2008年01月04日

《目 次》

(右上のCategoriesをご参照・クリックしてください。掲載内容が表示されます)

0.はじめに (1)
1.伝 来1(インド→中国) (4)
2.象棋前史 (宝応象戯) (4)

3.象棋改良1(碁を模したゲーム) (19)
4.象棋改良2(城都建設) (17)
5.象棋改良3(砲パオ(炮)の採用) (5)
6.象棋改良4(大規模改修) (11)
7.象棋改良5(紅軍と黒軍:先後の変更) (5)

8.朝鮮将棋1(伝来と改良) (15)
9.朝鮮将棋2(構図の拡大) (5)
10.朝鮮将棋3(自由奔放) (10)
11.おわりに  (1)

 以 上

 ※( )内は掲載回数です。

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2007年11月10日

おわりに

 日本の将棋、韓国(朝鮮)のチャンギ、中国のシャンチー各々の成り立ちを考察して幾つか実感したことがある。

 一つめは、かつて日本・韓国(朝鮮)・中国は中国を頂点とする共通の文化圏であったということである。かつて同じ漢字を使用した史実に端的に示される。

 今日の中国の簡体字・韓国(朝鮮)のハングル文字については、素養がないためにほとんど解読することができない。しかし、隋書・周書もしくは高麗時代に記された三国史記の原文などは、意外にそのまま解読できることに感動した。

 中国においては、一九五六年、識字率を高めるために政策的に繁体字(旧字体)から簡体字に移行した経緯があるため一概に言えない部分もあるが、日本において今日なお旧来からの漢字を使用し続ける理由は、ひらがな・カタカナなどと漢字を併用するシステムを早期に確立したことにあるのではないだろうか。

 書くのに煩雑であったり、自信を持てなかったりする漢字については、ひらがな・カタカナなどに置き換えて代用することができる。過度に漢字が負担になることを回避したために、旧来の漢字をそのまま残すことが可能となったに違いない。

(もっとも、日本においても戦後、「略字体(新字体とも呼ばれる)」に改変されており、厳密には「繁体字」ではない。ちなみに、「繁体字」を使用しているのは、台湾・香港マカオ・シンガポールなどである)

 ともあれ、日本・韓国(朝鮮)・中国相互の歴史・文化理解に役立てるという目的において、互いに旧来の漢字を使用するというのは、案外、即効性のある方策かもしれないと感じた。

 二つめは、かつて各々の「将棋」が改良された時代に、伝播の速度はゆったりしたものであったに違いないということである。日本において、旧型の将棋(酒田市の城輪柵遺跡出土駒)と、新型の将棋(興福寺出土駒)の時期に関する逆転現象が見られるが、中国・韓国(朝鮮)においても、同様の現象があったと推定する。

 三つめは、日本の二十数倍もの面積を有する中国を一括りに捕らえてはいけないということである。この認識が、かつて中国において、旧型のチャトランガ(=日本の将棋の先祖)と新型のチャトランガ(=シャンチー)とが混在した時期があるという仮説へと繋がった。

 そして、確信を深めたのは、日本・韓国(朝鮮)・中国が、相互に理解を深めることによって、歴史等の解明もより加速するに違いないということである。

 本書によって、各々の「将棋」の成り立ちすべて解明できたとは思っていないが、次につながる踏み台としての役割を果たすことができればと願っている。

 小沼 諒

xiangqi_janggi at 07:00|PermalinkComments(2)TrackBack(0)clip!11.おわりに 

2007年11月08日

朝鮮将棋改良3(9)その他のルール

(2)一手パス(トゥシオ) 
 「トゥシオ」は「お指しください」という意味であり、対局中、自分の手番の際に動かしたい駒がない場合には、パスをすることもできる。日本の将棋・シャンチー・チェスなどにない独自のものであり、ルールの柔軟性の一端を示す。

(3)ピッチャングン
 漢と楚が、途中に他の駒がない状態で同一線上に並ぶ状況に持っていくことをいい、不利な側が相手に対して引き分けを申し入れる意思表示となる。相手が次の手で何も指さず受け入れの意思表示をすれば、終局となる。

 しかし、前述のように、公式戦で勝敗を決する場合には点数判定に持ち込まれる。したがって、熟練者同士の対局の場合には、相手がピッチャングンを受け入れると負けてしまう状況に追い込んだ上でピッチャングンを強いることによって有利に試合を進めるといった戦術の一つとして用いられる。

 また、チャンギにおけるピッチャングンやチェスにおけるスティール・メイトの引き分けルールは、劣勢に立たされた側が持ち込めた時など、なんともいえない快感があるという。もっとも、チャンギの公式戦においては盤上の駒が点数化されるため、引き分けとなる機会も限られるという。

