2014年03月11日

背景:
細菌による感染症は歴史上数え切れないほどの人々の命を奪ってきたが、抗生物質の発見によって犠牲者は激減した。しかし抗生物質の濫用によって細菌が耐性をつけ始め、特に病院内などでは複数の抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌が生まれ始め、公衆衛生上の大きな懸念となっている。

要約:
黄色ブドウ球菌はヒトの常在菌の1つであるが、ときに致死的な感染症を引き起こすことがある。治療には抗生物質が有効だが、その濫用によって様々な耐性菌が生まれている。メチシリンへの耐性をもつものをメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と呼び、1960年代以来世界的に公衆衛生上の問題となっている。

アメリカでは毎年278000人が治療を受け19000人が亡くなっている。MRSAには現在3種類の薬が有効だとされているが、それぞれの薬に対する耐性菌もすでに現れている。ノートルダム大学のShahriar Mobashery博士は、MRSAへの解決策を長年に渡って模索してきた。そこで、Mobashery博士とMayland Chang博士率いる研究チームによって、MRSAへ効果のある新たな抗生物質が発見された。

Chang博士によると、Mobashery博士はMRSAの耐性メカニズムを長い年月研究してきたという。それらの研究によって解明されてきたメカニズムを理解することで、MRSAに対する抗生物質を発見する戦略を立てられたという。

彼らは、コンピューターを利用することで抗生物質の発見へと到った。そこでは120万種もの物質が調べられ、オキサジアゾールと呼ばれる構造を持つ物質が、PBP2aと呼ばれる細胞壁の合成と薬剤耐性に関わるタンパク質の働きを阻害することを発見した。

この物質の効果は、マウスを利用した動物実験によって確認され、また経口摂取によって効果的な治療ができることも確認された。現在MRSA薬で経口摂取ができるものは1つしか実用化されていないため、この特徴はとても重要な意味を持つという。

ノートルダム大学科学部(College of Science)長であるGreg Crawford博士によると、Mayland Chang博士とShahriar Mobashery博士による、MRSAのような薬剤耐性菌に対する薬となる物質の発見は、世界中で何千何万という人々を救うことになるだろう。薬剤耐性菌との戦いにおける、彼らの指導力や持続力には敬意を払うものであるという。

pain killers

元記事:
New class of antibiotics discovered by chemists
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140307165953.htm

参照:
Peter I. O’Daniel, Zhihong Peng, Hualiang Pi, Sebastian A. Testero, Derong Ding, Edward Spink, Erika Leemans, Marc A. Boudreau, Takao Yamaguchi, Valerie A. Schroeder, William R. Wolter, Leticia I. Llarrull, Wei Song, Elena Lastochkin, Malika Kumarasiri, Nuno T. Antunes, Mana Espahbodi, Katerina Lichtenwalter, Mark A. Suckow, Sergei Vakulenko, Shahriar Mobashery, Mayland Chang. Discovery of a New Class of Non-β-lactam Inhibitors of Penicillin-Binding Proteins with Gram-Positive Antibacterial Activity. Journal of the American Chemical Society, 2014; 136 (9): 3664 DOI: 10.1021/ja500053x

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