2013年01月06日

背景:
気体の絶対温度はその分子の持つ運動エネルギーによって定義される。そのため早く動いている物質ほど絶対温度は高く、遅く動いている物質ほど低い 絶対温度を持つ。そのため全く動いていない物質の絶対温度は0ケルビン(ケルビンは単位)となり、その温度は絶対零度として摂氏-273.15度と等し い。

要約:
それはあり得ないことのように感じるかもしれないが、史上初めて絶対零度以下の単原子ガスが造られた。この技術によって、マイナスの絶対温度を持つ物質や新たな量子的な機構の作成への道が開け、また宇宙のなぞを解き明かす鍵となる可能性がある。

1800年代半ば、ケルビン卿によって0以下の存在しない絶対温度が定義された。その後物理学者によって、気体の絶対温度はその分子の持つ平均エネルギーと関係があることが判明し、絶対零度とは分子が全くエネルギーを持っていない理論上の状態と一致することが分かった。

しかし1950年代になって、それらは常に正しいとは限らないことが分かってきた。ある系の絶対温度は、分子の持つエネルギーの確率を区分したグ ラフから平均値が読み取られる。そのため通常は、実際の分子のほとんどは平均値か程近いエネルギーを持つが、ほんの少しではあるがより高いエネルギーを持 つ分子も同時に存在する。

ドイツはルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのUlrich Schneider博士によると、理論的には、その状態が反転されると、より多くの分子が高いエネルギーを持ち、少ない分子が低いエネルギーを持つように なるという。するとグラフの形も上下に反転され、絶対温度の正負も同時に逆転する。

Schneider博士らは、カリウム原子によって作られた超低温の量子ガスを利用することで、絶対零度以下を造りだした。カリウム原子はレー ザーと磁界を利用することで、プラスの絶対温度ではお互いの原子が反発しあうために安定となる、格子状に並べられた。その後原子同士がお互いに引き付けら れるように、素早く磁界を変化させた。

Schneider博士によると、このことで、カリウム原子は最も安定な低エネルギー状態から、反応を待つことなく高エネルギー状態へと変換される。これは例えるならば、ある人が谷底を歩いていたら、いつの間にか山の頂上を歩いていることに気がつくようなものであるいう。

プラスの絶対温度内では、このような反転は不安定であり原子同士は内側へと崩壊してしまう。しかし彼らは、同時にレーザーを使いカリウム原子をエ ネルギー的に都合のよい場所へと固定することで、崩壊を防ぐことができた。この結果、カリウム原子ガスはとても小さなプラスの絶対温度から、10億分の数 度ほどマイナスの絶対温度を造りだすことに成功した。

以前に磁気系内でのマイナス絶対温度を論証した、ノーベル賞学者でもあるマサチューセッツ工科大学のWolfgang Ketterle博士によると、この研究はプラスの絶対温度をもつ通常の実験室ではとても成し得ないような高エネルギー状態を、マイナスの絶対温度にする ことで安定させてしまったということから、実験的な力技であるという。これはピラミッドの頂上で逆立ちしながらも転げ落ちることを心配しないでよいような 状態であり、実験室内での新たな形態の物質の作成へと繋がることだろうという。

ドイツにあるケルン大学のAchim Rosch博士によると、もしこのような系が作成されたとしたら、それはとても奇妙な挙動をみせることになるだろうという。例えば彼らの計算によると、通 常状態での原子の集合は重力に引かれて落ちていくが、絶対零度以下の物質は重力に逆らって上昇していくものと考えられる。

また絶対零度以下のガスは、重力に逆らって加速している宇宙の膨張をつかさどると考えられている、暗黒エネルギーと同様の挙動をみせると考えられ る。この研究でも、プラスの絶対温度では内側へと崩壊してしまう物質が、マイナスの絶対温度によってそれが止められていた。これは宇宙で起こっている現象 と同様の特徴を持つため、天文学者にとっても注目に値する研究であるだろう。

absolute zero

元記事:
Quantum gas goes below absolute zero - Ultracold atoms pave way for negative-Kelvin materials.
http://www.nature.com/news/quantum-gas-goes-below-absolute-zero-1.12146

参照:
Braun, S. et al. Science 339, 52–55 (2013).
Medley, P., Weld, D. M., Miyake, H., Pritchard, D. E. & Ketterle, W. Phys. Rev. Lett. 106, 195301 (2011).
Rapp, A., Mandt, S. & Rosch, A. Phys. Rev. Lett. 105, 220405 (2010).
Mandt, S., Rapp, A. & Rosch, A. Phys. Rev. Lett. 106, 250602 (2011).

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この記事へのコメント

1. Posted by 常連   2013年01月07日 23:52
負温度物質はエネルギーが高いからあらゆる正の温度の物質と相殺する事は無く、勝ち続ける
みたいな記述を読んだことがあるけど、どうなんでしょうね?
にわかには信じがたい
2. Posted by xcrex   2013年01月08日 16:34
>>常連さん
こんにちは、コメントありがとうございます。

この分野の深いところは自分は全然分からないので、実際にこういう記事を見ても???と思うことが多いですね。絶対零度付近や以下では他にも様々な奇妙な現象が起こるようで、自分もイマイチイメージができません。笑

ではでは。

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