2013年03月07日

背景:
脳は動物の行動や機能のすべてをつかさどっているため、それら様々な機能に関わる因子を特定することができれば、医学・薬学的に広く応用することができるようになる。

要約:
動物の脳について、これまでその発達段階はとてもよく研究されていたが、成長後の脳の変化についてはそれほど理解が進んでいるわけではない。しかし成熟前と後の動物の脳には、柔軟性にとても大きな違いがあることはよく知られている。例えばヒトの場合、柔軟性の高い脳を持つ子供は、低い脳を持つ大人に比べて言語などの新しい物事を効率よく覚えることができ、また脳に負った障害なども回復しやすくなっている。

この度、イェール大学医学校のStephen Strittmatter博士率いる研究チームによって、マウスの脳内のある遺伝子を不活性化することで、脳が成熟前のように大きな柔軟性を示すことが分かった。この研究から、ヒトの脳を若返らせることで、脳梗塞の後遺症や精神的なトラウマなどから、効率よく回復させることができるようになるかもしれないという。

彼らは、生きたマウスの神経細胞を何週間・何ヶ月と観察することで、脳の成熟に重要な働きをするノゴ受容体1遺伝子を特定した。この受容体は脳の柔軟性を抑える働きによって、脳を成熟させているという。例えば、この遺伝子を欠いたマウスは成熟した後も脳の柔軟性は保たれたままであり、またこの遺伝子の機能を後天的に阻害すると、成熟した脳が成熟前の脳と同程度の柔軟性へと変化した。

脳梗塞は一度起こすと手足などが不自由になってしまうことがある。そのリハビリには、手足の動きをもう一度学びなおすという作業が必要であるため、より柔軟性のある脳のほうが効率よく行うことができる。またノゴ受容体は記憶をとどめておく機能も持つため、その機能を阻害することで精神的なトラウマを忘れさせることにも利用することができるだろう。

brain

元記事:
Flip of a Single Molecular Switch Makes an Old Mouse Brain Young
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130306134226.htm

参照:
Feras V. Akbik, Sarah M. Bhagat, Pujan R. Patel, William B.j. Cafferty, Stephen M. Strittmatter. Anatomical Plasticity of Adult Brain Is Titrated by Nogo Receptor 1. Neuron, 2013 DOI: 10.1016/j.neuron.2012.12.027

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この記事へのコメント

1. Posted by 常連   2013年03月07日 14:09
5 「ネオテニー」という一語がぴったりのニュースですね
2. Posted by xcrex   2013年03月16日 08:33
>>常連さん
そうですね。
段々とSFに近づいている気がして面白いです。笑

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