白髪頭で働く中高年期の調整力

May 24, 2017

8020




1986年に著された田中優子の本「江戸の想像力」を本棚からとりだして見ている。30年まえの留学帰国後、札幌の書店にて購入した本だとおもう。WAN(Women’s Action Network)の総会がことし、札幌駅北口のエル•プラザで開催され理事長の上野千鶴子とともに田中優子が来札、講演会を聴きにいった。「自分ゴトから始まる社会づくり、半径3メートルを超えて」と題されたシンポジウムだ。

わたし自身はWANの会員でないが、ネット•メールを読んでいる。メール通信の「ちづこの部屋」という相談室の応答がおもしろく、東京〜大分〜スコットランド〜札幌と居住地がかわっても読みつづけている。中心的構成員が田中さんや上野さんのような社会のなかで働きつづけ、ご自分たちの社会的地位と場所を築いてきた、または築いている人々の集まり要するに、勝ち組と認識される中高年齢者およびその路線をめざす若年層グループかもの印象がないわけではない。

自分はたぶん負け組にはいるだろうし、就業者数のなかに数としてはいってこなかったとおもう。勝ち組の論理でフェミニズムを語れないと感じるなにかがこころのなかにある。併し自分の20代だったとき、女としてどうしても経済的自立をめざすならフェミニストを自認するのが遣りやすかった。それしか道は、自分になかったようなのだ。親や親戚や友人知人を説得するのに便利な表現だった、フェミニズム。併し世間がいうその現象や活動に、自分の身を投打つほど傾倒してはいなかった。宙を舞う自由な個体として、どこへも属さなかった。

8020は、行きつけの歯科医でもらったリーフレットで見つけた数値だ。歯の定期検診を勧められて25年になる。60代になって初めて抜歯を経験した。ああこうやって1本ずつ抜けてゆくわけだ……、と考えていたところ先の歯科医が加齢のため閉院。伴い紹介された先が現在、通っている大通り公園に面したビルのこじんまりした歯科医院だ。

我が家からの通院にすこぶる便利なうえ、自歯をなるべく長生きさせるを信条とするその医師は、確固とした信念をもつ口ぶりで、いうことがいつも揺るぎない点は、先の医師とおなじくらい頑固そうで、寡黙だが鋭い閃光を瞳のなかに宿している。患者がなにを問うてもこちらが納得するまで、説明を怠らない点も共通していた。

で、手にしたリーフレットを読むと8020という数字が目に飛込んできた。80歳で20本自歯をもつ、というのがまるでTOEIC750点のような、ある基準値になっているそうである。いったい自分にあと自歯(歯根のみも含め)が何本残っているか、あらためて数えてみた。

80年の渡米まえの準備として、歯科医に親知らずの抜歯を願い出ると4本とも、駄目だよ抜いちゃと断られつづけた。1本も抜けてこない、頑として正位置に鎮座しつづける。よって持ち歯は、32―1=31本という計算だ。80歳になるまで11本抜けてもまだ、20本残ることになる。つぎなる20年で11本も抜けおちるものだろうか。それにあの歯科医に通っている限り、抜けてこない工夫をされそうだし。自歯数の問題より母体である肉体と頭のほうが先に、弱ってくるかもしれない。併しこのままバーベルあげてたら……、いったいどんな老人になっているだろう。やっと世間で「腹筋ジョシ」とかいわれだし、喜んでいるところだ。

「江戸の想像力」を読み返そう。付箋がごっそり貼ってあった。



xgx417 at 12:18│ お出かけ 
白髪頭で働く中高年期の調整力