2014年08月20日

背景:
エボラ出血熱を発症させるエボラウイルスは過去のアフリカで散発的に流行していたが、極めて高い毒性のためそれほど広がることはなく、最大でも数百人単位の流行で抑えられていた。しかし今年、アフリカ西部で発生したエボラウイルスの流行は、以前に比べて長い潜伏期間のため広く流行してしまい、これまでに1300人以上が亡くなっているが、収束の兆しは見えていない。

要約:
アフリカ西部で起こっているエボラ出血熱流行の背後には、宿主を殺してしまう強大な力を持った種が存在する。フィロウイルス科に属するザイール・エボラウイルス(Zaire ebolavirus)は、宿主の免疫系を不能にした後、血管系を分解することでその強毒性を発揮する。病気の進行はとても早く研究を難しくしているため、そのメカニズムに関して解明されていることはとても少ない。

例えば、エボラウイルスの持つ7つのタンパク質が実際にどのように機能するのか、体中にウイルスが広がる前に必要な免疫反応とは何かは、未だに分かっていない。しかし、培養された細胞内でウイルスがどのように細胞を攻撃するのかが解析され、霊長類を使った動物実験によって病気の進行を観察することで、少しずつ情報は集められている。

これまでに判明しているエボラウイルスについての基本的知識を以下で説明する。

免疫系にどのような作用をおよぼすのか
エボラウイルスが体内に入ると、まずは体を守る第一防衛線に位置するいくつかの免疫細胞がターゲットにされる。健康な免疫系を持ったヒトは、ウイルスなどの病原菌が体内に入ると、ウイルスの増殖を防ぐために感染細胞を除去する白血球(T細胞)を活性化させる信号が、樹状細胞から出される。しかしエボラウイルスはまず樹状細胞へと感染することで、増殖を防ぐことのできるT細胞への信号を止めてしまう。そのため、エボラウイルスはとても早く増殖を始めることができてしまう。

またエボラウイルスは、ウイルスの増殖を抑える役割を持つ分子であるインターフェロンの機能も阻害してしまう。例えば先週発表された研究では、VP24と呼ばれるウイルスタンパク質が、インターフェロン経路で重要な役割を持つ免疫細胞の表面の輸送タンパク質へと結合することで、その機能を阻害することが判明している。

興味深いことに、外敵を攻撃するためのリンパ球それ自体はエボラウイルスに感染することはない。しかし信号の遮断など他の様々な要因が重なることで、リンパ球がウイルスと戦い始めることができくなってしまう。

大量出血はどのように引き起こされるのか
エボラウイルスが血流に乗って体中へ移動する時、マクロファージと呼ばれる他の免疫細胞がウイルスへ攻撃を開始する。しかしマクロファージはエボラウイルスに感染すると、凝固作用のあるタンパク質を放出することで血を固まらせ、内臓各部への血液供給を減らしてしまう。また炎症を引き起こすタンパク質や一酸化窒素を生成することで、血管を傷つけ出血を起こさせてしまう。これはエボラウイルス感染の主な症状の1つであるが、全ての患者に目や鼻などからの大量出血が起こるわけではない。

特定の臓器をターゲットにするのか
エボラウイルスは体内で多種多様な組織に害を振りまいていく。そこでは、免疫細胞の機能を混乱させることでマクロファージなどに炎症を起こさせる物質を分泌させたり、感染した細胞を消費することで直接的な害となるが、特に肝臓にそれらの障害が出やすい。肝臓では、血液を凝固させる物質など、血漿の構成要素を生成する細胞を攻撃する。また消化管で細胞が傷つくと下痢による脱水に陥りやすくなり、副腎の細胞が傷つくと血圧をコントロールするためのステロイドホルモンの生成量が鈍り、循環系の機能が阻害され臓器が酸素欠乏となってしまう。

患者はどのような原因で犠牲になるのか
血管に負った傷は血圧を下げてしまい、出血性ショックや多臓器不全によって亡くなってしまう。

生き残ることのできる人々とは
経口・静脈注射などにより水分補給を継続的に行い、体が感染と戦う時間を稼ぐことができるような、適切な治療を受けられれば生存率は高くなる。しかし、ウガンダで2000年に起こったエボラ出血熱の流行時の患者から得られた血液サンプルを研究することで、遺伝的な要因なども特定されだしてきている。例えばエボラ出血熱から回復することのできた患者は、T細胞の活性が高く、他の細胞との信号伝達に利用する細胞表面タンパク質をコードする遺伝子に特定の亜種を持っていた。

また今年初めには、血管を補修する血小板によって生成されるsCD40Lと呼ばれるタンパク質量と、エボラ出血熱からの生存率に関わりがあることが判明した。論文の著者によると、sCD40Lのようなマーカーを利用することで、エボラ出血熱からの生存に最も重要な血管補修メカニズムを促進させる治療法の開発に繋がる可能性があるという。

Ebola virus

元記事:
What does Ebola actually do?
http://news.sciencemag.org/health/2014/08/what-does-ebola-actually-do

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この記事へのコメント

1. Posted by 訂正   2014年08月20日 15:57
1.維管束系は植物のものなので、血管系とすべきでしょう。
2.「大量出血」の項、いろいろな物質を放出するのはウイルスではなく、(感染した)マクロファージでしょう。
2. Posted by 訂正2   2014年08月20日 19:42
出欠熱→出血熱
3. Posted by xcrex   2014年08月21日 01:01
>>訂正&訂正2さん
何か色々ミスってますね、直しておきました。
ご指摘ありがとうございます。
ちょっともう少し落ち着いて書こうと思います。

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