2014年07月16日

背景:
現在様々なサプリメントが存在し、健康によいと謳われる多種多様な化学物質が摂取されている。しかし多くの物質は、過ぎたるは及ばざるが如しのことわざが示す通り、過剰な摂取は体に毒となってしまう。では元々体内に備わっている機能を補助するサプリメントは、どのような働きをするのだろうか。

要約:
活性酸素は細胞の行う通常の生命活動の副産物として生成され、その高い活性によって細胞や遺伝子を傷つけてしまうと考えられている。そのため、活性酸素を中和することのできる抗酸化物質は健康によいものとして、サプリメントなどで多く摂られている。

活性酸素は癌の原因ともなると考えられているため、抗酸化物質の癌に対する医学的な効能についても臨床試験が行われているが、これまで癌のリスクを減らすといった効果が示されたことはない。様々な試験では、逆に癌の増加率を上げてしまうといった結果が得られている。例えば、抗酸化物質の1つβ-カロテンを多く摂る喫煙者は、肺癌の罹患率が上がってしまう。

コールド・スプリング・ハーバー研究所のDavid Tuveson博士やノースウェスタン大学のNavdeep S. Chandel博士らによって、なぜ抗酸化物質サプリメントが癌の抑制に効果がないのか、またなぜ逆に癌の罹患率を上げてしまうのかが論じられた。彼らは、酸化還元反応に関わる酸化剤と抗酸化剤(還元剤)の、近年明らかになりつつある細胞内で構築されるバランスから論理を展開している。

活性酸素の1つ過酸化水素(H2O2)は、少量は必要であるため細胞内で作られる。しかし大量の過酸化水素が細胞に毒となることは疑いようもなく、細胞内では自然に備わった機能によって中和している。また癌細胞は栄養源の1つとして活性酸素を利用しているため、抗酸化剤を摂ることは、論理的に考えて細胞の機能を助ける意味で有用だといえる。

しかし実際には、サプリメントや食物から摂った抗酸化物質は、癌細胞が活性酸素を生成する部位であるミトコンドリアへは運ばず、離れた場所に蓄積するため、癌に対する有効な手段となることはないようだ。逆に大量の抗酸化物質は、癌細胞自体の害となるほど過剰な活性酸素の生成を防ぐことで、癌細胞の健康な成長を助けてしまっているという。

そのため癌細胞内の活性酸素量を逆に上げることで、癌細胞の成長を促進させるのではなく、その成長を抑制する効果が期待できるだろうという。実際に現在行われている放射線治療では、癌細胞内の活性酸素量は劇的に上昇する。また化学療法でも、酸化によって癌細胞を殺すものもある。

実用例として、抗酸化酵素の機能を遺伝的・薬学的に抑制する治療法は、肺癌や膵臓癌のマウスモデルでは効果を示しているため、同様の治療法がヒトへも応用できるのではないかという。しかし、健康な細胞に利用されている抗酸化酵素や経路を阻害してしまうと、酸化還元反応のバランスを狂わせてしまうことになるため、癌細胞にのみ利用されている抗酸化機能を特定する必要がある。

彼らはこのような目的の新たな研究について、その概要を提示している。

medication elderly

元記事:
How antioxidants can accelerate cancers, and why they don't protect against them
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140710094434.htm

参照:
Elizabeth G. Phimister, Navdeep S. Chandel, David A. Tuveson. The Promise and Perils of Antioxidants for Cancer Patients. New England Journal of Medicine, 2014; 371 (2): 177 DOI: 10.1056/NEJMcibr1405701

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