 なお、シャンチーにおいて将同士が他の駒がない状態で直接向き合うのを、「対面将」、「王不見王」といい、後から同一線上に並んだ将は相手の将の眼力によって死に至るルールであり、ピッチャングンはこれと一八〇度、異なる。

 おそらく、中国北東部から朝鮮に伝播する過程において、「対面将」、「王不見王」という将の超能力は度が過ぎる(または非現実的)と感じた愛好者が、円満終結のルールに置き換えたに違いない。

(完)

2007年11月06日

朝鮮将棋改良3(8)その他のルール

(1)引き分け
  基本的に、次の三通りの引き分けがある。

“很未両況から、互いに相手の「将」を詰めることができないと合意した場合。
▲船礇鵐哀鵑盍泙瓠∋芦麩続して同一手順を反復した場合。
(同手カットゥンス・チョンイルス=千日手)
ピッチャングンの成立

 なお、公式戦などで必ず勝敗を決する場合、次のような規定がある。
 盤上の駒の合計点数が双方ともに30点未満の時、◆↓を選択した場合には直ちに終局となり、合計点数により勝敗を決する。

 仮に、どちらか片方が30点以上ある場合、△任六芦麑椶了悗啓蠅鮖悗靴進が、ではピッチャングンを指した方が反則負けとなる。ちなみに、この点数表は、(社)韓国将棋協会で正式採用しているものであるという。
社団法人韓国将棋(チャンギ)協会東京支部のホームページから抜粋)

 なお、先手1.5点控除は、先手必勝ゲームとの認識に立つハンディである。
また、点数制を導入した一九六〇年当時、車は一二点であったが、一九七五年に一三点に変更されたという。車の価値を重視していることがうかがい知れる。

 しかし、どちらか一方でも三十点以上ある場合、△任六芦麑椶了悗啓蠅鮖悗靴進が、では、ピッチャングンを指した方の反則負けとなるという。

(つづく)


2007年11月03日

朝鮮将棋改良3(7)機能強化

(5)兵ピョン(卒チョル)

 当初からシャンチーにおける渡河卒(兵)と同様に、前・左右に一路進むことができるが、後退することはできない。したがって、敵陣の一番奥まで進むと、横方向に一路ずつしか動けないという点においてシャンチーと同じである。

卒(兵)は将棋における金将・銀将に近い性能を持つ。したがって、宮に近い卒(兵)宮の前に横移動して、宮から出ることの出来ない将(漢・楚)をガードする役目に用いるというのが、一般的である。
 なお、宮の斜線は、前進のみ移動可能であり、斜め後方に戻ることはできない。

(つづく)

2007年11月01日

朝鮮将棋改良3(6)機能強化

(4)包ポ、機能の強化と簡明化

 移動の方向として、縦・横移動の他、宮の斜線上も含む。これは、車同様に、シャンチーの砲(炮)に追加された機能である。

 敵駒を捕る機能、つまり包以外の駒一つのみ(二つ以上は不可)、つまりタリを跳び越えて捕る点は、シャンチーの砲(炮)と差異がない。

 しかし、敵駒を捕る機能=移動機能という点で、シャンチーの砲(炮)と異なる。

 チャンギにおいては包以外の駒一つのみ(二つ以上は不可)跳び越えて移動するが、シャンチーの砲(炮)は、敵駒を捕る機能と移動機能は分離しており、縦横に何路でも進める。
 当然、チャンギの包はより移動の制約を受けるが、移動=敵駒捕りとしてルールを簡明化することを選択したものと思われる。

 また、敵味方を問わず、包が包を跳び越えたり、包で敵の包を取ったりすることはできない。これも、シャンチーの砲(炮)と異なる。

 なお、チャンギの包という名称は、シャンチーの砲(炮)という名称の原型であったと思われる。場合によっては、チャンギの包の機能自体、シャンチーの砲(炮)の機能の原型であった可能性もある。

(つづく)

2007年10月30日

朝鮮将棋改良3(5)機能強化

(2)馬マ
 シャンチーと同様に八方桂であり、塞馬脚と同じ制限ルールの対象となる。つまり、前後左右に他の駒(=喉ミョク)がある場合にはその方向に進むことはできない。

 なお、移動先を「日の字」にたとえる。「日」の字の一方の角から反対側の角へ進めるという意味である。

(3)車チャの強化
 日本の将棋の飛車、シャンチーの車と同様に車は縦横に動ける他、宮内の斜線上も動ける点において、更なる機能強化が図られた。

 車は(シャンチーの斜線は士行線と呼ばれ、士(仕)以外、通行することができない)宮中央に位置すると、十字の動きに加えて宮全体の八方にも利く。シャンチーと同様に、もっとも価値の高い駒と位置付けられる。

