  9. Posted by 774 at 2010年01月25日 14:37
  10. ブーン系小説久しぶりだな
  11. Posted by ま at 2010年01月25日 16:13
  12. ここのSSはクオリティが高い
  13. Posted by あ at 2010年01月25日 17:20
  14. 長いけど面白かった
  15. Posted by   at 2010年01月25日 18:09
  16. 良いSSでした
  17. Posted by 10 at 2010年01月25日 21:26
  18. 初めて読んだブーン系のSSがこれ。とても良かった。
  19. Posted by サーサー at 2010年01月25日 21:40
  20. 素晴らしいブログですね
    つい最近私もブログを始めたんで
    ちょいちょい参考にさせてもらってます(・∀・)
  21. Posted by あ at 2010年01月25日 23:27
  22. ブーンの実家が俺んちの近所だと…!?
  23. Posted by 名無しクオリティ at 2010年01月26日 14:24
  24. 何だろう、凄く心に響いた。
    作者さんありがとう
  25. Posted by at 2010年01月27日 08:12
  26. 面白くて最後まで一気に読めた。
  27. Posted by 名無し at 2010年01月27日 17:31
  28. 変わらない日常を変えるために、故郷を棄てた自分には切なすぎるSSでした。
    ハッピーエンドで良かった…
  29. Posted by 名無し at 2010年01月28日 21:12
  30. 5
    若々しきハッピーEND
    良作乙
  31. Posted by 哀のVIP戦士 at 2010年02月02日 23:17
  32. 読んじまった
    明後日テストなのに…
    一乙でした
  33. Posted by よ at 2010年02月09日 09:45
  34. 5
    震えた