2014年06月26日

背景:
現在、様々な疾患が克服され特に先進国では寿命が著しく延びている。しかしそれと同時に、癌による犠牲者は増え続けているが、根本的な解決策は一向に見えてはこない。

要約:
癌には多くの人々が苦しめられているため、世界中で様々な研究が行われている。アメリカだけでも2012年までに500兆円以上の研究費が注ぎ込まれ、予防・検査・治療法の研究・開発に利用されている。しかし癌による死亡者数は増え続けており、ドイツでは4人に1人が何らかの癌によって亡くなり、現在でもその傾向は高まっている。癌を克服するには、治療法などの開発だけではなく、発生のメカニズムなど基礎的な理解も深める必要がある。

この度、ドイツはキール大学のBosch博士率いる研究チームによって、癌の起源ははるか昔へとさかのぼり、原始的な多細胞生物が現れた頃には存在していたことが分かった。これまでに、コンピューターによる解析によって癌の原因となる遺伝子は、とても古くから存在していたことが示唆されていたが、今回の研究によって実際に原始的な動物であるヒドラのポリプに腫瘍が発生することが確認された。

癌の原因となるとされる癌遺伝子については、研究チームの1人であるマックスプランク研究所のTomislav Domazet-Lošo博士の他にDiethard Tautz博士などが、コンピューター解析などによる研究が行われていた。Domazet-Lošo博士によると、癌遺伝子の起源を探っていくと、予想外にも最初の多細胞生物はすでにヒトの癌の原因となる遺伝子のほとんどを保持していることが分かったという。

しかし、それらの遺伝子が実際に原始的な生物に腫瘍を発生させていたのか、またどのようにして単純な生物に腫瘍が発生しうるのかは分かっていなかった。そこでBosch博士らがヒドラの幹細胞について研究していくうちに、ヒドラの2種に実際に腫瘍の形成が確認された。この観察結果は、腫瘍が実際に原始的で進化的に古い動物にも発生することを示すことになった。

またヒドラに発生した腫瘍は、性分化のための幹細胞がプログラム細胞死によって正しく取り除かれず、大量に蓄積してしまうことで発生していることを突き止めた。その背景には、プログラム細胞死を防ぐ遺伝子の過剰な活性があった。機能を失った細胞の適切な排出はどのような生物でも重要な機能であり、実際にヒトに発生する腫瘍でもそこに原因があるとするものが多数ある。また興味深いことに、ヒドラの腫瘍はメスにのみ発生し、ヒトの卵巣癌に相当するものであったという。

またこれらの腫瘍細胞は感染することが示された。例えば、あるヒドラの腫瘍細胞の一部を健康なヒドラへと移植すると、腫瘍細胞は新たなヒドラの体内で育っていく。感染性の癌細胞は高等動物でも見られるが、Bosch博士によると、このような特徴も進化的に古くから存在するようだという。

Bosch博士はこれらの結果を受けて、癌は地球上の多細胞生物と同じだけ古くから存在するものであるため、癌を根絶することは不可能であろうと結論付けた。しかし、癌の起源から解明していくことで、癌と戦う方策が見えてくるだろう。

bacteria virus cancer cell

元記事:
Cancer 'as old as multi-cellular life on Earth': Researchers discover a primordial cancer in a primitive animal
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140624092530.htm

参照:
Tomislav Domazet-Lošo, Alexander Klimovich, Boris Anokhin, Friederike Anton-Erxleben, Mailin J. Hamm, Christina Lange, Thomas C.G. Bosch. Naturally occurring tumours in the basal metazoan Hydra. Nature Communications, 2014; 5 DOI: 10.1038/ncomms5222

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