(つづく)

2007年10月27日

朝鮮将棋改良3(4)機能強化

(1)象サンの強化
 前後左右に一路かつ、その地点から斜めに二路進む。八方桂のよりさらにもう1つ先の斜めの地点まで一気に進むことができる。
 さらに、河界が撤廃されたため攻守に渡り活躍する可能性も得た。
 シャンチーにおいて、斜め四方に二路しか進むことができず、守備専用に甘んじていたことと比較すると、大変な機能強化がなされたといえよう。

 当初、チャトランガにおいて象であった駒は、世界各地に伝播する過程において、他の駒に代えられてしまうケースが多かった。
 日本に伝来した将棋においては虎(後の銀将)であり、チェスにおいてはビショップ僧侶にとって代わられた。
 象の名称を保ったシャンチーにおいてすら、唯一河界を渡ることができない駒に指定された。生息地域が限定される象は、馴染みが薄い地域で冷遇されてきたのである。

 原型の名称を残しつつ、かつ大幅な機能強化が図られたという点において、象は意外な地域において安住の地を得たといえよう。

 なお、馬同様に、前後左右やそこからの斜め一つ先の地点に、他の駒(=喉ミョク)があると、その方向には進めない。
 この点においては、シャンチーの塞象眼のルールを踏襲しているといえよう。しかし、この喉ミョクは、中終盤の攻防において重要となる局面も多く現れる。

 また、移動先を「用の字」にたとえる。「用」の字の一方の角から反対側の角へ進めるという意味である。

(つづく)

2007年10月25日

朝鮮将棋改良3(3)象サン、馬マの自由配置

ゞ馬キマ(図)
チャンギキマ1チャンギキマ2

 ※ 図をクリックすると、拡大表示します。(以下、同じ)

 この布陣は象・馬の進路が重ならず、行き筋の変化に富んで全体的なバランスがよいとされる。日本の将棋でいえば筋違い角(=角行)のようなもので、大駒同士、異なる利き筋で戦略を組み立てるので、互いに対応に神経を尖らせるという。 
 なお、お互いの馬・象が縦の路で向かい合わない組合せを「マッサン」と呼ぶ。

⇔抄馬ヤンギマ(図)
チャンギヤンギマ

 ヤンギマでは、最初から馬と象が容易に前進できるため、先手番である楚軍が速攻を目指す場合に用いられることが多いという。守備より、攻撃重視の布陣であるという。

1鴦馬ヲナンマ(図)
チャンギヲナンマ

 左右対称で日本の将棋やシャンチーと同じ配置であるが、必ずしも指し手はこの配置にとらわれない。

「実際の組み合わせとしては、他にも『キマ対ヲナンマ』『ヤンギマ対キマ』『ヤンギマ対ヤンギマ』『ヲナンマ対ヲナンマ』なども、考えられるわけですが、実際の対局での双方の選択としては、『キマ対キマ』が最もポピュラーな組み合わせで、アマ・プロともに全体の60〜80%の対局が『キマ対キマ』の布陣になっています。その次に多いのが、『キマ対ヲナンマ』、その次が『ヤンギマ対キマ』の組み合わせといったところです」(社団法人韓国将棋(チャンギ)協会東京支部のホームページから抜粋)

さ‘絢屐併温諭
チャンギ機動車

 手許の市販チャンギソフトの初期配置設定に「機動車」がある。
 中央から順に、車・馬・象と置く布陣である。
 但し、「機動車」の初期布陣は、北朝鮮で採用されている選択肢の一つで韓国にはないという。

(つづく)

2007年10月23日

朝鮮将棋改良3(2)象サン、馬マの自由配置

 隣り合う象と馬を左右のどちらにおいてもよい。
 フェアリーチェス、つまり変わりチェスにディプロイメントチェスやランダムプレイスメントチェスなど初期配置の自由度を高めたものがあるが、正規のゲームで制度化されたものは珍しい。
 もちろん自由配置によって、戦略の幅が広がるのはいうまでもない。

 駒を配置する順番は、通常後手番である漢軍(赤の漢軍は目上・上手が持ち、黒の楚軍は目下・下手が持ち、楚軍が先手番となるのが一般的)側が先に駒を並べ終えた後、通常先手番である楚軍が並べ終えて決定する。
 なお、対局開始後は馬・象の配置を入れ換えることはできない。

(つづく)