2013年10月22日

背景:
両生類は陸上を生活の場とする種としては原始的ながら、何度かの大量絶滅を生き残っている。しかし現在両生類には、アメリカ大陸を中心として危機が訪れており、多くの種が絶滅し減少を続けている。

要約:
ここ40年以上もの間、世界中で両生類が絶滅し数が激減している。その主な原因として、1990年代にカエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)と呼ばれる、両生類の皮膚に感染する菌類が特定された。しかしヒトと同様に複雑で精巧な両生類の免疫系が、なぜその感染を防ぐことができないのだろうか。

カエルなどの両生類は、皮膚が様々な物質を含んだ体液に覆われており、ヒトの薬としても研究される抗菌効果を持つペプチドが、病原菌への感染を防いでいる。もし皮膚の外で病原菌への感染を防げなかったとしても、体内には他の脊椎動物と同様に免疫系が存在し、病原菌を体内から排除するはずである。

しかしヴァンダービルト大学のLouise Rollins-Smith博士らによると、カエルツボカビは免疫細胞の1つであるリンパ球の増殖を防ぐ物質を生成するため、皮膚へと侵入を許してしまうと免疫が効かなくなり、致死的な症状を現してしまうことが分かった。

この物質によって、免疫系の初期段階に機能するマクロファージや好中球の働きは阻害されることはないが、その次の段階に機能するリンパ球の増殖が抑えられ、やがて細胞死へと向かう。この機能は、マウスやヒトのリンパ球でも確かめられ、また哺乳類の癌細胞株の成長も抑制することが示された。

この物質はまだ特定されていないが、タンパク質を切断するプロテアーゼや熱によって不活性化しないことから、ペプチドではないと考えられ、細胞壁の合成を妨げる物質によって効果が低下することから、細胞壁の構成物質の1つであると予測される。菌類の細胞壁を持たない未成熟体である遊走子では生成されないことで、この説は裏付けられる。

またカエルツボカビに感染したカエルは、無気力になり水中から這い出るようになるなど行動の変化が見られるため、循環系や神経系にも影響していると考えられる。いずれにしても、この物質の構造や性質を解明することで、カエルツボカビ症への理解が深まり、また免疫抑制剤や癌治療薬などへの応用も可能となるかもしれない。

golden toad

元記事:
Frog-Killing Fungus Paralyzes Amphibian Immune Response
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/10/131017144404.htm

参照:
J. S. Fites, J. P. Ramsey, W. M. Holden, S. P. Collier, D. M. Sutherland, L. K. Reinert, A. S. Gayek, T. S. Dermody, T. M. Aune, K. Oswald-Richter, L. A. Rollins-Smith. The Invasive Chytrid Fungus of Amphibians Paralyzes Lymphocyte Responses. Science, 2013; 342 (6156): 366 DOI: 10.1126/science.1243316


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