2013年06月24日

背景:
地球上の多くの生物は、エネルギー源などに共通した物質を利用している。そのため、その物質を効率よく利用できるほど生存競争では有利となるため、それぞれの環境に合わせたそれぞれの方法で適応している。

要約:
酸素は殆んどの生物にとってはなくてはならないものであるため、深海や高高度のように酸素量が限られている環境に住む生物は、効率よく酸素を利用するための方法を発達させてきた。先々週サイエンス誌上で発表された3つの論文では、様々な動物が獲得してきた様々な方法について論じられている。

イギリスはローハンプトン大学のEnrico Rezende博士によると、これら3つの論文では共に「筋肉へ酸素を運ぶ効率的な方法」への答えを求めて研究が行われたという。

最初の研究は、イギリスはリバプール大学のMichael Berenbrink博士によって、水棲哺乳類のミオグロビンと呼ばれるタンパク質を対象に行われた。ミオグロビンは筋肉中で酸素を保存する役割を持ち、 筋肉の色を赤く保つ原因となっている。しかし、クジラなどの水棲動物は多くのミオグロビンを持つため、筋肉が黒く染まっている。

Berenbrink博士によると、ミオグロビンは高濃度ではお互いに固まりあって蓄積してしまうため、このように高濃度のミオグロビンを持つ生物がいるというのは奇妙なことであるという。

そこで彼らは水棲哺乳類のミオグロビンについて、そのアミノ酸配列を解析すると、陸上生物に比べてとても高いプラスの電荷を持っていることが分かった。このプラスの電荷によってタンパク質同士が反発しあい、高濃度でも蓄積せずに維持されているのだろうと考えられる。

またBerenbrink博士らは、絶滅した水棲哺乳類のミオグロビンについても同様の解析を行い、それらの動物の体重と合わせることで、どれほど水の中に潜っていられたのかを推測した。例えば、オオカミほどの大きさで5300万年前に生息していたクジラの祖先であるパキケトゥス (Pakicetus)は、90秒ほどしか潜水することはできなかっただろうと推測され、またその1500万年ほど後に現れたバシロサウルス (Basilosaurus)は、17分ほどは潜っていられただろうと推測された。

2つ目の研究は、オーストラリアはジェームズクック大学のJodie Rummer博士によって、魚類の大部分を占める条鰭綱のみが持つ、独特な種類のヘモグロビンを対象に行われた。ヘモグロビンは血中で酸素を運ぶ働きを持 つが、条鰭綱の持つそれはとても酸性度に敏感であり、周辺環境の酸性度が高くなるととたんに酸素を離す、ルート効果(Root effect)という現象を起こす。

この効果は浮き袋内で起こることでよく知られ、その高い圧力に反して酸素を送り込む働きをしている。しかしこの効果が筋肉への酸素供給に利用されていることは、これまで知られていなかった。Rummer博士らは魚の筋肉に酸素センサーを埋め込むことで、二酸化炭素濃度の上昇などのストレスに対し て、どのような反応を示すのかを観察した。すると赤血球内で酸性度を高める酵素によって酸素が放出され、筋肉中の酸素濃度が65%高まった。

Rummer博士らによると、このようなヘモグロビンのルート効果によってサーモンなどの魚類は、高い耐久性を獲得し生存競争に生き残ったのだろうという。そしてこのような進化によって、魚類は脊椎動物の実に50%を占めるようになったのだろうという。

3つ目の研究は、ネブラスカ大学リンカーン校のJay Storz博士らによって、様々な高度に生息するシロアシネズミを対象に行われた。シロアシネズミは生息する高度によって異なるヘモグロビンを持ち、高高度に生息する種ほど酸素を強く吸着するヘモグロビンを持つ。Storz博士らは、2種のヘモグロビンを分ける原因となった3つの遺伝子クラスターにまたがる12の変異を特定した。

サイエンス誌上で3つの論文をまとめた論評を著したRezende博士によると、これら3つの論文では筋肉へ効率よく酸素を運ぶいくつかの方法について論じられたが、そのどれもが「厳しい環境下で生き残るための適応」という1つのテーマに沿って研究が行われた。殆んど全ての場合において、酸素供給 量の上昇はパフォーマンスの向上へとつながるため、異なる経路の様々な進化は生き残るのにとても有用であっただろうという。

red blood cells

元記事:
Making the most of muscle oxygen - Animals have evolved a variety of ways to get oxygen under extreme conditions
http://www.nature.com/news/making-the-most-of-muscle-oxygen-1.13202

参照:
Mirceta, S. et al. Science http://dx.doi.org/10.1126/science.1234192 (2013).
Rummer, J. L. et al. Science 340, 1327–1329 (2013).
Natarajan, C. et al. Science 340, 1324–1327 (2013).
Rezende, E. L. Science 340, 1293–1294 (2013).

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