2013年02月12日

背景:
科学的な発見には多くの失敗がつきものであるため、新たな説を証明するには多大な労力がかかる。ゲノムには様々な構造や形態が存在するため、未だにDNAやRNAなどの新たな機能が発見されることがある。

要約:
2005年、現ウォータールー大学のSusan Lolle博士らによって、植物は1世代前のゲノムが変異したもののみであっても、2世代前の変異前の遺伝子を受け継ぐことができるという研究が発表された。

このような遺伝には、DNA以外のどこかに遺伝情報を保存するための何かが必要であり、転写されたRNAこそがそれなのではないかとも考えられた。もしこれが事実であるならば、現在のDNAのみを利用した遺伝という概念を覆すことに繋がるため、当然のことながら疑惑の目を向けられることにもなっ た。

2006年と2008年には、2つの研究チームによって、先の実験を再現できなかったことが発表された。そこでは先の研究のような世代を跨いだ遺伝は行われず、元の実験ではただ単に2世代前の遺伝子を有した、他の個体からの花粉を受け取ってしまったのだろうと結論付けられた。

しかしその後Lolle博士はさらにデータを集め、先月F1000Research誌上で植物のモデル生物であるシロイヌナズナが同様の遺伝を行う ことを発表した。これにより彼女は、植物はDNA配列を超えた遺伝情報をキャッシュとして保存することができ、これにより遺伝子変異の悪影響から身を 守っているという自身の説を補強することとなった。

しかしコンタミネーション(不純物による汚染)の可能性は他者の花粉だけではなく、その実験方法にも潜んでいる。彼らはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)という手法を使い、DNAサンプルのコピーを合成したが、PCRはしばしばコンタミネーションの原因となってしまう。

Lolle博士は、実験中にはできる限りコンタミネーションの可能性を排除し、何度も同じ実験を繰り返すことで、結果の揺らぎを排除したという。 しかしケック応用生命科学大学院大学のAnimesh Ray博士は、Lolle博士らがコンタミネーションの可能性を排除するには、新たな実験を追加する必要があるだろうという。

また同じF1000Research誌上では、他の研究チームによるLolle博士の説を支持する同様の実験結果が得られた。しかしカリフォルニア大学デイビス校のLuca Comai博士らは、この研究では他個体の種によるコンタミネーションの可能性が排除されていないことから、Lolle博士の説を補強できるようなものではないという。

Ray博士は、もしこれらの実験の正確さに疑いがないのなら、Lolle博士の研究はとても興味深いものであるという。またComai博士は、Lolle博士らの新たな研究結果を無視するわけではないが、確定的な証拠がなくやはりまだ疑わしいだろうという。

Ray博士によると、このように懐疑的な声が上がっているが、Lolle博士らは自身の説を証明するために骨を折っているだろうという。このような複雑な出来事を解明しようとするのには勇気が必要だが、彼女らは何かしらをつかんでいるのではないかという。

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元記事:
Do plants 'veto' bad genes?
http://www.nature.com/news/do-plants-veto-bad-genes-1.12401

参照:
Lolle, S. J., Victor, J. L., Young, J. M. & Pruitt, R. E. Nature 434, 505–509 (2005).
Peng, P., Chan, S. W.-L., Shah, G.A. & Jacobsen, S. E. Nature 443, E8 (2006).
Mercier, R. et al. Genetics 180, 2295–2297 (2008).
Hopkins, M. T. et al. F1000Research 2, 5 (2013).
Kempinski, C. F., Crowell, S. V., Smeeth, C. & Barth, C. F1000Research 2, 6 (2013).

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