2012年07月25日

背景:
生物は単純な単細胞生物から現在の複雑な多細胞生物へと進化していったとされている。その進化は必然であり何度繰り返しても同様の進化をするのか、それとも偶然現在の形をとっただけなのだろうか。

要約:
著名な生物学者であったスティーヴン・ジェイ・グールドは、もし生物の歴史を巻き戻して再生するとしたら、同じ道筋を辿って進化するのだろうかという疑問を提示した。この疑問は長い間議論の的となっているが、コーネル大学の研究チームによって、少なくともある植物毒に対する昆虫の耐性は、その種に関係なく同じ進化方法をとることが分かった。

トウワタ属やジギタリス属といった植物は、殆ど全ての昆虫に致死性であるカルデノリドと呼ばれる毒物を生成する。カルデノリドはナトリウムポンプに結合することでその機能を阻害する。ナトリウムポンプは全ての動物細胞にみられる最も基本的な機能の1つであり、細胞膜の内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの交換を担っている。その機能が阻害されることで、細胞は致命的なダメージを負う。

彼らはカルデノリドに耐性のある、甲虫、チョウ、ガ、ハエなど4目18種の昆虫がどのようにその耐性を獲得しているのかを調べた。以前からチョウ目の1種であるオオカバマダラがどのように耐性を獲得しているのかは知られており、今回の研究によって他の昆虫も同様の方法で耐性を獲得していることが分かった。

それはナトリウムポンプ遺伝子上にあるN122Hと呼ばれる場所の変異であり、それによってカルデノリドの結合を防いでいるようだ。また18種中11種の遺伝子上に耐性を向上させるための2番目の変異がみられた。研究チームの1人であるAgrawal博士によると、植物毒への耐性獲得のための進化には少数の道筋しか用意されていないようであり、この結果はとても驚くべきものとなったという。

また彼らが培養した細胞の遺伝子を変異させたところ、N122Hの変異によってカルデノリドへとの耐性を獲得し、もう1つの変異によって2倍もの耐性を得た。ナトリウムポンプは昆虫だけでなく哺乳類など他の動物でも似た構造を持つため、何億年も前に共通の祖先が獲得した機能だと考えられている。そして 過去3億年の間に、カルデノリドを生成する植物を餌とする種々の昆虫が、独立して全く同じ変異によって耐性を獲得したようだ。

Agrawal博士によると、生物の進化の歴史を巻き戻すことは出来ないが、それらを現代の生物の遺伝子の中で見ることができるという。そして今回の研究では、分子レベルでの進化の再現性がみられることとなった。

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元記事:
Same Adaptations Evolve Across Different Insects
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/07/120724144534.htm

参照:
S. Dobler, S. Dalla, V. Wagschal, A. A. Agrawal. Community-wide convergent evolution in insect adaptation to toxic cardenolides by substitutions in the Na,K-ATPase. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 2012; DOI: 10.1073/pnas.1202111109

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