2013年02月23日

背景:
インフルエンザは有史以来多くの人々を犠牲にしてきたと考えられているが、その根本的な対策は確立されていない。その背景には、インフルエンザウイルスの変異の早さがあり、新たな薬が登場しても素早く耐性を獲得してしまうという問題がある。

要約:
インフルエンザは種類が多く変異も早いため、単一の治療薬を長期間利用することはできない。タミフルはノイラミニダーゼ(受容体破壊酵素)阻害薬 として、4年前のH1N1や豚インフルエンザの流行にとても大きな役割を果たした。しかしインフルエンザはその早い変異によって素早く適応し、タミフルの効果が薄れてきているのにも関わらず、現在でも最も効果的な治療薬として利用されている。

タミフルやそれと並ぶインフルエンザ治療薬であるリレンザは、共にノイラミニダーゼの働きを阻害することを目的に開発された。ノイラミニダーゼは細胞表面に存在する糖の一種であるシアル酸を分解することで、インフルエンザウイルスが細胞から離れることを可能としている。またインフルエンザウイルスはシアル酸を利用することで細胞へ付着し、細胞内への侵入から複製を可能としている。

そこでこの度、カナダはサイモンフレーザー大学のMasahiro Niikura博士らによって、ノイラミニダーゼの機能を阻害する新たな物質が開発された。この物質は、ノイラミニダーゼに結合することで機能を阻害し、 インフルエンザウイルスが感染細胞からの拡散を防ぐことができる。

Niikura博士によると、この物質の利点は水溶性であるところにあるという。リレンザはインフルエンザウイルスの耐性獲得という面においてタ ミフルよりも優れているが、水に溶けないため経口摂取ができず一番目の選択肢には利用されない。またこの物質は、タミフルに比べてシアル酸によく似 た構造を持っているため、インフルエンザウイルスはタミフルほど簡単に耐性を獲得することはできないと考えられるという。

この物質によってインフルエンザ治療薬の開発は、インフルエンザウイルスが容易に適応することのできない薬という点で、新たな段階へと入ることに なる。また究極的には、新たなインフルエンザ株が現れたときに、研究者がワクチンを開発するまでの時間稼ぎをすることができるようになるだろう。

pain killers

元記事:
Influenza Study: Meet Virus' New Enemy
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/02/130221194241.htm

参照:
Jin-Hyo Kim, Ricardo Resende, Tom Wennekes, Hong-Ming Chen, Nicole Bance, Sabrina Buchini, Andrew G. Watts, Pat Pilling, Victor A. Streltsov, Martin Petric, Richard Liggins, Susan Barrett, Jennifer L. McKimm-Breschkin, Masahiro Niikura, and Stephen G. Withers. Mechanism-Based Covalent Neuraminidase Inhibitors with Broad Spectrum Influenza Antiviral Activity. Science, 21 February 2013 DOI: 10.1126/science.1232552

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