2014年01月03日

背景:
遺伝子疾患は生まれながらに病気を持ち、細胞1つ1つに原因となる遺伝子異常が含まれているため、根本的な治療はとても難しい。病気の原因となる遺伝子異常を治すことを目的とした遺伝子療法は、様々な形で研究が進んでおり、一定の成果が現れているものもある。

要約:
表皮水疱症(EB)は遺伝子疾患の1つであり、皮膚がとても脆弱になり水疱が頻発してしまう。また正常な皮膚を持たないことから感染しやすく、致死的な感染症を患ってしまうリスクも高い。今のところ治療法がないため、症状を和らげることに主眼を置いた治療が行われている。この度、イタリアはモデナ・レッジョ・エミリア大学のMichele De Luca博士らによる、7年に渡る遺伝子・幹細胞療法の結果、その治療に希望が見えてきたことが分かった。

De Luca博士らは、Claudio(クラウディオ)という名前の患者に対して臨床試験を行った。そこでは、クラウディオの手の平から得た表皮幹細胞の遺伝子を正常に戻し、彼の足に移植する治療を行った。すると7年後の現在、移植された部分は水疱もなく健康に見え、癌の発生などの副作用も確認されなかった。特筆すべきことは、移植された幹細胞の一部は絶えることなく新たな皮膚を再生させ続けていたことであった。

またこの期間中、クラウディオの皮膚は80回の入れ替わりを経験しているが、移植された幹細胞の分子的特徴は手の平の皮膚細胞のものを維持しており、足の皮膚細胞の特徴へと変化することはなかった。De Luca博士によると、このことは成体幹細胞は生成されたときに位置していた組織を再生させることはできるが、他の組織を再生させるほどの柔軟性はないことを示しているという。そのため成体幹細胞を治療に利用するときには、慎重に幹細胞の種類を選ぶ必要があるだろうという。

gene mutation

元記事:
Gene Therapy for Human Skin Disease Produces Long-Term Benefits
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131226143110.htm

参照:
De Rosa et al. Long-Term Stability and Safety of Transgeni Cultured Epidermal Stem Cells in Gene Therapy of Junctional Epidermolysis Bullosa. Stem Cell Reports, December 2013

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